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高橋芳朗 MAMAMOOの反ルッキズム・ボディポジティブな楽曲を語る

高橋芳朗 MAMAMOOの反ルッキズム・ボディポジティブな楽曲を語るアフター6ジャンクション
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高橋芳朗さんが2021年2月16日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中で欧米ポップスとK-POPのフェミニズムについてトーク。MAMAMOOの楽曲の反ルッキズム・ボディポジティブなメッセージについて話していました。

(宇多丸)ということで高橋芳朗さんには毎月1回、最新の洋楽事情というか、今の洋楽シーンの重要な流れっていうか、注目ポイントみたいなものを解説していただいて。で、後半はおすすめ新譜紹介みたいなのをやっております。ということで今夜はどんなお話をしていただけるんでしょうか?

(高橋芳朗)欧米ポップスとK-POPのフェミニズムのお話をしたいなと。K-POPのフェミニズムの最新の動向を最近の欧米ポップスの潮流を踏まえて聞いていきたいみたいな感じですかね。去年11月の放送でBTSのニューアルバムが出たタイミングってやった放送で、ほら。BTSの『Dynamite』全米1位を取ったことによって、K-POP勢のアメリカ進出の取り組みが新しいフェイズに入っていくんじゃないか、みたいな話をしたと思うんですね。音づくりとかプロデューサーの人選に微妙に影響が出てくるんじゃないかなって。

(宇多丸)はい。

高橋芳朗 BTS『Dynamite』大ヒット後のK-POP勢の動きを語る
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(高橋芳朗)で、それって歌詞の題材にも同じことが言えると思うんですよ。

(宇多丸)特に今はさ、ちょっと近年にないほどアティチュードが求められる時代ですよね。

(高橋芳朗)そうですね。特に女性アーティスト。

(宇多丸)そうだね! そこのフェイズの変わり方はちょっと、ねえ。

(高橋芳朗)そうそう。だから欧米のモードに沿って女性のエンパワーメントとかフェミニズムをテーマにした曲が増えてくるんじゃないかなと思うし。実際にもう既にその兆候が現れてきているんですね。で、ほら。韓国国内でもその『82年生まれ、キム・ジヨン』とか『はちどり』とかフェミニズムを題材にした映画のヒットとかもありますので。まあ、扱いやすいタイムリーな題材なのかもしれないですよね。

(宇多丸)じゃあそのあたり、K-POPがどういうようにそういうテーマやメッセージを込めてきてるかとか。一方で、だからそれまでの欧米の流れがどういう感じになっていたとか。そのあたり、ちょっと整理する感じですかね。わかりました。でも、このタイミングだからこそ本当にそこは重要じゃないでしょうか。

(高橋芳朗)そうですね。で、今日はまず最初に1曲、かけたいんですけども。で、今回の特集は先日の東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の女性蔑視発言に触発されるところもあるんですけども。2月3日にK-POPのガールグループのMAMAMOOがアルバム出したんですね。『TRAVEL -Japan Edition-』っていう2月3日に出たこのアルバムに合わせて考案したものでもあるので。ちょっとまずは景気づけにMAMAMOOのヒット曲を聞いてもらいたいと思います。MAMAMOOで『Dingga』。

MAMAMOO『Dingga』

(高橋芳朗)はい。MAMAMOOで『Dingga』を聞いていただいております。

(宇多丸)かっこいいなー。

(宇垣美里)かっこいい。すごく好き!

(高橋芳朗)日本でもめちゃくちゃ流行っていますね。結構コロナ禍の厳しい状況を乗り越えていこうっていうメッセージソングなんですけども。ディスコサウンドの乗せてコロナ禍の世界を元気づけるっていうコンセプトはちょっとBTSの『Dynamite』にも通じるものが……。

(宇多丸)そう。『Dynamite』モードだなとも思いましたね。

(高橋芳朗)だから『Dynamite』に続くK-POPのディスコヒットが日本で生まれるとしたら、たぶんこの『Dingga』になるんじゃないかなというぐらい。

(宇多丸)ちょっとこの陽性な感じというか。明るいディスコっていうかね。

(高橋芳朗)あと、ちょっと歌謡感……アジア歌謡感もあって。そのへんもキャッチーかなと。

(宇多丸)なんていうの? 親しみやすさとかっこよさのバランスが絶妙ですね。このMAMAMOO、このタイミングっていうのはMAMAMOOに注目しているからっていうことですか?

(高橋芳朗)そうですね。この後もMAMAMOOの楽曲を紹介したいと思っています。

(CM明け)

(宇多丸)先ほども言いましたけど、特に近年、全体に欧米圏のポップアーティストにアティチュードというか、何らかのメッセージ性の表明みたいなものがすごく強く求められているし。特に女性アーティスト、こういう流れの中で……。

(高橋芳朗)そうですね。「MeToo」運動以降は特にそういう傾向が強いかもしれません。

(宇多丸)でもそれを自分の表現に落とし込んでいる人が本当に支持される時代になってきているというね。

(高橋芳朗)そうですね。そういうアーティストがバンバン1位を取ったりしていますからね。

(宇多丸)だから、本当にちょっと前だったらそのK-POPアーティスト、要するにアメリカ向けにやって、すごいキャッチーにかっこよくやってそれで済んでいたところにもう1個、ファクターが入ってきたっていう感じですよね。

(高橋芳朗)そういった部分が要求されてきているのではないかと思います。

(宇多丸)では、ぜひ解説をお願いします。

(高橋芳朗)はい。大きく3つのタイプに分類してみました。まずはこちらから行きます。ひとつ目は、こちら。ルッキズムとボディ・ポジティブ。まあ、外見至上主義に抵抗する歌というか。あと、「自分のありのまま、そのままの体を愛そう」と訴える歌とかですかね。で、欧米中心のボディ・ポジティブのムーブメントが誕生したのは2012年なんですね。

(宇多丸)もうはっきりと2012年なんだ。

(高橋芳朗)SNSでハッシュタグ「#bodypositive」っていうのが大きな潮流に発展して、プラスサイズのブランドがたくさん立ち上げられたり。

(宇垣美里)そうか。いろんな方がモデルさんになったりとか。

(高橋芳朗)そうですね。プラスサイズモデルの方も活躍するようになったし。だからファッション業界とかエンターテイメント業界のその「体型」に対する考え方が大きく変わってきたと思うんですね。で、具体的な社会に対する影響だと、たとえばフランスだったら商業写真のモデルの体験にフォトショップなどで修正を施したら、それは加工写真であることを明記することが義務づけられたという。

(宇多丸)もう現実にはありえないような諸々を有りとしているけどいも。それを消費者はロール(手本)にしちゃうわけだもんね。いや、本当だよね。

(高橋芳朗)これが2017年に法律で施行されて。違反者には500万円の罰金が課せられるという。

(宇垣美里)結構しっかりと……。

(高橋芳朗)そうなんですよ。

(宇多丸)あの、非常に厳しいと思うけど、同時にやっぱりありえないイメージを売りつける責任っていうかさ。それをだってロールにしちゃうんだからさ。ないものを。

(高橋芳朗)そうですね。

(宇垣美里)そうか。パリコレも体重制限とかもかけてましたよね。「痩せすぎはダメ」っていう。

(高橋芳朗)ああ、なるほど、なるほど。やっぱりそういう流れになってきてるということですよね。

(高橋芳朗)それでアメリカだと2016年にバービー人形のラインナップに新しく3つの体型が加わったんですよ。ふくよかな「カービー」と長身の「トール」。あと小柄の「プチ」っていうその3つの体系が新たに加わりました。

(宇多丸)たしかに。「バービー人形のような」って言って、まさにね、それこそありえない美の目標みたいなものとしてさ。

(宇垣美里)お人形さんですからね。

(宇多丸)そうそう。お人形なのに、でもバービー的なものを目指すような……。

(高橋芳朗)それをその子供の頃から植えられちゃうんですね。

(宇垣美里)かつ、金髪で……とか。

(宇多丸)たしかに。人種的にもそうですね。

(高橋芳朗)あと、日本でも2013年に女性ファッション誌で『la farfa (ラ・ファーファ)』という雑誌が「ぽっちゃり女子のおしゃれ応援マガジン」っていう触れ込みで発刊されたりしていますけどね。で、こういう動きに対する欧米のポップMUSICからのリアクションとして最大のヒットになったのが今、後ろで流れている2014年に全米1位になったメーガン・トレイナーの『All About That Bass』。この曲、アメリカだけでも1000万枚以上売れて。このヒットによってメーガン・トレイナーはグラミー賞の最優秀新人賞を受賞してたりします。

Meghan Trainor『All About That Bass』

(高橋芳朗)で、この曲『All About That Bass』の「Bass」っていうのは「低音」ですね。だから歌詞は「私の体を音にたとえるならどっしりとした低音。Sサイズとは言えないけど男子が夢中になるような大きなお尻があるんだ。雑誌のモデルがフォトショップで加工していることなんて、誰だって知っている。もういい加減、そういうのはやめようよ。『自分の体のサイズなんて気にしちゃダメだ』ってママが言ってたよ」っていう、そういう歌詞の曲になっているんですね。

で、これに続いたのがカナダのシンガーソングライターで当時20歳だったアレッシア・カーラ。彼女が2016年に放ったヒット曲。今、後ろで流れています。『Scars To Your Beautiful』という曲です。これ、全米チャートで最高8位をマークしたヒット曲なんですけど。このタイトルは「あなたの美しさには傷なんてひとつもない」という意味で。歌詞は「あなたはそのままで美しい。変わる必要なんて全くない。あなたはこんな気持ちにさせる世界が変わるべきなんだ。あなたの美しさには傷なんてひとつもない」という、そういう内容になっています。

(宇垣美里)うん。本当に。

(宇多丸)日本でも土岐麻子さんのあの曲(『美しい顔』)とかも出ていたり。そういう流れですね。

(高橋芳朗)で、さっきのメーガン・トレイナーに続いてアレッシア・カーラもこの曲のヒットを受けてグラミー賞の最優秀新人賞を取っています。だから、ボディ・ポジティブが社会運動としてすごい注目を集めてたっていうのがこのグラミーの結果からもよく分かるんじゃないかなと思います。ただ、このボディ・ポジティブ運動の最大のスターっていうと、シンガーでラッパーのリゾでしょうね。

(宇多丸)はいはい。この番組でも何度もご紹介いただいています。

(高橋芳朗)彼女も去年のグラミー賞でビリー・アイリッシュと並んで最多の8部門でノミネートされて。彼女に関して、リゾはもう全ての作品が女性だったりマイノリティーに対するエンパワーメントを題材にしてるって言っていいぐらいなんですけどね。

(高橋芳朗)で、この欧米の流れを踏まえてそのルッキズムやボディポジティブを題材にしたK-POPのヒット曲を人気を紹介したいんですけど。これがオープニングで『Dingga』をかけたMAMAMOOの『HIP』という曲です。これ、2019年の作品でアメリカのビルボードのワールドデジタルソングチャートで1位に輝いている曲です。で、MAMAMOOは2014年にデビューした4人組のガールグループで元々、そういうルッキズム的な題材を扱っていたんですね。たとえば2016年に『Taller than You』っていう曲をだしていまして。これ、日本語タイトルは『1センチの自尊心』っていうタイトルで今、後ろで流れている曲なんですけども。ちょっと西海岸のGファンクっぽい……。

(宇多丸)ちょっとドクター・ドレーっぽいよね。

(高橋芳朗)ドクター・ドレーっぽいんですけども。

(高橋芳朗)これ、どういう曲か?っていうと、MAMAMOOってメンバーの平均身長が160センチぐらいなんですよ。これK-POPのガールグループの中では比較的小さい部類に入るんですけども。で、この曲はそういう彼女たちが「私の方があんたより背が高い」とか「いやいや、私の方が1センチ高いよ」っていう小競り合いをする曲なんですね。だから要は些細な風貌にこだわることとか、自分を他人と比べて一喜一憂することのアホらしさというか、バカバカしいとちょっと戯画化したような曲なんですね。

で、これに続いて2017年に『Yes I am』っていう曲を出しているんですけども。これはもうストレートに「自分の容姿や生き方に自信を持とう」と女の子を鼓舞する曲で。歌詞には「冬に私はノースリーブの服を着ればそこは夏になる」みたいな、結構ラッパー然としたパンチラインもあったり。

(宇垣美里)フフフ、「好きな服を着せろ」っていうことですね?(笑)。

(高橋芳朗)そういうことですね。まさに。あとは「丸顔で一重まぶたでもそんな私の顔が好き」とか、そういうボディ・ポジティブなメッセージも含まれていたりするんですけど。

(高橋芳朗)で、そんな曲を歌ってきたMAMAMOOの代表曲がこれから聞いてもらう『HIP』という曲なんですけども。この曲は「どんな格好をしていようが、自分に自信を持てばそれこそがHIP(かっこよく)なれる」っていう。

(宇垣美里)「HIP」って「おしり」ではなくて?

(高橋芳朗)ここでは「かっこいい」っていう意味ですね。そういうメッセージが込められているんですけども。で、歌詞にはこのMAMAMOOのメンバーのファサという方の実体験が反映されていて。彼女はあるオーディション受けた時に「君は個性的だし、歌もうまいけど太っていてかわいくないね」って言われて不合格になったことがあるんですって。

でも、この言葉が彼女の生き方を変えることになるんですけども。ファサは家に帰ってショックで泣き続けたらしいんですね。ただ、そこから彼女は一晩中、ビヨンセのライブ映像を見ることによって自尊心を取り戻して、ある誓いを立てるんですよ。それが「私が世の中の美しさの基準に沿わないのであれば、私が新しい美の基準になればいい」という。で、『HIP』にはファサがソングライターズで参加しているんですけども、その体験が歌詞に落とし込まれているんですよ。

『HIP』の歌詞、どんな内容なのか?っていうと、「どこに行ってもあなたは輝ける。世界にあなたは1人だけ。なのにどうして自分の顔にツバを吐くの? 私を刺激した人たちに感謝。お陰でメンタルが強くなった。汚れたTシャツでも、べたついた髪の毛でも私はHIP。そんなの別に気にしない」という。そういう曲で、MAMAMOOではたぶん、一番人気の高い曲だったりします。では、聞いてください。MAMAMOOで『HIP』です。

MAMAMOO『HIP』

(高橋芳朗)はい。MAMAMOOで『HIP』を聞いていただいております。

(宇垣美里)かっこいい!

(高橋芳朗)かっこいいっすよね。さっき、土岐麻子さんの『美しい顔』の話を宇多丸さんがされていましたけども。土岐さんはMAMAMOOの大ファンなんですよ。

(宇多丸)おお、そうなんだ!

(高橋芳朗)それでナタリーに非常に熱の入った愛のあるMAMAMOOのコラムを書かれているんですけども。

(宇多丸)土岐さんもさすが!

(高橋芳朗)たぶん『美しい顔』ももしかしたらそういう流れで作られたのかもしれないですね。

(宇多丸)まあね。本当にシンクロというところもあるでしょうし。

(高橋芳朗)さっき、ファサが体験したオーディションの話をしましたけども。これ、YouTubeでライブでその体験を話してる動画が上がっているので。これがめちゃくちゃかっこいいので、皆さんもチェックしてみてください。

ファサ、オーディションを語る

(宇多丸)オーディションでそんなことを言った人はさ、ものすごく青くなっているかと思いきや、「いやー、いいよ!」とか言ってそうだよね(笑)。全然自分のことと思っていないみたいなこともありそうですね。

(宇垣美里)でも、ミュージックビデオを見るとすごく個性的で。「ああ、本当に彼女たちの思う『かっこいい』を追求してるんだな」って感じがすごく伝わりますね。

(高橋芳朗)今までのいわゆるK-POPのガールグループの潮流とはちょっと違いますよね。

(宇多丸)でも2014年から活動してきてね、すごく自分たちの独自の道を進んでいて。すごいですね。MAMAMOO。かっこいい。

(高橋芳朗)日本でも本格ブレーク間近なんじゃないかなと思います。

(宇垣美里)私、ファンになりました。すごいかっこいい!

(高橋芳朗)ぜひチェックしてください。

(宇多丸)ちょうど新譜がでたタイミングですもんね。

(高橋芳朗)『TRAVEL -Japan Edition-』という日本語バージョンになっています。

(宇多丸)じゃあ、ぜひそこから。

(高橋芳朗)チェックしてみてください。

<書き起こしおわり>

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