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町山智浩『誰がハマーショルドを殺したか』を語る

町山智浩『誰がハマーショルドを殺したか』を語るたまむすび
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町山智浩さんが2020年7月21日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で映画『誰がハマーショルドを殺したか』を紹介していました。

(町山智浩)まあ、大変なんですが……今日はですね、また大変な映画なんですが。既に日本でも先週の末からイメージフォーラムで公開されている映画で『誰がハマーショルドを殺したか』という映画です。『誰がハマーショルドを殺したか』って、そもそもハマーショルドって誰だ?っていうね(笑)。

(赤江珠緒)そうそう。それはちょっとね番組冒頭からね、話題になってたんですよ。

(町山智浩)この人は国連の2代目の事務総長なんですね。国際連合は第二次世界大戦が終わった後に作られたんで。その次の人なんですよ。ダグ・ハマーショルドさんという人で、この人はスウェーデンの人だったんですけれども。1961年にですね、アフリカで謎の飛行機墜落事故で死んでしまったんですね。で、それを今、その真相を暴こうとする映画がこの『誰がハマーショルドを殺したか』なんですけど。これがね、そんな昔の話を暴いて面白い映画なの?っていう風に単純に思う人がいると思うんですけど。一言で言ってめちゃくちゃ面白い映画です、これ!

(赤江珠緒)おおーっ!

(町山智浩)もうすごい面白さでびっくりしました。で、まずね、このハマーショルドという人はどういう人かって言いますと、この人は国連ができた時。その第二次世界大戦が終わった後、結局そのアジアとかアフリカにヨーロッパの大国……いわゆるその「欧米の列強」と言われているところがたくさん植民地を持ってたんですけれども、そこが一斉に独立し始めたんですけど。それはご存知ですよね?

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)イギリスとかもアジアとかアフリカにいっぱい植民地を持っていたんですけど、それは次々と独立運動を始めたんですけども。それを支援した人がこのハマーショルドさんです。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)はい。「民族自決」という言葉が有名ですけれども。今、知られているアジアやアフリカの多くの国はその国連と民族自決運動によって独立したんですね。で、それを支援していたからものすごく狙われてたんです。

(赤江珠緒)ああ、植民地を保ち続けたい側からすると?

(町山智浩)はい。植民地を保ち続けたいイギリス、フランス、ベルギーとか、そういったところだけじゃなくて、ソ連にも逆らってたんですよ、この人。

(赤江珠緒)ほー!

(町山智浩)ソ連や中国やアメリカにも逆らっていたんです。大国だから。特にソ連、アメリカ、中国は戦後、すごく勢力を伸ばそうとしてアジアとかアフリカでいわゆるその代理戦争っていうのを行おうとするわけですよ。武器をどんどんどんどんその国に入れて内戦をさせて……みたいな。いわゆる冷戦構造の中で中国、ソ連、アメリカが支援するそのそれぞれの勢力が戦争するという状態になったんで、それに対しても抵抗してたんで。中国、アメリカ、ソ連、イギリス、ヨーロッパ各国全員から狙われていたのはこのハマーショルドさんなんですよ。

(赤江珠緒)すごい大きなものと戦ってましたね。

(町山智浩)そうなんです。で、この人が亡くなったのはコンゴという国なんですけれども。アフリカの真ん中の国で、大国なんですね。コンゴは。で、ここはベルギーの植民地だったんですよ。ベルギーにね、レオポルド2世というものすごく悪い王様がいて。彼が個人的にそこを侵略して、個人的に所有してた国なんです。コンゴって。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)あまりにもひどいので。そこでゴム園で労働者をこき使っていて。まあ、こき使うために手を切ったり、足を切ったりして脅してたんですけどね。そういうひどい人で。まあもうとんでもないやつだったんですよ。でもその後もベルギーがずっと支配していて。そこで、コンゴが独立したんですね。その地元の人たちの意志で。それでそのベルギーが支配してる部分はどうなるか?っていう問題になったんですよ。

特にそのコンゴの中にあった「カタンガ」という地域が銅がたくさん出るところだったんですね。で、そこにはユニオン・ミニエールという銅鉱山の会社があって、これはイギリスとベルギーの共同経営だったんですよ。そこがコンゴが独立したことによってコンゴ共和国に国営化されてしまうという事態になったんですよね。それが困るから、どうしますか? ベルギーやイギリスは?

(山里亮太)攻めていく?

(町山智浩)そこに黒人の、現地人の人をリーダーにして独立戦争を起こしたんですよ。コンゴに対して。

(赤江珠緒)コンゴに対して?

コンゴ動乱

(町山智浩)コンゴが独立したから、傀儡国家を作って自分たちの利権を守ろうとしたんですよ。それが「コンゴ動乱」と言われているもので、カタンガ国というのものが独立したんですけども。形は地元の人の国なんですけど、その中身は全部ベルギー軍とアフリカ中にウロウロしていた白人の傭兵たちの軍団だったんですよ。傭兵たちっていうのは雇われ兵たち。金目当てで戦争する人ですね。

で、そういうインチキ国家だったんですね。それで内戦になったんでこのハマーショルド国連総長がそこに行って、国連軍をそこに設置して。その内戦を防ごうとしたんですね。これはもうベルギーとイギリスにとって非常に困るということで、そこへ内戦の解決するために交渉に行くハマーショルドさんの飛行機を何らかの形で撃墜したんじゃないか?っていう。

(赤江珠緒)はー! じゃ、事故じゃなくて撃墜?

(町山智浩)撃墜か、爆弾かによっては暗殺しただろという疑惑がその当時からあったんですね。その状況だから、どう考えても普通に墜落したわけがないよっていうことだったわけですよ。で、この事件をなぜ、映画に撮るということにしたか? それはまず、この監督・主演・脚本・製作をした人がマッツ・ブリューガーというデンマーク人なんですけども。この人はね、突撃レポーター的なテレビのレポーターの人でね。既に映画を何本か撮ってるんですけど。

たとえば『ザ・レッド・チャペル』っていう映画は北朝鮮がヨーロッパとかの人たちと文化交流をしたいって言ってるっていうので、適当にそこらへんの韓国人のお兄ちゃんを捕まえて、彼らにお笑いの芸を教えて。それを北朝鮮に行って、国立劇場で公演させるといういたずらをやった人です。

(赤江珠緒)ええーっ!

(町山智浩)しかも、その芸というのがひどくて。ステージに上がった人たちが「英語では猫のことを『プッシー』って言いますよ。プッシー、プッシー! みんな、言ってください」って言うと、北朝鮮のお偉いさんたち。軍人たちはみんな、「プッシー、プッシー」と言うという芸なんですけども。「プッシー」っていうのはちなみに、ええとまあインカの初代皇帝と同じ意味なんですね。はい。

(山里亮太)町山さん流の表現方法(笑)。

(町山智浩)で、このマッツ・ブリューガーの次の映画館もひどくて。『アンバサダー』という映画なんですけども。「アンバサダー」っていうのは「外交官」という意味ですけども。リベリアという国がですね、1人1300万円でそのリベリアの外交官の特権を売ってたんですよ。これ、『たまむすび』でも紹介したことがあるんですけども。

(赤江珠緒)うんうん。これ、町山さんに紹介してもらったことがある映画ですね。はい。

(町山智浩)で、それをこのマッツ・ブリューガーさんが本当に買っちゃうんですよ。で、ひどいのはリベリア、金儲けで2000人ぐらいに売っているんですよ。その外交官特権を。

(山里亮太)外交官だらけだ。

(町山智浩)で、何をするか?っていうと、今度は別の国に行って、「紛争ダイヤモンド」というものを買いに行くんですよ。まあ、軍事独裁国家っていうのはダイヤモンドを資金源にすることができないように、ダイヤモンドの販売を禁止されてるんですけども。この外交官特権を持ったインチキな白人たちがそのダイヤモンドを外国に持ち出して、密輸してるんですよ。そのダイヤモンド密輸ルートに彼が入っていくっていう話だったんですよね。『アンバサダー』っていうのは。

(赤江珠緒)めちゃくちゃ命がけのいたずらっていうか。なんですか?

(町山智浩)でも、基本的にいたずらに近いものでね。全部隠し撮りでやってるんですけども。そのマッツ・ブリューガーさんが今回、ハマーショルド事件を調べようとしたのは1人のおじいさんがいまして。スウェーデン人だから名前が難しいんですが。ヨーラン·ビョークダールさんという人がいて。その人がお父さんの形見として鉄板を持ってたんですよね。で、その鉄板に穴が開いてるんですけど。それは死んだお父さんが「これは殺されたハマーショルドさんの飛行機の部品だ」って言ってたんですって。

(赤江珠緒)ええっ?

(町山智浩)「ここに銃弾の穴が開いてるから撃墜されたんだ」って言ってお父さんが死んだらしいんですよ。で、お父さんはその事件の調査委員会かなんかに関係をしていたらしいんですけど。で、このビョークダールさんがもう生涯をかけて、この父親の遺言であるそのハマーショルド事件を解決するんだいうことで、探し回っているんで、それに最初、マッツ・ブリューガーさんはついていくんですね。で、現地に行って地元の人たちに聞くと、生き残ってる人がいて。1961年に起こった事件なんで、目撃者がまだいるんですよ。で、目撃者が「飛行機の後ろからちっちゃい飛行機がついていって、火花が散ったと思ったら飛行機が落ちた」って言っているんですよ。

(赤江珠緒)ええっ?

(山里亮太)撃墜された感じが……。

(町山智浩)撃墜された感じがあるんですよ。で、複数の人に聞いてもそう話すんですよね。だから「これは完全に撃墜されている」ということでショベルを持って、その事故現場を発掘しに行くんですけど。

(赤江珠緒)えっ、今?

(町山智浩)今、行くんですけど。これ、空港のすぐ近くなので、止められちゃうんですよ。「それ、ダメだから」って言われて。それでうまくいかない。「じゃあ、この鉄板を鑑定してもらおう」と思って鉄板を鑑定すると、すごく残念な結果に終わるんですね。まあ、これは映画をご覧になってもらえば分かるんですけど。ものすごくがっかりしすぎてこの監督のマッツさんは「これはただの陰謀論の空回りだったんじゃないかな?」って落ち込むんですけど。

ただ、別のルートからいろんなことが分かってくるんですよ。まず、その墜落の現場に国連から雇われて写真撮影に行ったカメラマンと接触するんですよ。それでその現場でハマーショルドさんの遺体を撮った写真を確認することができたんですけど。そしたら首のところにですね、トランプのカードが置いてあるんですよ。で、そのトランプのカードはスペードのエースなんですね。

(赤江珠緒)嘘? もう殺人の何かわかりやすいモチーフみたいな……。

(町山智浩)そう。よく知っていますね。なんで知っているんですか?

(赤江珠緒)いや、スペードをよく置くじゃないですか。

(山里亮太)そうなの?

(町山智浩)あれは「デスカード」って言って、殺し屋とかが「仕事が終わりました」っていうことを示すために、トランプのスペードのエースを置くんですよ。なんで知っているんですか? 殺し屋ですか?

(赤江珠緒)ちょっと、うん。ああ、バレちゃう、バレちゃう(笑)。

(町山智浩)殺し屋・玉。ネコみたいだけど(笑)。それが、置いてあったんですよ。で、「これは明らかにプロがやってる」っていうことが分かるんですね。で、さらにいろんなものが分かってきて。まず、1998年に南アフリカである書類が発見されるんですよ。で、その書類というのは、このハマーショルド暗殺計画の企画書だったんですよ。

(赤江珠緒)ええーっ?

(町山智浩)どのようにしたら殺せるか?っていう。それで、飛行機に爆弾を載せるのか? 地上からロケットで撃墜するのか? 飛行機で後ろから追撃するか?っていうことが書かれた書類だったんですよ。で、その書類は誰によって書かれたかというと「南アフリカ海事調査協会(South African Institute for Maritime Research)」というところで、「SAIMR」という団体のレターヘッドが付いていたんですね。で、それは一体何なんだ?って当時、1998年に調べたけども何も出てこなかったんですよ。

「こんな組織、存在するだろうか?」って。で、その計画書っていうのも、「こんなものを残してるってこと自体がおかしいから、この計画書はフェイクだろう」って言われてたんですよ。

(赤江珠緒)たしかにね。うん。

SAIMRという団体の正体

(町山智浩)ところがですね、このマッツさんたちはこのSAIMRというところに入っていたその当人を見つけていくんですよ。とうとう。これがすごい展開になっていくんですけども。

(赤江珠緒)じゃあ幻の団体じゃなくて、本当にあったんだ。

(町山智浩)あったということが分かってくるんですよ。しかも、この暗殺に実際に参加した人も特定していくんですよ。それはドクター・マックスウェルという男なんですね。で、この人の写真も見つけるんですけども。彼がこの事件に1961年に参加した時のことをなんと、小説として出そうとして、原稿を書いていて。その原稿が発見されるんですね。

(赤江珠緒)ええっ!

(町山智浩)ちょっとびっくりするんですけど。で、それはね、前編・後編に分かれていて、後編の方がもっと驚くべき内容で。後編の方は1990年代に彼がやってたことが書かれてるんですよ。で、それは、なんともっと驚くことに、その彼の陰謀を知った女性をSAIMRは殺害してて。その殺害された女性の家族が持ってたんですよ。

(赤江珠緒)うん?

(町山智浩)このへん、すごい展開になってくるんですよ。で、そのSAIMRという団体は全く秘密の団体というか、存在しないと思ってたに実在するという。これは南アフリカにあった団体で、イギリスとアメリカからお金をもらって作られた団体らしいんですよ。それでなんで、その国連総長を暗殺をしたのかということはだんだん後半で分かってくるんですけど、彼らが1993年にSAIMRにいた人を見つけるんですね。で、そのドクター・マックスウェルという人がやっていたことは一体何かと言うと、南アフリカ中にタダのお医者さん、医院を広げることだったんですね。

(赤江珠緒)それは、いいことじゃないですか?

(町山智浩)で、その病院も発見するんですよ。「ドクター・マックスウェルの医院」って書いてあるんですよ。そこで地元の人たち……貧しい黒人たちにタダでいろんな薬を打ってあげていたんですよ。彼は。

(赤江珠緒)慈善活動?

(町山智浩)それは、HIVウイルスだったんですね。彼はエイズをバラまこうとしていたんですよ。

(赤江珠緒)ええっ?

(町山智浩)1994年に南アフリカのアパルトヘイトが終わるんですよ。そうすると、人口の多い黒人によって白人が支配されてしまうから、それを阻止するため黒人を大量に殺すことが彼の目的だったんですね。SAIMRもそういう目的で……要するにアフリカがずっと白人支配によって鉱山とかいろんなものの利権を支配してたんですけれども。アフリカで民族が独立することによって、イギリスやアメリカやいろんな欧米の企業の利権が奪われてしまうので。それを阻止する組織がSAIMRだったんですね。

(赤江珠緒)いや、なんて話なんですか、これ?

(町山智浩)ちょっとびっくりしましたよ。そのアフリカにおける黒人たちを白人が経済的・軍事的に支配する状況を作るための秘密組織だったんですよ。

(赤江珠緒)恐ろしやですね、これは。えっ? とんでもない話ですね。

(町山智浩)大変な内容ですよ。

(赤江珠緒)これが事実っていうのが……怖いな。

(町山智浩)一応、国連も2015年に調査をして、ハマーショルドは暗殺されたらしいということはまでは分かっていたんですけども。それよりも先の事実関係に向かってこのドキュメンタリーは進んでいくんですけども。まあすごい内容でしたよ。

(赤江珠緒)マッツ・ブリューガー監督、とんでもない映画じゃないですか、これ。

(町山智浩)とんでもないですよ。だからこれね、まあすごい映画館なんで見ていただくしかないなと思います。はい。イメージフォーラムで現在、先週からずっと公開中ですけどね。

(赤江珠緒)はい。『誰がハマーショルドを殺したか』という。7月18日から渋谷シアターイメージフォーラムほか全国順次公開でございます。

映画『誰がハマーショルドを殺したか』予告編

(町山智浩)でもなんとなくコメディーみたいなところもあるのも不思議なところなんですよ。この映画は。

(赤江珠緒)いや、コメディーにはならんでしょう?

(町山智浩)いや、このマッツさんという人の撮り方のせいなんですよ。珍道中みたいにも見えてくるんですよ。そこもまた、面白いところでしたね。

(赤江珠緒)町山さん、ありがとうございました。

(山里亮太)ありがとうございました。

(町山智浩)どもでした。

<書き起こしおわり>

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