渡辺志保 ドナルド・グローヴァー『Guava Island』を語る

渡辺志保 ドナルド・グローヴァー『Guava Island』を語る MUSIC GARAGE:ROOM 101

渡辺志保さんがbayfm『MUSIC GARAGE:ROOM 101』で2019年のコーチェラ・フェスティバル後に発表されたチャイルディッシュ・ガンビーノ(ドナルド・グローヴァー)の映画作品『Guava Island』について話していました。

(渡辺志保)というわけで4時台前半はですね、チャイルディッシュ・ガンビーノことドナルド・グローヴァーが発表した映画プロジェクト『Guava Island』をここで紹介したいと思います。先ほどもコーチェラの振り返りのところでね、チャイルディッシュ・ガンビーノのステージについてちょっとお話ししましたけれども。

渡辺志保 コーチェラ・フェスティバル2019を振り返る
渡辺志保さんがbayfm『MUSIC GARAGE:ROOM 101』で2019年のコーチェラ・フェスティバルを振り返り。印象に残ったパフォーマンスを紹介していました。 View this post on Instagram @lizzob...

皆さん、もうお馴染みの方もたくさんいらっしゃるんじゃないですかね。チャイルディッシュ・ガンビーノというラッパー名、歌手名を用いながら、本名のドナルド・グローヴァーとしては役者であるとか、映画監督であるとか、脚本家であるとか、そういった活動をしているんですけれども。

なんと今回ですね、そのコーチェラのヘッドライナーとしてチャイルディッシュ・ガンビーノ……ややこしいですね。ここでは「ドナルド・グローヴァー」に統一しますね。ドナルド・グローヴァーとして、コーチェラのヘッドライナーを務めた後にですね、なんと彼が秘密裏に制作を進めてきた映画プロジェクトグァバアイランドというものがあるんですけども。

コーチェラで自分の出番が終わった後に、この『Guava Island』を配信するという。すごいですよね。もう自分の音楽ステージのだけではなくて、こういった映像作品もまるっと丸ごと自分のクリエイティビティーを反映する……ちょっと何を言ってるのか、まどろっこしくなっちゃったけど。まあ、とにかくすごいということが言いたいわけです。

で、「コーチェラに行かないと見れないのかよ!」って思っちゃったんですけど、なんとAmazonプライムでいま、世界で一斉配信されておりまして。私は配信されて結構すぐにそのAmazonプライムで拝見しました『Guava Island』でございます。

で、これは映画なんですけれども、60分弱で終わりますので。そんなに長々と見るものではなくて、その1時間弱の中にドナルド・グローヴァーのアティチュードがギュッと詰まった作品になっております。で、ドナルド・グローヴァーと言いますと、何と言っても彼がね最近またブレイクするきっかけになったのがFXというアメリカの放送局で放送されておりました『アトランタ』というドラマですね。いま、シーズン2までがアメリカでは放送が終わっておりまして、シーズン3も制作が決定しているというアナウンスもニュースになっておりました。

日本だとNetflixでシーズン1がいま、見れる状態ですね。シーズン2も期間限定でHuluでストリーミング放送されておりましたが、いままた見れなくなっておりますので、早いところシーズン2もNetflixに出てほしいなという風に思っております。で、この『Guava Island』に関しては、その大ヒットドラマ『アトランタ』の制作スタッフが結構まるごと参加しているみたいで。ドナルド・グローヴァーといえば去年『This is America』というね、非常に風刺の効いた新曲、かつミュージックをビデオ発表しましたけれども。

その『This is America』、そして『アトランタ』も手がけているヒロ・ムライ監督。日本人です。ヒロ・ムライ監督が参加していたり。『Guava Island』の脚本もドナルド・グローヴァーのお兄さんだったかな? ステファン・グローヴァーさんという方がいらっしゃるんですけども、そのステファン・グローヴァーが脚本を手がけていたり。シネマトグラファーも『アトランタ』のメンツだという風に報じられておりました。

架空の島国グアバ・アイランドが舞台

で、この映画なんですけれども、架空の島国であるグアバ・アイランドを舞台にしたストーリーなんですね。もともとスリラーとかサスペンスという風にもね、映画の内容が報じられていたんですけれども。まあたしかにちょっとサスペンスチックな描写はある。だけれども、私は舞台も架空の島国ということですから、ちょっとファンタジー的な要素も感じました。

で、この映画のまず素晴らしいところその1は、その『アトランタ』のメンツがね集結して作ったっていうところもそうなんですけれども。リアーナが出演してるんですね。で、リアーナ……すごいよ。リアーナ、彼女自身もね、カリブの島国出身ですけれども。で、この『Guava Island』もですね、撮影はキューバで行われたそうなんですけれども。おそらく南米のどこかの島っていう設定だと思うんだけれども、本当にはまり役でしたね。

それでコフィーという名前で、ドナルド・グローヴァーのパートナー役として出演しているんですけれども。最初、映画も本編はこのコフィーのナレーションからスタートするんですね。なので非常に非常に準主役というか、映画においてもストーリーにおいても非常に重要な役割を担っている。それがリアーナであるという。で、ドナルド・グローヴァーとリアーナがそうやって映画作品の中で一緒に恋人同士役だから、ちょっと「絡みのシーン」って言うといやらしい感じがしちゃいますけれども。2人の逢瀬のシーン、デートのシーンとかもあるんですけども。なんかちょっと不思議な感じもしながら拝見しました。

で、この『Guava Island』なんですけれども、全体的に赤と青っていう色が非常に象徴的に使われておりまして。で、青は女性的な包容力とか優しさとか平和っていうことを表していて。対して赤っていうのはちょっと暴力的であったりとか、ちょっとプロパガンダ的であるとか、そういったことを赤という色がモチーフになっているんですね。で、まああんまりネタバレになってしまうからそんなにストーリーの細かいところは話したくないんですけれども。まあ最後はかならずしもハッピーエンドではない終わり方をするんですけれども。

とにかくその青と赤の対立構造というのはやっぱりね、これもなんか毎週ここでこういう話をしてるような気がしますけれども。アメリカのストリートのカルチャーというか、やはりちょっとギャングカルチャーとも密接な構造だと思いますし。ここでもドナルド・グローヴァーがね、そういう対立構造を描くということはやはり、これっていまのブラックコミュニティーの人たちが抱える本当に根本的な問題なのかなということを感じるところが非常に多かったです。

ただ、その赤と青が象徴的に使われているんだけれども、やっぱり色彩感覚みたいなものがすごく鮮やかで。で、カリブの南国の島国という設定ですので、非常に見た目も鮮やかでね、十分楽しめるというような感じでした。で、繰り返しますけれども60分ほどの尺なので、映画としてめちゃめちゃ出来がいい……そのストーリーを緻密に描いているとか、ここの描写がここにつながるんだとか、そういった細かいギミック的なところはそこまでフィーチャーされていないんですけれども。私も最初に申し上げたように、ちょっとファンタジー的な要素もねあるなという風に感じましたので。

そういった風に楽しんでいただくのがいいかなって思います。プラス、もちろんドナルド・グローヴァーが主演ということですから、結構ミュージカル映画っぽい要素もありまして。「ああ、ここでいきなり『This is America』を歌うんだ」とか、「ここでこういう風に歌のシーンを挟むんだ」って。そういったシーンがいくつかありました。私が興味深いなと思ったのは、そのまさに『This is America』を歌うシーンでして。この曲ってもともと「これがアメリカだから……」っていうことで、半ば自虐的に皮肉を用いながらドナルド・グローヴァーが歌った曲ではあるんですけれども。

当たり前だけどさ、アメリカ人としてのドナルド・グローヴァーが歌う『This is America』がまあ正規の『This is America』なわけですけれども、この『Guava Island』ではそのアメリカを外から見てる立場として『This is America』を歌うんですよ。それがちょっと、さらに皮肉に対する皮肉、アンチテーゼに対するアンチテーゼみたいな感じでちょっと入れ子構造的な面白さがあるなと思いまして。非常にそのシーンは興味深く拝見しました。

これを見て、「やっぱりドナルド・グローヴァーってすごいな!」って思う人と、あと「ちょっと苦手かも……」って思う人もね、少なからずいると思います。なんかそれぐらい、好き嫌いが分かれてしまうのかなという風にも思えましたし。なんか私もいろいろね、いろんな人、海外の方の意見とかを見ていると、「ちょっと途中で笑っちゃった」みたいな。「なかなか感情移入とかできなくて笑っちゃった」みたい意見なんかもあったりして。もちろんね、受け止め方はそれぞれだと思うんですけども。

ただ、本当に彼がね、どういうスタンスでクリエイターとして、アーティストとして活動していくかってことにおいては、非常に重要な1本かと思いますので、ぜひぜひ機会があれば見ていただきたいなと思います。というわけで、ここからはですね、あの劇中でも非常にいちばんロマンチックなシーンだったんじゃないでしょうか。

ドナルド・グローヴァーがチャイルディッシュ・ガンビーノ名義で昨年リリースした『Summer Time Magic』という曲をリアーナ演じるコフィーの前で歌うシーンがあるんですけれども。そのシーン、すごいキュンとくるようなシーンになっておりましたので。そこで印象的だったこの曲を聞いてください。チャイルディッシュ・ガンビーノ『Summer Time Magic』。

Childish Gambino『Summertime Magic』

はい。いまお聞きいただいておりますのはチャイルディッシュ・ガンビーノで『Summer Time Magic』。いまから本当にね、こういう曲が気持ちよくなってくるシーズンに入ってくるなという感じです。

<書き起こしおわり>

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