みうらじゅんが選ぶ みうらじゅん的京都巡礼名所3ヶ所

みうらじゅんが選ぶ みうらじゅん的京都巡礼名所3ヶ所 安住紳一郎の日曜天国

みうらじゅんさんがTBSラジオ『安住紳一郎の日曜天国』に2013年5月に出演した際の書き起こし。著書『マイ京都慕情』の中から、みうらじゅんさんが選んだ京都の名所を3ヶ所紹介していました。

マイ京都慕情

(安住紳一郎)さあ、そしてもうマイブームという言葉自体がみうらさんのものなんですけども。最近は、みうらさんが大変凝っているものが、京都だということで。

(みうらじゅん)あっ、いやいや。僕ね、京都が苦手で出てきたので。こっちに。あの、18ぐらいまで京都にいたんですけども。『はんなりしている』って言うじゃないですか。京都って。で、もう血気盛んなロックとか好きになっている頃に、『そうどすかー』とか『すかんたこやわー』とか言われた、腰砕けの感じが、なんかね、イライラしてたんですよ。京都に。で、うちの家も古い家だったので。デビッド・ボウイのポスターとか、『アラジン・セイン』とかポスターもらって貼るんだけど、土壁なので、湿気の多い日はね、なんかブヨッとして落ちてくるんですよ。デビッド・ボウイが。

(安住紳一郎)(笑)

(みうらじゅん)なんか西洋を拒否してるんですよ。『嫌だなー、この町』って思って。『廃墟の町』って呼んでいたんだけど。そっから逃げ出したくてしょうがなかったんすけども。やっぱり加齢とともに、なんかいいんじゃないか?と思って。

(安住紳一郎)そこで今日は、みうらじゅん的京都巡礼。まずは一気に紹介します。みうらじゅん的京都巡礼その1 大将軍。その2 大映京都撮影所。その3 東寺。以上の3つです。

(みうらじゅん)はい。

(安住紳一郎)『マイ京都慕情』という本をお出しになられましたけれども。本の帯には『はんなり雅な故郷への愛憎が、今こそ明らかに。遠い日は帰らない。俺だけの巡礼が始まる 秘蔵写真とともに案内するごく私的ガイドブック』っていう。

(みうらじゅん)そうですね。京都のガイドブックってたくさん出ていると思いますけど、この本は全く役に立ちません。

(安住・中澤)(笑)

はっきり言って近所の話

(みうらじゅん)はっきり言いますけど。僕の近所の話ですから。京都の、大将軍西町っていうところの。北区なんですけど。そこの近所に僕が遊んでいた、忍者ステージって呼んでいた石垣みたいな塀のところ、よく登って、『下にワニがいる!』とかって。ひとりっ子だったもんで、自分で想像して遊ぶしか盛り上がらないんで。それこそ、ナレーションを入れて。『おおっと、○○打ちました!』とか1人で野球をやったり。

(中澤有美子)(笑)

(安住紳一郎)自分で?

(みうらじゅん)はい。やっていたのを紹介してるんで。

(安住紳一郎)そうですか。1つ目の大将軍(たいしょうぐん)っていうのは?

(みうらじゅん)大将軍ってそこ、住んでいた地区なんですけど。全く興味はなかったんですけど。大将軍神社っていうのがたしかに家の近くにあったんですけど。『だいしょうぐん』って言って。本来。多分その、北斗七星の星の占いで鬼門とかあるじゃないですか。平安時代の。そこを守る大将軍っていうので。鬼門を守っていたところらしくて。

(安住紳一郎)住所が大将軍?

(みうらじゅん)大将軍。

(安住紳一郎)すごい住所ですね。

(みうらじゅん)すごい名前で。で、その神社に後に行ってみて、そこの宝物館を見たら50何体、神像が。大将軍の神像がザーッと並んでるんですよ。それも不思議な。蔵王権現像じゃないけど、武将の格好はしているんだけど、神様なんですけど。不思議な神様。やっぱり守っていたんですね。京都を。ええ。

(安住紳一郎)へー!でも、住所が大将軍ってなんか、迫力ありますね。

(みうらじゅん)迫力あったんですよ。ぜんぜん知らなかったんですけど。

(安住紳一郎)でもやっぱり仏像に小さい時から接してるんですね。

(みうらじゅん)仏像とっていうか、まあ神像の方でしたね。その、大映撮影所って、もういまはないですけど。東映の撮影所がいまはあるんですけど。

(安住紳一郎)太秦撮影所。

(みうらじゅん)あそこの太秦も遊び場でよく行っていたんですけど。広隆寺っていう弥勒菩薩。国宝第一号指定された弥勒菩薩像とか。隣に、蚕の社神社っていうのがあるんですよ。それ、学研のムーとかをお読みの方はピーン!と来るところで。三本柱の鳥居が立ってるんですよ。鳥居って二本じゃないですか。もう一本あって。だから、ピラミッド状担っているんですよ。上から見ると。

(安住紳一郎)へー!

(みうらじゅん)不思議なやつで。

(安住紳一郎)三本目がじゃあ、普通の参道の真ん中にひとつ?

(みうらじゅん)ううん。あの、3つあるわけじゃなくて、柱が三本、立って、そこを組んでやっているんですよ。三本柱。不思議な神社で。

(安住紳一郎)三本柱の鳥居?

(みうらじゅん)これね、ちょっと見ていただいたらいいと思うんですけどね。

(安住紳一郎)ちょっとなんかそう聞くとすでに・・・ちょっと失礼します。

(みうらじゅん)ほら。一本、二本、三本あった鳥居なんですよ。

(安住紳一郎)あ、なるほど。

(みうらじゅん)不思議なやつで。

(安住紳一郎)ちょっと右寄りにもう一本たっているってことですね。ええー?

(みうらじゅん)これ、秦氏っていう一族が広隆寺を建てる時に、まあ聖徳太子がいまはいるかいないか?っていうのがちょっと論争になっているけど。聖徳太子の勅願で秦氏っていう大陸から来た人が建てたってことになっているんですけど。あの、蚕とか養蚕業。蚕の社という神社ですから。養蚕業を日本に持ち込んだ人で。

(安住紳一郎)はい。

(みうらじゅん)で、そこの蚕の神様として祀られているんですけども。そこの中も、結構謎に包まれていて。古代のキリスト教じゃないか?って学研ムーにはよく書いてあります。学研ムーは大概、古代キリスト教か、ユダヤ人説ですから。全てが。そういうミステリアスな神社です。こういうところで遊んでいたんで。

(中澤有美子)へー!

(みうらじゅん)ちっちゃい頃は。

(安住紳一郎)じゃあ大将軍と、この大映京都撮影所あたりは、本当にミステリアスというか。

(みうらじゅん)ミステリアスでしたね。僕の小学校の頃は、ちょうど大魔神とかが撮影されていたんで。大映の撮影所のところ、のぞきに行くと結構巨大な、等身大の大魔神がありましたわ。

(安住紳一郎)へー。

(みうらじゅん)で、ちょっと知り合いの人に東映の撮影所、入れてもらったら、ちょうど赤影の撮影をやっていて。青影っていう少年忍者がいたの、知ってます?『大丈夫!』っていう人。知りません?

(安住紳一郎)あ、大丈夫。わかります。

(みうらじゅん)後に河童の三平とかやっていた人なんですけど。その人が御室小学校に通っているっていうことを突き止めたんですよ。俺。で、僕も小学生だったけれども、1個上か、2個上だったと思いますけど。土曜日、学校ズル休みして。その人の追っかけ行って。御室小学校まで。校門のところで待ち伏せして。

(安住紳一郎)小学生が小学生を?

(みうらじゅん)小学生を待ち伏せして。『きっと青影だから、忍者屋敷に住んでるんじゃないか?』っつって。友達と2人で。ほんで、青影が自転車に乗って帰るところを、僕、自転車乗れなかったもんで、後ろで走って追跡ですよ。山さんとか長さんみたいな感じの。追跡したら、割と公団アパートみたいなところに住んでいて。

(安住・中澤)(笑)

(みうらじゅん)あれっ!?と思ったことを覚えています。家の前まで行ったら、なんかどんぶりが2つあって。ラーメンのどんぶりでした。なんかちょっと切ない気持ちになったことを覚えています。当時。

(安住紳一郎)一生懸命子役として頑張って・・・

(みうらじゅん)頑張ってたんでしょうね。その事情を知らなかったもんで。忍者屋敷だと思ってたんで。当時は。はい。

(中澤有美子)(笑)

(安住紳一郎)さあ、そして大将軍、大映京都撮影所と来て、最後は東寺が出てきました。

(みうらじゅん)東寺はね、もともと仏像・・・第二期ですよね。僕の中では。仏像ブーム来て。うちのおじいちゃんが拓本っていうのをやっていて。石碑のところに、霧を吹きかけて、半紙のようなものをペタッとひっつけて。上にバレンで墨で叩いたら型が残ってっていうのを取る趣味の人で。そのおじいちゃんがいろんなところを連れて行ってくれたんで。いちばん初めに東寺に連れてもらって。京都東寺の講堂っていうところの立体曼荼羅を見たんですよ。

(安住紳一郎)はい。

(みうらじゅん)空海って、アバターより前に3Dをやってるんですよ。

(安住紳一郎)(笑)

(みうらじゅん)ぜんぜんキャメロンよりも。1200年ぐらい前にやっていることなんですよ。

(安住紳一郎)3D?

(みうらじゅん)3Dを。曼荼羅って、中国から来た時の曼荼羅って、平面なんですよ。まあ、絵画なんですよ。それを、中国から持ち込んだ空海が、それを立体にして。仏像を立てて、立体にしたんですよ。それが立体曼荼羅ってやつで。

(安住紳一郎)曼荼羅っていうのはそもそも、絵に書いたもの。空海さんがそれを・・・

(みうらじゅん)3Dにしたんですよ。3Dにして。アバター化したわけですよ。ええ。それでもう、驚いて。須弥壇っていうちょっと壇上に乗られて。見上げる角度。まあ、ステージですよね。いまで言う。そこに、異形の衆が集まっているわけで。中央の大日如来が变化してるんですよ。みんな。で、そこの降三世明王とか、怖い顔した人もみんな变化して。まあ、怖い顔しないと聞かないような人、いるじゃないですか。世の中には。

(安住紳一郎)ええ、ええ。

(みうらじゅん)怖い顔で出たり、やさしい顔で出たりしてるっていうことなんですけどね。ええ。

(安住紳一郎)じゃあ、おじいさんが結構解説してくれてたんですか?

(みうらじゅん)うちのじいさんのところで書道を習っていたんですけど。小学校の時に。その時にうちのおじいさんのところの本棚とかに仏像の本がいっぱいあって。そこに土門拳さんの写真集があって。普通の仏像の写真って、静態で撮ってあるじゃないですか。全て入って。わかるように。土門拳さんの写真って、部分だけなんですよ。

(安住紳一郎)はー!

(みうらじゅん)まあ、静態で撮ってあるやつもあるんだけど。グッと来たのは仏像の甲冑の部分だけとか。寄っているんですよ。

(安住紳一郎)あの、アスリートの筋肉だけを、二の腕の筋肉だけを撮っちゃうみたいな。

(みうらじゅん)で、もう土門拳さんの写真集が欲しくて。小学校の時、クリスマスの日に買ってもらって。土門拳さんの仏像の本。で、小学校の時、土門拳撮りして。僕も。僕が小学校の時に撮った、土門拳撮り。仁和寺で撮ったんですけど。

(安住紳一郎)あっ、上手ですね。

(みうらじゅん)ええ。もう。お寺の方も僕、小学生だから、油断してるんですよ。まあ、当時から写真は禁止だったんですけど、小学生がまさか?と思ったみたいで。僕、バッシバシいろんなところで部位撮って。ええ。だから京都、いっぱい撮ってきました。写真も。

(安住紳一郎)それで小学生の時、なにかスクラップ集みたいなのを作ったんですよね?

(みうらじゅん)あの、仏像スクラップも作って。仏像写真集も作って。発掘現場では古瓦が発掘したやつを盗んでっていうこともやってました。はい。

(安住・中澤)(笑)

(みうらじゅん)発掘にも酔ってましたんで。当時は。ええ。

(安住紳一郎)本当にやっぱり小学生の時から、才能を発揮してるんですよね。世界がありますねー。さあ、それでは1曲お聞きいただきましょう。みうらじゅんさんの京都巡礼のテーマソングとも言うべき1曲です。渚ゆう子さんで『京都慕情』です。

(安住紳一郎)渚ゆう子さん『京都慕情』をお聞きいただいております。

(みうらじゅん)いいですねー。この曲ね、小学校の時、わかんなかったけど、高学年で買ったんで、1970年くらいの曲だと思うんですけども。ベンチャーズが作曲なんですよ。フェノロサみたいなもんで。京都の再発見をしたのはやっぱり外国人なんですよね。こういう雰囲気。こういう大正琴とかをやるわけですから。ベンチャーズが。日本人が再発見していない。ディスカバージャパンをやったのはやっぱり外国人の方で。

(中澤有美子)へー。

(みうらじゅん)歌詞を読んで当時、わからなかったけれど、なんか京都ってずっと住んでいた時、なんかピーカンの日ってあんまりイメージないんですよ。

(安住紳一郎)はい。

(みうらじゅん)スカッと晴れている感じ、しないでしょ?

(安住紳一郎)うん。たしかに。

(みうらじゅん)ちょっとどんよりしてるでしょ?なんでどんよりしてるんだよ?って、そこが苦手だったんですけど。京都で多分恋人と2人で来ているのを、なんか多分不倫かなんか。大人の事情があるんだと思うんですよ。この歌詞。で、大人の恋に傷ついて。別れた後、1人でその辛さを捨てに来てるんですよ。京都に。それはどんどん憎悪、呪縛みたいなやつが捨てに来ているから。京都がやっぱり当然、どんよりするんですよね。

(安住・中澤)(笑)

(みうらじゅん)いろんな傷ついた心を、京都に捨てに来るでしょ?

(安住紳一郎)そうですね。『京都大原三千院 恋に破れた女が1人』って。

(みうらじゅん)って、言うでしょ?僕ほら、童貞で活躍してましたから。そんなのわからないのに、なんか気持ちだけが妙にどんよりするのが、捨てに来るところなんですよね。

(安住紳一郎)なるほど。全国から恋に破れた人たちが。

(みうらじゅん)大募集でしょ?あそこで。ええ。

(安住紳一郎)(笑)

(みうらじゅん)だからそういうところで。ほんでまあ、神社とか恋愛神社とかいろいろあるけども。ああいうところも、もともとは神社っていうのは何かの怨霊とかがあって抑えているところだから。本当は、パワースポットじゃないから。そういうところは。

(安住紳一郎)はあ。そうですよね。むしろ、パワーレススポット。

(みうらじゅん)そうなんですよ。本来はね。まあ、東京で言ったら首塚に受験祈願してるみたいなもんじゃないですか。それは変でしょ?っていうところだけど。

(安住・中澤)(笑)

(みうらじゅん)なんかやっぱりそういうちょっと、あるんですよね。京都にはね。

(安住紳一郎)でもまた逆にそれが魅力で。どうも、人が理由なくひかれてしまうという。

(みうらじゅん)ところなんですよね。

<書き起こしおわり>

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