小沢健二『魔法がかかる夜、大阪にいる』と西に移動し続ける東京を語る

小沢健二『魔法がかかる夜、大阪にいる』と西に移動し続ける東京を語る J-WAVE

小沢健二さんが2024年5月3日放送のJ-WAVE『J-WAVE SPECIAL PLAY IT BACK, BOOGIE BACK!』の中で大阪について歌った曲『魔法がかかる夜、大阪にいる』についてトーク。大阪の都会性や東京が西へ移動し続けていることについて、スチャダラパーの御三方と話していました。

(小沢健二)今回、ライブで明日、明後日と大阪でやります。それで大阪は『魔法がかかる夜、大阪にいる』っていう大阪についての曲を新しく作ってみたんですよ。で、何となくその都会的なポップっていうと、どうしてもさ、松任谷由実さんにせよ、松本隆さんにしても、どうしてもやっぱり東京みたいなことになっていて。でも僕にとって、大阪ってめちゃくちゃ大都会で。

(ANI)いや、わかる。

(小沢健二)わかるっしょ?

(BOSE)ANIさん、だって奥さんが大阪だからね。

(ANI)大阪の方が外国の都会っぽいっていうか。東京は特殊でさ。

ニューヨークと一番似ている日本の都市は大阪

(小沢健二)そう! ニューヨークに長く住んでいて。そのニューヨークと一番似てる日本の都市って、大阪なんだよね。で、御堂筋がドーン!って一方通行で通っているとか、碁盤の目でできていて。で、ニューヨークに住んでから大阪のめちゃくちゃな都会性がわかったっていうか。それで東京って、どっちかっていうと獣道系っていうか。曲がるっているから、どっちに行っているかわからないっていうか。

(ANI)ああ、たしかに。中はそうだね。

(小沢健二)で、それは東京は碁盤の目は本当はあって。両国とか、あっちは。

(ANI)ああ、たしかに。あっちの方はね。元江戸地区っていうか。

(小沢健二)そう。オリジナルの東京は碁盤の目でできてるんだよね。ところが、東京っていうのはどんどん西へ移動していく不思議な都市なんで。その碁盤の目だった両国とか、浅草とかからちょっと碁盤の目がずれてきた銀座ぐらいに来て。で、その後なんだかもっと西に動いてきて。「渋谷が今、中心」とかっていう風になってきて。しかも、そこからさらに動いて。なんなら下北沢……「えっ、たまプラーザって東京?」みたいな(笑)。

(SHINCO)ニコタマとかね(笑)。

(ANI)登戸とかになってきちゃうから。

(小沢健二)そうそう。西へどんどん動いていって。で、それこそ『シン・ゴジラ』じゃないけども、武蔵小杉がなんなら東京ぐらいの感じで。僕らの実家のあたりがもう……。

(SHINCO)それはたしかにおもしろい(笑)。

(小沢健二)で、その東京が西に動いてるのは僕、すごい不思議だったの。で、その謎を解こうとしているのが『魔法がかかる夜、大阪にいる』にいるっていう曲なの。それは、やっぱり「日本」っていうんだけど日本語っていうのは元々、西のもので。それで古典文学とかって言ってさ、たとえば紫式部でも、清少納言でも、みんな関西女ですよ。

(ANI)たしかに(笑)。

(小沢健二)それで日本の古典文学において、東のこのへんにいる人は東人みたいなさ。もう全然、異端の人で。古典文学において、95%は全部、西の人で。それで僕、高校の頃に古文を勉強していて「これって、関西弁で読めばいいんだよ」って言われたのね。

(BOSE)ああ、先生に?

「古文は関西弁で読めばいい」

(小沢健二)そしたら、関西弁で読むと古文ってすごい楽に読めて。ところが今のその標準語って言われるやつって、すごい後付けの日本語だから。そこから古文の距離は遠いんだけど。関西弁ってやつだと「よう言わん」とかさ、古文に近い文型なのよ。

(ANI)なるほど。アカデミックっすね(笑)。

(小沢健二)そう。だから今、古文で悩んでる人がいたら関西弁の方を……。

(BOSE)じゃあさ、大阪とかの人の方が有利なんだね。

(小沢健二)そう。灘とかね。だから当時、思っていたのは「灘は有利だな」とかね。東大的に言うと「麻布は不利」みたいな(笑)。で、俺なんて多摩高校っていうさ、思いっきりそれこそ新東京だから、めちゃくちゃ不利で。だから古文は関西弁で読んだ方がいいっていう。まあ要するに、なぜか明治以降の政府っていうのは「日本の古文っていうのは本当は関西だ」っていうことをあんまり言わないで来ているけど。本当の日本語っていうのは関西の言葉なんだって。そのことを『魔法がかかる夜、大阪にいる』っていう曲で言っていて。それで、東京が西に移動している理由。それは本当は日本語は西に帰りたいんじゃないか?っていうので。

(一同)フハハハハハハハハッ!

(ANI)ああ、なるほど(笑)。大胆な仮説(笑)。

(BOSE)その仮説、いいねえ!(笑)。

(ANI)故郷を目指してるんだ。徐々に(笑)。

「日本語は西に帰りたいんじゃないのか?」

(小沢健二)なんか、本当は無理やり……その戦でめちゃくちゃになった西から、無理やり徳川が引っ張ってきたのね。ところがさ、無理やり動かしたのって、元に戻りたがるじゃない?

(ANI)ああ、やばいね! 今、静岡ぐらいまで行ってるみたいな?(笑)。

(小沢健二)だから東京はそのうち、静岡ぐらいになっていたりとかね(笑)。でも、その戻るみたいな感じって、本当は何かわかるし。なんか東京が西に動いてる不思議を説いてくれたっていうか。僕はすごく大阪にいて、「日本語って僕が好きなのを追っていくと、やっぱり西の言葉なんだな」と思った時、「ああ、東京は西に動いてるな」っていうのをや思ったので。それで『魔法がかかる夜、大阪にいる』っていうのをやったんですが。それを今、やっておりまして。まさに明日、明後日。5月4日、5日。大阪で「大阪にいる」っていう曲をやるんだけど。それはやっぱり、すごい長く考えていてよかったのと。それとでも、それは大阪を訪れている曲なので。やっぱり東人の視点というか。東の人の視点を……。

(BOSE)いや、普通にさ、『やっぱ好きやねん』とかさ、大阪の人が大阪のことを歌ったってなるやつ、あるじゃない。でも、それとはたぶん全然違うもんね。

(小沢健二)そう。違うの。それで、やっぱりどこかの都市を訪れている時の高揚感って、あるじゃない? それは、本当は薄っぺらいから歌っちゃいけないことになっているんだけども。

(BOSE)たしかに(笑)。「何を知らねえやつが歌っているんだ」ってなるの、嫌だもんね。

(小沢健二)でも僕は「そうなってもいいな」って思って。なんか「なにを東京者がニューヨークから、東京へ……」とかって。でも、それを歌いたいなとすごい思って。それで訪れている曲を作ったんで。それはまさに明日、明後日で大阪でやりますね。

(BOSE)それを大阪でやるっていうのがまた、ちょうど。やっと見れるというか。それこそ西に戻ってきたんだね(笑)。

(ANI)「戻ってまいりました」って(笑)。

(SHINCO)最後の一行はリハが終わってから書くとかじゃないよね?(笑)。

(ANI)まだないみたいな?

(BOSE)「大阪に行ってからじゃないと、書けないよ」みたいな(笑)。

(小沢健二)ラップの三連符のところとか、いまだに考えてるけどね(笑)。そんなツアー中ですね。

<書き起こしおわり>

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