古舘伊知郎『安住紳一郎の日曜天国』代打OPトーク書き起こし

古舘伊知郎『安住紳一郎の日曜天国』代打OPトーク書き起こし 安住紳一郎の日曜天国

古舘伊知郎さんがTBSラジオ『安住紳一郎の日曜天国』に休暇中の安住紳一郎さんの代打で登場。そのオープニングトークの書き起こしです。

(古舘伊知郎)古舘伊知郎の日曜天国! おはようございます。古舘伊知郎です。

(中澤有美子)おはようございます。中澤有美子です。

(古舘伊知郎)いやー、安住くんのピンチヒッターということで呼ばれてまいりましたけども。「古舘伊知郎の日曜天国」っていうこれ、業界では昔……いまは言いますか? 「鳴き」っていうんですけども。タイトルコールの鳴き。これは違和感すごいっすね!

(中澤有美子)フフフ(笑)。

(古舘伊知郎)だって安住くんが15年以上やられてきている長寿番組にいきなり異分子が入り込むっていうのは……中澤さんも内心は嫌でしょう? 大丈夫ですか?

(中澤有美子)いえいえ。ご降臨いただいたっていう感じがしております。

(古舘伊知郎)もうすでにバカにしているでしょう? なんで私が「ご降臨」しなきゃいけないんですか? はいつくばるように生きてます、私。

(中澤有美子)とんでもないです(笑)。もう殿上人が降りてきてくださったっていう……(笑)。

(古舘伊知郎)だから……そういうさ、褒め殺しってういレベルじゃないのはやめてくれる?って言いながらも、ちょっと嬉しい私もいるんですよ。昔、中澤さんの大ファンで。TBSの深夜のニュース番組、ニュースバードをやられていた時はずっと僕、報道ステーションが終わってから……2005年あたりですかね。家に帰って寝る前に3時台、4時台、ずーっともう夜が白々と明けてくる時、ツキヨ先生と中澤さんのインタビューコーナーまでちゃんと見て寝ていましたから。だから今日、ちょっと嬉しいんです。ありがとうございます。

(中澤有美子)ありがとうございます!

(古舘伊知郎)僕、安住くんというよりも中澤さんに呼ばれたんじゃないかな?って思って。

(中澤有美子)ああー(笑)。気がつかれましたか?

(古舘伊知郎)もうこの返しが抜群ですよね。普通でしたら「気がつかれました?」で終わるところを「気がつかれましたか?」って。この「か」に余韻があるじゃないですか。なんかもうひとつの音が絡むような……だから1人ホーミーっていうかしゃべりのホーミーですよね。ちょっと同時に2つの種類の声が出る感じがします。細かく中澤さんのテクニックをずーっと僕流に分析したりしてるっていうことが、またこれが安住くんに叱られるじゃないですか。「もうちょっとちゃんとしたことを言え!」みたいな。

だけど、話が急に変わりますけれども、本当に台風19号の被害に遭われた方がまだいっぱいいらっしゃって。この番組を、茨城県でも栃木県も聞いてらっしゃる方、多いと思うんですね。もちろん避難所におられる方。それから親戚の方のところに身を寄せてらっしゃる方もいらっしゃると思いますが。本当にいま、大変だと思います。

(中澤有美子)本当にそうですよね。

(古舘伊知郎)ねえ。辛いことが多いと思いますけども。どうかここをね、乗り切っていただきたいなって切に思います。たとえば、泥かきとかいろんなことをボランティアの方と一緒にやられている中でも、ちょっと目をかいただけで結膜炎に子供さんがなったりとか。大丈夫でしょうかね? やっぱり汚れや雑菌が入ったりする。あるいはたとえばお子さんがアトピーで大変だという方で、ちょっとぬるま湯に浸した手ぬぐいかタオルで顔を優しく拭くだけでもちょっと効果がありますよっていうのも聞きましたしね。

あとは小児喘息の方であれば言わずもがなですけども。常に、嫌でも子供さんに言ってマスクしてもらわなければいけないんだろうし。あとね、足が不自由な方が家族でいらっしゃったら、それはもう避難所にもなかなか行きづらかったっていう。じゃあいま、何らかの形で時間をやりすごさなきゃいけないっていう方もいらっしゃると思うのでね。これはもう、なんとか苦しみの最中で恐縮ですけども、ここを乗り越えてね、少しずつ薄紙をはがすように回復していってもらいたいな。いろいろなことがって切に願いますね。

(中澤有美子)そうですね。本当に。

(古舘伊知郎)また、それで台風20号、21号が接近してきてっていうね。沖縄方面、あるいは21号が日本列島の方向に……なんていうことを聞くと、いよいよもって地球温暖化を前提にしながら。えらい時代に突入しているなっていう感もありますね。

(中澤有美子)そうですね。本当にそうですね。

(古舘伊知郎)今日は赤坂界隈、かなり曇天で。どんよりとした感じですね。こういう日曜の朝がお好きな方もいるんでしょうかね。

(中澤有美子)ああ、そうですね。のんびりと過ごす感じになりますかね?

(古舘伊知郎)なんかホワーンとできるからむしろいいっていう方もいるんじゃないですかね。なんか『ビューティフル・サンデー』っていう曲が昔ね、大ヒットしましたけども。「うわあ、朗らかで明るい爽やかな朝だ!」っていうのがたまらなく嫌だっていう人もいるでしょうね。

(中澤有美子)まあ、そうでしょうね。眩しすぎちゃって……っていう。

(古舘伊知郎)なんかどんよりで薄いカーテンが二重にひかれているぐらいがいいや、みたいなこともあるかもしれないですね。

(中澤有美子)たしかに。よく眠れそうです。

(古舘伊知郎)そうですよね。さて……これも安住くんの「さて……」は上手いですよね! 「さて……」ってこう、間をおいて。前後に間を一間ずつ置きながら「さて、リクエストにお応えして」っていうあの「さて……」は単なる「By the way」じゃないじゃないですか。「さて……」で世界をどんどんと切り替えていくんですよね。ズルい男だね。

(中澤有美子)ええーっ? でも、それは古舘さんが切り開かれたものじゃないんですか?

安住紳一郎の「さて……」

(古舘伊知郎)全くそんなつもりもなく言っているでしょう? 中澤さん。「さて……」の先駆者は安住くんだから。僕は「さて……」なんて全然ないですよ。もうあの間合いとかそういうものはなかなか取れないし。だってこの番組をピンチヒッターでやってくれっていう時ももう何ヶ月か前でしたけども。早めなんですよ。彼がいつ、遅れた夏休みを取るかも知らない。だいたい、スタッフに夏休み、どこに行くとも言わないで消えてるんですよ。ニュースキャスターが終わってから。今日から夏休みでしょう?

(中澤有美子)ええ。

(古舘伊知郎)だからどこかに潜伏しているんだよ。僕ね、海外は行ってないんじゃないかと思うんですよね。行くとしたら……まあ今日あたり行くのかわからないけども。どこかに潜伏していて、彼はいろんなことをやっているんでしょうね。でね、そうやって「この番組のピンチヒッターを……」って言われた時も、やっぱりあれでしたよ。「さて……」でしたよ。

(中澤有美子)アハハハハハハッ! そうでしたか(笑)。

(古舘伊知郎)メシを食い終わって酒を飲んでいる時に「さて……ちょっと先になるかと思いますが。古舘さん、『安住紳一郎の日曜天国』っていう番組をやっていまして。日曜日に」「ああ、知ってる、知ってる。時折、聞いてる」「あの番組のピンチヒッターなんぞ、やってくださる気はないもんでございましょうか?」みたいな。そういう感じですよ。ちょっとこう、言い方がスルッと来るからスルッと「うん、やるやる!」って言っちゃったの。

(中澤有美子)フフフ(笑)。

(古舘伊知郎)もう本当に2つ返事とはこのことだと思って。だからもう言ってから次の日にシラフになって酒が抜けてから後悔しましたね。

(中澤有美子)アハハハハハッ!

(古舘伊知郎)で、後で事務所、古舘プロジェクトのマネージャーのカタオカさんっていう僕をやってくれている人に怒られましたよ。「安住さんとの関係性、TBSラジオに出させてもらうこと、とってもいいと思いますけど……勝手に個人で決めないでください」って厳しくお叱りを受けました。もう慌てて……僕も気が弱いから安住くんに電話して「やっぱりやめる」って言おうかと思ったぐらいで。だからそのくらい、もうスッと。ものの道理を越えて。「ああ、安住くん。わかった、わかった」って言わせちゃうような神通力が彼にはあるんですね。

(中澤有美子)へー! お二人のご関係がすごくいいですよね。

(古舘伊知郎)ちょっと愛し合ってるなっていう。

(中澤有美子)なんか不思議なね……師弟でありながら、いじめあっているみたいな。

(古舘伊知郎)彼も当然当たり前ですが人間ですから。いいところ、悪いところ、あると思うんですよね。人間、多面体で。だけど僕にはいいところをいっぱい見せてくれる。中澤さんには悪いところ、見せるでしょう? あいつも。

(中澤有美子)悪いところですか?(笑)。

(古舘伊知郎)だって本番前とか、殺伐としてませんか? 彼が黙りこくっていたり、いろいろと。

(中澤有美子)フフフ、あの、まあお疲れもあるでしょうし、集中したいこともあると思うので。極力邪魔をしないようにという……。

(古舘伊知郎)腫れ物に触るように? そのね、彼の大御所気取りが人をダメにしていくんですから。彼も気をつけなきゃいけないですね。はい。

(中澤有美子)フフフ(笑)。

(古舘伊知郎)昨日もね、土曜日。TBSラジオに来て、ちょっと今日のこの番組、日曜天国の打ち合わせみたいなことをさせてもらって。「一応、このぐらいしゃべれますよ。オープニングは」なんていう、まあ雑な打ち合わせがあったんですよ。

(中澤有美子)う、打ち合わせが。「雑な」……(笑)。

番組前の打ち合わせ

(古舘伊知郎)雑な打ち合わせでした。あったんですよ。で、その時に「冒頭、かなりしゃべれますけど。古舘さん」「いや、もちろん台風のね、お話もさせてもらいたいし。台風の対策とかね、僕が勝手に拙いながら思うようなこととか。そしてその根本の問題は僕は地球温暖化だと思ってますから、いろんな『地球温暖化なんかない』っていうご意見があのもわかってるんですけど。そういうような話を……」ってとうとうとしゃべっちゃったんです。「こういう話をしたい、ああいう話をしたい」って。

そしたらずっとプロデューサーの方、ディレクターの方が聞いてくれて。「わかりました。そうですね。もう30分ぐらいいま、お話になっていますよね? そういうお話もいいんですけども……まあ、ちょっと重くなっちゃうかな? あ、それはそうと……」ってプロデューサーの方が自分の手帳みたいのを僕の前にフッと出してくれて。「あ、これ。たまさか安住からの伝言ということで。冒頭のトークはこんな項目で。古舘さん、こういう話を持ってるから。こんな体験話なんかどうですか?って3項目。安住からの伝言でございます」っていう風に見せられて。「こんな感じでオープニングはトークされたらどうでしょう?」って言われて。僕が温暖化含めて30分ぐらい話したこと、全部ボツになったという。

(中澤有美子)アハハハハハッ!

(古舘伊知郎)もう全て安住紳一郎のひらの上で転がされてるわけですよ。だからこれだけ、10分ね、始まってフリートークをさせていただいて。あ、どのぐらいしゃべりました? 僕。

(中澤有美子)フフフ、10分ぐらいですね(笑)。

(古舘伊知郎)ここはそうでもなかったですけど、ここからは全部彼の差配の中で私、やっていきますから。中澤さん、ちょっとそのメモでどういうことを安住くんが私に「オープニングでしゃべれ」って指示されてるのか。それに従いたいと思います。僕は業界では「安住の犬」と言われております。

(中澤有美子)そんな……(笑)。

(古舘伊知郎)犬は自分のことを「犬」って言わないから。半分犬です。

(中澤有美子)ああ、そうですか。いやいや、恐れ多い……(笑)。

(古舘伊知郎)で、どんなことを?

(中澤有美子)届いております。「この話を聞け」ということですね。「越乃寒梅買い占め事件」。

古舘伊知郎「越乃寒梅買い占め事件」

(古舘伊知郎)ああー。それ、昔トークライブで僕が言ったのかな? 僕、「戯言」っていうトークライブを年に何回かやり始めていて。「トーキングブルース」っていうのは昔、やっていたんですけども。今年の8月5日に新宿のロフトっていうところで1日だけやったんですけど。今度12月2日、3日もまたやるんですけどね。で、その8月5日の時に彼が聞きに来てくれて。その時にちょっと冒頭で言った話ですね。じゃあ、それ行きますか?

(中澤有美子)へー! 越乃寒梅買い占め事件、お願いします!

(古舘伊知郎)はい。わかりました。なんかお題みたいなのを出されて……噺家さんみたいな話になってきちゃっている。で、これはもう大昔の話なんですけども。そうですね。僕がアナウンサーになって43年なので。42年前のことです。で、僕がみのもんたさんのカバン持ちみたいなことをやってまして。みのさん、まだ文化放送のアナウンサーで。僕の高校・大学の大尊敬する10年上の先輩なので。僕は慕っていて、テレビ朝日の局のアナウンサーのくせに、時間があった時はかならずみのさんのカバン持ちやっていたんです。で、銀座のクラブとかお付き合いしてて。

(モノマネで)「古舘、俺のバッグ、持ってくれる?」みたい話をやってたんです。で、その時にたまたま銀座でまた呼ばれて、みのさんのお供をしていた時に「明日僕、プロレスの実況中継で新潟の長岡厚生会館っていうところへ出張に行くんです」って言って。(モノマネで)「ああ、新潟行くの、古舘。あっ、そう? 越乃寒梅っていう清酒が流行ってるよね。新潟のね。なかなか東京で手に入らない。赤坂あたりでもね。もしあったら、買ってきて」なんて言われて。「はい、もしあったらかならず買ってきます!」って。僕はね、ダメかと思ったんですよ。

いまみたいにお取り寄せだの通販だのっていうのがない時代ですから。新潟でものすごい幻の名酒と言われた越乃寒梅、行ってもないだろうと思って。ましてや新潟っていっても長岡。長岡の地元のお酒ではないということもわかってたので。それで長岡の駅で降りて、ビジネスホテルに入って。「さあ、中継だ」っつって緊張してる時に、ちょっと1時間ぐらいあったんでビジネスホテルから外に出て。ちょっと最寄りの酒屋さんなんぞ探してね、そこであれば……と思って。ビジネスホテル、ちっちゃなところのホテルの往来に出た瞬間、隣がでっかい間口の酒屋さんだったの。

(中澤有美子)おおう!

(古舘伊知郎)「これは、あるかどうかは別としてもラッキーだ」って思って。それで入ってみたらよくわかったんですけども、閑散としてるんですよ。全然、誰もいないんですよ。それで奥の方に人の気配がするんですよ。だから酒屋さん、小売店と思ったのがそこは酒問屋さんだったんですね。大きな。それで「すいません、すいません!」ってちょっと声を大きくしたら、奥から60がらみの女性がスッと出てきて。小売店じゃないから「いらっしゃいませ」とは言わないの。「ああ、何か?」って言われて。お酒がいっぱい並んでるんですよ。

「すいません。あの、越乃寒梅はないですよね?」って言ったら「あら!」って。僕、当時22、3ですかね。「あら、あなた運がいいわね。長岡で越乃寒梅を扱っているの、うちだけよ」って言われて。「何本持っていくの?」って言われたんですよ。僕が謙虚に言ったからよかったんですね。「ないもんでございましょうか?」みたいな。「何本持っていくの?」って言うから、思わず……ここがね、大きなつづらと小さなつづらじゃないですけども。本当に欲深でしたね。「6本」っつっちゃったんですよ。

(中澤有美子)おお、おおっ!

(古舘伊知郎)「何本持っていく?」って言われて「6本!」って。「ああ、ちょっと欲深だったな。でも、うちのオヤジも酒好きだからうちのオヤジにもあげよう。みのさんには2本、アナウンス部にも1本持って帰ろう……」とかいろいろと思って。それで「6本」って言ったんですよ。「ああ、6本。わかった。じゃあ6本、あなたに分けてあげる。そのかわり、どうするの?」って言われたんですよ。「どうするの? どうやって持って帰るの?」って。だって宅配便もなにもない時代ですから。で、6本、持っていくの大変ですよ。スポーツアナウンサー、徒弟制度の時代ですから。

先輩のバッグを持たされて、自分のバッグを持って。もう手がふさがっているじゃないですか。6本分、どうやって東京まで持ち帰るか。宅配便で送れないし。それで「どうしましょうかね?」って言ったら、「ああ、わかった。じゃああれ、特別にあなたにあげる!」って。また奥に入って。そしたら、木の大きな背負子。白木でできてもう縦横斜めの背負子! で、荒縄がグーッと2本通っていて、きれいな放物線を描いていて。ガーッと背中に背負う。行商の方がやっているように。そこに2本、2本、2本。幻の越乃寒梅が。で、しかもその背負子の中が丸く切ってあって。

白木の背負子で長岡・東京間を移動

ちゃんと一升瓶のお酒やお醤油の瓶が配達する時に割れないように丸く切ってあるの。だから、紙の箱を取って裸の越乃寒梅を2本、2本、2本。段差があって。セットアップになっているんですね。2本、2本、2本で計6本、半ダース。グッと荒縄で背負子で背負って。左に先輩の荷物、右に僕のバッグを持って階段を上り下りして。ホームから新潟から東京。新幹線もない時代に東京に戻って。ずーっと背負子で移動していましたよ。

(中澤有美子)フハハハハハハッ!

(古舘伊知郎)で、アナウンス部に行って荷を下ろしてアナウンス部に1本置いて、家に2本持って帰ってみのさんに2本贈呈するんですよ。まあ、こんな話なんです。大したオチはないんですけども。あの宅配がない時代。ネットもない時代。偶然が偶然を呼んで隣が酒問屋だったとか。いろんな幸運が。

(中澤有美子)ああ、そうですね(笑)。

(古舘伊知郎)みのさんも喜んでくれてね。(モノマネで)「2本? うれしいね、古舘。銀座行こう」ってまた言ってました。懐かしい話なんですよ。

(中澤有美子)そんなことが。へー! 恥ずかしいとかもなかったですか?

(古舘伊知郎)だからいまだったら白木に荒縄の背負子で……なんかね、だから縦長の二宮尊徳みたいな。あれ、横長じゃないですか。薪をいっぱい積んでね。

(中澤有美子)ええ、ええ。

(古舘伊知郎)で、僕の場合は荷物を持って縦長の状態だったんですけども。ちょっと恥ずかしかったですね。1978年。でも、いまはもっと恥ずかしいでしょうね。

(中澤有美子)まあ、そうですよね。見かけたことないですよね(笑)。

(古舘伊知郎)僕ね、その背負子事件があってから、思うんですよ。僕も含めて自分を中心に置きます。いまはゴロゴロじゃないですか。キャスター付きで転がす時代じゃないですか。で、腕力が鍛えられないとかそういう固いことを言うんじゃなくて、めっちゃ小さいのもゴロゴロですよね?

(中澤有美子)そうですよね。それ、ありますね(笑)。

(古舘伊知郎)僕ね、女の人でも男の人でもめっちゃちっちゃいのを転がしているのを見ると、ちょっと足で踏んでやりたくなるんですよ。

(中澤有美子)アハハハハハッ!

(古舘伊知郎)「こんなもの、転がさないで持て」って思いませんか? 中澤さんはどのぐらいを持ちますか?

(中澤有美子)私、結構持っちゃう方ですけども。転がさない方ですね。

(古舘伊知郎)どうしているんですか?

(中澤有美子)その方が扱いが……せっかちなので。大変っていうか、持っちゃった方が早いかな?って。

若者のキャリーバッグ問題

(古舘伊知郎)えらいですねー。まあ、僕は中澤さんのファンだからなんでもかんでも「えらい」って鵜呑みにするのかわからないけども。僕がいちばん腹立ったのは……急に思い出しましたけども。今年の夏場にね、7月ぐらいだったと思うんですけど。恵比寿の駅の近くに歩道橋から地上人の歩道におりる結構長めの螺旋階段があるんですよ。大きな。そこを若い人が……20代半ばと思しき若い女性がポックリじゃないけども。本当にものすごい底の厚いサンダルを履いて。花魁道中みたいな。

こんな分厚いので足元がおぼつかないだろうと思うんだけども。僕みたいに年寄りじゃないから一切、階段を見ながら降りるんじゃなくて。左手にスマホを持って、スマホでチェックしながら右手でちっちゃいバッグのゴロゴロのやつのキャスター付きをゴロン、ゴロン、ゴロン!ってやりながら。それでスマホを見ながら降りてるのを見たら、後ろから蹴飛ばしてやりたくなって。なんであんな器用なことができるのかな?っていう。私の妬みと、ゴロン、ゴロン!ってやっているならちょっと持ち上げちゃえばいいんだけども。ゴロゴロのまんま、堅持していました。

(中澤有美子)あえて、そのまま?

(古舘伊知郎)もうかえって大変ですね。僕はね、ある種屈折した千手観音のように見えますよ。いろんなことを同時多発でやっているなと思って。スマホに傾注しながらゴロン、ゴロンの音を気にしない精神の集中が瞑想状態でありながら、ポックリでゴロン、ゴロンってまた別な音を立てながら、和音で降りているんですよね。

(中澤有美子)ああー、「ゾーンに入っている」みたいな?

(古舘伊知郎)ゾーンに入っているのか、もしくは若い人特有の身体能力でしょうね。僕なんかはやっぱり螺旋階段だとか歩道橋から降りる時は1歩、2歩、3歩……ってちゃんと確認しながら足元を見て。踏み外すんですよね。60を過ぎて「ああ、こういうことが老いるということだな」って思って笑っちゃうのが、ちょっと左の足が右に比べて0.1ミリぐらい上がりが悪かったりすると、ちょっと階段とか蹴躓きそうになるじゃないですか。気をつけた方がいいですね。結論としては。3項目あった……もう時間がないからできないとは思うんですけども。

(中澤有美子)いえいえ、もうひとつ、お願いしていいですか? ぜひお願いしたいんですけども。

(古舘伊知郎)3つのうち、じゃあ2つ紹介しないと安住くんに怒られる……。

(中澤有美子)どっちをお願いしようかな? じゃあ、この「Love Is Over事件」をぜひお願いしたいです。

古舘伊知郎「Love Is Over事件」

(古舘伊知郎)これはいろんなところで言っちゃっている話なんだけども。意地悪だね、安住くんも。いろんなところで言っている話がまたここでかぶると、「古舘、ネタかぶっているじゃねえか」ってまた業界で悪い評判が立ちますよ。「Love Is Over事件」はね、彼はこれが好きなんだね。もう彼の言いなりだね。

(中澤有美子)フフフ(笑)。

(古舘伊知郎)これはね、この前にも偶然、番組でご一緒して懐かしかったんだけど。長州力さん。年は僕よりちょっと上で先輩なんですけど。長州力でガーッと来る時に僕も実況デビューしているんで。なんか同期の桜的な感覚があるんですよ。あの名前、リングネームが「長州力」に変わって僕、実況し始めたのかな? だから僕の昭和52年のプロレスの実況デビューが越谷市体育館の長州力対エルゴリアスの一戦。この一戦から入ってるんです。はっきりと覚えている。で、長州力も売れて、みんなプロレスが売れて、僕の実況も運良く売れて……っていう、そういう経験をしてるので仲が良かったんですよ。

(中澤有美子)ええ、ええ。

(古舘伊知郎)で、一旦離れて、僕も実況離れたり。力さんも別の団体に行ったりとかっていう時。まさにこのTBSのある赤坂で裏道で偶然、酔っ払いながら会っちゃったんですよ。それで俺のことを「伊知郎」とか「伊知郎ちゃん」とか呼ぶんだけども。「伊知郎ちゃん、懐かしいね!」「うわっ、力さん!」なんて。で、向こうは若手のレスラーを引き連れていて。僕はテレビのスタッフと飲んでいたんですよ。

「一緒に飲み行こうか」って酔っ払い同士が。それで力さんがよく知っているっていう、サパークラブっていう。いまはなくなりましたね。生バンドがステージで入って歌を歌ったり演奏したりしてて。ボックスがいっぱいあって……っていう六本木のサパークラブ。そのはずれの暗い一角をしめて、みんなでどっかり10人以上で座ったんですよ。で、僕と力さんが暗がりで向かい合っているわけですよ。みんなもそうですけども。その時、忘れもしない。久々に会うとレスラーって太い腕を交差させて、「せーの!」で。これは絶対、一般の方は真似しちゃダメですよ。一気にキューッと相手のお酒を飲み干すっていう。それも3杯。

もう今時、そんなことは絶対にやったらダメですよ。それでお互いに暗がりの中、ウイスキーの水割りを作って。僕の作った水割りを力さん。力さんは作ったのを私にくれるっていうので。「せーの!」でウイスキーの水割りを……「本当に久々だね!」って。すでにお互い、酔っていますから。「キュー、キュー、キューッ!」ってタンブラーグラスで一気飲みしたんですよ。3杯。

(中澤有美子)へー!

(古舘伊知郎)それでさらに、「しとど濡れそぼる」という言葉がありますけど。酔っぱらいまくったんですね。そしたら力さんがちょっと滑舌悪く、「ねえ、古舘さん。久々にほら、よく歌っていたじゃん。一緒に……あれ、歌ってよ。『Love Is Over』。欧陽菲菲の」って。「ああ、『Love Is Over』だな」ってこっちも聞き取って。「わかった、力さん! 久々に『Love Is Over』、生バンドにリクエストして歌ってくるわ!」ってボックスからパッと立ち上がったんですよ。

立ち上がった瞬間、世界がグルグルと回り始めました。ものすごい勢いで酔いが回ったんですね。で、生バンド方向に向かいながらキュッと急右折してトイレに入りました。で、便器を抱えて20分。朝方から申し訳ないですけども、吐きまくって。で、20分、25分ぐらい。まさにこのオープニングトーク25分ぐらいの感じで便器との向き合い。で、本当に言ってました。「お尻の気持ちもわかってほしい」って。便器も。

(中澤有美子)ああ、そうですか(笑)。

(古舘伊知郎)だって僕、顔しか向けてませんから。お尻むけないで。吐きまくって。で、人心地ついておしぼりで拭ってフラフラな状態で暗がりのボックスにドーンと座ったら力さんも酔っ払っていて。拍手をして。「よかったよ、『Love Is Over』!」って。歌ってない!っていう(笑)。

(中澤有美子)アハハハハハッ!

(古舘伊知郎)「歌ってねえよ、俺はっ!」って叫んだっていう話なんですね(笑)。

(中澤有美子)最高ですね! アハハハハハッ! 優しさ?

(古舘伊知郎)拙い話で申し訳ない。こうやって安住くんは先輩を殺していくんだよ。だって、この話はあんまり日曜の朝に合っているとは思わないんだけどね。

(中澤有美子)いいです。すごいよかったです(笑)。

(古舘伊知郎)ちょっと聞きたい。中澤さん。たまには本音を言って。どこがいいんですか?

(中澤有美子)なんでしょう? だって力さんも気を失ってたけど、優しい……古舘さんが歌って戻ってきてくれたんだって思って。「よかったよ」って……(笑)。

長州力のプロレスラー流儀のイタズラ

(古舘伊知郎)ただね、力さんのイタズラが素人の私には骨身にしみました。ズルいんですよ。ほぼ水を入れていないんですよ。暗がりで。超濃いめなんですよ。で、俺は普通に半々で割っているんですよ。ここをからかうんですよ。それがプロレス流儀なんですよ。

(中澤有美子)すごい!

(古舘伊知郎)プロレスラーはその当時はみんな荒くれで。そういうのが普通でしたから。で、僕が……そう。このオチをさっき言い忘れました。僕、大オチを忘れました。また安住くんに後で怒られますね。「ひとつだけ僕、酔っ払いすぎてわすれていたことがあるんですよ。俺はレスラーじゃなかったっていうことですよ!」っていうオチがあったんですけど、忘れちゃいました。すっかり忘れちゃいました。

(中澤有美子)ああー(笑)。

(古舘伊知郎)もう夜型人間なんで朝は大体頭が回っていませんから。私。ほんでこんな番組に駆り出されたってね、できないですよ。そんな、まともには。

(中澤有美子)申し訳ありません(笑)。ありがとうございます。

(古舘伊知郎)申し訳ない。言い訳ですから。はい。

(中澤有美子)もう1個お願いを……どうですか? ダメですか?(笑)。

(古舘伊知郎)じゃあ、そろそろ、もう……。

(中澤有美子)じゃあ、メッセージのコーナーにまいりたいと思います(笑)。

<書き起こしおわり>

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