星野源さんと佐久間宣行さんが2025年6月10日放送のニッポン放送『星野源のオールナイトニッポン』の中で演技についてトーク。星野さんが國村隼さんの『キル・ビル』での芝居を見て日本語と英語の音域の違いに気づき、そのせいで日本語楽曲は洋楽楽曲に比べてミキシングが難しくなっていることを話していました。
(佐久間宣行)僕、國村隼さんと仕事した時に「なんだ、これ?」って思ったんですよ。
(星野源)國村隼さん、すごいですよね!
(佐久間宣行)僕に「この役はこういうバックボーンだと思うから」って話を説明してくださった後、バックボーンが入っているお芝居をするから。「どういうことなんだ?」って……。
(星野源)僕はコントでご一緒したことがあって。その後、全然違う作品で太秦で僕が時代劇を撮っていた時に同時期に撮られいて。そこでご飯をご一緒したりとかってお世話になった時があったんですけども。國村さんの演技の仕方はちょっと、なんか全然人と違うというか。國村さんなんだけど、もうその人にしか見えないんですよ。両方なんですよ。で、もちろん『アウトレイジ』とかそういう怖い、急に大きい声を出すとかもすぐできるし。本当にそのあたりの人っていうか、ぼそぼそしゃべるやり方もできるし。それでコントをそのままやっちゃったりとかもするんで、すごいですよね。僕もすごい大好きなんですけど。俺、國村さんの演技を見ていて思ったことがあって。
國村さん、『キル・ビル』に出ていたんですよ。で、『キル・ビル』のその國村さんが出ているシーンの國村さんの声が拾いきれてないっていうか。英語の発声とたぶん違い過ぎたんだと思うんですけど。たぶんその、ミキシングとか録音部の向こうのチームの人が超えて「これでたぶん言葉が伝わるだろう」と思ってるんですけど。日本人から聞くと、言葉が聞き取れなかったりするんですよ。で、なんかそこの差っていうか。それがこんなにあるんだと思って。「日本語って、英語と全然違う周波数、音域でしゃべってるんだな」って思って、それを思ってから、洋楽と邦楽の音楽を聴くと声の位置が全然違うんですよ。
(佐久間宣行)へー! 面白い!
日本語は英語とは全然違う周波数、音域
(星野源)日本語が伝わる声の位置と、英語が伝わる声の位置って違くって。英語ってすごく上の方の音域だけにしても何を言っているかがすごい伝わるんですけど、日本語って中低域まで含まないと何を言っているかが伝わらなかったりするんですよ。だから、日本語の曲のミキシングってめちゃくちゃ難しいんですよ。で、ロックとか、その洋楽をもとにしているようなミキシングを日本語でやるのって、やっぱり日本語の歌謡曲とかJ-POPはすごいミックスが難しくて。
(佐久間宣行)でも、たとえば自分で音楽を聴いてる時に、日本語の曲って低音と高音だけ上げるとボーカルが聞き取りづらかったりするけど、洋楽は大丈夫だったりするんですよね。
(星野源)ああ、そうそう。そうなんですよね。だから、洋楽の方が楽器の音が入れやすいんですよ。声の範囲が狭くても、すごく存在感があるんで。だからたとえばLAのマスタリングエンジニアに日本語の曲のマスタリングをお願いするとか、結構あるし。それで成功しているパターンもあるんですけど。でも全然、音がめちゃめちゃ潰れて返ってきちゃったりする時もあるんです。僕も頼んだことあるんですけど。「ああ、これはちょっと違うな」みたいな。で、音を潰さないと他の楽器の聞こえないんですけど。でもコンプレッションが強すぎて「ボボボボボッ」ってすごくなっちゃうとか。
だからすごい、こんなに日本語の聞き取り方っていうか、伝わり方ってグローバルでは不利なんだなっていうのを國村さんのセリフで……でも、あの國村さんの演技の素晴らしさを受け取れるってすごいいいなとは思うんですけど。それをなんかすごい実感したことがあって。なんか「音楽もそうなんだな」っていうのはその後に気づいたりしましたね。
(佐久間宣行)それは面白い。すごい話ですね。
(星野源)そうなんですよ。だから自分の、今回のその『Gen』という新しく出したアルバムも、その日本語とのしてしての意味はもちろんこうあるんだけど。でも、その意味が分からなくても面白いっていう曲にしたくて。そうすると、自分の声の位置を調節できるんですよ。なぜなら、伝わらなくてもいいから。やっぱり「この歌詞を伝えたい」って思うと声のボリュームを大きくしたくなるんですけど。だけど、そのミックスの中での声の範囲を少し狭くできて、楽器の聞こえる範囲を増やせるんですね。
(佐久間宣行)今回はその選択ができたっていうこと?
(星野源)できましたね。
(佐久間宣行)できたっていうか、でもそれは普通に怖くないですか?
(星野源)ああ、そうですね。
(佐久間宣行)その「怖くないですか?」っていうのは「日本のマーケットでやっていく上では」っていう。
(星野源)ああ、そうですね。でもそれ、もうすごくどうでもいいと思っていて(笑)。それで今回、作ったっていうのはあるので。
(佐久間宣行)ああ、だからか!
(星野源)そうですね。だからそういうのも音楽の中で考えると面白いし、自分がやりたい音楽みたいな。それは「洋楽みたいにしたい」ってことじゃなくて。自分は音楽全部が作れればいいと思っていて。「歌いたい」っていう人間よりかは、もともとインストバンドをずっとやっていたんで、そもそも音楽全体を作るのが楽しい。なので、作詞・作曲もするけど編曲も自分でやる。プロデュースも自分でやる。なぜなら、音楽全部を作りたいからっていうものなんですけど。だからそうなった時、やっぱり自分の歌とか言葉を伝えないといけないから自分の好きな音像とか「この曲はこうやりたいんだよな」っていう音像にできないっていう課題を、今回は「自分の好きな音像を作る」っていうことに振り切るっていう。そういうことをやったっていう感じなんですよね。
「自分の好きな音像を作る」ことに振り切った『Gen』
(佐久間宣行)いや、もう全部……國村さんの演技の話から全部、星野さんのアルバムの話までつながったから。結果的に、俺はめちゃくちゃインタビュアーですよ(笑)。
(星野源)アハハハハハハハハッ!
日本語と英語で使う周波数や音域が全く違うため、英語的なノリでミキシングしてしまうと音が潰れてしまって日本語が聞き取りづらくなってしまうというお話、超面白いですね! それに『キル・ビル』國村隼さんの演技を見て気づいたというエピソードも含めて興味津々で聞いてしまいました。

