小沢健二 日本語の一人称の多様性を語る

小沢健二 母校・東京大学での「東大900番講堂講義」を語る 土曜日のエウレカ

小沢健二さんが2023年9月30日放送のTOKYO FM『土曜日のエウレカ』に出演。アメリカで英語話者の方と話していた際、「私」「僕」「自分」「俺」など、日本語の一人称の多様性を話したところ大いに驚かれたという話を紹介していました。

(川島明)さあ、いろいろここまで本当にありがたいお話をお伺いしてるんですが。小沢さん自身がこれまでの人生の中で見つけた一番のエウレカ、つまり発見や気づき。これを挙げるとすれば、何でしょうか?

(小沢健二)普通になんかアメリカで英語人としゃべっていて、日本語だとこの「僕は」とか「私は」とか「自分は」とか……「日本語は一人称を決めた時点でもう、意味があるんだよ」っていう。相手に対して自分がどういう風に話しかけてるか? 「僕はさ」って言うか、「私はさ」って言うか、「自分は」って言うか。それか、そもそも主語を言わないか、とか。その時点でもう、相手と自分の立場を表現してるし、どういう風に相手と関わりたいかを言っちゃっている。一人称だけで意味があるんだっていうことを言って。「だから一人称の選び方が10個ぐらいあるんだよ」って言ったら、めちゃめちゃその英語人の相手がめちゃくちゃびびっていて。「ええっ? 『I』って言っただけで意味あるんだ? 『I』って『I』以外にどうやって言うの?」って。

(川島明)そうですね。たしかに。

(小沢健二)「I」っていうのは1個しかなくて。まあ、人によってものすごい自意識が高い人は……よく、マイケル・ジョーダンの一人称は「マイケル・ジョーダン」だとかいいますけども。

(川島明)ああ、「矢沢は」みたいな(笑)。

(小沢健二)そういう特例は別として。だから「I」って言った時点では意味がないのに、「僕は」とか「私は」とか「自分は」とか。

(川島明)そうですね。「俺は」って言っちゃったら……。

(小沢健二)あとは「小沢的には」とか(笑)。そういうのを言った時点で意味があるっていうのを言ったら、びっくりしていて。「ああ、これ、わかんないのか」って。それで、日本語っていうのはきっと、そういうところからずっと気を遣っている言語なんですよね。「この人にはどういう風な自分であろうか」みたいな。

(川島明)まあ、清楚に見せたかったら「僕・私」になるし。上から行きたかったら「俺は」とかになるし。

(小沢健二)しかも、それを相手によって覚えておいて。

(川島明)使い分けていて。

(小沢健二)変な、別の自分が出ちゃわないんですよ。なんか「僕」関係の人に突然「俺」とかは言わないっていう。

(川島明)はい。そうですね。先輩とかには言わない。歌詞でもそうですよね?

(小沢健二)そうですよね。「僕」って言うのか、あえて「バカな俺」ってしちゃうのか。なんか、面白いなと思います。

(川島明)すごいですね。そこは……これ、最近ですか?

(小沢健二)いや、全然。もう20年ぐらい前です。びっくりして。

(川島明)わからないもんですよね。

(小沢健二)「一人称でいっぱい選んで、いつも細かく気を遣ってるな、俺たち」と思いましたね(笑)。

いつも一人称を選んで細かく気を遣う言語

(川島明)だって「いただきます」もないって言いますもんね。

(小沢健二)「いただきます」……「いただきます」って言わないですね。

(川島明)なんかそんな、食べるものにとか、神様にとか、食材に感謝してというか。別にみんな共通で、宗教的なことではなく。「はい。じゃあ手を合わせてください。いただきます」って言うことが、結構海外の人には驚かれるっていう。

(小沢健二)これ、モロに今のこれからの東大の授業のサブジェクトにがっつりかかってきましたね。そうですね。「食べる」っていうことに対してやっぱり日本列島文化はすごいなと思って。最高かっこいいなと思っていて。今、とても町に外国人観光客が増えてると思うんですけど。僕はもう本当にその目線があって。「今、旅行に行きたいのは日本」っていうのはめちゃくちゃわかるなって、すごい思います。なので今後もめちゃくちゃ外国人観光客が増えるので皆さん、大変だと思いますが(笑)。

(川島明)でもそれぐらい魅力的な国になっているということなんですかね。

(小沢健二)特に今の地球って考えると、ここはすごいですね。

(川島明)へー! 地球規模で?

(小沢健二)数字にあんまり換算されないで、こんなに不思議な、計算されないものがいっぱい残っていて。こんなところ、なかなかない。もう、うちの子らはめちゃくちゃ好きですね。日本。日本っていうか、日本列島が大好きです。

(川島明)ちょっともう感謝しながら過ごさないといけないなと思うんですが。どうでしょう? 小沢健二さんの今後。ご自身考える目標、夢、あれば教えていただきたいんですけども。

(小沢健二)ええっ? 難しい。難しいです。

(川島明)でも、やっぱり何かを表現していくということは、続けていかれるわけですよね?

(小沢健二)今、この授業みたいなことは何らかの形でやった方がいいだろうなとすごく思っていて。それで、それこそ今、外国人観光客がとにかく日本に来たがる気持ちはわかるって言ったけど。じゃあ、それをきちんとわかるように。雑談じゃなく。どうして、こんなにみんな来てしまうのか?っていうのを面白おかしく解説したいとも思うし。堅苦しい授業じゃなくて、なんかエンタメみたいな形でやれたらいいなと今回、特に東大の講義を用意していて思いました。それでそれを始める最初が、それこそ20歳の時に帰って、東大の900番講堂っていうのはなんか、ご縁を感じるし。なんか気持ちいいなと思います。なのでそこから先の、そういうのはやれたらいいなと思っています。

(川島明)ありがとうございます。最後に僕からの小沢さんへのリクエストなんですが。小沢さんが今、このラジオでかけたい曲というのがあれば、それをかけてお別れしようと思うんです。

(小沢健二)いろいろ、いろんなこといっぱいやったり、考えたりしてきて。それがすごい1曲に、音とかも含めて詰まってるなと思う『流動体について』をお願いします。

(川島明)ありがとうございます。

小沢健二『流動体について』

<書き起こしおわり>

小沢健二 母校・東京大学での「東大900番講堂講義」を語る
小沢健二さんが2023年9月30日放送のTOKYO FM『土曜日のエウレカ』に出演。麒麟川島さんと母校・東京大学の駒場キャンパスで行う「東大900番講堂講義」について話していました。
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