町山智浩『ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!』を語る

町山智浩『ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!』を語る たまむすび

町山智浩さんが2020年12月15日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で映画『ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!』を紹介していました。

(町山智浩)それでね、とにかくすごくアメリカは今、最悪の時期ではあるんですけども。(ワクチンによって)希望が見えてきたので今日は楽しい映画を紹介したいと思います。2本、紹介したいんですけども。まず1本目は今週、映画館で公開が決定してる『ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!』という映画です。これね、僕の世代にとってはものすごく懐かしい映画なんですね。これ、第3作目で。1作目は1989年のヒット作なんですよね。

(山里亮太)結構前だ。

(町山智浩)だからもう31年前か。すごい前ですね。これはビルとテッドっていう高校生の話で。これね、テッドの方ねキアヌ・リーブスが演じてるんですよ。機あるじゃん。、この頃は高校生役をやってるんですよ(笑)。で、この高校生のビルとテッドはバカでしょうがなくて。「自分たちはロックスターになるんだ」と思っているから勉強しないんですね。でも「ロックスターになる」っつっても全然楽器はできないのに……要するに、ガレージでギターをいじってるだけで曲も1曲もできないのに「ロックスターになるから」ってことで勉強しないで。

それで学校の先生から「このままだと歴史の授業が赤点だから、自由研究して発表をしないと落とすよ?」って言われるんですね。それで困っていると、そこに未来から電話ボックスが飛んでくるんですよ。ビルとテッドの前に。で、その電話ボックスはタイムマシーンで。未来から来た人がね、「君たちがここで学校で落第しちゃって。ビルとテッドが仲が悪くなっちゃったりすると未来が滅びるから」って言われるんですよ。

(赤江珠緒)はー! すごい。電話ボックスっていうところが時代ですね。

(町山智浩)電話ボックスってアメリカでは今、ほとんどないんですけどね。で、「どうして未来が滅びるの?」っていうと、「実は君たち、ビルとテッドはロックバンドで成功して、その歌が世界を未来で救うことになるんだ。だから君たちがちゃんとしてロックバンドとして成功してないと、人類の未来がなくなっちゃうんだよ。だから、そのタイムマシーンを貸してやるから、これで歴史の勉強しろ!」って言われていて。まあ、いくらバカでもね、絶対に現場に行けば分かるだろうっていうことで、2人は歴史を駆け巡るんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)それで過去に戻ってナポレオンに会ったり、古代ギリシャに行って哲学者のソクラテスに会ったり、リンカーン大統領に会ったりするんですけど。でも、彼らバカだから、そこで会って勉強するっていうことができないので、ソクラテスとかナポレオン本人を連れてきちゃうんですよ。現代に。

(山里亮太)フフフ、ヤバい! 歴史が変わっちゃう!(笑)。

(町山智浩)そう。という話なんですね。で、本当にどうしようもなくバカだから……だから「シーザー」って言っても「サラダのことだ」って思っているんですよ(笑)。

(山里亮太)いいバカですね!

(町山智浩)いいバカなんですよ。で、ソクラテスに会った時にね、ソクラテスが非常に有名な言葉で「無知の知」っていうのがありますよね。「『自分が何も知らない』っていうことを知ってる人が本当の知恵者なんだ」っていう話をすると、ビルとテッドは「俺たちのことじゃーん!」って言うんですよ(笑)。「それはただのバカだから!」っていうね(笑)。そういう本当のバカ映画なんですけども。これがね、『ビルとテッドの大冒険』っていう映画だったんですね。で、ここでのキアヌ・リーブスのバカ演技というのはすさまじいものでね。

(山里亮太)えっ? 想像つかない……。

キアヌ・リーブスのバカ演技

(町山智浩)本当に大抵、口を開けてますから。で、語彙、ボキャブラリーが本当になくて。すごくいいいと「Excellent(最高)」って言うんですども。よくないこととか痛いことがあると「Bogus」って言うんですけども。それ以外はほとんどしゃべらないっていう本当にバカな役なんですよ。で、まさかこのキアヌ・リーブス、1989年にこのどうしようもない役をやってね。頭なんか完全に空っぽみたいな役やって、この10年後に『マトリックス』で大スターになるとは思わないですよ! もうすっごい、知能指数が500万倍ぐらい上がってる感じなんですけども。この10年間で。

(赤江珠緒)アハハハハハハハハッ!

(町山智浩)ただ、なぜこの映画が今回、3作目が作られることになったのか? キアヌ・リーブスは僕よりひとつ下だから、まあ50代半ばですよ。それで急に続編を作ることになったんですよ。それはどうしてか?っていうと、このビル役のアレックス・ウィンターのためなんですよ。これ、ビル役の人はアレックス・ウィンターっていう俳優さんが演じているんですけども。彼は俳優ではなく、映画作家になろうとしたんですね。で、その後に監督作をキアヌ・リーブスと一緒に撮ったりしているんですけど、あまりうまくいかなくて。今は非常にインディーズでまあ、知る人ぞ知るようなドキュメンタリーを作ってる人なんですよ。アレックス・ウィンターって。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)それで最近はフランク・ザッパの映画を撮ったはして、一応評価はされてるんでけど、あんまり商業的に成功してないんですね。で、彼がずっと『ビルとテッド』を復活させようとしてシナリオを書いていたんですよ。そしたらキアヌ・リーブスが「やろうよ!」ってことで、自分でプロデューサーとかいろいろ声をかけて。この『ビルとテッド』の3作目を成功させたんですよ。

(赤江珠緒)へー! でも、ビルとテッドはもう高校生は無理でしょう?

(町山智浩)もうおっさんで、子供もいて。娘がハタチを過ぎてるんですけどね。今度の役では。だから俺と同じようなもので。でも、相変わらず音楽とか下手くそなんですけど(笑)。とうとうね、「もう未来のためにちゃんとした音楽を作らなきゃならない!」ってことで追い詰められる話なんですよ。今回は。

(山里亮太)なるほど!

(赤江珠緒)まだ作れてなかったのね(笑)。

(町山智浩)まだ作れてなかったんです(笑)。で、またそのタイムマシーンを使って……この人たち、努力というものを知らないので。ビルとテッドは。50いくつですけど。また過去に戻って、モーツァルトとかね、ジミ・ヘンドリックスとかルイ・アームストロングとか、音楽の天才たちを連れてきて、彼らにやらせようっていう話なんですよ(笑)。

(山里亮太)なんか、そういう天才とおバカの掛け合いってもう面白そうですもんね。

(町山智浩)面白いんですよ。ただね、これがすごくいい話なのは、キアヌ・リーブスってもう世界的な大スターなわけですよ。でも、相棒……昔の相方があんまりうまく行ってないわけですよ。そういう話って、いっぱいあるでしょう? お笑いの芸人さんの世界でも。

(山里亮太)たしかに。売れてから、昔のお世話になった人とかがあんまりテレビに出ていなかったら、一緒に引き上げていこうとか。そのために特番をやろうみたい人、いますもん。

(町山智浩)ねえ。やっぱり1人だけすごく有名になっちゃって成功したんだけど、相方の方がどうも仕事がないっていう。バンドなんかでもありますよね。リードヴォーカルばっかり売れちゃって、バンドは売れなくなっていくっていう。そうすると、かならずバンドとか相方の人は「一緒に何かやろうよ、やろろうよ!」って言うじゃないですか。食えないからとか、借金を抱えているからとかね。その時に、やってくれる人とやってくれない人がいますよね。売れてる人でも。

(山里亮太)なるほど!

(赤江珠緒)そうですね。やっぱりわかれますか?

(山里亮太)わかれるんじゃない?

(町山智浩)まあ、本当に相方を見殺しにしちゃうような人もいっぱいいるわけじゃないですか。芸人にもね。それは弱肉強食だからしょうがないんだけれども。でも、キアヌ・リーブスはそういう人じゃないんです! 仏様ですから。この人は。

(赤江珠緒)ねえ。町山さんは常々、仰ってますもんね。

(山里亮太)いろんな伝説がありますもんね。

(町山智浩)そうなんですよ。本当に困っている人がいると助ける人なんで。

困っている人を助けるキアヌ・リーブス

(町山智浩)だからね、今回この映画を作って。それが結構当たって成功してるんですよ。相変わらずバカなんですけどね。本当に(笑)。

(山里亮太)いや、だからこの今、僕らが知っているキアヌ・リーブスがバカ演技をしているところは想像がつかないから。それだけでもちょっと楽しみな……。

(町山智浩)本当にはあまりにもね、演技力があるのでバカに見えるのか、本当にバカなのか。非常に難しいところなんですけども。

(赤江珠緒)そう思わせるなんてすごい!(笑)。

(山里亮太)いや、絶対に演技力でしょう(笑)。

(町山智浩)いや、まあとにかく『ビルとテッドの大冒険』を見てからね、この1作を見ていただくといいなと思いますけども。

(町山智浩)この映画はとにかくキアヌ・リーブスの心に非常に泣ける映画館ですよ。

(赤江珠緒)へー!

<書き起こしおわり>

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