チャド・スタエルスキ リナ・サワヤマと伊澤彩織の『ジョン・ウィック4』起用を語る

チャド・スタエルスキ リナ・サワヤマと伊澤彩織の『ジョン・ウィック4』起用を語る アフター6ジャンクション

2023年9月26日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中で宇多丸さんが『ジョン・ウィック:コンセクエンス』のチャド・スタエルスキ監督にインタビュー。アキラ役のリナ・サワヤマさんや、そのスタントダブルの『ベイビーわるきゅーれ』伊澤彩織さんの起用、そして劇中挿入歌としてHUNGER『わ道 DJ Mitsu the Beats Remix』を使用したことなどについて質問していました。

(宇多丸)続いての質問なんですが。さあ。お待たせしました。リナ・サワヤマさんに関する質問でございます。宇垣さんも大好き。この番組でもね、音楽アーティストとして何回も紹介してきたリナ・サワヤマさん。どういう風に決まったんですかということ。そしてこの番組ではどうしてもこれを聞かなきゃいけなかった。『ベイビーわるきゅーれ』でおなじみ伊澤彩織さん。どうやらリナ・サワヤマさんのスタントダブルを務めてるらしいというのを聞いて以来、ワクワクしていて。実際、やってるわけですね。クレジットにも輝かしく載っていますが。彼女の話。そして、劇中で流れる私も非常にゆかりが深いある日本語ラップ曲についての質問。これは他のメディア、あんまりしないんじゃないかというあたり、行ってみました。どうぞ。

<インタビュー音源スタート>

(宇多丸)あと、その今回の大阪のシークエンスで言うと、我々がすごく嬉しい驚きだったのはリナ・サワヤマさんの起用で。僕はシンガーソングライターとしての彼女というのを番組でも紹介していて。素晴らしいアーティストだと思うんですけども。彼女が『ジョン・ウィック』に出るっていうのを聞いて「ええっ!」っていう一番嬉しい驚きだったんですが。彼女のキャスティングはどうやって決まったんでしょうか?

リナ・サワヤマのキャスティング

(チャド・スタエルスキ)彼女に巡り合ったのは全くの偶然だったんだ。アキラ役については何年も前に考えた明確なイメージがあった。屋上の上でのワンショットで横顔のクローズアップ。自分の父親が今にも殺されてしまう、その瞬間の本当に悲しい横顔。そんな場面を想像していた。でも、ぴったりの俳優が見つからなかった。撮影まで2ヶ月を切っても、まだ見つからない。夜中のベルリンで困り果て、日本人のポップスターやダンサーをネットで探していたんだ。その時にリナを発見したんだ。YouTubeで彼女のビデオを何本も見たよ。すると、ビデオやパフォーマンスごとに印象が全然違う。髪型も衣装もダンスも曲ごとに違っていた。感情表現も素晴らしかった。「これはぴったりだ」と思って3日ぐらいリナのことを考えていたよ。

アキラ役の俳優は相変わらず見つからないので、一か八かで彼女のエージェントに連絡した。そこからロンドンでレコーディング中だったリナに繋がって、ビデオ通話で20分ぐらい話すことができたんだ。「どうも。チャドといいます。『ジョン・ウィック』という映画の監督です」と挨拶したら、「『ジョン・ウィック』、大好き!」と言ってくれたので「えっ、本当? じゃあ、新作に出てくれません? ちょっとした役なんですけど」とお願いしたんだ。でも「いや、それはいいです。私、俳優じゃないので」と断られてしまったよ。「とにかくベルリンまで来てもらえませんか?」と食い下がったら、本当に来てくれた。

それからキアヌと3人で話をして、スタントチームにも会ってもらった。1時間ぐらい一緒にトレーニングをしたかな? するとキアヌもチームも『彼女は素晴らしい』と褒めていた。だから『映画に出てくれませんか?』と改めて聞いたんだ。今度は『ええと……はい』と返事をくれて、正式にベルリンにやって来た。それから真田広之と話してもらったら、広之も「彼女はすごいぞ!」って言うんだ。だから、リナの役も大きくなったんだ。

(宇多丸)あの、彼女はもちろんアクションは未経験だったと思いますけど。彼女のスタントダブルを務めたのが伊澤彩織さんっていう、日本のめちゃくちゃアクションできる俳優さんなんですけども。彼女の印象とかっていうのは、ありますか? というのは彼女の主演作の『ベイビーわるきゅーれ』という映画があって。これ、我々は大好きな日本の新しい時代のアクション映画だと思っていて。特に伊澤さんは本当に素晴らしいんですけど。リナさんのスタントダブルを務められた伊澤さんの印象などは、ありますか?

(チャド・スタエルスキ)彼女もすごかったね。(川本)耕史に頼んで伊澤彩織と和田崎愛の女性スタント2人を連れてきてもらった。2人とも、素晴らしかったよ。動きも反応もめちゃめちゃ早いんだ。最高だったよ。なにもパンチやキックだけがスタントじゃない。演技することもスタントのうちなんだ。彩織のリハーサルが終わって耕史を見ると「彼女、演技できるだろ?」って言うんだ。その通りだったよ。彩織はリナの演技を完璧にコピーしてて、全く同じように歩いたり、頭を動かしたり、振り返ったり。素晴らしい俳優だね。

(宇多丸)彼女のその『ベイビーわるきゅーれ』っていう作品はご覧になりましたか?

(チャド・スタエルスキ)彩織が送ってくれたのを見たよ。すごく楽しかった。

(宇多丸)あの映画の主人公の殺し屋の女の子2人がいて。僕の夢は『ジョン・ウィック』シリーズのあの世界に、あの2人がいつか入ってこないかなということなんですけど。

(チャド・スタエルスキ)できるかもしれないよ。今は『ジョン・ウィック』のアニメやテレビシリーズを作っているところなんだ。彩織はキャストの候補に入っているよ。

(宇多丸)嬉しい(笑)。あと、日本の場面の話で言いますと、すごい細かい部分なんですが。大阪の場面でコンチネンタルの中の厨房の場面で流れてる音楽がHUNGERという日本のラッパーの『わ道』という曲で。これ、僕の友人なんです。なので、めちゃめちゃ嬉しかったんですね。

HUNGER『わ道 DJ Mitsu the Beats Remix』

(宇多丸)やっぱり、あの場面には日本語のラップが欲しいみたいな意図があったんでしょうか?

(チャド・スタエルスキ)そうだね。イケてる曲がほしかった。最初は別のラッパーを考えていたんだけれども、HUNGERの曲を聞いて「これだ!」と思った。楽しいんだけど、エッジが効いていてタフな印象を受けた。ビートもあってシマヅの歩く姿にぴったりはまったよ。使ったのは短い時間だったけど、満足している。HUNGERに繋がるまではちょっと時間がかかったんだ。何ヶ月かかけて、やっと許諾がもらえたよ。君に電話をすれば、話が早かったね(笑)。

(宇多丸)いつでも待っています(笑)。

<インタビュー音源おわり>

(宇多丸)はい。ということでHUNGERの話なんかもね、聞いておりますが。HUNGERに番組に出てもらった時にね、「とある間に入ってもらった人がすすめてくれて」みたいに言っていましたけども。やっぱり繋がるのにはちょっと時間がかかったみたいなことはね、なるほどなと思いましたけども。そしてリナ・サワヤマさんのキャスティングについて。

(宇垣美里)よくぞ、粘ってくれた!

(宇多丸)ねえ。要は最初はリナさん、そこまで気乗りしてたわけじゃないのを、どんどん取り囲んでいく感じっていうか。

(宇垣美里)もう囲んで、囲んで。総力戦みたいな(笑)。

(宇多丸)そりゃ逃げられないわ、みたいな。でも彼女も、たぶんダンスとかもバリバリやるから、体はやっぱりできてるというか。そういうところもあるんでしょうね。

(宇垣美里)佇まいとかもね、素晴らしかったです。

(宇多丸)そして、伊澤彩織さんですよ! 『ベイビーわるきゅーれ』。

(宇垣美里)嬉しい! 見つかった!

(宇多丸)やっぱり、もちろんスタントマン同士だから、本当に通じ合うものがめちゃくちゃあるのは間違いないだろうし。演技もちゃんとできる。そしてね、「いや、今後も可能性はあるよ。彩織はキャストの候補に入ってるよ」って。

(宇垣美里)嬉しい! 見たいよ!

(宇多丸)ちなみに今、『ジョン・ウィック』のスピンオフ。既にAmazon Primeで『ザ・コンチネンタル』っていう前日譚をやっていますけども。あのウィンストンの若き日の。これがね、結構見応えがあるんだよ。結構……今、第1話なんだけど。結構、ちゃんとすごい。ちゃんと『ジョン・ウィック』シリーズです。しかも、ちゃんとクラシカルな臭いもあって。あと、ヒューズ兄弟の片割れっていうか。『Menace II Society』の監督なんですけど。彼がやっているので、ちょっとブラックスプロイテーション映画っていうか、ファンキーな音楽使いというか。当時の音楽使いとかもめちゃくちゃすごくて。すごいおすすめ!

(宇垣美里)見ます!

<書き起こしおわり>

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