稲垣吾郎と宇多丸 銃と映画を語る

稲垣吾郎と宇多丸 銃と映画を語る 宇多丸のウィークエンド・シャッフル

(宇多丸)あとはじゃあ、たとえば好きな……『グロリア』だけじゃなくて、そういう。

(稲垣吾郎)たとえばすごいなと思ったのは、もちろん『ヒート』の銃撃シーンとか。

(宇多丸)ああ、これはもちろん最高峰!

(稲垣吾郎)これはもう、だって。

『ヒート』

(宇多丸)マイケル・マンは。じゃあ、マイケル・マン映画は当然お好きな感じですか?

(稲垣吾郎)なにがありました? 僕、結構見ているかな?

(宇多丸)『パブリック・エネミーズ』とかね。最近だと。あと、なにしろ『マイアミ・バイス』。

(稲垣吾郎)そうか。シリーズがそうなんですね。

(宇多丸)あれもテレビシリーズですけども、本格的な銃器描写を持ち込んでいて。

(稲垣吾郎)でも、やっぱりこれはちゃんと役者がかっこよかったりとか。

(宇多丸)『ヒート』はね、もう最高峰ですからね。

(稲垣吾郎)そうですね。この銃撃シーン。でもなんか、ただのドンパチじゃなくて、そこにちゃんとドラマが見えて役者がちゃんといい表情をしていて。

(宇多丸)あの2人の男の、ある意味最愛の、もっとも分かり合える男同士が一瞬出会って。しかもデ・ニーロはあのまま普通に逃げていれば逃げられたのに……っていうところが。あれがグッときますよね。

(稲垣吾郎)うん。この銃撃シーンは、長いですしね。

(宇多丸)途中のね、銀行強盗シーンは映画史に残る。あれこそ、まさに銃撃場面がもう刑事側もギャング側も両方がアサルトライフルを持っているという。あれがもう時代の移り変わりで。もうピストルで撃ち合う時代じゃないっていうか。

(稲垣吾郎)戦争みたいですしね。

(宇多丸)そうなんです。そうなんですよ。

(稲垣吾郎)どんどんどんどん、市街戦みたいですもんね。

(宇多丸)だって『マイアミ・バイス』のコリン・ファレル主演の映画版の方とか、もうほとんどピストルを使いませんでしたからね。で、もう対戦車砲とかで吹っ飛ばすみたいな。

(稲垣吾郎)そうかー。だから僕はやっぱり古き良き時代のガンアクションが好きなのかもしれない。やっぱり『ダーティハリー』があるんでしょうね。

(宇多丸)70年代刑事アクションというんですかね。そういう世界。

(稲垣吾郎)そういうことなんですか。またおすすめを教えてくださいよ。いっぱい。

(宇多丸)いや、でもご存知のあれだと、たとえばスティーブ・マックイーンの『ブリット』とか。

(稲垣吾郎)うんうん。そうか。マックイーンね。

(宇多丸)『ブリット』のコルト……あれはダイヤモンドバックですかね。それをやっぱりショルダーホルスターに入れて。黒いタートルネックに茶色いショルダーホルスターで。

(稲垣吾郎)ショルダーホルスターってなんでいいんですかね? まあ、あとはやっぱり『タクシードライバー』ですよね。

(宇多丸)ああ、そりゃそうだ。たしかに。

(稲垣吾郎)ショルダーホルスターと言えば。

(宇多丸)そうですね。両差ししてますからね。

(稲垣吾郎)腰じゃなくてね。ヒップホルスターでもなくてね。

(宇多丸)あと、『タクシードライバー』といえばガシャーン! じゃないですか。……すいませんね(笑)。

(稲垣吾郎)「ガシャーン!」って全くわからない。聞いている人(笑)。

(宇多丸)カーテンレールを腕に仕込んで、ちっちゃいやつがガシャーンって出てくるようになっているというね。あの、なんていうか体に装備している感みたいなのが。

(稲垣吾郎)体に、拘束されている感じが。

(宇多丸)あと、スーツとかに……だから銀色のチーフズ・スペシャルに赤めの木の木グリで。で、赤めの皮の……。

(稲垣吾郎)ショルダーホルスター。たまらない!

(宇多丸)アハハハハハッ! 本当にたまらない顔になっていますね(笑)。そしたらもう、スーツとかに合わせてもかっこいいですもんね。

(稲垣吾郎)かっこいいです。かっこいいです。その時代のものが好きなんですね。きっとね。

(宇多丸)70年代。じゃあ、あれですよ。稲垣さん、これをおすすめしますよ。青井邦夫さんっていう映画秘宝っていう雑誌とかでずっと連載されている方の『新世紀銃撃戦映画のすべて』。

(稲垣吾郎)こんなのあるんですか?

(宇多丸)これ、映画秘宝COLLECTIONっていう本で出ていて。

(稲垣吾郎)へー。読みます、読みます。

(宇多丸)っていうか、これ僕、もう1冊買うから、あげます。これ。持って帰ってください。

(稲垣吾郎)えっ、本当はあげたくないみたいな雰囲気がかなり出ているんですけど?(笑)。

(宇多丸)あの、買えばいいんで。

(稲垣吾郎)本当ですか?(笑)。いや、僕も買いますよ。

(宇多丸)あの、いますぐ読んでいただきたいんで。

(稲垣吾郎)本当ですか?

(宇多丸)これはでもね、比較的新しめですけど、もうちょっと70年代アクションに特化したような本もありますので。

(稲垣吾郎)ああっ、ああーっ!

(宇多丸)で、これクラシックなやつの説明もいろいろと入っていたりするんで。

(稲垣吾郎)ああっ! やっぱりいいですね。70年代。うおっ!

(宇多丸)稲垣さん……稲垣さんこそ説明が全くできないリアクションをいま、取ってますからね(笑)。あの、日本のガンアクション映画といえば、金字塔である加山雄三さん主演の『狙撃』っていう映画があって。日本映画では数少ない、割ときっちり実銃描写が出てくるやつとか。それの解説も入っていたりして。

(稲垣吾郎)あ、本当ですか? 僕、それ見ていなかったんで。

(宇多丸)『狙撃』は絶対におすすめです。これは、もう。僕、加山雄三さんとお会いした時、『狙撃』の話ばっかりしていましたから。

(稲垣吾郎)へー! いやいや、これはね、今日ちょっと寝れないですよ。こんなものを渡されたら。

(宇多丸)だし、見たい映画がめちゃめちゃ増えますよ。これ、青井さんの。で、解説がまたばっちりなんで。この最初にある映画の銃撃戦描写の進化の話とか、めちゃめちゃ面白いんで。ぜひぜひ。さっきのジョン・ウーの話も出てきますしね。ということで、じゃあそれは。

(稲垣吾郎)すいません。いま読んじゃうとまた黙っちゃうんでね(笑)。

(宇多丸)全然リスナーのことを考えてないじゃないですか(笑)。「ああーっ!」だって(笑)。

(稲垣吾郎)アハハハハハッ!

(宇多丸)あ、ちなみにじゃあ、銃を置いておいて、もうちょっと映画一般の話で。最近、稲垣さん的によかったなっていうのはありますか? まあ、別に去年の暮れぐらいからでもいいんですけど。

(稲垣吾郎)これから公開のものだと、4月公開だとこれはガンと全くテイストが変わっちゃいますけども。『きみへの距離、1万キロ』。

(宇多丸)『きみへの距離、1万キロ』?

(稲垣吾郎)これから公開されるんですけど、すっごい面白いんですよね。

(宇多丸)これはどこの?

(稲垣吾郎)石油のパイプラインを警備するのを遠隔でロボットにさせているんですよ。アメリカから北アフリカの。

(宇多丸)これは現実の話?

(稲垣吾郎)現実だと思う。そういう警備があると思うんですけど。そこで北アフリカにいる少女を見つけて、そこでいろいろとストーリーが展開されて、ラブストーリーで恋に落ちていくんですよ。

(宇多丸)へー。ヴェネツィア映画祭で。

(稲垣吾郎)そうですね。『きみへの距離、1万キロ』。これはすごい面白かったですね。

(宇多丸)どこの映画なんですか?

(稲垣吾郎)これはね、たぶんアメリカ?(※カナダ映画)。

(宇多丸)キム・グエンさんっていう人が監督だけど。

(稲垣吾郎)監督は韓国系の方ですけど。すいません。ちゃんと調べてから……。

(宇多丸)でも、『きみへの距離、1万キロ』はいつ公開ですか?

(稲垣吾郎)4月から。

(宇多丸)箕和田くん、銃の検索は早いけど……頭のところにして。ん? 4月7日公開。そうですか。めちゃめちゃ面白そうですね。

(稲垣吾郎)そうですね。これ、僕も仕事でいろいろとご紹介させていただく機会がこれからあるので。そっちの方も楽しみにしていただきたいんですけども。あ、カナダ映画でした。

(宇多丸)へー。この間の対談でも思いましたけど、やっぱり全然守備範囲が違うので、教えていただくのがすごい勉強になります。

(稲垣吾郎)ああ、そうか。これもでもね、スタッフの方が見つけてきてくれた映画なんで。これ、ロボットって面白くないですか? ロボットが警備しているんですよ。たぶん本当にあるのかどうかまではわからないですけど、本当に動くラジコンのような。武器とかで使いますよね。

(宇多丸)ドローンのね。最近、映画で多いですけど。

(稲垣吾郎)それで警備をしていて、そこの地元でいろいろと苦労している人と出会って。

(宇多丸)少女との交流とか、そういう感じなんですかね?

(稲垣吾郎)少女がなんか、恋人と逃避行しようとしているんで、その手助けをしようとする話なんですけど、いつしか恋に落ちてしまうという話なんですけども。4月公開なんで。

(宇多丸)ぜひ、僕も拝見したいと思います。

『きみへの距離、1万キロ』

(稲垣吾郎)はい。

(宇多丸)あの、意外と……これは言っていいことなのかな? 映画館とか普通に行かれるんですか?

(稲垣吾郎)いや、行きますよ。

(宇多丸)これが驚きで。

(稲垣吾郎)いや、そんな。行きますよ。

(宇多丸)いやいや、でも稲垣さんがうろちょろしていたら、マズいんじゃないですか?

(稲垣吾郎)いやいや、映画好きとしては映画館に。試写とかに呼んでいただくこともありますけども。こういう公開前の映画は。でも、基本的には映画館で見たいなと思っています。

(宇多丸)僕は毎週、公開中の映画を評するというのをやっていて。

(稲垣吾郎)そうですね。そしてやっぱり映画館に足を運んでもらいたいって僕も常日頃から思っているので。若い人とかにももっともっと。

(宇多丸)絶対にそうですよね。同じ映画でも、やっぱり正直家でソフトで見ているのと、全然頭に入ってくる度合いが違わないですか?

(稲垣吾郎)違いますよね。うん。やっぱり、集中力とかも違いますし。

(宇多丸)そうやって、映画館に通われているのもすごいうれしい話でございます。といったあたりでいよいよ、本格的に時間がやってまいりました。もうお別れの……。

(稲垣吾郎)えっ? まだ10分ぐらいしかたってないんじゃ?

(宇多丸)いやいや、これ時間感覚がついおかしくなってしまいますが。

(稲垣吾郎)僕も正直、なにをしゃべったか覚えてないですよ。今回は。大丈夫ですか?

(宇多丸)いいんです。こういうことです。「楽しい空気」。これがいちばん大事です。そして稲垣さん。

(稲垣吾郎)空気は伝わりましたよね?

(宇多丸)空気です。ラジオに大事なのは、空気です。

(稲垣吾郎)最後、おすすめの映画の『きみへの距離、1万キロ』があんまり上手く説明できてなかった気が……。

(宇多丸)できてる、できている!

(稲垣吾郎)大丈夫ですか? 今度、ちゃんと批評して説明して。

(宇多丸)僕が改めて説明しておきます(笑)。

(稲垣吾郎)改めて、まとめてください(笑)。

(宇多丸)でも、時間は今回は来てしまいましたけど、実は4月から私、TBSラジオで新番組を。この番組はあと2回で終わっちゃって、4月から『アフター6ジャンクション』という月-金で6時-9時の番組が始まるんですよ。だからすんごい時間があるんですよ。

(稲垣吾郎)ああ、びっくりした。あと2回でガン部がなくなっちゃうのかと思いましたよ。

(宇多丸)ガン部はそっちに移りますので。

(稲垣吾郎)移りましょうよ!

(宇多丸)で、稲垣さんのファンからもすごく「こちらにも稲垣さんに出てほしい」という声を大量にリクエストをいただいているので。もしよろしければ、懲りずに……まあ、ガン部に限らずですよ。新しい地図としてなにかお知らせごととか、もちろん稲垣さん単体のいろいろとかもあると思いますので。

(稲垣吾郎)でも、遊びに来たいですし、また映画の話もしたいですし。

(宇多丸)その時は僕、ちゃんと僕のかわいい人ことシグP226とか。

(稲垣吾郎)シルバーのね。赤い木グリね。

(宇多丸)赤い木グリ。

(稲垣吾郎)赤茶の木グリね。

(宇多丸)最初に僕、家に届いた時に「お前はなんでそんなに美しいんだ……」って言いましたから。

(稲垣吾郎)わかります、わかります。会話しますよね。銃とね。

(宇多丸)はい。話しかけてしまいました。

(稲垣吾郎)向こうも話しかけてくるしね。

(宇多丸)フハハハハハッ! お持ちのトイガンの話とかもしたかったんですけどね。

(稲垣吾郎)ちょっとこれ、僕の宣伝もそろそろしなきゃいけないんで。

(宇多丸)ああ、そうです! で、お知らせごと。お願いします!

(稲垣吾郎)映画をやります。僕。映画が公開されます。『クソ野郎と美しき世界』という映画が4月6日から2週間限定公開なんですけども。僕と草なぎ剛と香取慎吾が出演して。オムニバスなんですね。4つの短編からなるオムニバス映画で。監督は爆笑問題の太田さん。園子温さん。山内健司さん、児玉裕一さん。

(宇多丸)すごい! これ、太田さんが「宇多丸の野郎はどうせけなすに決まっているんだけど、いいから評しろ!」みたいなことをご自分の番組でおっしゃっていたりとかね。

(稲垣吾郎)フフフ(笑)。

(宇多丸)で、稲垣さんはなんと園子温さんに?

(稲垣吾郎)そうですね。園監督の映画も僕、好きでしたし。まさかご一緒できるとは。

(宇多丸)『ピアニストを撃て』に対して、『ピアニストを撃つな!』と。トリュフォーということですよね。これ、どうでした? 園さんは。

(稲垣吾郎)面白かったです。本当にライブ感とか、そういったものを大切にする監督で。

(宇多丸)結構人によっては鬼演出伝説なんかも聞きますけども。

(稲垣吾郎)うーん。今回は鬼はなかったです。まあ、多少コミカルなコメディー映画。コミカル要素もある映画だったので。そんな重い芝居とかっていうことではなかったので、現場の雰囲気もすごい明るかったですし。なんかやっぱりスピード感とかライブ感みたいなものを大切にされていて。びっくりしたんですけど、ほとんどリハーサルをされないで、いきなり本番っていう。

(宇多丸)おおーっ! じゃあ、生感っていうか、そこで出てくるものっていうか。

(稲垣吾郎)そうなんですね。まあ、もちろん作品によって違うと思います。綿密にリハーサルするものもきっとあると思うんですけど、今回はそう。まあ、これがエピソード1なんですね。とにかくスピード感のある映画で。で、園監督の話をずーっと長谷川博己さんに聞いていたんですよ。それがいま、ちょうど。すいません。これも宣伝になっちゃうんですけども。『半世界』という映画で。

(宇多丸)阪本順治監督。

(稲垣吾郎)ええ。共演させていただいていて。その時に長谷川さんはもちろん園監督の映画をいろいろと出られているので。

(宇多丸)『地獄でなぜ悪い』とか。

(稲垣吾郎)「園さん、リハーサルやらないですよ」とかって言って。「いきなり本番ですよ」とか。あと「NGを出しても止めないですよ」とかって言って。

(宇多丸)そういう、「こうですよ」っていうのを聞いていたけど、本当にその通りだったという。

(稲垣吾郎)そう。面白かったですね。でも本当にすごく優しい方で。そんな鬼監督とかでは……映画のテイストも結構なんか、ハードなイメージがあるけど、そんなハードボイルドな方というよりも、どちらかというとすごく女性的な方というか。すごく優しい方でしたし。またご一緒させていただきたいな、なんて思いましたし。

(宇多丸)いや、園作品とも相性がよさそうな予感がしますね。

(稲垣吾郎)でも、4作ともすごく楽しいと思いますので。

(宇多丸)『クソ野郎と美しき世界』のオムニバスだと、児玉裕一監督の『新しい詩(うた)』というのがお三方が出ているやつという。児玉裕一監督はPVでPerfumeの『シークレットシークレット』というミュージックビデオに私、出演しておりますので。

(稲垣吾郎)あっ、本当ですか?

(宇多丸)なんならもう、演出され仲間という。

(稲垣吾郎)へー。僕もPVがはじめてだったんですけども。今回は映画監督としてご一緒させていただいて。ここでは『新しい詩(うた)』というタイトル通り、新しい歌も。

(宇多丸)ああ、なるほど。新しい地図としての?

(稲垣吾郎)新しい地図としての新しい歌も何曲か披露させていただいているんので。楽しみにしていてください。

(宇多丸)とにかく僕は太田さんにああいうケンカのふっかけられ方をしたらこれはね、やるしかないっていうところがあるんで(笑)。これ、4月6日から2週間限定公開ということなんで。ちょうど『アフター6ジャンクション』も映画評をやるので。

(稲垣吾郎)ぜひ宇多丸さんの感想も聞きたいです。

(宇多丸)そして、部室の方にもまたぜひ。新番組にも来てください。

(稲垣吾郎)はい!

(宇多丸)ということで、以上、「稲垣吾郎と映画と銃。特集」でした。稲垣さん、ありがとうございました!

(稲垣吾郎)ありがとうございました!

<書き起こしおわり>

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