古舘伊知郎さんが2023年7月16日放送のTBSラジオ『爆笑問題の日曜サンデー』の中で安住紳一郎さんについてトーク。安住紳一郎さんの特徴的な「さて……」という言葉遣いのすごさや真似すべきテクニックについて話していました。
(太田光)質問のメールです。「今、局アナのてっぺんに君臨している安住紳一郎に声をかけるとしたら、何と言ってあげますか?」。もう、役員待遇ですからね。
(田中裕二)そうですね。このTBSで。
(古舘伊知郎)ついにね、役員になりましたね。さっき、会いました。
(田中裕二)ああ、会いました?
(古舘伊知郎)彼、気にして……ここんところ、ちょっとご無沙汰で。たまに飲みに行ってたんですけど、ご無沙汰なんで。ちょっとなんか、わざわざ『日曜天国』のプロデューサーを連れて挨拶に来てくれて。このTBSラジオが用意してくれた布団部屋みたいなちっちゃい部屋ですよ。
(太田光)布団部屋って(笑)。
(古舘伊知郎)本当に。田舎の湯治場の布団部屋みたいな。そこにわざわざ来てくれて、10分ぐらい話をして。久々に会って。
(太田光)どうですか? 先輩として、見ていて。どうですか?
(古舘伊知郎)もうね、完璧すぎますよね。『日曜天国』の声音、声色と『ニュースキャスター』をやってる時の声のトーンがまず違う。さっきの脊髄反射の田中さんの太田さんに対するツッコミと似てて、職人芸、来てますから。普通はね、たとえば僕とかが「さて、次のニュースです」ってやる時の「さて」っていうのは、「さて(By the way)」っていうだけじゃないですか。彼の「さて」は「さて……」って「さ」の前に詰まった音が入って「さて……」って「て」が伸びるんですよ。これだけで『日曜天国』を聞いてる人は「話題が切り替わるけれども、コーヒーブレイクだな」っていう。
(太田光)ああっ! そこまで計算して?
(古舘伊知郎)そう。ベランダの窓を15センチぐらい開けて、ちょっと風を通すかなっていう気分転換なんです。全国にアナウンサーは数多くいても、「さて」っていうのを「さて」以外で使っているのは彼だけですよ。
(太田光)たしかに。あの『日曜天国』、ちょっとその不安になるか、ならないかの間を空けますよね。
(古舘伊知郎)あれが安住流なんです。
(太田光)あれがテクニックなんだ!
安住紳一郎流の「さて……」
(古舘伊知郎)あれはね、TBSのアナウンスルームの誰かが教えるもんじゃないから。
(太田光)本人のオリジナルのテクニックで。やりながらの……。
(古舘伊知郎)「やりながら」ってなんですか?
(太田光)やりながらのテクニックで……。
(古舘伊知郎)もう才能と努力、両方でしょうね?
(太田光)小林完吾さんの「さてー」っていうのは……。
(古舘伊知郎)ああ、全く気づいていなかったけども。音的に伸ばすっていうところだけは参考にしたのかもしれない。小林完吾さんは安住ほど、そこまでああいうしっとり感の「さて……」ではなくて、口調としての癖だったからね。そこがきっかけになっているかもしれない。さすがですね。
(太田光)「さて」といえば小林完吾だなって。
(古舘伊知郎)そうかもしれない。
(山本恵里伽)私たち後輩も安住さんの真似はもう到底できないですし、本当に安住さんはもう安住さん。唯一無二の存在っていう感じになってますよね。
(古舘伊知郎)ひとつ、テクニックで真似するとしたら、どうでもいいところをゆっくりやって。それで言わなきゃいけないところをちょこちょこちょこってわざとテンポアップでしゃべることによって、聞いてる人が自発的に「聞こう」という努力を促すっていうのは、彼の発明です。
たとえば報ステをやめて『ぴったんこカン・カン』スペシャルに出してもらった時に、普通だったら僕なんかが言っちゃうとすれば、「さて。池袋から1駅で板橋の駅を降りまして。それからまっすぐ来ると、この北区滝野川という古い町にたどり着きます。この街出身、29歳でこの街をお出になった、古舘伊知郎さんです」って普通にやっちゃいますけども。そうじゃないんですよ。
「明治通りから……といっても、全国区でありませんが。明治通りから、5分ほど、池袋から車を飛ばしますと、北区、滝野川。この街が出てまいります。ここが生んだ、大変なしゃべり手の大御所、宮根、羽鳥は全く目じゃない。古舘伊知郎さんです!」って。
(太田光)おおーっ!
(田中裕二)完コピだ!
(山本恵里伽)すごいですね! すごい分析!
(太田光)それは1回、聞いただけですか? 何回か聞いたんですか?
(古舘伊知郎)聞いていない。その時、横にいたから。
(太田光)録音をしていたわけじゃなくて?
(古舘伊知郎)録音してない。もう、わかるんですよ。
(太田光)いつも、録音してますよね?
(古舘伊知郎)その時は横にいましたからね。
(太田光)でも、それぞれにあるんだろうね。安住に言わせりゃ、古舘さんのすごさっていうのが逆にあるんだろうね。
(古舘伊知郎)いや、だから本当に報ステをやめた時に『ぴったんこカン・カン』スペシャルに呼んでもらって。その時に母校の立教大学のところで放送研究会の人たちがワーッてやってるところに安住と僕で入っていって。で、僕が『トーキングブルース』でやっている薬局のドリンク売り。それを全部丸暗記して、やってくれたんですよ。それで、彼は泣いたんですよ。
(太田光)安住、よく泣きますよね。泣きの安住って言われてますよね。
(古舘伊知郎)うまいんですよ。徳さんとみのさん、そして安住さん。全員、信用できないですからね。
(一同)フハハハハハハハハッ!
(田中裕二)さんざん「すごい」って言っておいて(笑)。
泣きの安住
(古舘伊知郎)その時に、やってくれたんですよ。それで僕、どう思ったか? 泣きながらやってくれて。完コピをやってくれたんです。その時の俺の器のデカさ。「俺の方がうまい」と思って。
(一同)フハハハハハハハハッ!
(田中裕二)デカくはない(笑)。
(太田光)自分ですから(笑)。
(古舘伊知郎)ここまで出かかって。
(田中裕二)でも、言わなかった?
(古舘伊知郎)言わなかった。
(田中裕二)えらい!
<書き起こしおわり>