荻上チキ 吉本興業・宮迫博之契約解消問題を語る

荻上チキ 吉本興業・宮迫博之解消問題を語る 荻上チキSession22

荻上チキさんが雨上がり決死隊の宮迫博之さんのマネジメント契約を吉本興業が解消した件についてトーク。吉本興業側の説明やそれを報じるメディア側の問題について話していました。
(※この放送は宮迫博之さん、田村亮さんの記者会見前に行われています)

(南部広美)吉本興業、闇営業の宮迫さんと契約解消。吉本興業はお笑いコンビ、雨上がり決死隊の宮迫博之さんについて今日付けでマネジメント契約を解消したと発表しました。宮迫さんは反社会的勢力が参加する会合に出席し、謝礼として100万円を受け取っていたことが明らかになり、吉本興業から謹慎処分を受けていました。また今日発売の写真週刊誌フライデーは3年前、福岡市で起きた金塊窃盗事件の主犯格とされる男と宮迫さんが事件後に飲食店で同席したとされる写真を新たに掲載しました。吉本興業は契約解消の理由について「諸般の事情を考慮し、今後のマネジメントの継続に重大な支障が生じた」と説明しています。

(荻上チキ)吉本興業の雨上がり決死隊、宮迫さんが今日付けでマネジメント契約を解消ということなんですが、これが「何なの?」っていうのが率直な印象です。「これ、なんでそうしたの?」っていう説明がされてないですよね?

(南部広美)「諸般の事情」っていう。

「諸般の事情」では説明になっていない

(荻上チキ)なに? 「諸般の事情」って? バカじゃないの? 企業が何かしらの問題を起こした場合って、その背景、プロセスについての説明と、それに対する対処策の説明と、それからそれを二度と起こさないようにするための再発防止の説明。この三つがポイントとして重要になるんですよ。でも吉本興業については一切、それがないんですね。そもそも闇営業そのものが問題なのか、それとも反社会的な集団と接点があったことが問題なのかってこれは別ですよね? 「闇営業」っていう言葉がなんとなく「闇」っていう言葉に引っ張られて、暴力団を相手にした営業かのように思われていますけども、これで「表営業」ではなく「闇の営業」であって。要は公式の企業を通したビジネスではなくて、そうではない勝手なビジネスをしていたっていう程度の意味じゃないですか。元々は。

(南部広美)「事務所を介さない」っていう風に理解してるんですけども。

(荻上チキ)そうですね。僕、ずっと気になってるんだけど、テレビとかで吉本の芸人さんとかがね、「昔は本当に時給何十円だった」とか言ってるじゃないですか。あれって、労働基準法の最低賃金とかを満たしていないよね? じゃあ、一体何をしてるの?っていうと、何かしたらの別の契約建てになっている。つまり、雇用関係ではないという。でも、「契約」と言ってもその契約書がないんですよね。

どうやら。吉本に関しては。全ての芸人さんについてないかどうか分かりませんけど、テレビでこの間、いろんなタレント、芸人の方で吉本所属の方から「そうした書類を交わしたことがない」という言質を複数の方が口にしているので。ということは、具体的な契約関係を結んでいるような対等な関係にはない、口約束である。そして一方で仕事を引っ張ってくることができる立場で、一方でそこに頼らなくてはなかなかあちこちに顔を出していくということは難しいというアンバランスな関係性にあって。普通、労使関係やあるいはフリーランスの契約というのは「対等で行う」というのが重要なんですけれども、どうもそこは対等ではないのではないか? というような前提があったりするわけですよね。

で、そうしたような状況というものが、今後も放置されたままだったりすると少なくとも闇営業っていうのは金銭的インセンティブがそこにある限りは、なくせないということになります。「直接雇用をして適切な給料を確保するから闇営業という形態を取らせないよにします」だったら、これは闇営業という点についてよく分かります。で、「そういう風にすることによって、具体的な営業先については会社がきっちりと責任を取って、社会的なコンプライアンスを発揮できる対象なのかどうかを調べます」というのであれば、これもまた一方で反社会的組織の人物と関係を持ったという点についての説明と応答と再発防止ということになりますよね。誰がどう考えても、こういったパッケージで応答文を出すという風に思うじゃないですか。(実際に吉本が出したものは)0点ですよね。

だからそういったような対応をしてるということも含めて、なんか「何も膿を出す気がない」という状況と、そしてこういった吉本興業の問題の法的な問題や人道的な問題や様々な契約上、あるいは今回の問題が一体何なのかよくわかんないけど、宮迫さんはいなくなるらしいよみたいな、そうした話しだけで終わらせてしまう。

これを芸能スキャンダルの問題として報じるのはダメ

つまり、これを「芸能スキャンダルの問題だ」という風に報じてしまったらダメなんですよ。これは「労働問題」であるし、あるいは「法律の問題」ですし、「人権の問題」ですよ。そうした問題をあたかも芸能スキャンダルの文脈でしか報じないというようなことをメディアがしてしまったら、それは報道としては失格ということになりますので。そのあたりについてもちゃんとね、取り扱ってほしいなと思います。

この間、芸能ニュース系のものが続いていて、しかしその背景には実はさまざまなハラスメントが絡んでるというものが続きますよね。それぞれのタレント事務所とか諸々と関係性が強いというところがいろいろとあると思うんですが、報道は報道なんで。それへの配慮はまた別だと思います。それとは別。情報とかバラエティーとかはまた別の論理かもしれないけど、報道は手加減しませんよというような、そうしたようなスタンスをどこも取ってほしいなという風に思いますね。

<書き起こしおわり>

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