渡辺志保 Complexが選ぶ2010年代ベストラッパートップ10を語る

渡辺志保 Complexが選ぶ2010年代ベストラッパートップ10を語る MUSIC GARAGE:ROOM 101

渡辺志保さんがbayfm『MUSIC GARAGE:ROOM 101』の中でヒップホップメディアComplexが選出した2010年代のベストラッパートップ10を紹介していました。

(渡辺志保)この時間、アメリカのメディア・コンプレックスが発表した2010年代のグレイテストラッパーたちについてお届けしたいと思います。というわけで、この番組でも何度かこういうトピックをね話しているところですけども。2019年が終わるということは2010年代も終わるということで、毎年この時期になると本当に年末のまとめとか、今年2019年のベストソングスとかベストラッパーとか、ベストニューアーティストっていう話にもなるんですが、今年に限っては非常に忙しくて。

その2010年代をまとめる企画・記事みたいなものも非常に多く見受けますし。そして私自身もいま、コンパス(KOMPASS)っていうウェブメディアがありまして。CINRAさんとSpotifyが協力したメディアのコンパスというもので、荏開津広さんと2010年代のヒップホップについてどうだったかっていうのをざっと振り返る記事がアップされているので、それもちょっと参照にしていただきたいなと思うんですけど。

やっぱり10年代のことについて話すとさ、2000年代のことについても話したくなりますし。そこだけを切り取って振り返るのは非常に難しいなって自分でもね、思ってたところなんだけど。なのでこの番組でも、ちょっとことあるごとにですね、これから3、4週間ぐらいを使ってですね、ちょいちょいこういうアメリカのウェブメディアの記事なんかを参照しつつ、ちょこちょこと2010年代を振り返るトークをしていきたいなという風に思ってます。

で、今週紹介したいのは、すごい人気巨大メディアのコンプレックスが2010年代のグレイテストラッパーを順位付けしていて、1位から10位までを発表しましたということで、みなさんにシェアしたいと思います。早速ですね、どんなメンツが並んでいるのか。まず10位から6位までを読み上げていきましょう。第10位、プシャ・T。第9位、タイラー・ザ・クリエイター。第8位、ニッキー・ミナージュ。第7位、ジェイ・Z。そして第6位がトラヴィス・スコットという並びです。

結構納得? みなさん、納得ですか? 私はね、10位がプシャ・Tなのと7位がジェイ・Zっていう。特にジェイ・Zなんて本当にどの時代を切り取ってもですね、グレイテストラッパーであることは間違いないと思うんですが。私が編集部員だったらこういう、ジェイ・Zをどこに置くかを非常に悩むだろうなという風に思ったし。まあプシャ・Tも同じくです。で、結構意外だったのがタイラー・ザ・クリエイターは第9位に入っているけど……こう言ったらちょっとネタバレになっちゃうけど。エイサップ・ロッキーは入ってないんですよね。

エイサップ・ロッキーは選出外

だからタイラーとエイサップ・ロッキーって私の中では結構、まあ双璧をなすと言いますか。また全然ね、クリエイティビティを持ったラッパーではありますけれども、デビューの時期とかも似ていたし。彼ら2人ともすごい仲がいいから、結構2010年代の幕開けを象徴するラッパーとして私はタイラーとエイサップ・ロッキーは常にセットみたいな感じで、なんとなく頭の中にいるんですけれども。この順位には9位にタイラー・ザ・クリエイターだけが入っているという感じです。

で、まあトラヴィスもね、6位に入ってるっていうことで。うん。今年というか、この10年間って本当に目まぐるしくシーンが変わったと思うし。あとマーケットそのものも変わってますよね。この番組でもいろいろとね、ネットを中心にしたアーティストのサバイバル術であるとかね、チャートの変化の仕方とか、そういったものも話してますけれども。まさにトラヴィス・スコットとかはね、そういったカルチャー全体、インダストリー全体を変えた人物だなという風にも思いますし。

で、彼もさ、2010年代初頭ぐらいからミックステープをリリースし始めて。私が最初にすごく衝撃を受けたのは2013年にリリースした『Owl Pharaoh』っていうミックステープがあって。それに『Upper Echelon』とかね、『Bandz』とかね、そういった曲が入ってまして。これに非常に非常に衝撃を受けて。「何だ、このラッパーは!」っていう。それでゲスト陣も結構ユニークだったし。その頃からT.I.とかね、あとはもちろんカニエ・ウェストと一緒に曲を作ったりもしていて。本当に新しいアイコンが誕生したなという風にも思いました。

そして、ちょっとこのタイミングで1曲、このラインアップの中からお届けしたいと思うんですけれども。まあ、なにはともあれ……あと、2010年代の幕開け。新しい時代を作ったなっていうラッパーと言えば、さっきもちょっと名前が出ましたけれども、タイラー・ザ・クリエイターですよね。いまからお届けしたい曲は『Yonkers』という彼のソロで発表した初期の楽曲ではありますけれども。この『Yonkers』のミュージックビデオも白黒で。タイラーがさゴキブリを食べてで、最後首を吊るっていうすごい衝撃的なミュージックビデオで。

本当にいままでのヒップホップのテンプレート的かっこよさからは全く離れた、そんなビデオだったんですよね。で、サウンドもちょっといびつな、エクスペリメンタルなサウンドだったりもしますし。同時にオッド・フューチャーが一躍ブレイクして。フランク・オーシャンも同じ年に『Nostalgia, Ultra』という非常に素晴らしいミックステープを発表して……みたいな。懐かしいですね。すごい。思い出に浸っちゃう感じがしますけど、あれから10年経つと思うと本当に恐ろしいという感じがします。というわけで、ここで1曲お届けしましょう。タイラー・ザ・クリエイターで『Yonkers』。

Tyler The Creator『Yonkers』

はい。いまお届けしましたのはアメリカのメディア、コンプレックスが発表した2010年代のグレイテスト・ラッパー第9位にランクインしたタイラー・ザ・クリエイターで『Yonkers』でした。いかがでしたでしょうか。「初めて聞いた」という方もいらっしゃるかもしれないけど、タイラーはこういう曲も歌っていたんだよっていうところです。そして気になる上位ラッパーたちの発表にまいりましょう。コンプレックスが選ぶ2010年代のグレイテストラッパー、第5位はJ・コール。第4位、フューチャー。第3位、カニエ・ウェスト。そして第2位はケンドリック・ラマー。そして栄えある第1位はドレイクということです。

はい、文句なしみたいなね。J・コール、フューチャー、ケンドリック、カニエ、そして1位がドレイクっていうことです。もう本当、文句なしって感じがしませんか? で、カニエが3位にいることがね、ちょっと嬉しくもあり、意外でもありという感じですね。さっきにジェイ・Zの時にも言いましたけども。やっぱりね、カニエ・ウェストもベテランの域に達するアーティストですが、2010年に彼は『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』。これも本当に本当に高い評価を受けているアルバム。そして13年には『Yeezus』。16年には『The Life of Pablo』。そして18年には『ye』。

そして今年、2019年は『Jesus is king』ということで。本当にコンスタントにアルバム作品をリリースしているし、そのたびにやっぱりね、お騒がせしまくっているわけですし。彼はそれこそフォーブスとかでも報じられているけれども。アディダスと一緒に組んで自分のスニーカーとか、あとはファッションのブランドを立ち上げて、もう何億ドルと稼いでいるという。もうカニエ帝国をこの10年で築き上げたという人物ですから3位にランクインするのも納得という感じです。

ケンドリック・ラマーももちろん、そのラップのクリエイティビティの幅というものをグッと押し広げた、そんなリリシストですから2位につけることも納得。そして1位がドレイクということで。もうさ、笑っちゃぐらいですけど。ドレイクは2011年だったかな? 『Take Care』というアルバムをリリースしまして。やっぱりそこからリリースするアルバムが全てヒット。そしてシングルも全て大大大ヒット。本当に驚くべきことに、最近……特にここ2、3年で顕著なことですけれども。本当に楽曲をリリースするとそれが何十億回再生、何百億回再生っていう、本当にストリーミング時代の寵児と言いますか。

ストリーミング時代の寵児・ドレイク

それをやっぱり作り上げた、そしてそれをブランド化したっていうのは本当にドレイクならではだし、彼以上にここまでこの10年間で成し遂げたラッパーはいないんじゃないかと思います。で、「カルチャーヴァルチャー」。いろんなカルチャーをちょっと食い物にするとか、あとは「ドレイクなんてポップスターだろ? ガチのヒップホップじゃねえよ」っていう風に言われることもたぶん非常に多いと思うんですけれども。

なんかそういったネガティビティとかヘイターとかを一瞬で黙らせるぐらいの実力。数字、フェイム、そしてセンスとかスキルとかね、そういったものに何重にも恵まれているという感じがしますよね。本当に。だからまあ、このコンプレックスがね、今回選んだ栄えある1位はドレイクですけれども。2010年代を代表するラッパーとしてドレイクの名前を挙げる人っていうのは本当に、かなり多いんじゃないかなという風に思っております。

というわけで1位から10位までを発表しましたがみなさま、いかがでしたでしょうか? 4位のフューチャーもね、いまに続くアトランタラップのこの大ブレイクっていうのを築いたアーティストですし。あとはね、「マンブルラップ」とか一時期はすごく言われてましたけれども。そういった正しいラップの仕方、表現方法というものを広めたアーティストそのものかなと思うし。J・コールもね、2019年も大活躍でしたから。

なのでJ・コール、ケンドリック、ドレイクなんかが築き上げたこの10年間の礎っていうのが2020年代はどうなるのか、非常に楽しみなところではありますよね。たとえばリル・パンプとか、この間もアルバムがリリースされたばっかりですけど、トリッピー・レッドとか、そういう新しいSoundCloudラップの担い手たちとか。まあジュース・ワールドとかリル・テッカとかね、そういった若いアーティストもいますけれども。彼らのここ数年……ここ2、3年ぐらいの動きですかね。それを見てると、やっぱり2000年代の終わりにドレイクとかJ・コールがミックステープでちょっとずつシーンを騒がせていったその時代のワクワク感とか。「これ、なんかちょっと大きくシーンが変わっていくのかな?」みたいな、そういう気持ちに私はなるんですよね。

だからきっとね、もうすぐね始まりますけど2020年以降のヒップホップシーンもね、きっと若い才能が新しいやり方で。誰も考えたことなかったようなやり方でいろんなことをひっくり返していってくれるんじゃないかなという風に思ってます。というわけで、昨年発表されたドレイクの大ヒットチューン『In My Feelings』をここでお届けしましょう。

Drake『In My Feelings』

<書き起こしおわり>

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