宇多丸さん、DJ YANATAKEさん、高橋芳朗さん、渡辺志保さんがNHK FM『今日は一日”RAP”三昧』で2000年代初頭の日本語ラップ・ヒップホップの盛り上がりについてトーク。メジャーデビューしヒットを飛ばすグループが多数登場した当時の状況を振り返っていました。
(宇多丸)さあ、ということで先ほどもメールにあった通り、本国アメリカではラップ・ヒップホップがどんどんメインストリームになっていく時代だった2000年代以降ですけど、その頃日本では?っていうことで。実は2000年代初頭とかは日本でも、90年代後半からの、要は『さんぴんCAMP』以降の流れを受けて、日本でもいちばんラップのメジャー化というか。たとえばメジャー会社と契約しているアーティストがいちばん多かったのはたぶん2000年代。
(渡辺志保)そうね。そういう印象がありますね。
(DJ YANATAKE)それで言ったら、やっぱりデフ・ジャム・ジャパンというね。2000年にちょうどできたんで。デフ・ジャム・レーベルっていうアメリカで、ずっと今日の話で何回も出てきていますけども。その日本支部。ヒップホップのナンバーワンレーベルの日本支部ができるということで。まあ、僕も最初に働いていたんですけども。
(宇多丸)ああ、そうかそうか。じゃあ、もういきなりそのデフ・ジャム・ジャパンの話が出ましたから。まさに、さっきからやっていたような、たとえばマイクロフォン・ペイジャーから始まって。そのある意味、マイクロフォン・ペイジャー・チルドレンである雷があって。でも、さらにその下の世代で、東京新世代っていう感じで。まあ、かっこよかった!
(DJ YANATAKE)ショッキングでしたよね。
(高橋芳朗)本当にかっこよかった!
(宇多丸)ということで、お聞きください。ニトロ・マイクロフォン・アンダーグラウンドで『NITRO MICROPHONE UNDERGROUND』。
NITRO MICROPHONE UNDERGROUND『NITRO MICROPHONE UNDERGROUND』
(宇多丸)かっこいいなー!
(渡辺志保)かっこいいですね!
(DJ YANATAKE)これ、いまかかってるSUIKENのバースのところ、ビデオは僕の部屋なんですよね(笑)。
(宇多丸)ああ、そうなんだ(笑)。それぞれ1ラッパー1シチュエーションみたいな感じでどんどん変わっていくような感じでしたよね。まあ、それぞれ本当に腕利きの若手。当時の若手たちが集まって、なんて言うか、「新世代!」っていう感じだよね。
(DJ YANATAKE)もう全員がちゃんとキャラクターが立ったMCがね。
(渡辺志保)佇まいもクールでね。
(宇多丸)またファッショナブルなんだよね。おしゃれなんだよね。ニトロ・マイクロフォン・アンダーグラウンドで『NITRO MICROPHONE UNDERGROUND』をお聞きいただいております。さあ、そんな感じで、だからニトロ・マイクロフォン・アンダーグラウンドっていう名前だけど堂々たるメジャーデビューを果たして……という。で、実際に売れたりなんかして。
(DJ YANATAKE)そうですね。インディーズで2万枚完売して、その後にすぐデフ・ジャム・ジャパンっていうのができて、そこから再発っていう形ではあったんですが、なんと15万枚以上のセールスを記録したということで。
(渡辺志保)すごーい!
(宇多丸)きゃー!
(DJ YANATAKE)いまだと、トータルすると20万近いセールス、行ってるんじゃないですかね。
(宇多丸)ねえ。景気のいい時代でございます(笑)。で、実際にこれは2000年ですけど、たとえば99年。僕らの『リスペクト』っていうアルバムがあったりとか、後ほど紹介しますけど、THA BLUE HERBが登場したり。あと、『Grateful Days』。あれも99ですね。
(DJ YANATAKE)そうですね。99年ですね。
(高橋芳朗)ドラゴンアッシュとZEEBRAさんの。
(宇多丸)さっき、ちょっとジブさんにその話をするのを忘れちゃいましたけど。でもなんだかんだで「俺は東京生まれヒップホップ育ち」っていう。
(渡辺志保)あれは名パンチラインです!
(宇多丸)もう、誰もが知っているパンチライン。
(渡辺志保)それこそヒップホップリスナー以外の方でも知っているぐらいのね。
(宇多丸)からの、同じくそのドラゴンアッシュがラッパ我リヤという、今日はなかなか言及する機会がなかったけど、これまたスキルフルなグループとやった『Deep Impact』。これが普通に……ラッパ我リヤが普通にテレビにっていう(笑)。
(高橋芳朗)フハハハハッ!
(渡辺志保)本当、本当。
(宇多丸)『いいとも!』に出ていたからね。
(渡辺志保)私も『ミュージックステーション』かなにか、他の歌番組で拝見した覚えがあります。
(宇多丸)非常に景気がいい時代でございました。そんな中、2001年にこれは本当に我々、ライムスター。EAST END、ライムスター、Mellow Yellowで始めたファンキーグラマークルーからRIP SLYME、そしてKICK THE CAN CREWというグループがメジャーデビューを果たし、いまだに……キックなんかも復活を果たして。実際にいまだに売れているということで。ヒップホップの浸透にさらに大きく貢献することになるということで。ぜひ、これはKICK THE CAN CREWの、これは2002年なんだ。このシングル。このシングル、なにがすごいって、3人MC、ラッパーがいるじゃないですか。KREVA、LITTLE、MCU。こんなに難しい3人の掛け合いはないです。
(DJ YANATAKE)カバーをされましたもんね。
(宇多丸)そう。自分たちでカバーしてみてわかったけど、めちゃめちゃ難しいです。しかもこの曲ってなにも言っていないんですよ。とにかくパーティー……みなさん、この最初から聞いていただいている方はわかると思いますけど、ヒップホップの生まれた瞬間、基本はパーティーですから。「楽しくやろうぜ」っていうこと以外なくて。だから本当にただの上手いラップの誇示しかしていないというか。それで、ここまで売れる。要するに、いわゆるいいことを歌っているわけでもないし。
(渡辺志保)メッセージ性がどうとかっていう、そういうこととは違う。
(宇多丸)なんなら無意味ですから。だからこんな『マルシェ』なんて適当なタイトルをつけて。
(高橋芳朗)フハハハハッ!
(宇多丸)当時の某食品CMに出る感じのループだからこれが付いてるっていうんですから。ということで、2002年の大ヒット曲でもあり、この3MCの掛け合いの高度さにびっくりしていただきたいと思います。KICK THE CAN CREWで『マルシェ』。
KICK THE CAN CREW『マルシェ』
<書き起こしおわり>
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