KREVAさんが2024年11月12日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション2』に出演。生成AIを駆使した楽曲制作の一例として、自身が取り組んでいるAIに生成させた楽曲をサンプリングし、著作権問題をクリアしながら新たな楽曲を作り上げるという手法について、宇多丸さんと話していました。
KREVAさんの活動20周年を記念したムック本でKREVAさん、PUNPEEさんと対談した際、KREVAさんのAI活用術に非常に感銘と衝撃を受けたという宇多丸さん。初期ヒップホップの楽曲づくりの定番だったサンプリングという手法がギルバート・オサリバンがビズ・マーキーを訴えた裁判などを契機に著作権的に難しくなり、サンプリングする場合でも使用許諾に莫大なお金がかかるようになったことなどを話しながら、その法的な難しさをクリアするために生成AIを使用しているKREVAさんのやり方を紹介していきます。
新曲 #ForeverStudent をリリースしたばかりの #KREVA が、楽曲作りの"これまで"と"これから"を語る!
KREVAのターニングポイントになった曲とは?#utamaru をつけて #radiko のリンクをポストしてねhttps://t.co/aUjciF2c0s#TBSラジオ pic.twitter.com/PkPOk7izxS— アフター6ジャンクション2(聴くカルチャー番組) (@after6junction) November 12, 2024
(KREVA)AI音楽生成サービスをやってるサイトっていうのは結構、たくさんあるんですけど。同じプロンプトの文章を打っても違う曲が出てくるんですよ。それをいかにして、いいところ。自分に合ってるところを探して、いいプロンプトを打って、いい曲を出すか?
「こんな、曲あったらいいな。こんなことを歌ってる曲があったらいいな」っていうのをAIで生成することができるわけなんですよ。たとえば「RHYMESTERの『B‐BOYイズム』のリミックスを作ってくれ」って言われたら、『B‐BOYイズム』って歌ってる歌詞を自分が英訳して。それもAIに翻訳にさせた英語をそのAI楽曲生成サービスの中に入れます。
で、たとえば「ブレイクダンサーが踊り出したくなるようなもの」とか「80年代後半の方のヒップホップ」みたいな。そういうのを打つと曲が出てくる。で、それをそのまま「これ、私の曲ですよ」って言って出したらこれはいけないんだけれども、それをばらして、素材として使う分には自由じゃねえか?っていう。
(宇多丸)で、しかもそのプロセスには要するにプロンプトを打って「こういうものが出てくるかな? あれっ、こんなんが出てきちゃった。でも面白れえな!」っていう。それも当然、含まれるわけで。それってディグと同じで。「あれっ、これいいじゃん」っていうのが出てくるわけ。
AI生成楽曲でサンプリング著作権問題をクリアする
様々なサービスにプロンプトを打ち込んで生成されてくる楽曲。そのランダムに生成されてくる曲の中から良いものをピックアップし、それをサンプリングのソースにして楽曲を作成することでサンプリングという手法のランダム性やクリエイティビティを取り戻していくというKREVAさんのやり方、素晴らしいですよね。どんなものが生成されるのかわからないことを「ディグ」と表現していく宇多丸さんもさすがです。
(KREVA)もっと別のやり方もあって。「結成30年を超えたベテランヒップホップグループの新曲としてぴったりな曲のサンプリングソースになりそうなものを作ってください」っていう命令にして偶然性を得るってこともできるわけなんです。で、その曲を調整していくのもいいし。今だと曲を分解するっていうこともできる。出てきた曲から声だけを抜くとか、出てきた曲の曲だけもらうとか、出てきた曲からドラムだけ取るとか。それもAIって自由自在にできるんで。あとはもう、センスっすよね。どうやって使うか?っていう。本当に。
(宇多丸)そうなんだよ。だから結局、そのクリエイティブに対するAI問題ってあるけれども、結局「選ぶ」とか「何をありとするか?」っていう、これがクリエイティブなんで。なので、それがある限りはそんなの、ただのツールですよっていうことなんだよね。そう思ったし、やっぱり僕がヒップホップの歴史の中で見ていてひとつ、惜しいなって思うのは「サンプリングって面白かったのにな。あの無法地帯、超最高だったんだけどな」みたいな。「これはそれに近い、のか?」みたいな。
(KREVA)で、特に今はまだ音質が進化しきってない、ちょっとこう荒いMP3の音とかが逆に後に「エモい」とか言われるものになりうるものだと思っていて。俺はもう、ガンガン使ってますね!
(宇多丸)フフフ(笑)。あんまり種明かしすると今、作ってるものにも抵触するかもしれない。でも皆さん、この考え方。これは音楽だけじゃなくて、こういう考え方もあるじゃないけども。すごくね、勇気も出る話だし、ワクワクしてくる話だと思います。それこそ「なら俺もやろうかな」っていう人が出てきてもおかしくない世界で。
(KREVA)まさに。本当にそれは求めるところですね。
AIという新しいツール
生成AIの使用によって、法的に整備されておらずサンプリングがなんでもあり状態だった初期ヒップホップの空気感を再び取り戻せるかもしれないと考えると、これは激アツですよね。クリエイティブとAIの問題についても、AIは結局は道具なわけでそれをいかにして使うのか? 出てきたものを取捨選択するのかは結局、人間がやること。そこで個々人のクリエイティビティが発揮されるという宇多丸さんの指摘はその通りだと思います。
ターンテーブルやドラムマシーンなどを駆使して楽器が弾けなくても音楽ができてしまうヒップホップというジャンルにAIというツールが加わって、ここからさらなる進化が期待できそうですね。僕もAIを使ってなにか音楽にトライしてみようかと思わせられたトークでした。