星野源さんと佐久間宣行さんが2025年6月10日放送のニッポン放送『星野源のオールナイトニッポン』の中で演技についてトーク。演技が苦手だという佐久間さんに星野さんが「演技が上手い」ということを3つに分類して話していました。
(佐久間宣行)あと、今の悩みはこんなのを星野さんに聞くのは……みんなは「お前、何を聞いてんだ?」って思われるかもしれないですけど。俺、めちゃくちゃ音痴で演技が下手なんですよ。で、別に芝居をやりたいわけでも、歌をやりたいわけでもないんですけど。CM撮影とか、もしくはバラエティーで振られた時に、ちょっと変な空気になるぐらいに下手なんです。それって、何かで解決する方法ってあるんですか?
(星野源)アハハハハハハハハッ! 俺はしなくていいと思うんですけど。でもやっぱり、したいんですね。「変な空気にしたくない」みたいなのが?
(佐久間宣行)歌は別にしょうがないなと思っているんですけど。ちょっとした演技で……たとえば「CMを撮りますよ」とかっていう時に「これ、明らかに現場の誰も納得してないんじゃないか?」っていうのとか。
(星野源)いやー、そうかー。
(佐久間宣行)わかんないですけど、コツとかあるのかな?って。どういうことなんだろうって。演技ができるって、どういうことなんですか?
(星野源)演技ができるってどういうことなんだろう? 演技かー。
(佐久間宣行)それが分からなくて。
(星野源)そうですね。CMも結構出られてるし。
(佐久間宣行)あと、なんか撮っていてコントの演技の上手い、下手とか……あとは演技の上手い、下手は分かるけど、やるってなった時。別に僕が上手くなりたいわけではないが、やってみたら全然ダメで。それで「上手いってどういうことなんだろう?」と思ってるんですよ。上手いっていうのは……俺、わかんないですけど。「器用」とかに近いんですか? それともスポーツとかに近い感覚。ボールをコントロールよく投げられるとかに近いんですか? 演技の感覚とか、歌がうまいっていうのは。
3つに分類される演技の上手さ
(星野源)僕は2つあると思っていて。1つは普通の人ができないことを急にできるみたいなうまさってあるんです。急に泣くとか、あと急に怒る、急にキレるとかがポンとスイッチ入ったらできるっていう、そういう技術のことをうまいという人もいるし。あと本当にそこにいる人にしか見えないっていう自然さを醸し出せる人。それは技術は関係なかったりするんですよね。演技の経験がない人が急に、たとえばドラマとか映画に抜擢されるみたいなのってたまにあるじゃないですか。芸人さんとかもそういうのもあるし、ミュージシャンとかも。
でも、本当にそこにいるようにしか見えない。だから初めて演技した時のリリーさんみたいな。「ああ、こんなに存在感もあって、すごいリアルなお芝居ができるんだ!」みたいな。なんかそういうのって、たぶん技術っていうよりかは資質だったり、その人の生き方とか。あとはもう全く別人になれるみたいな。本当に普段のその人、パーソナリティーのまま自然にしゃべれる人と、全く違う人になれるみたいな人と……だから、ごめんなさい。3つですね。その3つの中のどれかを「上手い」って言ってる人と、その中のどれかとどれかをブレンドして「上手い」って言ってる人とあると思っていて。だから、それのどれになりたいかじゃないですか?
(佐久間宣行)ああ、そうやって自分なりの何かを見つけていくことなんですね。
(星野源)でもたぶん、それを分けて考えている人はあんまりいないとは思うんですけど。僕は自然にそこにいる人を「うまい」と思っているタイプです。で、たとえば技術っていうのをガーン!って見せつけられると「ああ、技術がすごいんだな」って思うんですけど、それはうまいっていうよりかは技術がすごいんだなっていう風に頭で理解するっていう感じが多いので。だから、割とそこにいるみたいなことができる人が結構、好きだったりしますね。
(佐久間宣行)でも俺、わかんないのが役者さんってその、気持ちを作ってそこに技術が現れるんですか? それとも技術をまず、「こういう時にはこういうアプローチだろう」っていう技術があって、そこに最終的に気持ちがついてきたりするんですか?
(星野源)それは両方あると思うんですよ。型から作って、その型を作ることによって感情が勝手に見えてくるタイプの役者さんもいるし。感情を作るから外側が型になっていくっていう人もいると思うので。たぶん、それはメソッドの違いだと思うし。たとえば歌舞伎とかってものすごく型を習うっていうじゃないですか。
型をとにかく体に叩き込ませて。やっぱりすごく遠くからでもそのキャラクターっていうか、役がめちゃめちゃ悲しんでるのが分かったりする。だからすごい至近距離で見てるとものすごく型に見えるのかもしれないけど、遠くで見るとそこにその人が生きて見えるとか。その距離とかっていう問題もあると思うし。カメラの距離なのか、舞台の距離なのかっていうのも全然違くて。だから俺が思うのは、もしかしたら佐久間さんが違う人になろうとしているのかもしれないですね。なにかその……。
(佐久間宣行)なるほど……!
(星野源)佐久間さんじゃない人。役になるとか。
佐久間さんは自分と違う人になろうとしている?
(佐久間宣行)それになろうとしてるけど、そこに対する引き出しもない。それで結果、ちょっとガタガタってなってるところが多いっていう。あの、本当にバカみたいなことを言いますけど、歌がうまい人ってみんな、演技がうまくないですか? そんなことないですか?
(星野源)それって……俺は結構、それだけじゃないと思っていて。よく言うじゃないですか。「やっぱりリズムが大事だ。それで音楽をやっている人はもちろんリズムが体に入ってるからお芝居とかセリフ回しもリズムが大事だから、すぐできるんだ」みたいなのもあると思うけど。でも本当に音楽をやっていて、役者をやろうとしてすごく下手な人もやっぱりいるし。だから、そういう人が目立ちやすいっていうだけだなって。それこそ、モデルさんで演技を急にやってめちゃくちゃうまい人とかって、すごい多いじゃないですか。モデル出身の役者ってすごい多いんですよ。
(佐久間宣行)いる! いますね。
(星野源)だから音楽と……音楽って結構、やっぱり自己表現をする人が多い。まあ、そういう仕事だったりするじゃないですか。「俺だ!」「私だ!」っていうようなお仕事だったりするから。そういう人が役者になると割と目立ちやすいっていうことなのかなっていう。でも、その役者とモデルさんもやっぱり服をしっかり見せるお仕事だったりするから。どちらかというとパーソナリティーを消す仕事じゃないですか。だから、そこは自然に見えるっていうだけなのかなとか。
(佐久間宣行)たしかに。モデルさんで役者になってきた人って、スッと役に入る人、多いですよね。
(星野源)阿部寛さんもそうそうですし。なんかそういう人が多いなっていう印象があるので。だからいろんな職業から役者になるっていう人も結構いるのかなとは思うんですけど。まあ音楽が結構、目立つっていうか。それはちょっと思いますね。
「演技が上手い」ということにもいくつかの種類があって、その中のどれか、もしくはいくつかを組み合わせて自分にあった演技スタイルができている人が「上手い」とされるのではないかという星野さんの解説、興味深いですね。さすがの解像度と言語化力! 聞いていて「ほほー!」と唸ってしまいました。

