荻上チキ 赤ちゃんと議場入りした緒方夕佳・熊本市議インタビュー

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荻上チキさんがTBSラジオ『Session-22』の中で、熊本市議会に生後7ヶ月の赤ちゃんを連れて議場入りした市議会議員の緒方夕佳さんにインタビュー。その経緯や、浮き彫りになった問題点などについて話していました。


(南部広美)続いては、こちらのニュースです。熊本市議会 赤ちゃん連れの出席を認めず、一時混乱。今日、開会日を迎えた熊本市議会で「仕事と子育ての両立」を訴える女性議員が生後7ヶ月の長男を抱いて議場に入ったところ、他の市議から退席を求める声が上がるなど押し問答となり、一時混乱しました。長男を連れて議場に入ったのは無所属の緒方夕佳議員で、最終的に緒方夕佳議員は長男を友人に預け、市議会は定刻よりおよそ40分遅れで開会しました。開会の際に議長が議事進行の遅れを謝罪したところ、男性議員から「お詫びする人間が違う」という野次も飛んだということです。熊本市議会の規則では「本会議中はいかなる理由があっても議員以外は議場に入ることはできない」と定められていて、緒方議員によりますと、「妊娠がわかった去年から赤ちゃんを連れてくることはできないか、議会事務局に相談をしてきましたが、前向きな回答は得られなかった」ということです。

(荻上チキ)それでは今日はこちらのニュースについて、ご本人に。つまり、緒方議員にお話をうかがったので、その模様をお聞きいただきたいと思います。熊本市議会議員、緒方夕佳さんのお話です。

緒方夕佳さんインタビュー

<インタビュー音源スタート>

(荻上チキ)緒方さん、こんばんは。

(緒方夕佳)こんばんは。

(荻上チキ)よろしくお願いします。

(緒方夕佳)よろしくお願いします。

(荻上チキ)さて、今回ですね、市議会に赤ちゃんを連れて行ったということで非常に大きな話題になっているわけですけども。そもそも、今回の行動に至るまでにはどういう経緯があったのでしょうか?

(緒方夕佳)去年、子供を授かりまして。その報告を議会事務局にした折に、「生まれてから、小さな赤ちゃんのいる状態での議員活動をサポートしてほしい」っていうお願いをしまして。で、具体的には「いつでも授乳をできるように議場に連れて行きたい」というような話をしまして。そしたら、「議場は難しい」と。「ならば、いま国会の方では議員用の保育所なども整備されているんですけども、熊本市議会にも託児所が作れないか? そこは議会の傍聴に来られた方も預けられるので、託児となると人間と場所を両方確保しなくてはいけないので。議員としてはまだ私しか、利用者がいないのであれば、まずは人だけの確保ができないか?」というような話をしてきたんですけども……。

(荻上チキ)ええ。

(緒方夕佳)事務局としては、「議員さん個人でベビーシッターを雇って対応してください」というような、すごく個人的なことというようなメッセージを私は受けてですね、今回、可能な範囲で出たいと思いまして。事前に事務局の方に連絡をして話して。また、同じような話をしたんですけど、「個人でベビーシッターを」っていう反応だったんですね。それで、私としては壁が立ちはだかっているように感じまして。これから私としては、子育てをしやすい世の中、子供が幸せな世の中を作っていくために、ぜひ子育て中の女性に議員になってもらいたい。そうするための環境整備をしたいって思っているんですけど。

(荻上チキ)ええ。

(緒方夕佳)そういう話をしても、どうしても前に進まない、取り合ってももらえないというような状況だったので。「個人的な問題」っていう風に扱われてしまうことにすごく疑問があって。いま、社会で子育てと仕事を両立しようとがんばっている方々も「個人的な問題」っていう感じで扱われてすごく大変で。がんばっていて、または辛い思いをしたりしていると思うんですよね。助け合わないとできないものだと思うんですけど、私たち子育て世代が「変えよう!」っていう風に声を上げた時に、どうしてもその声を聞いてもらえないっていう状況なので。その声、悲鳴のような感じで。私の今日の議場での姿っていうのはそういう声を表したいと思いました。

(荻上チキ)ええ、ええ。

(緒方夕佳)そこに赤ちゃんと座っている私の存在によって、そういうみんなの姿、みんなの声を表したい。聞いてほしい、見てほしいというような気持ちで行きました。

(荻上チキ)なるほど。海外では、議会に子供を連れてくる、赤ちゃんを連れてくるという、そういう議員の方の姿が見られるところもあるんですけど。今回、その議場に子供を連れて行くという判断をした時、なにか決意したきっかけであるとか、あるいは参考にしたことであるとか。そうしたことはありましたか?

海外事例も調べた

(緒方夕佳)はい。海外の事例もたくさん集めまして。子供のいる議員……特に男女共同参画が進んでいる社会ですとか、どういう風に仕組みがなっているんだろう?っていうのはすごく調べました。たとえば、北欧では一般の労働者と同じように議員も1年半ぐらい育児休業が取れるんですね。その間、どうするか?っていうと、代理投票とか代理議員とかでその議員の意見が表明できるような仕組みになっているんですね。そういう仕組みが整っているんですね。そういうのは調べました。

(荻上チキ)うん、うん。なるほど。そういったことを知った上で、今回はアクションを起こしてみようという風にされたわけですか?

(緒方夕佳)はい。私はそういう風に「仕組みづくりをしましょう」っていう風に話しているんだけども、なかなか取り合ってもらえない、前に進まないというような……。

(荻上チキ)そうした中で本日、お子さんを実際に連れて行ったわけですけども。その時の議会の様子、反応はいかがだったでしょうか?

(緒方夕佳)通りかかった議員さんで、赤ちゃんに微笑んでいくような……「赤ちゃん、来たね」ってニコッとしていかれた方もいらっしゃいましたし。おそらく、驚いたような方もいらっしゃったんだろうと思います。

(荻上チキ)うん、うん。そして実際に本会議が、しばらく時間が止まったということですけども。これはどういうことなんでしょうか?

(緒方夕佳)私が赤ちゃんを抱いて座ったら、まず事務局の方が駆け寄ってこられて。「もう、それはやめてください」っていうような。で、議長や議会運営委員会の委員長も寄ってらっしゃって。「これじゃあ始められない」っておっしゃったんですけど……私はもう「大丈夫です。始めていただいて大丈夫です」っていう風に申し上げたんですけど、あちらは「始められない」っていう風におっしゃって、始めなかった。「赤ちゃんがいる状態では始められない」というお考えで。

(荻上チキ)それは、その時にはどういった説明を受けたんですか?

(緒方夕佳)説明というよりは、「とにかくもう出てほしい」っていうような……「とにかく、いま議場を離れてちょっと外で話しましょう」というような。

(荻上チキ)その後、たとえば具体的なやり取りなどはあったんですか?

(緒方夕佳)ありました。それから議長室に移動して、私の考えを話させていただいて。で、あちらのお考えも聞きました。そこで、私がどうしてしたのかとかを訴えさせていただいて。「自分のためだけならこんなことはしません。社会で子育てと仕事の両立で苦しんでいたり、子育てでがんばっていたり。いまの孤独の方の”孤育て”の状況で虐待にあってしまう子供たちとか。そういうような人たちのためにも、現状を変えたいという声なんです」ということを訴えさせていただいて。で、あちらからの話では、「これから子育てと議員活動を両立していくためにどういう仕組みを作れるか、話し合っていこう」っていう風に話をいただきました。

(荻上チキ)ええ、議長の方から。

(緒方夕佳)そうです。

(荻上チキ)なるほど。そうした、このやり取りをしている中で、他の議員の方から声をかけられたり、あるいは批判とか野次とかが飛んだりしたことはあったんでしょうか?

(緒方夕佳)私がまだ赤ちゃんと議場に座って事務局の方や議長や議会運営委員長が近づいて、私の周りにいた時になんか後ろの方で大きい男性の声がしていました。

(荻上チキ)内容はなにか、聞こえたものはありましたか?

(緒方夕佳)ああ、ちょっと私は近くにいる方とのやり取りに一生懸命になっていたので。はっきりとなんておっしゃっていたかは聞こえなかったです。

(荻上チキ)それは否定的なものなのか、それともサポートをするようなものだったのかというのはいかがですか?

(緒方夕佳)やっぱり否定的だったと思います。なんか怒鳴り声のような感じだったので。

(荻上チキ)なるほど。今回の行動をきっかけに、議会には「これから議論をしましょう」というような対応をするということなですけども、今後どういった格好で議論が進んでいくことを緒方さんは期待していますか?

(緒方夕佳)もちろん私も含めた形で活発な議論ができたらと。それに参加したいと思う人が参加して、自由に討議できるような場だといいと思っています。いまの熊本市議会の現状だと、3人以上の会派に所属していないと、議会運営委員会に入れないとか、そういうのがあって。1人会派だとなかなか意見を言いにくい面があるんですね。

(荻上チキ)ええ、ええ。

(緒方夕佳)私は1人会派なので、議会運営委員会とか議会の運営に関することを話し合う場ですとか、議会活性化検討会とか、そういうところで委員になれないという現状があるんですね。それよりももっと開かれたといいますか、もっと自由に討議ができるような場を期待しています。

(荻上チキ)なるほど。

<インタビュー音源おわり>

荻上チキ ニュース解説

(荻上チキ)というわけでですね、お話をうかがったんですけども。今回のお話の中で経緯として、いままでに何度も「子供を連れていきたい。議場に無理があったら託児という格好で進めたいんだけれども……」ということを市議会に言ってきたんだけども。それに対しては「自分でベビーシッターを雇って預けてきてください」というような対応だった。それはちょっと社会参画という観点から、制度を整えていくということを政治の方が先にやるということから外れているんじゃないか? という違和感を抱いていたと。他にもたとえば、「手続きで変えられるんじゃないか?」っていう批判をこのニュースに対していろいろと出てきたりしているんですけども……。

(南部広美)ええ、ええ。

(荻上チキ)いまのお話にも出てきたように、議会の運営委員会のメンバーになるのは3人以上の会派を作っていなくてはいけないんですけども。この方は1人で会派をしているということなので、そうした議会をどうしていきましょうっていう会議の場にも、そもそも入れない。だから、「赤ちゃんを連れて行ってもいいですか?」「ダメです」「じゃあ預け入れられるような体制を作れませんか?」「ダメです」ってなっていたので、今回はそういった体制ってどうなんだ?っていうことで子供を連れて行ったというようなことになっているようなんですね。今回の報道でいろいろと明らかになったことのひとつとして、そもそも市議会は規則で「議員以外の方はいかなる理由があっても議場に入ってはいけない」という、そうした規則があるみたいなんですね。

(南部広美)はい。

(荻上チキ)これを見た時に、赤ちゃんとか子供もそうですけども、たとえばいろいろと障害があって、しかし当選をしたという方がいた場合に、その介助の方とか。たとえば手話通訳の通訳士の方とか、そうした人のことも想定をされていないという。いろんなケースが想定されず、「(議会には)健常な方が来るんでしょう?」とか、あるいは「育児中の人は来ないでしょう?」とか。「子供を産め」と言っている一方で、「でも子供を産んだら来るな。休むなら議員になるな」とか言ったり。もう、すごいハードモードですよね。育児というものに求めるものというのが。

(南部広美)うんうん。

(荻上チキ)その中で、いろいろと世界では一枚岩ではなくて、いろんな国で議員さんにいろんな対応をしている。いろんな事例がある。国外にはいろんな先例があるっていうことを踏まえた上で、今回「赤ちゃんを連れて行く」という行動を取ったということになるわけですね。

女性議員は「子どもと一緒に議会に参加して発言できる仕組みを」

だから今回、お話を聞いていると議長の方は「じゃあ対応を考えていきましょう」っていう風に受けたようなので、具体的にどう進むのか?っていうことは問われてくると思うんですね。加えて、このニュースでいろんな反応がある中で、厳しい反応もあるわけですよ。たとえば手続き論とかもあれば、「他のところで預けられないのに、市議会議員が預けるなんて!」とか。そういったやり取りとかもネット上で書き込まれていて。

(南部広美)ええ。

(荻上チキ)でも、それをすると「うちも生きづらいんだから、そこも生きづらい状態を我慢しろ!」みたいな、そういった良くない適応競争みたいな格好になってしまうということもあるわけですよね。

(南部広美)たしかに。はい。

(荻上チキ)そういった意味では、いろんな職場を働きやすくする。そういった職場の働きやすさを考える議会の方が古い考え方だったり適応をなかなかしない状況だと、他のところが前に進まないよねっていう議論も一面ある。そういった声を当たり前のように聞いている状況って大事だったりするじゃないですか。だから、各市議会とか各自治体、国会とかも含めて、育児をする政治家の方にどういう風な対応を取っていくのか? あるいはより幅広く、より多様な議員がやってくることを想定して、どういうルールを作っていけばいいのか? とか。そうしたようなことがまだまだ不足しているということを浮き彫りにしたケースでしたね。というわけで今回は緒方議員と、あとその後ろでね、当事者であるご長男の方、お二人で出演していただきましたけども。

(南部広美)インタビューに答えていただいて。

(荻上チキ)はい。そういった様子などに耳を傾けながら、それぞれの地元の市議会とか、今後議会にどんな期待をするのかなど、いろいろと意見を発信することも重要だなと思いましたね。

<書き起こしおわり>
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