スポンサーリンク

丸屋九兵衛と宇多丸 Pファンクを語る

丸屋九兵衛と宇多丸 Pファンクを語る 宇多丸のウィークエンド・シャッフル
スポンサーリンク
スポンサーリンク

(丸屋九兵衛)そうなんです。これね、Pファンクってジャンルでもあり、クルーでもあり、ジョージ・クリントンが指揮するミュージシャン集団の俗称、通称、総称ですね。で、主にパーラメント(Parliament)というバンドと、あとファンカデリック(Funkadelic)というこの二大バンドが中心なんですけど、ややこしいことにこの二大バンドがメンバーがほぼ同一であると。で、そこにブーツィー・コリンズ率いるブーツィーズ・ラバー・バンドとか、あとはソロ展開もあり、なおかつグルーピーから発展したんではないか? というんですが、某恐怖映画のタイトルをもじったドクター・ファンケンシュタインの花嫁たちというグループがあったりとか。

(宇多丸)うん。

(丸屋九兵衛)そういう、一部のメンバーがかぶっているにもかかわらず、たぶん総勢50人ぐらいいるっていう。

(宇多丸)あと、プロデュースした人も、それこぞザップとかまで含めれば、裾野がもうどんどん広がっていく。

(丸屋九兵衛)たぶん3桁は間違いないっていう、そういう集団でありまして。これがまあ、根強い人気とダイハードなファンがいますでしょ?

(宇多丸)そうですね。しかも、その根強さっていうのが後ほど出てくるかもしれませんけど、特に西海岸ヒップホップの連中はね、もう精神的なところからまんま受け継いでいるっていうか。

(丸屋九兵衛)まさに。今日、だって士郎さん、デジタル・アンダーグラウンドTシャツで。

(宇多丸)ええ! これはPファンク特集となってね、いちばん僕が持っているTシャツの中でPファンク色が強いものとなると、こうなってきますよ!

(丸屋九兵衛)はっきり、「Humpty Hump」って。

(宇多丸)はっきり書いてありますね。デジタル・アンダーグラウンドというグループ。これ、オークランドのグループですけども。

(丸屋九兵衛)このデジタル・アンダーグラウンドが出てきた時にジョージ・クリントンが言っていたのは、「Pファンクをサンプリングするやつは多いけども、Pファンクのキャラクターまでサンプリングしたのはデジタル・アンダーグラウンドが初めてだ」と。

(宇多丸)要は架空のストーリーとかキャラクターを語っていく。ここがPファンクの醍醐味なわけですよね。

(丸屋九兵衛)そうなんですよね。やはり、ちょっと私も考えたんですけど。いま、手元に持ってきた『BLUES&SOUL RECORDS増刊号 No.1ヒットで知るソウルの歩み 1970年代編』っていう本があるわけですよ。で、表紙がブーツィー・コリンズだったりするんですけど、その割にはPファンク系のナンバーワンヒットはほとんどないっていう。

(宇多丸)そういう、だからポップチャートに入ってヒットとか、そういうことじゃないんですね。

(丸屋九兵衛)でもこれ、ソウルチャート。ソウルチャートでもやっぱりナンバーワンヒットはあんまりないんですよ。

(宇多丸)まあ、これから曲を聞けばみなさんわかると思いますけども。長いし……

(丸屋九兵衛)まあ、最長15分ぐらいですかね。

(宇多丸)長いし、コテコテでグチョグチョだしっていう。

(丸屋九兵衛)で、展開がほぼないというね。で、そういうヒット実績は少ないのに、日本はもちろんUKでもフランスでもドイツでも、マニアが多いのはなんでやろ?って考えるとやっぱり……

(宇多丸)若い層もいまだにファンが多いし。

(丸屋九兵衛)そうなんですよ。やっぱりストーリー性がね、宇多丸師匠がおっしゃったようにコンセプトアルバムを1、2枚出すんじゃなくて、全盛期を通じてずーっと風刺的なSFストーリーをアルバムで展開し続けた、たぶん世界史上唯一のグループなんじゃないか? と。

(宇多丸)この「SF的」っていうのがね、黒人的なファンクネスとSFイズムの融合みたいなところもありますね。

(丸屋九兵衛)この自伝に書いてありますけども、「コンセプトはゲットーのスター・トレック」と言い切りましたからね。で、まさに『スター・トレック』が昨日から今日にかけて、まさに50回目の誕生日。

(宇多丸)そのタイミングもあってのこのPファンク特集。

(丸屋九兵衛)左様でございます。

(宇多丸)丸屋さんの中では、惑星直列が起きているというね。まあ、アレな人特有の思考法というね(笑)。

(丸屋九兵衛)「アレ」ってなんです?(笑)。で、まあそのSF的なストーリーとしては、まずは『Mothership Connection』というアルバムでスターチャイルドという主人公が登場し、その次のアルバムでドクター・ファンケンシュタインという正義の黒幕が登場し。で、その次のアルバムでは悪玉であるサー・ノーズ……士郎さんもやりました? 喉を震わせて「I am Sir Nose」って……

(宇多丸)やってないですけど(笑)。

(丸屋九兵衛)やってない?

(宇多丸)まあ、サー・ノーズっていう鼻がデカいね。

(丸屋九兵衛)だから、扇風機の前で歌うと全部ザップになるとか、あるじゃないですか。

(宇多丸)まあまあ、僕はどっちかっていうとブーツィーの「ヤーバダバッ♪」って。そっちをやってましたから。

(丸屋九兵衛)なるほど。とか、ミスター・ウィグルズとか、ランプ・オブ・スティールスキンとかいろんなキャラクターが出てくる。

(宇多丸)キャラクターもあるし、それこそバップ・ガンというSFガジェットも出てくるし。というぐらいに、そのSF的世界観とストーリーが……そんなにでも、きっちりストーリーをアルバム通して語っているということろまでは僕もわかっていなかったです。

(丸屋九兵衛)まあ、でも言っちゃなんなんですけどファンクバンドなんで。たまに突然ラブストーリーとかね。

(宇多丸)関係ねえだろ!っていう(笑)。

(丸屋九兵衛)でも、たとえばお母さんに捧げる曲とかがあっても、やっぱり「俺のおふくろを見かけたら、俺は元気でファンクしてるって伝えてくれよ」っていう。やっぱりファンクがほとんど宗教のごとき扱いになって、お母さんバラードが成立しているっていう。

(宇多丸)とにかく、だからスケールが、曲で伝えようとしている曲そのものの長さもそうだし、人数もそうだし、歌詞の世界観もそうだし。スケールがとにかくデカいっていうか。

(丸屋九兵衛)デカいところになぜか、その宇宙的な宗教としてのファンクを崇め奉るみたいなところがありますよね。

(宇多丸)うんうんうん。で、いろんなキャラクターも出てきて、それがまあ、一種バカバカしく、コミック的な……

(丸屋九兵衛)本当にバカバカしいです。戦いのレベルはかつてのタケちゃんマンとブラックデビル並にひどいです。

(宇多丸)あ、でもそのノリですね! タケちゃんマンとブラックデビルのその感じですね。

(丸屋九兵衛)あのひどさですね。

(宇多丸)で、実際にステージングとかも宇宙船が出てきて。

(丸屋九兵衛)本気で宇宙船をステージに着陸させた唯一のグループと言われてますけども。

(宇多丸)本当に円盤型ですもんね。

(丸屋九兵衛)いや、ステージに着陸したのはむしろアポロの月面着陸船に似ている感じですかね。だから、ジャケットとぜんぜんちゃうやん!っていう突っ込みがみんなの心の中で起こらなかったのか?っていうのがすごく不思議で。


※動画9:10あたりで宇宙船が着陸します

(宇多丸)まあ、でもとにかく宇宙船を着陸させて。で、みんなそれぞれステージングもいろんな扮装をしてやったりとか。

(丸屋九兵衛)まあ、ひどかったですよね。格好はね。

(宇多丸)どんな扮装の人がいるんですか?

(丸屋九兵衛)扮装に関してはピラミッド型の人とか……

(宇多丸)(笑)

(丸屋九兵衛)あとはまあ、オムツ1枚の人。あと、花嫁姿の黒人男性……

(宇多丸)(笑)

(丸屋九兵衛)まあでも、あれ以来、黒人男性が花嫁姿をするのって定番になりましたね。

(宇多丸)なんかフェチとして感じられる。

(丸屋九兵衛)その後に、キャメオのラリー・ブラックモンがやり、後にはデニス・ロッドマンが。

(宇多丸)ああ、たしかに!

(丸屋九兵衛)やりましたでしょ? あれがまた、妙に美しかった。

(宇多丸)まあ、要はちょっと傾奇者イズムなわけですよね。

(丸屋九兵衛)ああ、すごく傾奇者ですね。ただね、こういう変なことをやっていたんですけど、Pファンクってほら、90年前後に日本で再評価されたんですけど。

(宇多丸)ちなみに改めて言っておくと、全盛期は何年ごろなんですか?

(丸屋九兵衛)75年から80年っていうところですかね。

(宇多丸)意外と短いんだね。

(丸屋九兵衛)まあまあ5年ですよ、やっぱり。

(宇多丸)まあ、旬の音楽のあれっていうのはそのぐらいでしょう。で、90年代ぐらいに日本でも再評価を。

(丸屋九兵衛)されたんですけど。

(宇多丸)逆に言えば、その前って本当にマニアしか聞いてない世界?

(丸屋九兵衛)80年代……要するに70年代の日本の音楽評論界っていうのはあくまでもソウルだったんですね。

(宇多丸)歌ね。「しみるわー!」って。甘茶ソウルみたいなことですもんね。「辛抱たまらん!」っていうね。

(丸屋九兵衛)だから、こんな変な格好をしたおっさんたちのいるバンドっていうのは謎だったんですよ。

(宇多丸)しかもね、歌もないところが延々続いてね。

(丸屋九兵衛)そう。曲が15分もあるし。

(宇多丸)早稲田のソウルミュージック研究会に行った時に最初に叩きこまれたのは、「士郎、なんといってもブラックミュージックはPファンクに限る!」って(笑)。

(丸屋九兵衛)(笑)。それもまた、偏見がすごいですね。

(宇多丸)「とにかくPファンクがわからないようでは……」っていう感じで、まず叩きこまれたのがPファンクイズムだったんですね。

(丸屋九兵衛)素晴らしいですね。

(宇多丸)さあ、ということで、再評価時期もあったんだけど……

(丸屋九兵衛)だけどあの時期ってほら、日本の音楽界は、まず評論家たちの英語力がまだまだっていうこともあって……

(宇多丸)英語力っていうか、これヒップホップ評論もそうなんですけど、そもそも歌詞を理解しようっていう気がないで聞いている人が多かった気がするんですよ。

(丸屋九兵衛)そう。まさにそれを言おうと思ったんですけど。士郎さんもライターを始めた頃に、周りのおっさんたちがあまりにもヒップホップがわかってなくて、閉口したでしょ?

(宇多丸)そうですね、そうですね。

(丸屋九兵衛)あれが、もっとおっさんのための音楽であるはずのPファンクでも90年ぐらいに起こっていたっていう。

(宇多丸)じゃあ、要するにそんなこと言ってないのに、なんかそういう風に書くとか?

(丸屋九兵衛)ブーツィーのね、『Bootzilla』っていう曲、あるじゃないですか。で、まさにいまこそ理解しなくちゃ行けないんですけど。あれって「ブーツィー(Bootsy)」プラス「ゴジラ(Godzilla)」なわけですよ。

(宇多丸)うんうんうん。

(丸屋九兵衛)だから、怪獣としてのブーツィーなのに、あれを「ブーツィー・ランド(ブーツィー国)」だと。もう、澁澤龍彦かと。ドラコニアかと。

(宇多丸)それはそれでコンセプトとしてなさそうでもないから面倒くさいけど……

(丸屋九兵衛)ないんだけど、これは……だって、日本が生んだゴジラをわざわざ合体させてくれているのに、それを理解し得ない日本とはなんなのか? と。

(宇多丸)なるほど、なるほど。でも、ちょいちょいそういうことはあったでしょうね。BDPの『Bridge is Over』がね、「橋の終わるところ」って……(笑)。「と、センチメンタルに歌った」っていう評を見て、僕は笑い死にするかと思ったんですけどね。

(丸屋九兵衛)(爆笑)

(宇多丸)いや、でもすごい有名な人が書いた文なんですよ。それは。まあいいや、それは。でもそんな感じで誤解も多かったと。

(丸屋九兵衛)多かったんですよ。

(宇多丸)そういう意味では、その後ね、Pファンクのイズムが特に西海岸。Gファンク以降のラッパーたちとか、割とそういう理解度は深まったんですかね? 今は。

(丸屋九兵衛)だと、思います。なんと言っても『Let Me Ride』でドクター・ドレーが「マザーシップをインパラに置き換えて乗せてくれよ」って言ったのは、あれはなかなか美しかったと思いますね。

(宇多丸)なるほど、なるほど。それをだからもうちょっと自分たちの生活感みたいなのに引き寄せて。

(丸屋九兵衛)引き寄せて。残念ながらジョージ・クリントンに言わせると、「デジタル・アンダーグラウンドと違って音楽をサンプリングしただけだ」っていうことになるんでしょうけど。

(宇多丸)でも、ヒップホップに関してこの自伝だと、すっごいジョージ・クリントンは完全に支持っていうか。完全に支持だし、むちゃくちゃ研究しまくって。「ボム・スクワッドみたいなサウンドが作りたくって……」って。「自分たちの曲をサンプルして作り上げた新しい世代のグループみたいな音が作りたくてやったんだけど、そのスキルが自分にはなかった」って(笑)。

(丸屋九兵衛)だけど、面白いのは「ドクター・ドレ―が『Fuck The Police』事件の時にドレーが震えていた」って(笑)。

(宇多丸)「FBIに目をつけられて震え上がっていた」って(笑)。

(丸屋九兵衛)やっぱここでドレーのヘタレ伝説がまた強化されてしまうという(笑)。

(宇多丸)でも、アイス・キューブはイケイケで……みたいな話も出てきますもんね。

(丸屋九兵衛)あと、ジョージ・クリントンが見たコンプトンって、「これって郊外の街なんじゃないの?」っていう。

(宇多丸)「全然ゲットーじゃないんですけど」みたいな。

(丸屋九兵衛)まあ、我々もコンプトンの風景を見て、「これって洒落てるよな」って。「板橋区より、だいぶいいよな」っていう(笑)。

(宇多丸)(笑)。面白いね。そのへんのさ、彼一流の、ジョージ・クリントンしか言えないあれが……

(丸屋九兵衛)これは他の人が言ったら怒られるでしょうね。

(宇多丸)面白いですね。ということで、ちょっとここらで曲を聞きましょうよ。さっきからなんなんだ?っていうことになってしまうと思うから。

(丸屋九兵衛)まあ、こってり濃い目のPファンクで、なおかつちゃんとある程度ヒットした曲っていうと、これしかないかもしれないなということで。パーラメントの『Flash Light』。

Parliament『Flash Light』

(宇多丸)はい。ということで、『Flash Light』というパーラメントの代表曲にしてPファンクの中でもいちばん有名な曲。

(丸屋九兵衛)の、ひとつですね。

(宇多丸)もう、「あっ!」って思った人も結構いるんじゃないですかね。サンプリングソースとして本当にこの1曲の中に何個詰まっているんだ?っていうぐらい。山ほど、たぶん枚挙にいとまがないというか。ちょっと挙げてられないぐらいだと思いますけども。

(丸屋九兵衛)だけどこれは、さっき言ったタケちゃんマンの戦いのような戦いの描写なんですよね。

(宇多丸)ああー、レーザー光線が行き交っているような。

(丸屋九兵衛)で、サー・ノーズがいままさに就寝しよう、寝ようと思っているところに、懐中電灯で嫌がらせをすると。だから、「フラッシュライト」。

(宇多丸)客も、それでフラッシュライトで照らしていると。サー・ノーズっていうのは要は、野暮天っていうか。「ファンクとか全然とんでもないし、俺は踊らないし……」っていうやつなんですよね。なんだけど、その野暮天キャラがめちゃ人気が出ちゃって。

(丸屋九兵衛)かっこいいんですよ! だからスヌープもサー・ノーズ化してますでしょ?

(宇多丸)だから、サー・ノーズを舞台上で曲の流れ上、やっつけようとすると客からブーイングが起きたとか。あの話とかすっごい面白いですよね(笑)。

(丸屋九兵衛)(笑)

(宇多丸)最高でございます。ということで、後ほどまたね、ジョージ・クリントンとはこんな人とかも含めて、Pファンクについてさらにいろんなお話をうかがっていきたいと思います。

タイトルとURLをコピーしました