宇多丸 D.Oの逮捕を語る

宇多丸 D.Oの逮捕を語る アフター6ジャンクション

宇多丸さんがTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中でラッパーのD.Oさんの二度目の逮捕について話していました。

THE CITY OF DOGG

(宇多丸)ちょっとすいませんね。こういう時に……あのね、またまたちょっと日本のヒップホップシーン、ラッパーで逮捕者が出たという報道がされました。逮捕されたのは先月のことらしいんですけど。D.Oくんという、結構テレビとかバラエティーとかでも活躍していて。非常にラッパーとしてもものすごくキャラが強くて。映画『TOKYO TRIBE』なんかにも出ていたりして。僕もすごい大好きなラッパーなんですけど。

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(宇内梨沙)はい。

(宇多丸)そのD.Oくんが大麻とコカインだからね、結構これは……まあ、持っていたということで逮捕されたということが報道された。しばらく時間はたっていたんですけども。でね、こういうことがあるたびに番組で……毎日やっている番組だから、僕も日本のヒップホップシーンで長くいますからもちろんD.Oくんも知り合いだし。っていうのでコメントをせざるを得ない立場的なことになりがちなんだけど。

(宇内梨沙)うん。

(宇多丸)はっきり言って「連帯責任」とかねえからっていうね。たとえば、ロックミュージシャンの誰かが逮捕されましたっていう時、ロックシーン全体で謝りますとかそんなこと、しないでしょう?

(宇内梨沙)そうですよね。

(宇多丸)関わっているミュージシャンが。それと同じで、まあ知り合いとか同じジャンルでがんばってきた身ではあるけど、まあいい大人が自分の責任でやったことで逮捕されたことなんで俺は正直、はっきり言ってそこは責任関係ないですからっていうのが本質なのね。で、まあそれがまずひとつ。だからいちいちコメントとかを今後は……特にD.Oくんは一応知り合いでもあるからコメントをしたけど。非常に残念です。というのは、アーティストとしての彼の活動が、これは彼は逮捕が二度目なので。その活動が結構長く止まっちゃうっていうので本当に僕はそれが残念だし悲しいし。「なにやってんだ!」っていう気持ちはすごいありますけども。

(宇内梨沙)ええ。

(宇多丸)と、同時に、これは一般論的に言うと、ヒップホップをやっている人って本当にいま、いろんな階層というか。日本ってやっぱりみなさんがさ、中流幻想を持っていた時代っていうのはとっくに終わっていて。いろんな階層がある。もちろん貧困層とかもあったりっていうのはもうみなさん、おわかりですよね。僕が始めた頃は「日本は中流ばかりだからラップするにしたって……」なんてよく言われていたけど、それがまず嘘だったわけだよね。当時だって貧困はあったし、階層もあったんだけど。

(宇内梨沙)うん。

(宇多丸)日本社会全体が見ないようにしていた時代。で、それが終わって、景気も悪くなって。で、僕とかは一応早稲田出で、金持ちとはいわないけどそこそこ大事に育てられてきたいい子もいれば、いまはそれこそちょっと危うい環境にいる子たち。一本間違えばというか、放っておけばそれこそ犯罪者予備軍だったりするような子たちにヒップホップという表現ツールが届いた時代なんですよ。なのでいままでだったらそういうたとえば詩的表現とかで身を立てようとか考えてもいなかったような子たちのもとに、そういう表現方法というツールが手に入ったから、ラップで結構そういう危うい環境というか、そういうことを歌う人たちも本当に増えてきて。っていうか、いまはそっちの方が主流なぐらいで。

(宇内梨沙)うんうん。

危うい環境の人々が手にした表現ツール

(宇多丸)で、それは基本的にはいいことなんです。言葉を持たなかった人たちが言葉を持ち始めているわけだから、とってもいいこと。なんだけど、やっぱりそういう環境にあるから、中には過ちというか、足を再び踏み外してしまう人もそれは確率論としては出てきうる。ということで、今後もひょっとしたらこういうことは起こりうるんだけど、だからといって「ほら見ろ、ラッパーはこんなやつらばっかりだ!」とか言って、ラップイコール……。

(宇内梨沙)全体をね。

(宇多丸)だからそこはもちろんさっき言ったように密接に関わっていたり、危うい環境にいる子たちがそういうツールを手にして表現をしているから、背中合わせではあるんだけど。そこでじゃあ、「ほら見ろ、ラップなんてろくなもんじゃない」とかいう順番で、彼らからそういうところまで奪ってしまったらもっともっとそっちに……たとえば犯罪に行きかねない子たちがもっとそっちに行くばっかりだったりして。というようなことがあるわけです。なので、まずひとつは俺は学級委員長じゃねえから。いちいちこういうことでもう謝ったりはしねえぞっていうことと……。

(宇内梨沙)はい。

(宇多丸)なんだけど、同時にアーティストとしては非常に残念に思っているということと、やっぱりそういう危うい環境にいる子たちがやっている表現という、その危うさも込みでのヒップホップという文化の意義でもありというあたりで。今後ももちろんこういうことが起こらないようには祈っていますが、起こったとしてもそういうところの子たちの言葉、表現としてのラップ・ヒップホップがあるということを。それがだから日本にも届いたというか。非常にアメリカで育まれた文化ですけど、それだから世界中に届いているということもあったりするので。

(宇内梨沙)うん。

(宇多丸)といったあたりでぜひ、この番組のリスナーのような方には様々なカルチャーの有様。それは正しくなさを含む場合もあるということも含め、ご理解いただければと思った次第です。

<書き起こしおわり>

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