町山智浩『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』を語る

町山智浩『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』を語る こねくと

町山智浩さんが2023年5月8日放送のTBSラジオ『こねくと』で『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』について話していました。

(石山蓮華)今日、取り上げていただく作品は何ですか?

(町山智浩)はい。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』です。

(でか美ちゃん)出た! 来たぜ!

(町山智浩)これは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』というマーベルコミックスの映画化のシリーズの3作目で、完結編ですね。これ、1作目から大ヒットし続けてるんですけど。僕が出す今度の本(『アメリカスーパーヒーロー映画 徹底解剖』)でですね、実は一番メインになってるのはこの映画なんですよ。

(でか美ちゃん)ああ、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』が。

町山智浩 著書『アメリカスーパーヒーロー映画 徹底解剖』を語る
町山智浩さんが2023年5月8日放送のTBSラジオ『こねくと』で自身の著書『町山智浩のアメリカスーパーヒーロー映画 徹底解剖』について話していました。

(町山智浩)はい。これね、監督はジェームズ・ガンという人なんですけども。この人の人生について実はいっぱい書いてる本なんですよ。

(でか美ちゃん)なるほど。まさに軸になった?

(町山智浩)そうです。っていうのはね、僕はこのジェームズ・ガンっていう人がまだ映画監督になる前に会ってるんですよ。

(石山蓮華)ええっ? そうなんですか?

(でか美ちゃん)それはどういったタイミングでお会いしたんですか?

(町山智浩)友達の友達だったんです(笑)。

(でか美ちゃん)ああ、マジでそういう感じなんですね。

(町山智浩)それだけでした。だからまだ全然、名前も知られてなくて。脚本家としてハリウッドで1本、当たったんで。お金ができたんで家を買ったんだよ、みたいな時に会っているんですよ。

(でか美ちゃん)じゃあ、映画監督の前はシナリオライターをされていたんですね。

(町山智浩)シナリオライターだったんですね。その時になんか「暇だから会おう」っつって会ってビールを飲んだんですけど。インターネットにそれの映像、上がってますね。僕が20年前に会った時の映像。2002年ぐらいですね。

(でか美ちゃん)どんな方だったんですか?

(町山智浩)すごく気さくな人でしたよ。僕より四つ下かな? なんですけどもも。とにかく漫画が大好きで、ウルトラマンが大好きで、怪獣が大好きで。まあ、オタクですね。

(石山蓮華)ジェームズ・ガン監督。56歳。

(町山智浩)彼はね、その時はまだ結構貧乏で。元々ね、すごく貧乏な映画会社がありまして。トロマ映画という会社があるんですよ。そこで修行を始めた人を、ギャラが2万円とか3万円だったとか、そういう世界なんですね。

(でか美ちゃん)あら。それじゃあ暮らしていけないですもんね。

(町山智浩)そう。だから「やっと食えるぞ!」ってなった時に会ったんで。「俺はラッキーだ!」とか言ってましたけど。

(でか美ちゃん)そうか。ハッピーなタイミングで会えてたんですね。

(町山智浩)そう。超ハッピーなタイミングで会って。ところが、彼はその後ね、いろんなことがあったんですよ。それがね、この『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』っていう映画のシリーズにすごく反映されてるんですけども。

ジェームズ・ガンの人生のいろいろを反映

(町山智浩)これね、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』っていうのは他にいっぱいアメコミ映画って、ありますよね? マーベルコミックスだとスパイダーマンとかハルクとか、キャプテン・アメリカ、アベンジャーズね。で、マーベルのライバルのDCコミックスだと、スーパーマンとかバットマンとかワンダーウーマンとか。みんな、名前だけ聞いたことあるでしょう?

(でか美ちゃん)もちろん、あります。

(町山智浩)ところが、このガーディアンズ・オブ・ギャラクシーっていうのはアメリカ人ですら、ほとんど名前を聞いたことがない人たちなんですよ。

(でか美ちゃん)へー! そうなんですね。

(町山智浩)はい。超マイナーコミックなんですね。

(でか美ちゃん)でも映画になって大ヒット?

(町山智浩)映画になって大ヒットしたんですよ。だからみんな、びっくりしたんですよ。

(石山蓮華)しかも3作目まで続くとは。

(町山智浩)そうなんですよ。これ、まず映画化された時に、主人公はスター・ロードっていうスーパーヒーロー名を持っていて。本名はピーターなんですけど。で、この映画で出てきていきなり「俺はスター・ロードだ!」って言うと、敵が「誰それ?」って言うんですよ(笑)。

(でか美ちゃん)アハハハハハハッ! ちょっとそういう、自虐めいたじゃないですけど。

(町山智浩)そうそう。「誰も知らんよ」っていうね。で、またこのガーディアンズ・オブ・ギャラクシーっていうのはチームなんですけども。アベンジャーズっていうチームはキャプテン・アメリカがいてね、ハルクがいて。まあ、大物ばっかりですよね。スパイダーマンとかね。

(でか美ちゃん)夢のユニットみたいな意味でアベンジャーズて使うぐらいやっぱり、ねえ。

(町山智浩)スーパースターですよね? でも、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーは落ちこぼれ集団なんですよ。よく知らないキャラクターばっかりなんですね。マーベルの中でも。

(でか美ちゃん)たしかに資料があるんですけども。私は特にマーベル通ってないっていうのもあると思うんですけど、あんまりやっぱり……スパイダーマンとかほど、ピンと来ないです。正直。

(町山智浩)まあ、アメリカ人も知らないんで。知らなくて普通です。元々ね、マーベルコミックスが過去のたくさんのコミックスの中からいくつか、映画にできるものはないか?ってことでいろいろ探っていく中で、ジェームズ・ガンじゃないんですけど若い脚本家の人が誰もピックアップしないで余ってたやつを集めたのがガーディアンズ・オブ・ギャラクシーなんで。この名前はね、「銀河の守護者」っていうすごい大げさな名前なんですけど。実はその他大勢の人たちなんですよ。いわゆるザコキャラなんですよ。

(石山蓮華)だって、メンバーに木もいますよね?

(町山智浩)1人、木ですよ。グルートっていうのは、木ですからね。

(石山蓮華)あと、口の悪いアライグマもいますよね?

(町山智浩)そうそう。これ、アライグマ、かわいいんですけど。非常にいつも怒っててね、口が悪くてね。あとね、ドラックスっていうこの坊主頭の巨人みたいなのがいるんですけど。彼はたしかに怪力なんですけども、なんていうか、真面目な人というかね。慣用句がわからない人なんですよ。

(でか美ちゃん)ああ、ジョークが通じないい感じの?

(町山智浩)そう。全くジョークが通じなくて。たとえば、何だろうな? 「目の上のたんこぶ」とか言うと「たんこぶ? ついてないよ」とか。話が通じない人なんですよ。

(でか美ちゃん)ああー。ちょっと一緒にいるの、しんどいな(笑)。

(町山智浩)「壁に耳あり障子に目あり」って言っても「壁に耳? ないじゃないか!」とかね、「話、通じねえ!」っていうやつなんですよ。

(でか美ちゃん)じゃあ、もう本当に一癖も二癖もある集まりなんですね。

(町山智浩)そうなんですよ。はっきり言ってみんな、ドジで、すぐに喧嘩はするし。チームワークは悪いし。で、失敗ばっかりしてるんですね。やっぱりちょっと間抜けなんですよ。そういう、結構どうしようもない人たちが頑張って戦うっていう話なんですよ。だからスーパーマンとかと逆なんですね。

(石山蓮華)ああ、本当だ。そうか。ヒーローじゃない人がヒーローをやるみたいな?

(町山智浩)そうそうそうそう。だからね、主人公ピーターは地球から宇宙海賊に拾われて宇宙にいるんですけども。どの人たちも、帰る家がないんですよ。たとえば今回、新しくメンバーに加わったライカ犬なんて、昔ソ連がロケットに犬を乗せて飛ばしてたんですけど。あの犬が救われて、今も生きているっていう話なんですよ。

(石山蓮華)ああ、本当だ! 『VOLUME 3』のその画像には犬がいる! 宇宙服を着た犬がいますね! かわいい。

(でか美ちゃん)でも、そういう行き場のない子たちのというか。

(町山智浩)そう。捨てられた子ですよ。宇宙の実験でね。そういう……今回、アライグマのロケットも正体がわかるんですけど。彼は動物実験で改造されたアライグマだったんですね。

(でか美ちゃん)そうなんだ。そりゃ、口も悪くなるわ。

捨てられた人たちが集結

(町山智浩)ねえ。それで今、バイオテクノロジーの会社で、世界中でものすごい数の動物実験をやってるんですけど。まあ、それがないとワクチンとかもできないんですけど。でも、その影でたくさん動物がね、捨てられてるんですよね。そういうね、みんなから捨てられた人ばっかりが集まってるんですよ。ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーは。で、これはね、ジェームズ・ガンという人……彼は本当にスーパーマンとかバットマンに対して、全く逆の方向性を持ってる非常に特殊な作家なんですね。この人は。で、最初から、実はこの人は昔から、みんなからバカにされてる人たちが頑張るっていう映画ばっかりを作ってきてる人なんですよ。

(でか美ちゃん)じゃあ、なんだろう? 普通のヒーローにちょっとコンプレックスがあったんですかね? 元からずっと。

(町山智浩)ええとね、どうしてコンプレックスがあったか?っていうのは、この本で僕は書きましたが。

(でか美ちゃん)めちゃめちゃいい振り、しちゃった(笑)。

(石山蓮華)しかもこれ、二つの章にわたってジェームズ・ガンのことが。

(町山智浩)そうなんですよ。で、この本の結論にもなってるんですけど。実はもっと、幼児体験があって。強いものとか威張ってるものに対して、ものすごく憎しみを抱いてる人なんですね。ジェームズ・ガンっていう人は。

(でか美ちゃん)ちょっとそれ以上言うと、あれなんですかね?本の内容に……。

(町山智浩)ちょっとね、本の一番後ろの方に書いてあることなんで……(笑)。読んでほしいんでね、言えないんだけども(笑)。ただね、この人の人生がすごくいろいろ大変だったんでね、ちょっと言いますと、この人。僕が会った時には「やった!」って言って。それで結婚したし、ハリウッドに家が買えたし。「俺はこれからハリウッドで活躍するぞ!」って言ってたんですけど。そしたら、その後に初監督した作品がこけちゃうんですよ。でね、奥さんとも離婚してね、アルコール中毒とドラッグ中毒になっちゃうんですよ。

(でか美ちゃん)ちょっと本当、転がり落ちるようにね。

(町山智浩)で、ハリウッドから見捨てられて、インディペンデントでね、低予算映画で『スーパー!』っていうタイトルのスーパーヒーローになりたいんだけど、スーパーパワーを持ってない男の映画を撮るんですね。もう毎回、そういう映画なんですよ。この人の映画は。それをね、非常に低予算の、2億5000万ぐらいの製作費で撮るんですね。これ、日本映画とかとあんまり変わらないですよ。で、2億5000万の製作費で興行収入がいくらだったと思いますか? この映画、『スーパー!』は。

(でか美ちゃん)でも、これでこけてるわけですから。

(石山蓮華)ねえ。1億円とかかな?

(町山智浩)5000万円しか儲からなかったんですよ。

(でか美ちゃん)あらっ! マイナス2億!

(町山智浩)そう。で、もうどん底状態になるんですよ。もう仕事も全部ダメ。金もない。奥さんにも逃げられた。ドラッグ中毒。で、その時に『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の話が舞い込むんですよ。

(でか美ちゃん)ええっ? なんか、人生ってすごいですね。

(町山智浩)そうなんですよ。で、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』でディズニーが彼に100億円以上の製作費をポンと渡してやらせたんですね。ギャンブルを。そしたら、大当たりちゃったんですよ。ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーっていうチームのことを誰も知らないのに。

(でか美ちゃん)「まあ、やってみなよ」というような感じで?

(町山智浩)そしたら、大当たりで。その大当たりした原因っていうのは、よくわかるんですけど。これ、他のスーパーヒーロー物と違って、まずスーパーパワーを主人公たちが全く持ってないっていうのと、あとはコメディで、ドジばっかり踏んでる。で、宇宙の話なのに、宇宙がきれいで明るいんですよ。カラフルで。赤や黃、青で。真っ黒じゃないんですよ。で、音楽がずっと、今後ろで流れてるようなアメリカンポップミュージックをずっと流してるんですよ。とにかく映画が楽しいんですよ。

(でか美ちゃん)今までと全然違う描き方だったんですね。

(町山智浩)全然違うんです。全然、真剣じゃないんですよ。でも、最後の最後にこの主人公のピーターがガーディアンズ・オブ・ギャラクシーのメンバーに言うんですね。「俺たち、ずっと負け犬じゃねえかよ。帰るところもねえし、みんなにバカにされて。でもここで、、弱い人たちを助けるんだよ! そしたらヒーローになれるぞ!」って言って頑張るんですよ。

(でか美ちゃん)それ、まさにジェームズ・ガンの人生というか。

(町山智浩)そう。本人なんですよ。自分の思ったことを言っちゃっているんですね。

(石山蓮華)じゃあ、ヒーロー映画サイズで超個人的な話をしてるんですね。

(町山智浩)そうなんですよ。

(でか美ちゃん)これ、聞いた上で見るの、楽しいぞ!

(石山蓮華)これ、熱いですよ!

(町山智浩)でね、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』が当たるでしょう? もう本当にすごい記録的なヒットをして。それで2作目も当たるんですけど。3作目を作る時に彼ね、ネットでやらかしちゃうんですよ。ネットでね、彼はずっとトランプ大統領とかを叩いていたんですけども。差別が大嫌いだからね。そしたら、トランプ支持者の、いわゆるネット右翼の人がですね、ジェームズ・ガンが昔、ドラッグで荒れていた頃のツイートを掘り起こしてきて。

(でか美ちゃん)ああ、過去の発言を。

(町山智浩)過去の発言を。それがまたね、ジャニーズ事務所的な問題を茶化してるんですよ。で、これはまずいっていうことで、彼はディズニーにクビにされちゃうんですよ。

(でか美ちゃん)まあ、過去の発言とはいえ……という部分はありますよね。

(町山智浩)Twitterに残っているんで。恐ろしいですよ。本当にね。それで、彼はそうしたらライバルのDCコミックスの方から仕事をもらって。そっちの方で犯罪者……もう犯罪を犯してどうしようもなくて刑務所に入った極悪人たちがいいことをしてですね、ヒーローになるっていう映画『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』を作って、再起するんですよ。これも自分の話ですよ?

(でか美ちゃん)ですよね? これもやっぱり自分を投影してる感じですよね?

(町山智浩)完全に自分の話なんですよ。で、もうみんなから「クズだ、カスだ、悪人だ」って言われて。「ネットでひどいこと書いた、あいつは差別主義者だ!」って言われたジェームズ・ガンが、それでもいいことをして再起するっていう映画でまた大ヒットをするんですよ。

(でか美ちゃん)まあ、人は本当に変わるじゃないですか。生きていたら、価値観とかも。それを作品で表したっていうのは結構なんか、かっこいい表明というか。

(石山蓮華)映画監督ならではですね。

(町山智浩)ねえ。人間はやり直しができるんだって。それで今回、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー3』で戻ってきたんですよ。

(石山蓮華)へー! すごいな。

(町山智浩)だからね、そういうのを全部考えながら。この人の座挫折と成功と挫折と成功っていうのを考えながら見るとね、この映画の中でね、「人間、やり直しのチャンスを誰でも持つべきだよ」っていうね、すごく泣ける話なんですけど。で、彼ね、これが当たった後ね、DCスタジオのCEO、社長になったんですよ。

(でか美ちゃん)すげっ! 上り詰めますね?

(町山智浩)上り詰めました。

(でか美ちゃん)ちょっと、でもこのジェームズ・ガンの人生をここまで聞いてくると、挫折、成功、挫折、成功なんで。この後、どうか平穏に暮らしてほしい(笑)。

(町山智浩)ねえ。で、今度は『スーパーマン』を作るんです。『スーパーマン』とか『バットマン』を、なんていうか、もうそういうのの司令官になるんですね。DCスタジオの。

(でか美ちゃん)「ついに」っていう感じですね。

(町山智浩)まあ、すごいことで。彼は頂点に上り詰めましたね。

(でか美ちゃん)じゃあ、そんなジェームズ・ガンのこともしっかり載ってる町山さんの本っていうのもありますから。それも併せて楽しみたいですね。

(石山蓮華)そうですね。町山智大さんの『アメリカスーパーヒーロー映画 徹底解剖』をぜひぜひね、ゲットしてください。

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』予告

<書き起こしおわり>

宇垣美里と宇多丸『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』を語る
宇垣美里さんと宇多丸さんが2023年5月9日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中で映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』について話していました。
町山智浩 著書『アメリカスーパーヒーロー映画 徹底解剖』を語る
町山智浩さんが2023年5月8日放送のTBSラジオ『こねくと』で自身の著書『町山智浩のアメリカスーパーヒーロー映画 徹底解剖』について話していました。
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