荻上チキ 日本相撲協会・池坊保子「モンゴル人は狩猟民族」発言を語る

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荻上チキさんがTBSラジオ『Session-22』の中で、日本相撲協会評議委員会の池坊保子議長が稽古総見で白鵬が見せた張り手について、「モンゴル人は狩猟民族だから……」という発言をしたことについて話していました。



(荻上チキ)さて、「まだ相撲の話、やってんのか」っていう風にニュースを見ると思うんですけども、それはさておき。相撲についてどうこう言うわけはないわけですよ。僕はただ、暴力事件だけなんとかしてほしいとか、そういったことを思ったりしているので。相撲協会の行方は相撲好きの方々に議論していただきたいなと思うんですけども。今日発売の週刊文春でね、相撲協会の評議委員会議長の池坊さんという方が……。

(南部広美)ああ、会見に出ていらっしゃった。

(荻上チキ)いらっしゃって。この方、昔は(衆議院)議員とかをやっていた方。文科副大臣もやっていたのかな? その方がいろいろとコメントをしているんですよ。今回の一連の騒動とか、あるいは貴乃花に対するコメントとか白鵬に対するコメントとか日馬富士に対するコメントとか、いろいろしているんだよね。で、まあそれはいいです。相撲の話は置いておいて、その稽古総見の時に白鵬が張り手をしたことが横綱らしくない。いや、どうなんだ?っていう論争があるみたいなんですが……。でも、それも置いておきましょう。

(南部広美)いろいろと置いておきますね。

(荻上チキ)すいません、すいません。で、その白鵬について触れた時に、こういう風にコメントをしていたのが僕のアンテナには触ったので、そこだけコメントをします。というのは、その張り手問題を巡って「ルールがあるんだから、そのルールがある以上、ガーガー言わないでいい」というような話をしたわけですね。池坊さんが。で、その後に、「白鵬はモンゴル人だ。モンゴル人は狩猟民族だから、勝ってもダメ押ししないと殺されてしまう。良い・悪いは別にしてDNAかもしれない」という風に発言をしていたんですね。

(南部広美)はい。

(荻上チキ)「はあ?」じゃないですか。

(南部広美)えっ、その……うん、ちょっとごめんなさい。

(荻上チキ)理解が追いつかないですよね?

(南部広美)うん。いまグルグルしています。

(荻上チキ)僕の中でいま、ちょっと「怒りんぼ田中」(TBSラジオ『爆笑問題カーボーイ内のコーナー)みたいな感じで……。

(南部広美)チキさん、ちょっと青筋ですか?

(荻上チキ)フフフ(笑)。いや、僕の中で「なんだ、そりゃ?」っていうポイントがあったので、そこだけ触れますけども。久しぶりに見ました。「○○人は狩猟民族で……」っていうような説明の仕方。昔からよく、「日本人は農耕民族だからおとなしくて」とか。あと、男女の違いを説明する時に「男が狩りに言って、女がその間に家を守っている時にいろいろやって。だから女性の方がコミュニケーションの雑談が多くて、男性の方は機能的な合理的な話が多いんだ」みたいなことを言う人がいるんですね。

(南部広美)うん、その説明ね、聞いたことがありますし。本にもなっていますよね。

(荻上チキ)なっています。で、これは根拠がないんですよ。根拠がないというか、いま、前提として「男と女の話し方が違う」という前提に立った上で、それを過去のそういった経験に根拠なく紐付けているだけなんですね。だって、いまからたとえば2000年前、3000年前。縄文時代とか弥生時代とか、その時代の会話、見たんか?っていう。

(南部広美)残っているんか?っていう。

前提に対して過去の経験を根拠なく紐付けている

(荻上チキ)見ていないでしょう? 「その時、こんな会話を男と女はし分けてました」みたいな根拠、ないじゃない? にもかかわらず、そんな説明をする人はいるんですけども。でも一方で、たとえば「日本人は農耕民族で……」とか、「○○は狩猟民族で……」みたいなことを言う人って後を絶たないんですよね。

(南部広美)うん。聞きますよね。

(荻上チキ)聞きます。で、「なにそれ?」って思うわけですよ。たとえば、「日本人が農耕民族だ」っていう根拠はなんなのか? だって西洋とかいろんな地域にいろんな農耕はありますよ。

(南部広美)うんうん。農耕だけじゃなくて、お魚を獲ったり、いろいろとあるじゃないですか。

(荻上チキ)そうですよ。この番組、『Session-22』の傑作選でじゃがいもの回をやりましたけども、じゃがいもはもう全世界に渡っているわけですけど、その歴史とかを踏まえて、やっぱりどの地域にもいろんな農耕のスタイルがあり、いろんな放牧のスタイルもあり、いろんな狩猟のスタイルなどなどもあるわけですね。なのになぜ、日本人は狩猟ではなく農耕民族で、たとえば○○は狩猟で……みたいな分け方をした上で、だからこういう風な行動になるんだ、みたいな一括りにする議論がいまだに生存しているのかがわからないわけ。

(南部広美)うーん……。

(荻上チキ)たとえば、日本人……まあいま、日本列島に人がいるのは、いろんなところからマンモスを追いかけたりしながら、辿り着いたわけじゃないですか。2万年ほど前に……という話をこの番組でやりましたよね? それは、(海が)凍っていた時に歩いてきた説もあれば、船で来たんじゃないか説もいま、海洋研究者の中ではあって。いろんな議論があるんだけども、でもそれは基本的に2万年ほど前。で、その時は農耕はしていないわけですよ。いわゆる「稲作だ」みたいな格好では、少なくとないわけですね。

(南部広美)うんうん。

(荻上チキ)で、その時の伝統とか「DNA」、文化みたいなものは言わずに、なぜ数千年前のあの時期の出来事をもって「我々日本人は農耕民族だ」と言い張って。でもいま、あなたは農家じゃないよね? じゃあ、あなたの祖先はどうだったのか? というようなことも紐解くこともなく、「日本人は農耕民族だ」というような語りにしてしまうのか? でも、大半の人が農業をやらなくなって久しいじゃないですか。その中で、2万年ぐらい前にマンモスとかを追っていた時代の話は忘れて、最近ここ数百年、農耕なんて全然やっていない自分の祖先の話は忘れて、数千年前とかちょっと前の時代のあの時期の話を持ってきて、「我々は農耕民族で、あの人たちは狩猟民族で……」みたいな、このピックアップの仕方と比較のタイミング。相手が狩猟民族だったのは、どこの時期のことを指すのか?

(南部広美)フフフ(笑)。雑だと。

(荻上チキ)ということも含めて、まだそんな話し方をする人がいるんだなという風に驚いた次第なんですよ。2018年になったんだよね?っていうことで、カレンダーを確認したくなるような話法でしたね。で、こういう農耕民族・狩猟民族みたいな分け方で、たとえば真っ当な研究者は「それによって性格が違う」みたいな説明はまずしないですよね? だって、「農耕民族ならこうで、狩猟民族ならこうで……」みたいな格好で説明できるなら、個性なんてないし。あるいはその民族性、国民性みたいなことをそれで説明できるのか? というと、そんなことはないですよ。地域差だっていろいろありますし。

(南部広美)そうですよ。うんうん。

(荻上チキ)いろんな国ごとにも、同じ○○民族といっても、それぞれの派閥がいろいろあったり、言語が違ったりっていうようなこともあったりするので。それでも、農耕民族って……その時に言う「民族」って何か?っていう。

(南部広美)大きな括りですね。

(荻上チキ)そしてその「民族」と「DNA」ってどんな関係があるんだ?

(南部広美)わからない(笑)。

(荻上チキ)民族っていわゆる文化的な慣習を共有しているグループのことであって、人種とはまた違うわけですし。じゃあ、人種がDNAで規定できるのか?っていうと、必ずしもそうではなくて。やっぱり社会的な線引きに基づくところがあるわけじゃないですか。といった時に、もうこれはNGワードだらけだなと。なんかそういう語り口がまだ残っているな。早くそういった文明論は滅びてほしいなと思っている今日このごろでございます。でも、たとえばいまでも日常会話の中で、ちょっとズレますけども、「右脳型・左脳型」とか言う人、いるじゃないですか。

(南部広美)ああー。私もなんか使っていたりするかもしれないなといま、話を聞きながら思っていますけども。

(荻上チキ)あと、「男脳と女脳」とか。

(南部広美)うんうん。まあ、言葉に出さないまでも、理解しようとする時に、自分の中でそういう風にフォルダー分けしているところがあるかもしれないなって。

(荻上チキ)それはね、そういった言葉を使って本人が理解するのは別に止めないですけども、ただそのフォルダー分けは雑だし、それを相手に当てはめてその人の評価……たとえば、なにかの査定につなげたりとか、雇用の場面でなにかを弾いたりとか。そうしたことをするのは、それは差別なので止めましょうねっていうことを世の中には言っていきます。

(南部広美)うんうん。

(荻上チキ)あるいは僕は反論しますよ。飲み会の場とかで言ったら。場の空気を乱したとしても、「いや、ねえ……」って。

(南部広美)ちゃんと修正すると。

(荻上チキ)うん。特にはじめて会った人がそう言ったら、より言いますね。よくないかもしれないけど……(笑)。

(南部広美)初対面で!?

(荻上チキ)身内だったらもうちょっと柔らかく言うかもしれないけど、二度と会わないかもしれないから、いま言わないと! みたいな。

(南部広美)うーん……。

(荻上チキ)あれって血液型診断とか星座みたいなもんで。

(南部広美)なんだろう? もう浸透しているというか、もうすっかりそれを、あんまり考えなしに、「B型だよね」「B型っぽいよね」とか、自分も言われたりするなと思いながら。

(荻上チキ)それはね、僕は本当にわからなくて。そのコミュニケーションをみなさんがいつ身につけたのかを知らないんですよ。

(南部広美)うーん、気がついた時から……。

(荻上チキ)だいたいたぶん小・中学生なんじゃないですか? おそらく。で、僕はその時に友達がいなかったので、人から「この血液型はどうだ」とかっていう話をそもそもされていないんですよ。

(南部広美)私は友達からもそうだけど、なんか雑誌とか……。

(荻上チキ)ああ、おまじないの本とか?

(南部広美)おまじないの本じゃないけど、なんか『小学○年生』とかの付録とかにあった気がする。そこで血液型のを知ったっていう。

(荻上チキ)なるほど。僕は『小学○年生』を読んでいない。僕はファミコン雑誌は読んでいました。

(南部広美)ああー、ここで文化の違いが分かれましたね。

(荻上チキ)しかも『ファミコン通信』じゃないんです。『ファミ通』じゃないです。『Theスーパーファミコン』っていう雑誌があって(笑)。


(南部広美)『ファミ通』は見たことがある。家の中に転がっているのを見たことがある。

(荻上チキ)ああ、弟のね。『Theスーパーファミコン』っていうものがあって、それが好きだったんですよ。でもそこには占いは載っていませんでしたが、「あなたはどのタイプのゲーマーか?」みたいなのは載っていましたね。

(南部広美)ああ、やっぱり分ける?

(荻上チキ)質問に答えていくと、「今月あなたが買うべきゲームはこれだ!」みたいな。フフフ(笑)。

(南部広美)それはどうだったんですか? それに対する当時のチキさんの反応は?

(荻上チキ)いや、鼻で笑いながらですけど、一応やりはしましたよ。

(南部広美)ああ、一応?

(荻上チキ)そのあみだくじみたいなので。たとえば「瞬発力よりも計画力の方が高いと思う。はい/いいえ」で「はい」を選んだら『信長の野望』を買って、「いいえ」だったら『熱血硬派くにおくん』を……みたいな。そういう雑なやつですね(笑)。

(南部広美)分類分けされる。

(荻上チキ)それぐらいならばシャレがあって、まあ「ハハッ!」っていう感じですけども。

(南部広美)うんうん。人に強制しないうちは、なんかまだ自分の中でしょうがないなって思ったりもするんですけども。

(荻上チキ)そうですね。だからなんとなく社会的な気持ちみたいなものに、そういった説明がたまたま使われて、ニセ科学として用いられて、ニセ科学がなにか差別やなにかの説明の根拠になるっていう、まあ循環論法ですよね。

(南部広美)そうですね。それがニセ科学だということを知らないと、使ってしまいますよね。

勉強不足なのは誰か?

(荻上チキ)そうですよね。でもそのインタビューの中で池坊さんは「貴乃花のことを別に個人的に批判したいわけじゃないけど、勉強をしてほしいんだ。勉強が足りない」みたいなことを言っていて。うん。少なくとも相撲の勉強については僕はなんとも言えないけども、この分野というか、民族とかDNAとかっていうところを軽く言うその勉強不足はなんなのか? で、そんな人がかつて政治をやっていたというね。ホラーだな!っていう風に思いますけども。まあ、そんなこんなで典型的な、一部の部分だけを取って、「我々は○○民族」と言い、その前後。マンモスハンターだったあの頃と、いまの我々のこの文明社会の間のあの時期の我々こそが民族性なんだみたいなことを線引きする権限が、なぜいまのあなたにあるのか? みたいなことを感じ入ったのでですね。まあちょっと触れながら、「そういうことを言うのは止めましょうね」と。

(南部広美)はい。ちょっと点検し直します。自分の中の。

(荻上チキ)自分の中のボキャブラリーを。そうじゃなくて、別の説明体系の方がたぶんいいと思いますよ。お互い、よりわかりますからね。

<書き起こしおわり>

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