ライムスター宇多丸さんがTBSラジオ『爆笑問題日曜サンデー』にゲスト出演。E.T.は駄作だと言う爆笑問題太田さんに対し、未知との遭遇とE.T.を比較し、その大きな違いを解説しました。
(田中裕二)爆笑問題の日曜サンデー、ここは赤坂応接間。今日のゲストはライムスター宇多丸さんです。まあ、さっきから映画、音楽。いろんなことをね。
(太田光)でもさ、これいろいろ聞かれるんだろうけど。ベスト1とかって、やっぱり困る?聞かれると。映画。
(宇多丸)あの、そうなんですよ。『何か1本』って言われると困るんで。まあそれ用の回答をいくつか用意してて。そん時によって、たとえば『ヤング・ゼネレーションですよ』とか、『ヒッチコックのめまいですよ』とか。その場合によっていろいろ言ってるんですけどね。
(太田光)ああ、そうかそうか。でもやっぱり名作というか、そのヒッチコックあたりになってくるの?
(宇多丸)いや、その『めまい』は割と世間的にも名作とされているあたりだし。『ヤング・ゼネレーション』っていま僕が言ったのは、割と僕は個人的に好きな青春映画だったり。
(太田光)『ヤング・ゼネレーション』ってどんな映画?
(宇多丸)あのね、自転車が好きな青年の・・・
(太田光)それで最後、E.T.乗せて・・・
(田中裕二)あー、もうE.T.っつっちゃった。これはE.T.を言わずに言わないと!
(宇多丸)『宇宙人』ぐらいにしておいて。
(田中裕二)『それはE.T.だよ!』にならないから。
(太田光)あ、そっか。
(田中裕二)『それはE.T.じゃないか!』にならないから(笑)。
(宇多丸)つっこめない(笑)。
(太田光)(笑)
(田中裕二)『自転車にE.T.を乗せて』だから、もうめちゃめちゃですよ!そのボケは。
スピルバーグだったら、『未知との遭遇』がすごい好き
(宇多丸)スピルバーグだったら、僕、『未知との遭遇』がすごい好きなんで。
(田中裕二)あー、いいよね!
(太田光)わかる!『E.T.』は駄作だよね。
(宇多丸)いや、駄作じゃないですよ。ぜんぜん。
(太田光)駄作だよ。
(田中裕二)駄作じゃないよ。でも、未知との遭遇がいちばん面白い!
(宇多丸)あの、未知との遭遇との比較でいったら、E.T.の方が作り手としてはちょっと大人になってるんですよ。スピルバーグが。そこが面白い。
(田中裕二)そうなんだ。
(宇多丸)この話、1時間いただいていいですか?
(田中裕二)いいですよ。えっ、なんで?
(宇多丸)要するに、未知との遭遇っていうのはちょっと変わった映画じゃないですか。最後の最後で全てが変わるじゃないですか。そこまでずっと政治サスペンスみたいなのが続いて。で、政府の陰謀。UFOを見てしまったことで社会からドロップアウトしていく主人公。つまりこれって、大人の映画なんですね。つまり、社会があって、主人公がいて、そこに翻弄されて。わかります?社会の中で個人は無力であるという。大人の世界観ね。
(田中裕二)奇人扱いされちゃうみたいな。
(宇多丸)ところが最後に、UFOに遭いました。で、そのUFOに遭うところもアメリカ政府のお膳立てで。まだ大人の世界ですよ。ところが、最後の最後に宇宙人が迎えに来たのは、『いや、そうじゃなくてあなたなんです!』って。宇宙人は主人公のところにやってきて。要は、あなたは世間では子供っぽい人間としてドロップアウトしてるかもしれないけど、そうじゃない。宇宙人の顔も子供のような宇宙人じゃないですか。
(田中裕二)そうだね。
(宇多丸)それが対比されて。子供みたいな人だから、あなたを選んだんですよ!っつって、宇宙人に連れて行かれるところで終わる。つまり、ずーっと大人の話できたのが、ここで一気に。いわゆるセカイ系ですよ。僕=世界っていう、子供の世界観になって。で、めでたしめでたし。大の大人が全くその問題がない世界で、ちやほやされて終わるっていう。
(太田光)はいはいはい。
(宇多丸)ここで一気に。この映画が最後に子供の映画に逆転するんですね。だからカタルシスがあるんですよ。『わあ、そうなんだ!世界は俺のためにある!』って。
(太田光)なんかだから、降りてくる人に似てるもんね。
(宇多丸)頭だけでしょ!ボウズだけ!
(太田・田中)(笑)
(田中裕二)最悪だ。
(太田光)憧れた?
(宇多丸)憧れてこうしてるんですけどね。グレイ的なものに。で、未知との遭遇は飛んでっちゃって。宇宙人に救われてめでたしめでたしで、子供な着地。だから・・・
(太田光)ピノキオだもんね。最後。
(宇多丸)ピノキオです。で、E.T.は、その少年は最後にE.T.と一緒に宇宙に行こうよって言われて、ここではないどこかに行こうよ!って言われて、『いや、僕はここに残る』って。大人な選択。つまり、少年はちゃんと大人になる選択を最後にするんですよ。
(太田光)うわっ!この見方はしたことなかった!
(宇多丸)いや、まあ結構スピルバーグ論的には一般的な話なんですけど。なので、スピルバーグは作りてとしては大人になった。子供もできたりなんかして。要するに、家族を捨てて・・・
(太田光)ちょっと保守的になったの。
(宇多丸)そう。たしかにそう言える。
(田中裕二)まあね。残るっていう選択だからね。
(宇多丸)『未知との遭遇の結末は、いまとなってはとんでもない結末だと思う』って自分で言ってるんですよ。家族もなにも全部捨てて。ぶん投げて、宇宙に行ってイエーイ!って。
(太田光)そうか。だから惹かれたんだよね。わけのわからないものに。みんなが行くっていう。
(田中裕二)あの音楽だけでも。あれだけでも、いい。
(宇多丸)だから最後に、全部救われたあれで、あのシャンデリアみたいな宇宙船に乗って。『よかったね!ロイ、よかったね!』ってこの感じなんですよ。だからあれはね、大人がちょっと心疲れちゃった時に、『うわー、俺宇宙人とか、救ってくれねーかな?』って。
(田中裕二)でも、それわかる。
(太田光)そうか。逃げか。
(田中裕二)そう。だから俺、当時UFOの夢ばっかり見てたもん。中学校の時。
(江藤愛)逃げたかった?まだ中学生じゃないですか。
(田中裕二)もう、しょっちゅう。絶対自分ちの近所!
(太田光)でっかいところで見てないから。お前は。
(宇多丸)でも、中学生こそ逃げ出したいと思っているからね。
(田中裕二)本当にUFOに・・・
(太田光)すげー!みたいなことでしかないんだろ!?
(田中裕二)本当にUFOに連れて行ってもらいたい。でも、ビビるんだよ。夢の中で。どうしよう?行くべきか?行かないべきか?本当に。ドキドキしながら。
(宇多丸)まさに、E.T.のあの少年のような選択を。
(田中裕二)そう。本当にそういう夢を何回も見てた。俺は。
(太田光)で、どうなるの?
(田中裕二)それで目が覚めちゃうんだもん。
(宇多丸)(笑)
(田中裕二)で、そん時みたUFOの絵を書いておいた。記録に。
(江藤愛)ちょっと、理解できない・・・
(田中裕二)これが将来、もし出てきたら・・・
(宇多丸)あ、実際出てきたら。なるほどなるほど。予知夢的な・
(田中裕二)俺はこれを夢で見てたっていう。
(江藤愛)毎回、書いてたんですか?
(田中裕二)いまでも書けるの、ある(笑)。
(宇多丸)(爆笑)。かわいいな!
(江藤愛)かわいい(笑)。
(宇多丸)中学生の逃げ出したい願望みたいな。だからやっぱりそこにハマるっていうの、ありますよね。
(田中裕二)惹かれるよね。やっぱりね。当時、やっぱり10代のスピルバーグのあのへんの映画とかね。
(太田光)面白かったからね。
(田中裕二)スターウォーズもそうだしね。
(宇多丸)そういう世代でございます。
(田中裕二)じゃあ、メールいきますか?宇多丸さんにいろいろ聞きたい。
(太田光)『ヤング・ゼネレーション』の話は?
(宇多丸)えっ?ヤング・ゼネレーション?これ、この間、他局で。大竹まことのゴールデンラジオで散々この話、してきたんで。
(江藤愛)じゃあ・・・
(太田光)大竹さんに聞こう。
(宇多丸)ちょっとね、かぶっちゃいますんでね。
<書き起こしおわり>