丸屋九兵衛と宇多丸 Pファンクを語る

丸屋九兵衛と宇多丸 Pファンクを語る 宇多丸のウィークエンド・シャッフル

丸屋九兵衛さんがTBSラジオ『タマフル』でPファンクを特集。宇多丸さんとPファンクについてたっぷりと語り合っていました。

(宇多丸)今夜の特集は、こちら! 丸屋九兵衛プレゼンツ みんな大好きPファンク特集!

(宇多丸)さっそく今夜のゲストをお呼びいたしましょう。音楽サイト『bmr』編集長、丸屋九兵衛さんです。

(丸屋九兵衛)こんばんは。お久しぶりでございます。よろしくお願いします。

(宇多丸)はい。ということで丸屋九兵衛さん。音楽評論家、編集者、ラジオDJとしても活躍。ブラックミュージック専門誌『bmr』編集部を経て、現在は音楽情報サイト『bmr』の編集長。以前は『ストレイト・アウタ・コンプトン』特集で来ていただきました。『ストレイト・アウタ・コンプトン』の言い回しの解説をさらに詳しくされた本も……

(丸屋九兵衛)タイトルがむっちゃ長い、『丸屋九兵衛が選ぶ、ストレイト・アウタ・コンプトンの決めゼリフ』でしたね。

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(宇多丸)あれ、でもすっごいよかったです。さらに決定版的な『ストレイト・アウタ・コンプトン』のサブテキストというか。僕も全然わかっていなかったこと、いっぱいあったし。さすがでございます。

(丸屋九兵衛)いえいえ、ありがとうございます。

(宇多丸)中でね、この特集をした時の私がね、ジェリー・ヘラーの顔が似ていないって(笑)。

(丸屋九兵衛)ジェリー・ヘラー問題を語っているうちに、(時間が)なくなっちゃいましたからね。

(宇多丸)ああ、そうですね。

(丸屋九兵衛)で、最終的に「やっぱりジェリー・ヘラーはジアマッティっていう顔じゃないよな」っていう……

(宇多丸)ポール・ジアマッティが似ていないっていう。俺が「ジェリー・ヘラーの顔とか、どうでもええわ!」って(笑)。「いや、どうでもよくないですよ!」っていう。そのやり取りがちゃんとその本にも載っています。ぜひ、『ストレイト・アウタ・コンプトン』自体が映画としても素晴らしいですし、副読本としておすすめでございます。で、今回はなんとですね、Pファンクということで。

(丸屋九兵衛)そうなんですよ。

(宇多丸)みんな大好きPファンク特集とか言ってますけども……

(丸屋九兵衛)本当にみんな大好きなのか?っていうことをまずね。

(宇多丸)これ、反語、反語。反語的意味ですよ。ただ、Pファンクね。それこそ僕とかはブラックミュージック……そこれそソウルミュージック研究会に(大学時代に)いたぐらいですからわかりますけど。どうなんでしょうね? 一般的にどのぐらい伝わっているのか、いないのか? それにPファンク特集って、僕自身、「えっ、ずいぶんデカく出るね?」っていうか(笑)。そこまで、この時間で把握できるのか?っていうことで。まずはなぜ、このタイミングでPファンク特集なのか? といったあたり。

(丸屋九兵衛)まずは、本国で予期せぬベストセラーを記録したジョージ・クリントン自伝があるわけです。

(宇多丸)ジョージ・クリントンというのは……

(丸屋九兵衛)Pファンクの親玉です。その人が2014年に出した自伝がついに邦訳となって発売されたと。で、その自伝はアメリカでは予期せぬベストセラーということで、ニューヨークタイムズのブックレビューで「本年度の音楽系書籍のベストのひとつ」とまで言われたと。あのニューヨークタイムズでという。

(宇多丸)へー! その「予期せぬ」っていうのはやっぱりアメリカで……もちろんね、過去の音楽ジャンルでもあるし、ジョージ・クリントンの自伝とかって、ここまで売れると思わなかったと?

(丸屋九兵衛)っていうことだと思うんですよ。それが、今年になって邦訳が。

(宇多丸)面白いタイトルがついているじゃないですか。

(丸屋九兵衛)『ファンクはつらいよ ジョージ・クリントン自伝(サーガ) バーバーショップからマザーシップまで旅した男の回顧録』。「自伝」と書いて「サーガ」と読めという、なかなか無茶な注文ですけどね。

(宇多丸)(笑)。長いですね! この長いタイトルからもみなさん、なんとなく想像はついているでしょうが、監修は丸屋九兵衛ということですね(笑)。まあ、素晴らしい。拝読しました。めちゃめちゃ面白かったですよ。もう、こんな波乱万丈なというかね。ちょっと、どこまでが本当なのか? という……

『ファンクはつらいよ ジョージ・クリントン自伝』

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(丸屋九兵衛)そうそう。だから若干眉唾もののエピソードもないわけじゃない。

(宇多丸)後ほど、そのあたりの話もうかがっていこうと思いますが。で、まあとりあえずジョージ・クリントンの自伝が。

(丸屋九兵衛)自伝が話題になって。その自伝がやっと日本でも出たと。

(宇多丸)まず、そのタイミングだと。さらに?

(丸屋九兵衛)で、それを引っさげて……「引っさげて」っていうのもアレですが(笑)。自伝を引っさげて、11月にはまたジョージ・クリントンの来日公演が昨年に続いてあると。

(宇多丸)でも、この自伝を読むとやっぱりPファンク、なんか機会があれば。僕、2002年とかのFUJI ROCKで見たのが最後なんで。やっぱり行きたくなりますね。

(丸屋九兵衛)なんかね、最近調子いいんですよ。本当に。

(宇多丸)ああ、そう? ジョージ・クリントンが?

(丸屋九兵衛)ステージでも。

(宇多丸)ああ、なんか丸屋さんの文章の中でも、あとがきでも出てきますけども。前に会った時よりも若返っているなんて……

(丸屋九兵衛)そうなんですよ。

(宇多丸)これは、やっぱりあれですかね? 最近、自伝なんかも調子いいしっていう?

(丸屋九兵衛)あとはまあ、自伝の内容に触れちゃいますけども。ドラッグを止めたんですね。長年、30年ぐらいずーっと浸りきりだったクラックを……

(宇多丸)しかも結構ハードにクラックなんかやっていてね。よく身体、壊さなかったなっていう。

(丸屋九兵衛)逆に、よくあんなに太ってられたなっていう。

(宇多丸)おかしいでしょ?(笑)。

(丸屋九兵衛)普通、クラックやったらボロボロに痩せるでしょ? それこそ『ニュー・ジャック・シティ』の時のクリス・ロックみたいにボロボロに痩せるでしょ? なぜ、それで136キロまでいけたのか?っていう。

(宇多丸)だからもともとその調子だったところが、もうドラッグを止めたら、「あれ? 調子いいぞ!」みたいな感じになっちゃって。

(丸屋九兵衛)で、ライブもだいぶいいんですよ。だから、この10数年でいちばんいいかもしれない。

(宇多丸)あ、本当に? じゃあそういう意味でもライブも見どきでもあるしという。

(丸屋九兵衛)それに加えて、「クリントンが元気になると、クリントンがホワイトハウス入りする」というジンクスがあり。つまり、ジョージ・クリントンが復活すると、クリントン姓を名乗るものが大統領になるという。

(宇多丸)前の、旦那の方の(ビル・)クリントンがなった時も?

(丸屋九兵衛)前のあれも90年前後のジョージ・クリントン復活期を経て、いとこのビル・クリントンが大統領になり。で、その時にジョージ・クリントンがね、残したコメントというのが、「アメリカの大統領というものに本当の意味で権力があるとは思っていないから、クリントン家の名に恥じない程度にがんばればいい」っていう(笑)。

(宇多丸)(笑)。上から目線!

(丸屋九兵衛)もう完全に上から目線(笑)。

(宇多丸)まさかの上から目線で。で、まあね、ヒラリー・クリントンもね。

(丸屋九兵衛)大統領にならんとせん勢いですよ。

(宇多丸)なるほど、なるほど。まあそれはちょっとこじつけにしてもですよ。

(丸屋九兵衛)まあ現在のアメリカのエンタメおよび政治ともかかわりがあるんじゃないか? という。

(宇多丸)まあ、でもここからね、お話をうかがっていくことでたぶんみなさんもわかると思いますが、本当に現在の音楽シーンにも大きな影響を与えた……前にね、ジェームズ・ブラウン特集なんていうのがありましたけど。まあJBはね、もちろん影響度っていうのは話デカすぎですけども。ループミュージック全体っていうことですから。

細田日出男と宇多丸 ジェームズ・ブラウンの偉大な功績を語り合う
(細田日出男)なんで怖いの?(笑)。 (宇多丸)大先輩すぎてちょっと、恐縮でございます。 (細田日出男)いや、どうもありがとうございます。お呼び頂いて。 (宇多丸)いえ、とんでもないです。JB特集をやろうかなと考えた時に、いろんな人の名前を...

(丸屋九兵衛)まあ、そうですよね。

(宇多丸)Pファンクがどのような影響を与えたのか? というあたり、うかがっていきたいんですが。まず、そのPファンクとは何ぞや?

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