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町山智浩『ようこそ映画音響の世界へ』を語る

町山智浩『ようこそ映画音響の世界へ』を語る たまむすび
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町山智浩さんが2020年8月25日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で映画『ようこそ映画音響の世界へ』を紹介していました。

(町山智浩)で、もうひとつの映画はですね、今週末から公開の映画で。これ、ちょっと映画館で見てもらわないとならない映画なんですけども。『ようこそ映画音響の世界へ』っていう映画なんですね。で、これ、映画のサウンドについての映画なので、これは映画館で見ないと分からないんですよ。というのは、映画って今現在、「立体音響」というものになっているんですね。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)スクリーンの方と背中側にもスピーカーがあって。音の位置がわかって。その背中側から画面に向かったり、その画面からこっちに向かって音の奥行きを表現するようになってるんので。で、それ自体がどうやって作られているか?っていうことを見せるドキュメンタリーなんですね。この映画は。

(赤江珠緒)ああ、じゃあそういうちゃんとした器がないとダメってことですね?

(町山智浩)そうそうそう。だからこれはちょっと映画館で見ないとわかりにくいんですけど。その「映画音響」っていうといろんな側面があって。一番基本的にはさっき、何かをこぼしてましたけど。ああいう風に物をこぼしたりして作る音っていうのはあれ、「フォーリー」っていうんですけど。昔、フォーリーさんっていう人がいて。実際にお椀を砂の上でパコパコパコ……ってやって馬の足音を作ったりしてたんで。

そこからフォーリーっていうんですけども。もともと映画の音っていうのはテレビの音なんかと違って、映画の音のほとんどはですね、後から入れてるんです。現場ではそれを録っていないんですよ。あんまり。昔は現場で録っていたんですよ。でも今は録ってないんですよ。というのは、音声だけ別録りして、人の声だけ単独のトラックで抜かないと、編集しにくくなっちゃうからなんですよ。

(赤江珠緒)ああ、うんうん。

(町山智浩)音がかぶってるとほら、つないだり切ったりできなくなっちゃうじゃないですか。だから、人の声だけばらばらに録っておいて。それで衣擦れの音とか物に当たったりとかパソコンを叩いたりする音とか、そういうのは後から別々に入れてるんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)そうしないと、編集できない。編集をし終わった後に入れるからね。だからそういうのを作る人たちがいるんですね。それを昔からフォーリーっていうんですけど、ただその映画の音って1970年代に入って格段に上昇したんで。それまで、実はすごくずっと同じような音が使われてたんですよ。世界中の映画で。というのは、各映画会社にストックがあって。それでたとえば拳銃を撃つ音だと、そのひとつの音しかなかったんです。

(赤江珠緒)ああ、そうなんですね!

(町山智浩)はい。拳銃にはいろんな拳銃があって。マグナムがあったり、ライフルがあったり、ショットガンがあったりするんですけど。基本的に同じ音が使われていたんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)で、東映のヤクザ映画なんかを見ると、全部同じ音で「バキュン、バキューン!」って音ばかりなんですけども。

(赤江珠緒)ああーっ! そうだ!

(町山智浩)あれはストックを使ってるからなんですよ。現場では何の音もしてないんですよ。「パンパン!」ぐらいしかしてないんですよね。で、あと東宝の映画は全て爆発音が同じなんですよ。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)独特の東宝爆発音っていうのがあって、『シン・ゴジラ』でも久しぶりに使われてますけど。円谷英二さんの頃からずっと同じ音を使ってるんですよ。雷が落ちるみたいな独特の音なんで、慣れてくるとわかります。東宝の爆発音っていうのは。で、映画会社によって全部違うんですよ。アメリカもそうで、各映画会社ごとに音が全部……馬の走る音であったり、全部違うんです。拳銃の音とか。で、それを全部のに使ってたんで、みんな同じだったんですよ。ところが、それが大きく変わったのは『スター・ウォーズ』からなんですよ。『スター・ウォーズ』って要するにSFだからこの世にない音ばっかりなんですいよ。

(赤江珠緒)ああ、そうですね。ライトセーバーの音とかね。

映画の音を大きく変えた『スター・ウォーズ』

(町山智浩)そうそう。ライトセーバーの音。「ブンッ、ブゥンッ!」っていう音は作らなきゃならないんですよ。あと、レーザー光線とかの「ピュン、ピュンッ!」っていう音も作らなきゃならないし。それね、全部1人の男が作りました。ベン・バートっていう学生さんが作りました。

(赤江珠緒)ええっ?

(町山智浩)しかも、シンセサイザーを1個も使わないで作ったんですよ。いろんなものを叩いたり、動物園に行って動物の声を録音したり。そういう風にして、いろんなモーターの音とかを利用して、全部自然音とか機械音とかだけで作ったんですよ。全て。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)電子音で作るとつまらないっていうことで、ジョージ・ルーカスがそうやって作らせたんですよ。それでこのベン・バートさんはアカデミー賞を取りました。そこからね、映画音楽、映画の音って変わっていったんですね。それを全部見せてくれるのがこの『ようこそ映画音響の世界へ』なんですけど。

(町山智浩)その次にもうひとつ、大きく変わったのはステレオ……立体音響なんですよ。僕が子供の頃、映画って全部スピーカーがひとつのモノラルだったんですよ。ところがそれが中学くらいの時に2つに分かれたんですよ。ステレオになったんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、それがさらに前後にも分かれて立体音響、サラウンドになったんですよ。でね、サラウンドになった最初の作品っていうのは『地獄の黙示録』なんですよはいはいで『地獄の黙示録』なんですよ。『地獄の黙示録』って一番最初、映画がヘリコプターの音から始まるですね。「バンバンバンバンバンバンバンバン……」っていう音が右から左に流れるんですよ。今はみんな、普通かもしれないけど、僕はそれを初めて映画館で見た時にびっくりしたんですよ。

(赤江珠緒)ああ、音がちゃんと本当に右から左へ動いてると?

(町山智浩)音の位置が全部わかるんですよ。で、手前から奥に流れたりしてたんですね。『地獄の黙示録』は。で、それは全部、全てのそういったヘリコプターの音とか爆音とかを全部、作ったんですよ。

(赤江珠緒)(『地獄の黙示録』の音源を聞きながら)これを?

(町山智浩)これ、全部作っているんです。現場ではこんな音、一切していないんですよ。

(赤江珠緒)そうか!

(町山智浩)で、これはウォルター・マーチっていう人が全部作っていって。映画監督みたいにして「あなたはヘリコプター係、あなたは銃声係、あなたはボート係」っていう風にそれぞれに音の専門家を決めていって。その人たちが全部その音を担当して入れていったんですよ。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)そこからもう映画の音響っていうのは大変革されていくんですね。で、実際はその現場で録ってもそんな風にならないし。現場で録ってもその音の位置とかはスクリーンの中での編集で決まるから。現場で録ってもあんまり意味がないんですよね。だから現場ではその音の音源だけは録っておいて、あとでそれを使ってコントロールしていくんですよ。

だから、たとえばカットが切り替わると位置関係が変わっちゃうわけじゃないですか。だから現場で録ってもあまり意味がないんですよ。つながらなくなっちゃう。で、カットが変わるごとに音の位置が変わったら、逆にすごく聞き取りにくくなっちゃうんですよ。だからそれもすごくうまく調整していかなきゃなんないんで、すごく大変なんですね。音響の編集っていうのは。

あと、本物の音ってね、大したことがないんですよね。これね、たとえば銃の音ってあるじゃないですか。あれ、外で撃っている時はどんな音かっていうと「パン、パン、パン」っていう音しかしないんです。迫力が訳ないんですよ、全然。だから迫力あるように作らなきゃなんないんですよ。

(赤江珠緒)そうかー。

(町山智浩)だからそういうのを全部作っていて。一番すごく作ったのはね、『トップガン』という映画の音なんですよ。で、『トップガン』っていうのは有名なF-14戦闘機にトム・クルーズが乗って、なぜか北朝鮮軍と戦うという非常にとんでもない映画なんですが。それのジェット戦闘機の音っていうのは作ってるんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)これ、実際に録音したそうなんですけれども、全く迫力がなかった。そこで動物園に行って、トラの鳴き声とかライオンのうなり声をかぶせたんですって。

(赤江珠緒)えっ? 動物の声をかぶせているんですか?

(町山智浩)そう。だから「グワォーンッ!」って音がするじゃないですか。あれ、トラの声なんですよ。

(山里亮太)すごいっすよね!

(町山智浩)普通の戦闘機のジェットエンジンの音は「ファーン」って大人んですよ。それじゃ迫力がないから「グワォーンッ!」っていう風にしているんですよ。

(赤江珠緒)ああー、そんなの全く気づかずに見ていたなー。

(町山智浩)そういうのを見ていくのがね、その『ようこそ映画音響の世界へ』という映画なんですけども。アカデミー賞ですごくちゃんとこの部分は評価されて賞が与えられるんですが、それがどういったものなのか全然日本では解説されてないので。これを見るとね、すごくよく分かります。で、映画の音って一番面白いなと僕が思うのは、漫画の音ってあるじゃないですか。漫画の音、たとえば静かな時に「シーン」って音がするじゃないですか。で、主人公はショックを受けると「ガーン!」ってなるじゃないですか。あれを映画でもやってるんですよ。

(赤江珠緒)ええっ?

(町山智浩)たとえば寂しい風景の時に風の音が「ヒューッ」ってすると寂しくなるじゃないですか。無音だと、寂しくならないんですよ。それとか、たとえば『マトリックス』っていう映画の中でサイバースペース吸い込まれていく時の音。「サイバースペースに吸い込まれていく」なんていう音はないでしょう? あるわけなんですよ。だから、作るんですよ。「ギューンッ!」っていう音を。そうなると、音を実際に録音するとかそんなのとは違って、その心とか感情みたいなものを音で表現するということになってくるんですよ。

(赤江珠緒)そうか。作り出して表現しなきゃいけないのか。

心や感情を音で表現する

(町山智浩)そう。ショックを受けた時の「ガーン!」っていうをどういう風にするかとかね。これはね面白いですよ。『ゴッドファーザー』っていう映画で主人公のアル・パチーノ。今までおとなしかった男が父の敵を殺さなきゃいけないっていう時に、ものすごく精神が追い詰められて決心をするところで、レストランなんですけども、その上を通ってる高架線を地下鉄が通る音がするんですよ。

で、地下鉄の線路がきしむ「キキーッ!」って音がするんですよ。でも、実はそれはその場には存在しない音なんですよ。その時の感情を示すのに、音楽よりも地下鉄が上に通ってることにして、そのブレーキ音を聞かせた方が主人公の心の壊れ方みたいなものが分かるってことで入れてるんですよ。「ギャーン!」って音を。

(赤江珠緒)なるほど! ああ、やっぱり音響さん、すごい重要ですね。

(町山智浩)すごいことなんです。そういうことがわかってね、もう映画の見方がバッと広がる映画なんで。『ようこそ映画音響の世界へ』、ぜひ映画館でご覧ください。

(赤江珠緒)そうですね。町山さんの解説を聞いたらなるほどなって。一緒に音を録っていたら映画って成立しないですね。

(町山智浩)しないんですよね。実はそういうことをいっぱいしているということですね。

(赤江珠緒)『ようこそ映画音響の世界へ』は8月28日から新宿シネマカリテ他、全国で公開予定です。

<書き起こしおわり>

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