高橋ヨシキ スタートレックの偉大な魅力を語る

高橋ヨシキ スタートレックの偉大な魅力を語る 宇多丸のウィークエンド・シャッフル

高橋ヨシキさんがTBSラジオ『タマフル』に出演。人気SFシリーズ『スタートレック』の歴史とその魅力について、宇多丸さんに語っていました。

(宇多丸)本日は、スタートレック特集ということで。

(高橋ヨシキ)そうですね。はい。前回、バーニングマン特集ですけども、スタートレックとかって、まあスターウォーズもそうなんですけど、共通言語なんですよね。だから僕、バーニングマンとか行っても、隣のキャンプの奴とか別のところの人とかとスタートレックですぐに仲良くなったりってこと、いっぱいあります。

(宇多丸)世界中の人と話をするだけで通じてしまうと。

(高橋ヨシキ)そうですね。そういう意味でも、共通言語だと思います。

(宇多丸)とは言えですね、通常、この2015年はですね、世の中的にはまあ、スターウォーズイヤー、スターウォーズイヤーと言われております。そんな中ですね、あえて今夜、スタートレック特集だと。しかも別に、映画のシリーズが、新作が公開されるとかそんなタイミングでもなく。

(高橋ヨシキ)そうですね。はい。

(宇多丸)あえていま、なぜスタートレック特集?

(高橋ヨシキ)あえていまっていうかね、ここ数年だからスタートレック、宇宙大作戦から始まって、Blu-rayが出てるんですけども。Blu-rayが出始めて。それがちょっと前にネクストジェネレーション、新スタートレックというのがBlu-rayが出終わったんですよ。

(宇多丸)ああ、ずっとシリーズが出続けていて、まだ終わってなかったんですね。

(高橋ヨシキ)そう。それが、まあ僕が見終わったっていうね、タイミングで。

(宇多丸)そういうタイミング(笑)。俺が見終わったタイミング(笑)。

(高橋ヨシキ)いやいや、その、昔テレビでやっていたのをちょくちょく見ていたんですけども。やっぱり通して全部見ると、あらためてすごいな!と思ったのと。で、僕、だから前にもここに出た時にお話したんですけども、ネクストジェネレーションまでにしておこうかな?って思っていたんですけども。

(宇多丸)自分でこう、ラインを。そうしないとキリがないからっておっしゃってましたけども。

(高橋ヨシキ)その途中で、いろんな人でスタートレック好きな人とお会いして、お話して。『ネクストジェネレーション、超いいですね!』って言うと、みんながね、『ボイジャー見ろ!』とかね、『ディープ・スペース・ナインもいいぞ!』とか言うんですよ。で、それぞれ好きなものがすごいあるんで。じゃあ、ちょっと見ないとダメなんじゃないの?っていうので、結局もう見始めてますね。

(宇多丸)見始めて。いま、そっちに踏み込んで、まだ継続中ということで。

(高橋ヨシキ)そうです。今日の家でボイジャーとかね、4エピソードくらい見てから来ました。

(宇多丸)ヨシキさん、忙しいのに。大変じゃないですか?それ全部見るのって?

(高橋ヨシキ)でもね、楽しいんですよね。本当に。はい。

(宇多丸)やっぱり、どんどんハマっていってしまう。

(高橋ヨシキ)どんどんハマっていってしまうということです。はい。

(宇多丸)で、ですね。まあスタートレック。とは言えそのね、詳しい方とお話してっていうけど、やっぱりちょっと、どうもスタートレック、敷居が高いというイメージがね、どうしてもあります。

(高橋ヨシキ)みんなあると思うし、僕も昔はあったんですけど。たぶんそれ、思っているのはハマってない人なんですよね。だから、つまりそこに排他性みたいなものっていうは、トレッキーの人は本当はないと思いますね。もし、それがあるとしたら、僕はそれはスタートレック精神に反しているのではないかと。

(宇多丸)なるほど。作品世界をちゃんと理解して愛していれば、そんな態度は取らないはずだと。

(高橋ヨシキ)そんな態度は取らないはず。まあね、細かい言い争いとかはね、あると思いますよ・・・

(宇多丸)細かい言い争い(笑)。

(高橋ヨシキ)内部では、中ではね。まあね、テクノロジーの話とかね、いろいろまあ、それは細かい遊びで。

(宇多丸)まあ、楽しくやっている中での範囲だけども。

(高橋ヨシキ)それはオタク的な楽しみなんで。それはそれとして、なんだろう?初めていまから見よう!っていう人に、『うちの領土に入ってくるんじゃねーよ!』みたいなことを言う奴は、スタートレックファンにはいないと僕は信じてますね。はい。絶対いないと思います。

(宇多丸)なるほど。なので、そんなに怖がることはないですよという部分と。で、ですね、まずじゃあちょっと、スタートレックとは?というね。まあ聞いてらっしゃる方で、そんなに詳しくない方ね、多いと思いますんで。本当にざっくりとした作品概要を紹介させていただきたいと思います。

(高橋ヨシキ)まあ、ざっくり言うとですね、スタートレックというのはジーン・ロッデンベリーというテレビのプロデューサーですね。この人が作り出した『宇宙大作戦』というシリーズが1966年にありまして。これはあの、ネットワークじゃなくて、シンジケートっていうのかな?独立局っていうか、ネットワークじゃないんですよ。で、放映されたんですが、非常な人気を博しまして。

(宇多丸)最初はそんなに広い規模で見られるテレビじゃなかった?

(高橋ヨシキ)じゃなかったんですね。それで、第一シーズンでしかも打ち切りになりそうになったんですけども。

(宇多丸)ああ、そうなんですか。じゃあ、視聴率的なことは、ふるわなかった。

(高橋ヨシキ)ふるわなかった。だけどもその時に、ちょっとファンとSF作家が結託したような形で、非常にマッチポンプ的に抗議の手紙をテレビ局に散々送りつけてですね。だからファンとSF作家たちの力で第二シーズンの制作が決まったというような経緯がある。『このようなシリーズをここで終わらせるのは、あまりにも損失だ』と。

(宇多丸)損失であると。ほー。

(高橋ヨシキ)そういう考えがあったんですね。で、その宇宙大作戦っていうのは、この『トレック(Trek)』っていうのは『幌馬車隊』とかのことを考えてもらうと。だいたいトレックっていうのはそういうことなんですけども。トレッキングの語源ですよね。なんですけど、要はエンタープライズ号っていうのは5年間の探索飛行に出かけると。宇宙にはまだまだ未知の領域があると。で、その行く先々でいろんなトラブルに出会ったり、宇宙人に出会ったり、新しい文明に出会ったりして冒険をするという。まあ5年計画なんですけども。

(宇多丸)うん、うん。

(高橋ヨシキ)それをやっているというのが宇宙大作戦。まあ、ざっくり言えばそういうことですよね。

(宇多丸)はい、はい。

(高橋ヨシキ)で、このエンタープライズ号という宇宙船もですね、非常にオリジナルなデザインで有名になりましたし。で、また当時のテレビドラマとか考えると、本当に信じられないような急進的なことをいくらでもやっていた番組で。

(宇多丸)1966年って言ったら、SFって言ったってね、『2001年宇宙の旅』よりもぜんぜん前ですし。だから、基準としてはもうちょっと子ども向けというようなイメージが強い?

(高橋ヨシキ)ええと、この時、逆に人気のあったテレビ番組は『宇宙家族ロビンソン』ですね。まあ、そういうノリだったんですけど。宇宙家族ロビンソンが実はスタートレックのパクリではないか疑惑っていう噂もちょっとあるんですが。まあ、その話は置いといて。

(宇多丸)はいはいはい(笑)。

(高橋ヨシキ)でも、まあその宇宙大作戦は特撮丸出し、あと、すごく大人向けのドラマということがあって。で、錚々たる面々が脚本を書いてるんですよね。

(宇多丸)その当時からですか。最初の・・・

(高橋ヨシキ)最初のシリーズからですね。たとえば書いている人としては、リチャード・マシスンがそうですよね。それから、ロバート・ブロック、シオドア・スタージョン、それからフレデリック・ブラウンですね。それからまあ、うるさ型で知られるハーラン・エリスンとかですね、こういうすごいSF作家たちが書いていて。まあ、それぞれエピソードの完成度が非常に高いということもありますし。

(宇多丸)はい。

(高橋ヨシキ)あと、スタートレックは番組をやった時にすごく問題というか、衝撃だったのは、メインのクルーっていうのは艦橋っていうかブリッジにいるんですけど、その中の重要な役でですね、ウフーラさんという。日本語訳だとウーラって言いますけども。という、黒人の女性が士官でいるんですね。

(宇多丸)ええ、ええ。

(高橋ヨシキ)で、これは当時はですね、女の人がそもそも秘書の役とか、あと召使の役でしか出てこないご時世。あと、奥さんとかね。そういう役でしか出てこないご時世に、それっていうのはちょっと信じられないことなんですよ。

(宇多丸)なるほど。いま、普通に思っちゃっていることも、当時からするとすごい進歩的なキャスティングというか。

(高橋ヨシキ)そうなんですよ。しかもそれは最初にパイロット版を作った時にはジーン・ロッデンベリーは副官を女にしようと思っていたんですけども。で、それで実際に撮影されて、撮られてるんですけども。それはテレビ局が却下しろって言ってきて。

(宇多丸)そこまで偉くするのはちょっと抵抗が・・・

(高橋ヨシキ)すごい抵抗があったんですね。でも、それはねじ込んだと。つまり23世紀にもなって、そんな男女間の差別とか残っているわけがないんだ!と。そういう未来像なんですね。そういうところが本当にすごいのと、それからミスター・スポックってご存知ですよね?

(宇多丸)はい。耳がとがって。

(高橋ヨシキ)バルカン人ですけども。ミスター・スポックはですね、いちばん最初、顔色、あの人ちょっと黄色がかったような色なんですけども。

(宇多丸)ちょっと東洋人的なイメージかな?って。

(高橋ヨシキ)おかっぱで耳がとんがっていて。で、あれ、最初の設定だと顔、真っ赤に塗る予定だったんですね。

(宇多丸)耳がとがっていて、顔が真っ赤でってことは、これは?

(高橋ヨシキ)悪魔ですよね。

(宇多丸)いわゆる西洋で言う悪魔のまあ、割とわかりやすいイメージされるところをそのままやろうとしていた?

(高橋ヨシキ)そうですね。たぶんあの、アーサー・C・クラークの『幼年期の終わり』とかね、そういうのを意識していたのかもしれないですけども。そうしようとしていたと。これのたぶん根底にあるのはですね、ロッデンベリーさんというクリエーターですね。彼はあの、ものすごく積極的に無神論者なんですね。

(宇多丸)なるほど。

(高橋ヨシキ)で、宗教は害悪の素だと。

(宇多丸)それを見て、悪魔だ!って言ってるけど、これはぜんぜん悪魔なんかじゃないよと。

(高橋ヨシキ)じゃなくて、ただの知能の進んだどっかの星の人ですよっていう。

(宇多丸)で、見た目がその地球人の考える、っていうかキリスト教圏の人の考える悪魔っぽいからっていって、お前らよりぜんぜん進んでいるし、理知的だし・・・

(高橋ヨシキ)そうそうそう。

(宇多丸)っていうような。うんうん。

(高橋ヨシキ)ことをやろうとして。それもテレビ局に、ちょっと赤い顔は・・・って言われて、それは直しました。

(宇多丸)まあ、たしかにそれをやると、その皮肉のところが先に立ちすぎちゃってって気もしなくもないけど。だからこれぐらいでいい気もしますけどね。

(高橋ヨシキ)まあ、それはあったかもしれないですけどね。

(宇多丸)まあ、そんぐらい、意図としてはそういうのがあったと。

(高橋ヨシキ)そうですね。はい。で、まあスタートレックシリーズ、宇宙大作戦でもですね、やっぱりその、神のようなものが出てくるんですね。神のようになってしまった知性体とかですね、ものすごい進化して、ものすごいパワーを持っている生命体っていうのが何度も出てくるんですけども。かならずそれはその、そういう神的なものではないということがわかるというね、ことになっていて。そこも興味深いところ。

(宇多丸)ものすげーはものすげーけど、超常的な存在とかじゃあ別にねーよと。

(高橋ヨシキ)そうなんですね。だから宇宙にはどんな生き物がいて、どんな進化を遂げているかわからないので、ものによってはすごく神のように見えるかもしれないが、それはその、あなたたちが言っている宗教のそれとは違いますよね?っていうことは言ってますよね。

(宇多丸)じゃあもう徹底して、そういうだから理性主義というか知性主義というか、というところなんですね。

(高橋ヨシキ)そうですね。あの、スタートレックは非常に科学を重んじる世界観ですよね。だからね、僕、最近ちょっと・・・スタートレックって僕も本当にそういった意味では、にわかなんですけども。なんかいろんなものを見ているとね、『これ、スタートレックじゃん?』って思っちゃうようなことがいっぱいあってですね。

(宇多丸)ほうほうほう。

(高橋ヨシキ)たとえば最近、僕は『ベイマックス』を見たんですけど。ベイマックス見ていたら、僕、お兄さんと大学に行くシーンがあったでしょ?あそこがすごく素晴らしいと思ったのは、あれはつまり、科学の研究をしている現場っていうのは楽しいんだ!っていうメッセージを子どもに伝えているわけですよね。

(宇多丸)ああ、なるほど、なるほど。

(高橋ヨシキ)そんなことをやるものが、日本にありますか?なんか。僕、ないなと思って。で、それがね、どれだけあれを見た子どもたちがそういことをやりたがるか?って。で、スタートレックは実はそういう影響を非常に及ぼしていて。宇宙大作戦を見たからNASAに入ったとか、科学者になったとかいう人がゴマンといるんですよ。

(宇多丸)ああー。

(高橋ヨシキ)だからそういう、すごくいい影響を与えているんですよね。

(宇多丸)しかもぜんぜん、なんていうか素っ頓狂なテクノロジーのことを扱っているわけじゃないから、なんか頑張ればイケる感じがするテクノロジーっていうか。

(高橋ヨシキ)そうですね。で、まあテクノロジーだけじゃなくて、そもそも、こんなに広大な宇宙が目の前にあって、こんな神秘的に面白いものがあったら、探求したい!と思うのが当たり前だっていう当然のことに気づかせてくれるシリーズだったということです。

(宇多丸)なるほど、なるほど。そのベイマックスの話、いいですね。なるほどね、たしかにね。

(高橋ヨシキ)うん。あれ、本当にそう思いましたね。僕はだからそこだけ見ていても、ちょっと涙が出るぐらい良くて。後半はどうでもよかったんですよ。はい(笑)。

(宇多丸)まあまあ、いいじゃないですか。後半それで活躍するんだから!そこありきでね、子どももワクワクするんだから、いいじゃないですか(笑)。

(高橋ヨシキ)はい、すいませんでした。

(宇多丸)あとクルーの、さっき言った人種構成で言うと、東洋人っていうか日系が入っているとかもそうじゃないですか。

(高橋ヨシキ)そうですね。だからこれ、66年ですけど。っていうことは20年後ですよ。戦後。戦後20年後で、20年前に大戦を戦っていた相手の日系人がやっぱりメインのクルーでいるわけですよね。

(高橋ヨシキ)これ、1966年はしかも冷戦の真っ只中なんですけども。第二シーズンからはチェコフという、今度はロシア系がですね、ブリッジに入ってきます。

(宇多丸)おおー。

(高橋ヨシキ)で、これがロシア訛りでモスクワの話とかをするんですよ。なんだけど、それってちょっとすごいことで。たとえば、いま日本でヒーローものをやる時に、とにかくだから中国人とか韓国人の人がメインのクルーでいて、その人たちがいちばん活躍するみたいなものを作っているような、とかね。たとえばだからウクライナのドラマにロシアの人が出てくるとか、そんな感じですよね。

(宇多丸)そっか。そっか。まさに敵対している最中ですもんね。

(高橋ヨシキ)最中なんですよ。最中だけど、それは23世紀にはないはずだっていう確信があるから。だからその、いまの状況の話をしてるわけじゃないですよ。そういう、なんだろう?対立はいずれ乗り越えられるはずだっていうビジョンを示したっていうことなの。

(宇多丸)でも、そうやって見るだけで、まあ、スタートレックでもやっていたし、できないことはないはずだって思えてくるもんね。

(高橋ヨシキ)そうそう。でね、今日これはね、いろんなところからそういうことを言われるのは覚悟して来てますけど。たとえば、こういうことを言うと、『理想論だ』とかね、『頭の中、お花畑だ』とか言う人がいますけど。僕は今回、スタートレックの話をするにあたっていちばん重要だと思っているのは、『理想論っていうのは非常に大事だ』っていう話をしようと思って来たの。

(宇多丸)これはすごいなー。ヨシキさんがね、『暗黒映画評論』って本を出している人が、これを言うっていうことですね。

(高橋ヨシキ)いやいや、それぐらい状況が逼迫しているっていうこともあるんですけども。だって、なんでもいいですよ。たとえば人権にしたって、そうじゃない人種の平等にしたって。なんでもいいですけど、どんなことだって理想論があったから・・・

(宇多丸)最初の理念とか。

(高橋ヨシキ)が、あって。何百年かかったかもしれないけれど、なんとかやってきたんじゃないかっていうことを思っていて。で、それを普遍して考えると、スタートレックがたとえばやっていることを見て、『こんなのは理想主義者でちゃんちゃらおかしい。現実じゃああり得ない』って言っている人間は、先についてのビジョンがないだけだっていうことを言えるんじゃないか?と。

(宇多丸)こういう方に人間進化して行こうよっていうビジョンを提示することがなけれ・・・

(高橋ヨシキ)どっちにも行かないじゃん。それ。そうすると、俺の好きな『マッドマックス』の世界になって終わっちゃうじゃないですか。

(宇多丸)それはそれで(笑)。

(高橋ヨシキ)それはそれで楽しそうだなって(笑)。

(宇多丸)(笑)。マッドマックスもそう簡単にはいかないからね!

(高橋ヨシキ)まあ、そうですね。

(宇多丸)あそこまで行けばいいんだけど、っていうね。

(高橋ヨシキ)あ、ちなみにスタートレックは、人類がまっすぐ進化していってそうなったっていう話じゃあぜんぜんないんですよ。スタートレックのこの宇宙の世界観っていうのは歴史があるんですけれども。90年代ぐらいのとんでもない戦争が勃発して、それが2100年ぐらいかな?ちょっと僕も年代わかんないですけども。

(宇多丸)劇中のその歴史観の中で。

(高橋ヨシキ)中で、ずっと戦争があって。しかも、その途中で宇多丸さんも映画でご覧になっていると思うんですけど、『ファーストコンタクト』っていう時にワープドライブっていうのを発明して、初めて宇宙人と接触することがあって。しかも、その後さらに最終戦争っていうのが起きてるの。だから、とんでもないことを散々乗り越えて、でも、ちゃんといいところにまた来るだけの力があるっていう、そのなんて言うのかな?人類への信頼感ですよね。

(宇多丸)ああー。

(高橋ヨシキ)そういうことだと思ってますけども。

(宇多丸)それをその、最初のシリーズを立ち上げたプロデューサーのジーン・ロッデンベリーは、結構意図的に1966年スタートしている時点で、それこそテレビ局とかの反対がある中で押し切るぐらい明快にそこを意図的に?

(高橋ヨシキ)やっているっていうことですよね。

(宇多丸)提示したと。はい。というようなシリーズでございます。

(高橋ヨシキ)そうそう。だからね、宇宙大作戦では、アメリカのテレビで初めて、白人と黒人がキスした場面もあります。

(宇多丸)おおー、異人種恋愛というか。それだって当時はね、立派なタブーですよ。

(高橋ヨシキ)どうなの?って言われることだけども、まあ、普通にやりきったと。

(宇多丸)それはやっぱりテレビでやった時とかは反響はやっぱりその、あったりはしたんですよね?きっとね。

(高橋ヨシキ)あったけど、みんな『よくやった!』っていう人も多かったと思いますね。で、こういうことを言っていると、またスタートレックって説教臭いのかな?って思う人もいるかもしれないですけど。そんなことないですよ。全部エンターテイメントですよ。めちゃくちゃ。に、僕がちょっと説明を。それは個々のエピソードの話をすれば、もう面白いことだらけなんで。

(宇多丸)なるほど。これ、ちょっと面白い話はこっから先もうかがえると。

(高橋ヨシキ)もちろん、いっぱいあります。はい。

(宇多丸)ということで、お知らせの後、シリーズがどのように進化していったのか?を含め、ヨシキさんに解説していただきます。

(CM明け)

(宇多丸)今夜は『我々が目指すべき未来はここにある!今だからこそ、「スタートレック」の偉大さについて語ろうじゃないか!特集』をお送りしております。ゲストは映画ライター、デザイナーの高橋ヨシキさんです。引き続き、よろしくお願いします。

(高橋ヨシキ)よろしくお願いします。

(宇多丸)ヨシキさん、さっそくなんですが、メールが来ておりましてですね。(メールを読む)『普段、この番組は聞いてないんですが、今日はスタートレックを取り上げると聞いて、思わずメールしました。スタートレックの魅力はSFでありながら現実世界の縮図のようはリアリティーのある世界が描かれているところにあると思います。惑星連邦、ロミュラン、クリンゴン、果てはボーグに至るまで、各々の種族独自の正論同士がぶつかり合うところから起こるいがみ合いは、まさに異文化、異社会同士の付き合いで、紛争・諍いの絶えない現代社会にも通じるところがあります。自分の正論は相手の異論。そんな正義と正義のぶつかり合いがスタートレックの魅力であり、僕の大好きなところです。ちなみに、いちばん好きなセリフは「オブライエン、転送」。これです』ということで。

(高橋ヨシキ)素晴らしい。

(宇多丸)(笑)

(高橋ヨシキ)そうですね。おっしゃる通りだと思いますね。で、いまのお話っていうかですね、要は惑星連邦以外に、惑星連邦の中にもいろいろな宇宙人がいるんですけども。まあ、いろんな宇宙域にいろんな宇宙人がいるわけですけども。特に宇宙大作戦とかネクストジェネレーションというようなね、新スタートレックですね。とかでも見られるんですけども、あのね、たとえばフェレンギ人。

(宇多丸)フェレンギ人?

(高橋ヨシキ)フェレンギ人っていうのがいるんですけども。フェレンギ人っていうのは、金儲けが大好きな種族で。金儲けを宗教のように崇めていると言ってもいいんですけども。で、とにかくがめついし、お金儲けのためならどんな卑怯でもするような種族なんですが、全員がそうではぜんぜんないんですね。

(宇多丸)種族としての特徴はこうこうっていうのは打ち出しているけども、そうじゃないっていうのも見せたりすると。

(高橋ヨシキ)するんですよ。それはどんな種族についても言えて。あとすごいのは、だから宇宙大作戦の時はいま話に出たクリンゴンっていうのがいます。

(宇多丸)最初はね、ちょっと悪役じゃないけれども。

(高橋ヨシキ)クリンゴンっていうのは獰猛というかね、非常に勇猛果敢で。で、まあ暴れん坊の種族なんですけども。これ、だから新スタートレックが始まった時にみんなびっくりしたのは、クリンゴンがクルーに入っていたんですね。

(宇多丸)うん、うん。

(高橋ヨシキ)だからその間に惑星連邦と和平条約が結ばれてっていうことなんですけども。でも、いまに緊張状態にはあると。まあそういう話がいっぱいあってですね。でもこれは、本当にその個々のキャラクターでやっているんで、そういう俯瞰した歴史みたいな感じっていうのは後からだんだんじわじわくるんで。見てる時は、『この人、どうなっちゃうんだろう?』っていう感じで見ていると思っていただければいいと思うんですね。

(宇多丸)なるほど。ねえ。だっていまの映画のシリーズだと、まだクリンゴン、話なかなか通じねー!みたいなさ。まだ、怖っ!っていう風に扱われているけど。あれが、いずれはあのデッキにいるような人になるって考えると、すげー進歩だって言うね。

(高橋ヨシキ)すっごい進歩ですね。だからコミュニケーションによって問題を解決することもできれば、できないこともあるっていうのも両方やっていますね。

(宇多丸)ああ。じゃあ別にその、毎回毎回そんなに上手くいくばかりでもないと。

(高橋ヨシキ)まあ、なかなか本当に上手くいかないこともいっぱいありますね。で、まあコミュニケーションの話で言えば、たとえば僕が今日着ているこれね、『Darmok and Jalad at Tanagra』って書いていあるんですけども。これ、日本語訳だと『タナグラのダーモックとジラード』というんですけども。

(宇多丸)ええ。訳されても全くわかりません。

(高橋ヨシキ)全くわからないですよね。っていうことを口走る宇宙人と惑星で、新宇宙大作戦のピカード艦長がですね、取り残されて。で、お互いに戦えばいいのか、なにをしていいのかもわからないのに。で、なんか文法とかはわかるんですよ。

(宇多丸)うんうん。だから言葉として、まあその単語っていうか、それはわかるんだけども。でも、なにを言ってるかはわからない。

(高橋ヨシキ)それとどうやってコミュニケーションを取ればいいのか?っていう、まあ非常に面白い話があってですね。

(宇多丸)はいはいはい。異なるもの同士が閉じ込められてって、昔からある形じゃないですか。

(高橋ヨシキ)うん。これ、でもね、言っちゃうとネタバレになっちゃうんで、本当はあんまり言いたくないんですけども。

(宇多丸)でも、その言葉を最初に言っちゃってるから(笑)。

(高橋ヨシキ)実はその種族は、タマリアン星人っていうのは、神話とかにたとえてでしか話ができないの。だから、このタナグラという場所でダーモックとジラードという彼らの祖先がそこで共同して怪物を倒したという神話があって。つまり、我々はここで共同して同じ怪物を倒さなければいけないということを伝えるために、たとえ話を使っていたと。

(宇多丸)最初から、『こいつ、なに言ってるんだ?さっぱりわかんねーよ!』って思っていたその瞬間から、向こうは『協力しようよ』って。

(高橋ヨシキ)って言ってたっていう話なんですよね。最終的にそれで、その後ピカード艦長が彼にどうやって話せばいいかわかったので、地球ではギルガメッシュ神話っていうのがあるので。こういう英雄がいて、こうなんだみたいな話をしたら、それはすぐ聞くわけですよ。で、ちなみにその放映がアメリカで終わった直後に、それまで誰も見向きもしなかったギルガメッシュ神話の講座に生徒が殺到したという。

(宇多丸)ああ、なるほど(笑)。そういう影響もある。でも、ええ話や!っていうか、よくそんなこと考えるな!っていうね。

(高橋ヨシキ)ねえ。よくそんなこと考えるな!っていう話が、まあこのネクストジェネレーションで言えば178話あるんですけども。もう、てんこ盛りですね。

(宇多丸)178話もあるという。

(高橋ヨシキ)そうです。7シーズンあるんで、本当に長いですよね。

(宇多丸)なるほど。はい。あと、まあたとえばさ、さっきのメールで言うと、敵というか、話なかなか通じない系でいうと、果てはボーグに至るまで・・・

(高橋ヨシキ)そうですね。ボーグ。

(宇多丸)ボーグ。これ、結構大変な?

(高橋ヨシキ)ボーグはね、超大変です。これはあの、機械生命体なんですけど。ボーグというのはですね、いっぱい人数がいるんですけども、意識はひとつなんですね。つまり、集合意識みたいなのがいるんですけども。これが要は自分たちと同化するか、あるいは殺すかっていう二択なんですね。で、交渉は一切通じないと。

(宇多丸)うん、うん。

(高橋ヨシキ)で、そのピカード艦長っていうのも1回誘拐されてボーグの一員にされてしまってですね。で、その後戻るんですけど、それが彼のトラウマとして苦しめるんですが。ところがその後ですね・・・

(宇多丸)いちばんだってこんなの、原理的に話が通じない・・・

(高橋ヨシキ)原理的に話が通じないんですよ。ところが、その1体を、ボーグは通信みたいなもので頭で話しているので。1体はぐれボーグみたいなのを見つけてですね、それとコミュニケーションをしようとしていたら、最初のうちはボーグの意識と切り離されたことに不安を覚えているんですが、徐々に自我というものが彼の中で芽生えて来るんですね。

(宇多丸)ほうほうほう。

(高橋ヨシキ)で、これをどうしようか?っつって。『この中にウィルスを仕込んであいつらのところに帰せば全員殺せるんじゃないか?』とか言うんだけれども、それをしなくてもいいから、とりあえず戻してみようっつって。なんでかって言うと、彼にはもう自我が芽生えたってことは、それは知性のある生命体として扱うべきだから、殺すっていうのは人道にもとると。

(宇多丸)ああー。

(高橋ヨシキ)それで、そのまま帰すんですね。で、そのまま帰したら、その自我が芽生えたボーグが1人帰ったことによって、他のボーグに自我が芽生えるような状況が生まれて、ボーグ自体が分裂してしまうというようなことになったりとかですね。あの、いろいろ・・・つまりそれはだから、あれですよね。たぶんすごく洗脳されている国家みたいなところに、違う考えっていうか、個っていう考え方を入れてしまったが最後、そういうことが起きてしまうとかね。

(宇多丸)なるほど、なるほど。

(高橋ヨシキ)まあ、それの逆のことをいまやろうとしている人がいっぱいて、イライラしてますけどね。

(宇多丸)うーん、まあ、ね・・・そうね。でも、すごい示唆に富んだ話というか。でも、ボーグぐらいにもなるとさ、そう簡単に、オールOK!とかじゃなくて、まあここに、かすかな希望があるかな?ぐらいの感じになっているバランスがまた。

(高橋ヨシキ)そうですね。で、まあそのさっきから、ネクストジェネレーションの時はそれぐらいだったんですよ。で、その後、ディープ・スペース・ナインっていうのがあって。

(宇多丸)これ、時代的に言うと?

(高橋ヨシキ)時代的に言うと、ディープ・スペース・ナインはネクストジェネレーションとボイジャーはだいたい同時代で。

(宇多丸)同時代の、別の場所の話?

(高橋ヨシキ)そうですね。ネクストジェネレーションの終わりぐらいから、ディープ・スペース・ナインが始まって。これはシリーズも同時に放映してたんですけども。で、その後からボイジャーも始まるんですけども。まあ、それもだいたい同じ時代です。だからこの3つは同じ・・・だからディープ・スペース・ナインとボイジャーはネクストジェネレーションから派生した番組だということが言えるんですけども。

(宇多丸)うんうん。

(高橋ヨシキ)そのボイジャーっていうのの第三シーズンの終わりになるとですね、実はちょっと1人ボーグがメインのキャラクターとして入ってくると。だから、それは結構かかりましたけれども、やはりクリンゴン的な意味でですね。そこもまあ、いろいろ一悶着あるんですけども。そういうこともあると。

(宇多丸)なるほど。そういう乗り越えのあれもあったりすると。

(高橋ヨシキ)そうですね。それとあと、SF的なガジェットとかも面白いことがいっぱいあってですね。それこそ、スタートレックと言えば転送が有名ですけども。惑星に降りるのに、いちいちシャトルで行かないで、伝送器みたいなもので送ってアップされてくるとかいうのもあるし。それから、宇宙船に張るシールドですね。目に見えないシールドがあるっていう。これはだからスターウォーズの1作目でシールドがどういう言ってるって明らかにスタートレックから来てるんではないか?と僕は思ってますけども。

(宇多丸)うんうん。

(高橋ヨシキ)とか、他にもいろんなテクノロジーがあって。それで、他にも出てくるものでも、いま見ると『これ、iPadじゃねーか?』とか『Bluetoothじゃねーか?』見たいな。そういう、いま実現しているテクノロジーでスタートレックの世界では、ぜんぜんそんなものなかった時に描写されてたものがあるっていうのは、まあSF作品は折々そういうことはありますよね。そういうのがいっぱいあると。

(宇多丸)じゃあその、SF小説とか一部のマニアが読むというものではなくて、広くみんなが見るようなテレビドラマで普通にやっていたという。

(高橋ヨシキ)そうなんですよ。で、これ、スタートレックいまでもアメリカとか行ったら、どこでもだいたい見られると思いますけども。宇宙大作戦から、めちゃくちゃ再放送されているんで。で、宇宙大作戦っていうのは本当、3シーズンしかなくて。で、60年代に終わってしまってから、なんで70年代、80年代に人気があったか?っていうと、いつでもテレビでやっているからなんですね。

(宇多丸)あー、はいはい。

(高橋ヨシキ)で、ネクストジェネレーションも本当に繰り返し放映されてますけども。それがどれだけ人の意識を変えるか?っていうことは、僕は割と強調してもし足りないと思ったですね。

(宇多丸)なるほど、なるほど。

(高橋ヨシキ)だから前に、このタマフル出させていただいた時に、僕、『アメリカ人はアホだって言っても、スタートレックを見ている奴がいるうちは割と大丈夫だと思う』って話をしたと思うんですけど。

(宇多丸)うんうんうん。

(高橋ヨシキ)それは本当にそう思ってますね。うん。

(宇多丸)あとね、バーニングマンもさ、ある意味スタートレック的な世界観が一瞬でも実現してるような感じっていうか。

(高橋ヨシキ)それもちょっとありますし。で、だから向こう行ってね、去年のバーニングマンに行った時に、スターウォーズのパーティーがやっているっていうから行ったら、やってなかったんですよ。『なんだ、今年なしか』なんつって、で、帰る途中でとぼとぼ歩いていたら、スタートレックに出てくるシャトルの形した車が停まっていたんで、『あっ、スタートレックのシャトルだ!これ、君の?』なんつったら、『ちょっと酒、飲んでいく?』なんつって。楽しく交流してきました。はい。

(宇多丸)なるほど。スタートレックファンはピースだっていう(笑)。

(高橋ヨシキ)スタートレックファンはピースフルですね。まあ、スターウォーズファンもピースフルだと思いますけどね。

(宇多丸)なるほど、なるほど。

(高橋ヨシキ)でも、本当になんだろうな?いろんなことを、だからやっぱりSFとかファンタジーならではの、戯画化するやり方も取り入れてますけども。たとえばその、ネクストジェネレーションとかでも、たとえばセクシャリティーの問題とかね。それは面白いエピソードがあって、最終的にアセクシャルな、セクシャリティーがない状態になっていないといけない種族があって。最初のうちは分化してなくて、男っぽかったり女っぽかったりするんだけども、その状態で誰か自分じゃない異性を好きになるっていうのは変態だと思われているっていう。

(宇多丸)っていう文化の。

(高橋ヨシキ)文化話があったりして。だからそれって裏っ返してやったりっていうこともできるので。すごく面白いですね。

(宇多丸)へー!そういうのね、普通に誰が見てもわかるようなテレビのエンターテイメントでずっとやってるってすごいですよね。

(高橋ヨシキ)それも、しかも毎週やっていたっていうね。ちょっとびっくりしちゃいますけどね。ええ。他にも、普通の子育ての悩みとかね。

(宇多丸)もうちょっと身近な話もあると。

(高橋ヨシキ)そうなんですよ。あと、親が2人とも文化の違う星から来ているから、そういう時にどういう風に子育てをしたらいいのか?とか。そういう身近な話もいくらでもあります。はい。

(宇多丸)あと、あれじゃないですか?ネクストジェネレーションは、データっていうあの・・・

(高橋ヨシキ)そうですね。データ少佐。これ、スン博士っていう人が作った、非常に宇宙に1台しかない、原理的には1台しかないアンドロイドなんですけど。

(宇多丸)原理的に1台しかないって、どういう?

(高橋ヨシキ)お兄さんがいるんですよ。実は。お兄さんっていうか、データの前に作られたのがいるのと、あと、データが途中で自分の娘を作るので。

(宇多丸)ほうほう。細部に行かなくていい(笑)。

(高橋ヨシキ)そうそう。だから、細部に行くのが楽しくなっちゃうっていうのがあるんですけども。細部に行かなくていいんですけど、そのデータ少佐っていうのは・・・

(宇多丸)データ。なんかみんな見た目はなんとなく見たことがある気がすると思うんですけど。

(高橋ヨシキ)はい。そうですね。顔がちょっと金色っぽい顔で。目が黄色いね。データ少佐っていうのは非常に優秀なアンドロイドで学習能力も高いんですけども、彼はその、人間とはなんなのか?というのを常に追い求めていてですね。人間に近づくために、たとえば絵を描いて見たりですね、音楽を弾けるようになってみたり、いろんな勉強をするんですよ。

(宇多丸)うんうん。

(高橋ヨシキ)で、とにかくだけどユーモアだけがなかなかわからないというか。あるんですけども。毎回、苦労しながらどうやったら人間の考えていることがわかるか?ってやっていくうちに、だんだん番組とか映画とかを見ていくとわかるんですけど、この場面でいちばん人間なのはお前じゃないか!みたいなことになってくるわけですね。そこもすごく面白いです。

(宇多丸)ああ、やっぱり、ね。その様を見ることで、僕ら自身もなにをもって人間たらしめているのか?っていう。だからさっき言った理想の話じゃないけれども、いちばん基本的な理念のところをもう1回考えるような場面が。

(高橋ヨシキ)ええ。だからミスター・スポックもそうですよ。あの人は、バルカン人と地球人のハーフですけども。で、まあ宇宙大作戦が始まった頃はバルカン人が論理を重んじる種族なので、マッコイという医者にね、しょっちゅう『お前には人間の気持ちがわからないだろう』『わからないよ。わからない方が偉いと思っているのに、なんでそんなこと言われるんだよ?』みたいな。そんなことをやってたんですけども。でも、いろんな時にスポックが発揮するヒューマニティーみたいなものがね、ああ、これはやっぱり人間なんじゃないか?と。

(宇多丸)うん、うん。

(高橋ヨシキ)『君以上に人間らしいのはいない』っていうと、それは侮辱にあたってしまうような。難しいみたいなこともありますけども。まあ、そういう話がある。

(宇多丸)なるほど(笑)。いいですね。なにをもって人が嫌な思いをするか?無礼に当たるか?とかさ、やっぱり想像力を働かせるようになりますよね。

(高橋ヨシキ)ああ、そうですね。

(宇多丸)いろんなパターンがあるよっていう。

(高橋ヨシキ)いろんなパターンがあると。そうですね。いろんな星によって、名誉の置き方が違うので。どうやると褒められるか?みたいなやり方も違うと。地球上でもそうですけどね。

(宇多丸)良かれと思ってやったことが無礼なんて、いくらでもありますしね。

(高橋ヨシキ)いっくらでもありますよね。あと、指のサインを間違えたら殺されそうになっちゃったとかね。いくらでもありますから。

(宇多丸)はい。さらにですね、まあスタートレック。熱狂的なスタートレックファンも含めてですね、世界に与えた影響の強さという。

(高橋ヨシキ)はい。まあそれはあの、例の、宇多丸さんご存知だと思いますけども。『トレッキーズ』っていうドキュメンタリーがあって。

(宇多丸)はい。ドキュメンタリー映画。見ました。

(高橋ヨシキ)あれを見るとわかりますけども、連邦の制服で毎日暮らしている人、いますよね。あと、自分の家をブリッジに改造してしまう人がいます。

(宇多丸)それはあの、なんかすごくダメ人間を生み出しているっていう気もしますけども(笑)。

(高橋ヨシキ)まあ、ダメ人間も生み出し・・・ダメ人間っていうかね、すごい熱狂的なファンを生み出してしまうっていうことなんですけども。あの、いま話題のっていうかですね、だからヨルダンの国王いますよね。アブドラ国王が、これはスタートレックの大ファンで。

(宇多丸)アブドラ2世。

(高橋ヨシキ)ディープ・スペース・ナインかな?ボイジャーかな?どっちかにチラッと出てるっていう話ですよね。

(宇多丸)ああ、そうですか。

(高橋ヨシキ)で、あの人はそれでヨルダンに超巨大なスタートレックテーマパークを作るっていう計画を以前にぶち上げててですね。それが出来たら、ぜったいにヨルダンに行こうと思っていたのに・・・

(宇多丸)まあ、この状態じゃちょっとね。

(高橋ヨシキ)そうなんですよ。あんまりそういう状態が続くと、それがもし出来た時にどうしてくれるんだ?ってことになるし。

(宇多丸)しかもその、ねえ。でも、理念的にはね、いまこそそれはね・・・

(高橋ヨシキ)この人、この間空爆に自分で行ったでしょ?なんだけど、あのね、カーク船長とかピカード艦長ってなんかあるとね、すぐ自分で行きたがるんですよ。だからね、これも実はスタートレックを真似して、俺が行かないと!っていうことになってるんじゃないか?って思いますけどね。

(宇多丸)(笑)

(高橋ヨシキ)あと、アメリカが最初に作ったスペースシャトルの名前ね。あの滑空実験に使ったやつがエンタープライズ号になったの、これはファンからの投書によるものですけども。ちょっと先走りすぎて滑空実験用のにつけちゃったから。

(宇多丸)もうちょっと、ちゃんと遠くに行くやつにしてくれよ!

(高橋ヨシキ)遠くに行くやつにしておけばよかったのに!って後から後悔しても遅かったっていうね。

(宇多丸)まあ、何世とかつければいいんじゃないですか?でもね。

(高橋ヨシキ)そうですね。あと、まあスタートレックのキャラクターの名前ってなると、小惑星なんかにいっぱい付いてます。

(宇多丸)ほー。たとえば?

(高橋ヨシキ)たとえばっていうか、だからなんだろうな?調べれば出てくると思います。ちゃんと書いてくればよかった。付いてたりしますし、ジーン・ロッデンベリーとかも亡くなった時に宇宙葬されてますね。

(宇多丸)宇宙葬ってどうやってやるの?

(高橋ヨシキ)カプセルに入れて、宇宙船に乗っけて、宇宙の彼方に飛ばすっていう。

(宇多丸)あっ、そんなのできるんですか?

(高橋ヨシキ)まあ、お金はかかると思いますけども。

(宇多丸)へー!

(高橋ヨシキ)そういう宇宙葬になったりしてます。

(宇多丸)なるほど。

(高橋ヨシキ)もちろんね、宗教まったく信じていない方ですから。当然、宇宙に行った方がいいに決まってるし。最終的にここまで宇宙への夢をかき立ててくれた人のね、遺灰が宇宙をいま、無限に漂っていると思うとね、いい話だなと思いますけどもね。はい。

(宇多丸)なるほど、なるほど。これ、前もなんかちょろっと伺ったことがあるかな?スタートレック、これから始めたいっていう人に、まあこんな塩梅で始めてみたら?っていうアドバイスとか、あります?完全にもう白紙の人だとして。

(高橋ヨシキ)完全に白紙かー。完全に白紙だったら、でもネクストジェネレーションのテレビ版から見始めるのが・・・

(宇多丸)あ、たとえばそのJ・J・(エイブラムス)の劇場版からとか、そういうのじゃない?

(高橋ヨシキ)あれ、やめた方がいいんじゃないですか?

(宇多丸)(笑)。それ、J・J嫌いなだけでしょ?それ、ただ単に。

(高橋ヨシキ)(笑)

(宇多丸)宇宙大作戦から見るんじゃなくて?

(高橋ヨシキ)宇宙大作戦からだと、年齢にもよりますけども。宇宙大作戦はだから、非常に優れたシリーズだし、なんの問題もないんですけども、やはりちょっといまからだと古めかしく見えるというところはあるかもしれない。

(宇多丸)なるほど、なるほど。

(高橋ヨシキ)で、まあ古めかしく見えるのと、当時のそのテレビの作り方のカット割とかもあるので、ゆっくり見えるかもしれない。興味があれば、どれ見たって面白いですよ。話もさっき言ったみたいに錚々たるメンバーが書いてますからものすごく面白いんですけども。

(宇多丸)うん、うん。

(高橋ヨシキ)たぶん、割といまに近い、80年代終わりですから、ネクストジェネレーションから見るのが入りやすいと思います。で、ネクストジェネレーションを見て、宇宙大作戦を見てもいいし。その後、続いてるのを見てもいいし。

(宇多丸)なるほど。

(高橋ヨシキ)っていうこともあるし。あと、まあ映画版を見るっていうのも手ですけど。映画版は割とね、実はよく考えると不親切なところがあって。

(宇多丸)そうですね。もともとある設定をね、あんまり説明なくやったりしてますからね。

(高橋ヨシキ)そうそう。だから、『全部知ってるでしょ?』でやっているから。結構気をつけて見ないと飛び飛びになっちゃうっていうことはありますけど。でも、あれだったら映画版で・・・うーん、どっから見てもいいと思います。

(宇多丸)(笑)。なんか無責任な(笑)。いま、すごい期待してたのに。なんだよ!っていう(笑)。

(高橋ヨシキ)(笑)。いやいや。

(宇多丸)まあでも、要は1話完結ではあるんですもんね。基本的には、テレビシリーズの方は。

(高橋ヨシキ)ええと、そうですね。シーズンとシーズンの間は1話完結じゃなかったりしますけどね。

(宇多丸)ああ、なるほど。まあまあ、なのでまあ、気軽に入れるんじゃないでしょうか。ネクストジェネレーションが、とりあえずおすすめ。

(高橋ヨシキ)あの、で、どれでもいいんですけど。宇宙大作戦以外。ネクストジェネレーション以降のシリーズで言えば、とにかくがんばってシーズン3まで見るっていうのが大事だと思います。

(宇多丸)結構あるよ、でも。

(高橋ヨシキ)なんでか?って言うと、シーズン1はキャラクター紹介ぐらいで終わって、シーズン2でそれが掘り下げられてきて。シーズン3になると、うわっ、あの人がこれか!ヤバい!見たいな面白さがぐんぐん出てくるので。そういう見方もあると思いますね。

(宇多丸)あと、ネクストジェネレーションはあれだな。ピカードだから、私もスキンヘッドに対する幼稚な差別みたいなのがこの時代には無くなっているというね。すごくいいな!っていうのはありますよね。

(高橋ヨシキ)まあ、そうですよね(笑)。

(宇多丸)(笑)

(高橋ヨシキ)そんなものが果たして?(笑)。

(宇多丸)そんなもんか(笑)。と、いうわけで、あっという間に時間ですよ。ぜひこの、でも大事なことを今日、お話していただいたので。

(高橋ヨシキ)雑な話になってしまいまして、本当、全国のトレッキーの皆さんにはね、もっと詳しい話ができなくてすいませんでした。

(宇多丸)いや、でも本とかも出てますから。

(高橋ヨシキ)はい。そうですね。調べたいと思えば、いくらでも調べられます。はい。

<書き起こしおわり>

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