渡辺志保 ビヨンセ『COWBOY CARTER』を語る

渡辺志保 ビヨンセ『COWBOY CARTER』を語る MUSIC GARAGE:ROOM 101

渡辺志保さんが2024年4月5日放送のbayfm『MUSIC GARAGE:ROOM 101』の中でビヨンセの最新アルバム『COWBOY CARTER』について話していました。

(渡辺志保)さて、ここでもう1曲、私の最近のお気に入りチューンを紹介したいと思うんですけれども。何はともあれですね、先週3月29日にビヨンセの最新アルバム『COWBOY CARTER』がリリースされましたということで、今日はその『COWBOY CARTER』から1曲、ここでお届けしたいと思います。めちゃめちゃ待ってましたよ!って感じでして。8枚目のアルバムということで。前作は『Act I: Renaissance』というタイトルのアルバムだったんですが、今回は『Act II: COWBOY CARTER』ということで。前作はLGBTQのコミュニティであるとか、あとは黒人音楽としてのハウスミュージックであるとか、ボウルルームカルチャーとか、そうしたところに目を向けたアルバムということになっておりましたし。

その後に『Renaissance World Tour』という大規模なツアーを行ったビヨンセさんなんですけれども。今回は『COWBOY CARTER』という名が示す通り……「カーター」というのは彼女の夫であるジェイ・Zさんの名字なんですけれども。『COWBOY CARTER』というタイトルが示す通り、今回はちょっと西部劇チックというか、いわばカントリーミュージックをベースにした仕上がりになっております。ただ、「そんなにジャンルにはだわらない」っていうのはアルバムの中でも宣言してらっしゃっていて。カントリーを軸にしているが、ジャンルはビヨンセです。ビヨンセというジャンルですという、そういう主張のアルバムでもございます。

順番としては『Renaissance』というアルバムの方が先に出て、それからの『COWBOY CARTER』なんだけども。ビヨンセの中では『COWBOY CARTER』の方が先に出来上がっていたそうなんですね。で、アルバムとして聞いていただくとわかると思うんですけれども、今回の『COWBOY CARTER』はカントリーミュージックとか、あとアメリカーナと呼ばれるジャンルの音楽ですかね。そうしたものが軸になっておりますので、アコースティックなサウンドなんですよね。対して『Renaissance』というアルバムはすごいバキバキの電子音であるとか、ブンブンに響くベースであるとか、めちゃめちゃいい意味でちょっと下品というか、赤裸々なリリックみたいな。というところが醍醐味ではあったんですけれども。まあ、『Renaissance』の方がやかましいというか。で、ダンスということを軸に置いたアルバムが『Renaissance』でしたので。そのコロナが一段落した今の世の中、みんなダンスが必要なんじゃないか。この世の中にはダンスが必要なんだ!っていうことで、先にできていた『COWBOY CARTER』を一旦しまっておいて、先にビヨンセは『Renaissance』をリリースしたという風におっしゃっていました。

『Renaissance』より先にできていた『COWBOY CARTER』

(渡辺志保)それで、ちょっとこの短い限られた時間の中で語り尽くすことは到底、難しいので。自分の他のラジオ番組なのか、この『ROOM 101』なのか、結構長く時間を取って改めてお話をしたいアルバムではあるんですけれども。このアルバムにはですね、ゲストアーティストの方がたくさんいらっしゃるわけで。本当にびっくりしたんですけれども、ドリー・パートンという御年78歳を迎えますカントリーミュージック界の大御所の方が参加していらっしゃいましたり。あとは同じく、めちゃめちゃ大御所ですけれども、ウィリー・ネルソンが参加していらっしゃったり。あとはマイリー・サイラスやポスト・マローンといったアーティストも参加している。なのでこれだけの名前を見ると、本当にロック・ポップス寄りの人選でもあるんですけれども。

でも前回の『Renaissance』も、「黒人音楽としてのダンスミュージックを私が塗り替る。ルネッサンスしますよ」という意気込みでのアルバムでしたけれども。今回も「黒人音楽としてのカントリーミュージックをビヨンセがちょっと塗り替えさせてもらいました」みたいな感じの構成にもなっておりまして。カントリーミュージックって白人の男性がとにかく力を持っているというような、ちょっとアンバランスなミュージックシーンでもあるんですけれども。なので、そこで活躍している黒人女性って非常に少ないし。あんまり、日の目を見ることができないでいるというような状況ではあるんですよね。なんですけれども、そこでずっと活動をしているブリトニー・スペンサーとか、タナー・エデルというそういう黒人女性のカントリーミュージックアーティストをフィーチャリングで参加させたり。あとは、リンダ・マーテルという商業的に初めて成功した黒人女性のカントリーシンガーがいるんですけども。そのリンダ・マーテルを引っ張ってきたりとか。

あとは、アルバムには参加していないけれども、メンフィス出身で、少し前に初めてカントリーアルバムをリリースしたK.ミシェルという黒人の女性シンガーがいるんですが。K.ミシェルに今回の『COWBOY CARTER』のリリースに合わせて花束を贈っていたりとか。あとはこの『ROOM 101』でも何度か取り上げたミッキー・ゲイトンという、Black Lives Matterの運動が盛り上がった際に「このカントリーミュージックシーンはまるで白い柵に囲われたフェンスの向こう側だ」という曲を歌った黒人女性のカントリーシンガーにも花を贈っておりまして。そうした細やかな心配りというか、気遣いというか。「あなたのこともちゃんと見てますよ。そして私のためにこの道を切り開いてくれて、ありがとう」という、そういう感謝の気持ちを示すことを忘れていないというビヨンセの姿勢に感銘を受けました。

とか、もう本当にちょっと細かいポイントがたくさんたくさんありまして。本当に今回もその大きく「アメリカ」という……1曲目のタイトルが『AMERIICAN REQUIEM』というタイトルなんですけれども。アメリカの中に生きる私。アメリカの中にいる黒人女性としての私ということであるとか。そこにプラス、アメリカの建国の歴史のような、そうした重みを歌うようなリリックも見られますし。あとは、あのビートルズの『BLACKBIIRD』のカバーが収録されておりまして。そこにも「そう来たか!」という意表を突かれた思いがしましたし。本当に1曲1曲、めちゃくちゃ深いストーリー、そしてヒストリーが、込められているんだなと思いながら全27曲、めちゃめちゃリピートして既に聞いております。

Beyoncé『BLACKBIIRD』

(渡辺志保)なので『Renaissance』が非常に型破りというか、ある種、型破りで実験的なアルバムだったんですが、今回の『COWBOY CARTER』ももちろん実験的なんだけれども、それよりはグッとトラディショナルなアルバムに仕上がっておりますし。その初動のセールスに関しても、『Renaissance』をもう軽く上回っているらしいんですよね。で、CDとレコード盤も発売日に合わせて店頭に並んでいるような状況なんですが。デジタルで配信されている内容とはちょっと違うんですけれども。たぶん、細かい変更とか曲の追加が間に合わなかったものがフィジカル盤として店頭に並んでいるんですが。

それも、ファンのためにフィジカルのリリースをしたというよりも、あまり普段、ストリーミングとかネットで音楽を聞かない、いろんな世代の方のこともケアして、もしかしたらCDとかを作って売っているのかなという風にも感じました。ですので往年のカントリーミュージックファンの方も楽しめるビヨンセのアルバムという仕上がりになっているのかなという風にも感じます。そんなこんなで、めちゃめちゃ長くなってしまったんですけど。ここで『JOLENE』という曲をお届けしたいと思います。こちら、ご存知の方もたくさんいると思うけれども。これはドリー・パートンが1973年に発表しました同名の『JOLENE』という曲のアレンジ&カバーバージョンというところになっております。

で、原曲のドリー・パートンが73年に歌った『JOLENE』というのは、自分の旦那さんをジョリーンというめちゃくちゃ綺麗な女性が奪おうとしていて。「あなたには絶対に勝てっこないから、私の大事な人を奪わないで。あなたがあの人を奪ってしまったら、私はもう2度と恋なんてできなくなってしまう……」みたいなリリックなんですけれども。今回ビヨンセが歌う『JOLENE』は、そのだいたいのあらすじは同じなんだけど。「いや、私の夫に惹かれるのもわかるよ。だって、あの男は私が育てたんだもん。私がクイーンなんだから。あんた、一歩近づいたらどうなるか、わかってるよね? ケガしたくないんだったら今すぐ、引き下がりなさいよ」という論調の、すごく素晴らしいアレンジに仕上がっておりますのでここでお届けしたいと思います。ビヨンセで『JOLENE』。

Beyoncé『JOLENE』

<書き起こしおわり>

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