高橋芳朗・渡辺志保・DJ YANATAKE 90年代ヒップホップ名盤を語る

高橋芳朗・渡辺志保・DJ YANATAKE 90年代ヒップホップ名盤を語る INSIDE OUT

(高橋芳朗)レア盤化してるっていう話は聞いてたんですけど。そんな値段がついてましたか?

(DJ YANATAKE)そんな値段で。しかも、iTunesとかで売ってないんですよ。だからCDを買うしかないし、日本の再発に、おそらく世界中のコレクターがちょっとどよめいたんですよね。なので、日本版もたぶんそんなに数も多くないし。いまのうちにこれをゲットしておいた方が・・・

(高橋芳朗)いや、本当それ、そうなんですよ。去年もやったじゃないですか。再発企画。ウルトラマグネティックMC’s(Ultramagnetic MC’s)の『Critical Beatdown』。いま、プレミアついてます。もう、amazonで。

(渡辺志保)もう?

(DJ YANATAKE)マジだ?だからこれ、再発とはいえ、高橋芳朗セレクト。これ、油断できないぞと。これ全部ね、1400円とかなんですよね。

(高橋芳朗)もう激安ですよ。これがね、ちょっと目離してるうちに2万円とかになっちゃいますから。

(DJ YANATAKE)そうなんですよ。だからこれね、アキネリ。そういう意味でもやらせてもらって非常に。もともとね、レコード屋の、そういうレコードにプレミアをつけてきた人間としては・・・

(高橋・渡辺)(笑)

(渡辺志保)ご自身としては(笑)。

(DJ YANATAKE)なかなか興味深いアルバムをやらせてもらって。で、今日かけたい1曲なんですけども、このアキネリのデビュー曲で『Ak Ha Ha! Ak Hoo Hoo』っていう曲なんですけども。

(高橋芳朗)(笑)

(DJ YANATAKE)これ、でもね、いまだにスネアで『カンッ!』って始まるんで。結構DJとか2枚使いしやすかったりとか。あとね、結構これも下ネタラッパーなんて言われていたけど、いわゆるすごいヒップホップのベタなビデオなんですよ。だから結構ダンサーが普通に踊っていたり。DJの人がバンバンこすっていたり。でも、そのDJは実はエクスキューショナーズ(The X-Ecutioners)のロブ・スウィフト(Rob Swift)なんです。

(高橋芳朗)そうそうそう。

(DJ YANATAKE)で、ロブ・スウィフトはラージ・プロフェッサーにビートメイクの弟子入りしていたような時期なのかな?なので、結構そのへんがつるんでクイーンズの一時代を作っていたと。

(高橋芳朗)あの、ね。ロブ・スウィフトの『Dope On Plastic』という曲がありますけども。あれ、ラージ・プロフェッサーがラップしてますね。

(DJ YANATAKE)あれも大好きなんですよ。

(高橋芳朗)かっこいいですよね。あれ、タケちゃんのミックスに入ってたっけ?

(DJ YANATAKE)入ってますね。『Breakfast @ Denny’s』に。

(高橋芳朗)聞いてますよ!

(DJ YANATAKE)ありがとうございます(笑)。

(渡辺志保)素晴らしいですね。そのへんも差し込んで来て。さすがですね。

(高橋芳朗)ありがとうございます。はい。

(DJ YANATAKE)そんなわけでですね、アキネリのデビュー作ですね。僕が推薦曲としてかけさせていただきたいと思います。ラージ・プロフェッサープロデュース。アキネリの『Ak Ha Ha! Ak Hoo Hoo』。

Akinyele『Ak Ha Ha! Ak Hoo Hoo?』

(DJ YANATAKE)はい。いま聞いていただいてますのはアキネリの再発している『Vagina Diner』に入っているデビューシングル・・・

(高橋・渡辺)(爆笑)

(高橋芳朗)ひでータイトルだな、もう(笑)。聞くたびに、ひでータイトルだな(笑)。

(渡辺志保)どんなご馳走が出てくるのやら?っていうね。

(DJ YANATAKE)これ、本当に結構調べて。この解説をね、ぜひ手にとって読んでいただければですね、まだまだしゃべり足りないぐらい。最新アキネリ情報まで。

(高橋・渡辺)(爆笑)

(高橋芳朗)どうやって調べたんだよ!?

(渡辺志保)あなたが知りたい最新アキネリ情報(笑)。

(DJ YANATAKE)あのね、去年書いていた時に、『俺、なんで2015年にこんなにアキネリで頭がいっぱいになってんだよ?』っていうね。でも、それぐらいがんばって書いたんで。まだね、若干お店に残っているところ、あると思いますんで。探して、アキネリのアルバムを買ってください。

(高橋芳朗)たしかにこれね、ちょっとなくなったらヤバいことになりますんで。早めの入手をおすすめします。

(渡辺志保)本当ね。そうね。うんうん。

(DJ YANATAKE)まだまだプチ情報、いっぱいあるんで。アキネリ。

(渡辺志保)(笑)。アキネリトリビア。

(DJ YANATAKE)お願いします。

(高橋芳朗)ありがとうございます。

(DJ YANATAKE)じゃあ、続いて?

(渡辺志保)はい。では続いて私めが選んだ1曲を紹介したいと思うんですけども。一応ね、紅一点。私、唯一のこの番組の女性MCとしまして選んだのはトータル(Total)の『No One Else』ですね。まあ、なんだろう?この間もプッシャ・T(Pusha T)の新曲を紹介した時に、彼の最新の楽曲の中にもトータルのメンバー、Kima、Keisha、Pamの名前が出てきて。彼女たちのデビュー曲『Can’t You See』のタイトルがリリックの中に盛り込まれたりしてるんですよみたいな話をちょうどしたばかりですのでチョイスしたんですけども。

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(DJ YANATAKE)おおー。

(渡辺志保)もちろんね、みなさんはご存知かもしれないですけども、あのバッドボーイですね。ショーン・パフィ・コムズ(Sean Puffy Combs)率いるバッドボーイ・レコーズからデビューした女性3人組R&Bトリオということになりますけども。私、当時このアルバム。96年に出たトータルのファーストアルバムですね。デビューアルバムですけども。それを聞いて、この『No One Else』。ネタ元は超有名な『South Bronx』ですけども。

大ネタ『South Bronx』使い

(高橋芳朗)ブギーダウンプロダクションズ(Boogie Down Productions)。

(渡辺志保)ブギーダウンプロダクションズの。これを聞いて。フィーチャリングがダ・ブラット(Da Brat)なんですよね。

(高橋芳朗)ああー、そうだっけ?

(渡辺志保)それで、はじめて私、生まれてはじめて女性ラッパーの存在をそれで知った気がする。

(高橋芳朗)マジで!?すげーな。

(渡辺志保)もちろん、リル・キム(Lil Kim)とかもシーンにはいたんですけども。私もなんかそのタイミングではじめてトータルのアルバムを聞いて。知らなかったんですよね。きっとね。その当時。まだウブだったから。

(DJ YANATAKE)まあでも、ぜんぜんそうでしょう。だって、お若い頃でしょう?

(渡辺志保)お若い頃(笑)。

(高橋芳朗)ウブかどうかは関係ないと思いますけども。

(渡辺志保)広島のね、ウブな中学生です。中1ぐらいですね。それではじめて、『あ、女の人もラップするんだ!すごい!かっこいい!』みたいな。しかもトータルも、なんて言うんでしょう?いままで、R&B作品とか聞いていたけど。それこそ、ジャネット・ジャクソンとかメアリー・J.ブライジ(Mary J.Blige)とか聞いてましたけど。まあ、メアリーもちょっとハードコアなイメージがありましたけど。ジャケ写からして、サングラスかけたショートカットの黒人の女性がね、全身黒いレザーの服とか着て・・・

(高橋芳朗)たしかにね。

(渡辺志保)『サグい!こんなサグい女性ボーカリストがいるアメリカって、すごいな!』と思いまして。なんでしょう?サグの扉を開いてくれた・・・

(高橋芳朗)サグの扉(笑)。『サグ』と『扉』という言葉の愛称の悪さったらないですけども。でもね、バッドボーイのジャケットは当時のR&Bからすれば、洗練されていた方だと思いますけどね。

(渡辺志保)あ、そうなんですか?

(DJ YANATAKE)いや、ぜんぜんそうですよ。めっちゃかっこよかったっすよ。いやいやいや。

(渡辺志保)あれがかっこよかったんだ。まあ、たしかにね。

(高橋芳朗)もうファット・ジョー(Fat Joe)とかに比べれば、ぜんぜんかっこいいですよ。テラー・スクワッド(Terror Squad)とか。

(DJ YANATAKE)ファット・ジョーも悪く無いですよ!もっといなたいの、いっぱいありますよ。『Vagina Diner』よりはいいですよ!

(高橋・渡辺)(笑)

(渡辺志保)たしかに、たしかに。それもね、パフィーのね、コマーシャル戦法のひとつだったのかな?なんて思いますけども。本当ね、このトータルのアルバムは、みんなヒップホップヘッズはね、ビギー(The Notorious B.I.G.)とやった『Can’t You See』がいちばんリマーカブルな曲かも知れないですけども。当時、まだ私もそんなにラップ自体に免疫がなかったから、こういう大ネタ使いのわかりやすいコーラスの『No One Else』がいちばん響いたっていうところもありまして。で、もうこのアルバムは本当によく聞きましたね。というわけで、ぜひ、みなさまにも聞いていただきたいんですけど。ちなみに、このトータルのアルバムをリストに入れ込んだ、なんか素晴らしい逸話とかございますか?

(高橋芳朗)ないです!

(渡辺志保)あ、ないですか?(笑)。

(高橋芳朗)いや、でも、ちょっとバッドボーイ。また再始動し始めたところもあったので。ちょっと代表作はフォローしておきたいかな?っていうのはあったんですけども。

(渡辺志保)なるほど。しかも、96年に出たオリジナルのライナーノーツは高橋芳朗さんが当時、執筆してらして。私もそれを読んで、このネタ使い、サンプリングみたいなものをヨシさんのライナーノーツを読んで知ったって言うね。

(高橋芳朗)もうね、ジジイもジジイですね。そう言われると・・・

(渡辺志保)なにをおっしゃいますやら(笑)。

(高橋芳朗)でも、当時、タケちゃんとかもわかると思うんだけど。これ、僕最初、『No One Else』ってミックステープで聞いたんですよ。で、最初に聞いた時、たぶんライナーノーツにもそういったことを書いていたかもしれないですけども。これがオリジナルバージョンだとは思わなかったんです。

(渡辺志保)ああー、まんま使いすぎてっていうことですか?

(高橋芳朗)そうそう。だから、『South Bronx』のビートに何かしらのアカペラをのせたブレンドかと思っていたんですけども。まあ、これがオリジナルだったっていうのが、まあそれなりに結構衝撃的でしたけどもね。

(渡辺志保)パフィー商法っていうね、感じがしますけども。じゃあ、そんな私のサグの扉を開いてくれた・・・

(高橋芳朗)気に入ってますね。

(渡辺志保)はい。気に入っちゃって使ってますけども(笑)。聞いてください。トータル feat.ダ・ブラットで『No One Else』。

TOTAL ft. Da Brat『No One Else』

(渡辺志保)はい。というわけでいまお送りしておりますのは私が選んだ1曲でございます。トータルで『No One Else feat. Da Brat』。

(DJ YANATAKE)これね、僕もちょっとだけ話があって。あの、シスコってレコード屋で働いていた時にで買い付けでニューヨークに行って。結構そのサンプルのカセットとかをいっぱいもらうんですよ。いっぱい買ったりするとね。で、バッドボーイサンプラーみたいな、3曲か4曲入りぐらいのカセットがあって。まだぜんぜんデビューする超前。本当に、まだビギーも出ていないころかな?『Flava In Ya Ear』が出て、それがパーン!って行った後に、ビギーとトータルのこれが入っていたんですよ。

(渡辺志保)へー!

(DJ YANATAKE)で、2個、そのカセットを持って僕は帰りの飛行機に乗ったんですよ。したら、同じ飛行機にMUROくんがいたんですよ。

(渡辺志保)えっ?すごーい!

(DJ YANATAKE)で、まだその頃、そんなに仲良くなくて。ご挨拶程度だったんで、『お近づきの印に・・・』っていう(笑)。

(高橋・渡辺)(笑)

(渡辺志保)そのカセットを?

(DJ YANATAKE)そのカセットを1本。『これ、バッドボーイっていうレーベル、いま来てて・・・』みたいなことを言って。それをきっかけに、僕、MUROくんと仲良くなって(笑)。

(渡辺志保)あ、すごい話!MUROさんとヤナタケさんのブリッジをつないでくれたのがこのトータルっていうね。いい話ですねー!(笑)。

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