山下達郎 レコード収集のこだわりを語る

山下達郎 坂本龍一との出会いを語る NHK FM

山下達郎さんが2023年5月4日放送のNHK FM『今日は一日“山下達郎”三昧 レコード特集2023』の中でレコード収集についてトーク。6万枚にもおよぶコレクションを収集したこだわりなどについて話していました。

(杉浦友紀)レコード特集ということで、日本きってのレコード通でもある達郎さんに、ここ数年大きなブームも起きているこのレコードの楽しみ方をぜひ、教えていただきたいなと思いまして。

(山下達郎)レコードがですね……私、全然そんな通でも何でもないです。非常に標準的なセッティングで聞いてる人間なので。オタクになったらもう、際限がありませんからね。奥深すぎて、もうすごいことになってます。「今日は黒点が多いからダメだ」とか、そういう世界になりますからね。

(杉浦友紀)フフフ(笑)。

(山下達郎)90年代に揃えたセットで全然今でも、CDプレーヤーからレコードプレーヤーまで全部、あれですからね。40年選手ばっかりなので。

(杉浦友紀)そこにはそんなにこだわりはないと。

(山下達郎)こだわりないっていうか、その音じゃないと嫌なんです。今の音じゃ、嫌なんです。だから昔のセットですね。だから今日、アナログをやってくれてるレコードプレーヤー。昔、どこの放送局でもあれを使ってたんですけど。あれでかけてるでしょう? だからあれでかけると、あの音がするんですよ(笑)。でも今のレコードプレーヤーだと、あの音はしませんから。

(杉浦友紀)そうなんですか。プレーヤーによっても違うんですね。

(山下達郎)それは全然違うんですよ。

(杉浦友紀)達郎さんはやはり、少年時代からレコードコレクターだったという話は聞いているんですが?

(山下達郎)いえいえ。お金がないから、そんなことありません(笑)。

(杉浦友紀)どんな風にこの好きな音楽とか、新しい音楽は?

(山下達郎)ラジオです。全部。

(杉浦友紀)ラジオで。それで気に入ったら、買えればレコードを?

(山下達郎)買えれば、買います。あとは、聞いてたのはFENなので。売ってないものもありましたからね。特にオールディーズは売ってませんから。それが、70年代超えるぐらいから、これも権利が解放されたっていうか。隣接権とか、ご存知だと思いますけど。著作権とか隣接権が解放されたので。時が経ってね。それで、そういう廉価版みたいなのがたくさん出るようになって。それで「ああ、こんなものもある! これがレコードになったんだ!」みたいな。それが70年代の話で。それで、ようやく『MOONGLOW』ぐらいで何とか生活が立つようになって。後はもう、とにかく稼いだ金を全部レコードっていう。で、まだ安かったんですよ。

(杉浦友紀)ああ、その当時は?

(山下達郎)LPが1枚で下手すると何十セントで買えていた時代で。だからメーター買いですよ。

(杉浦友紀)「メーター買い」?

(山下達郎)電話帳みたいなカタログが来るんですよ。それを、片っ端から……1枚25セントだから。片っ端から(メートル単位の高さになるほど)買って。その時のあれが一番買いましたかね。

(杉浦友紀)そうなんですね。少年時代に聞いていたレコードで思い出の曲を1曲、紹介していただければと。

(山下達郎)今日はアナログなのでね。アナログ盤で聞いていて、やっぱり一番最初に「これだ!」と思ったのはね、ヤング・ラスカルズっていう僕のアイドルグループがいるんですけど。ニューヨークの。66年の全米ナンバーワンの『Good Lovin’』。これも初め、ラジオで聞いたんですけど。元々、66年だから僕、中学の2年だったんですけど。1年ぐらい遅れて再発された時に、シングルカットになって。それを聞いて、ぶっ飛んで。

(杉浦友紀)ぶっ飛んだんですね。

(山下達郎)グルーヴに。

(杉浦友紀)達郎少年がぶっ飛んだ?

(山下達郎)ぶっ飛びました。それから以来、僕のアイドルグループになりました。ヤング・ラスカルズ『Good Lovin’』。

The Young Rascals『Good Lovin’』

(杉浦友紀)達郎さんが少年時代に聞いていたヤング・ラスカルズ『Good Lovin’』を聞いていただきました。

(山下達郎)何百回も聞きました。

(杉浦友紀)どうぶっ飛んだんですか?

(山下達郎)いや、グルーヴですよ。やっぱり。迫力。やっぱり当時のアメリカを代表する、三大ライブバンドと言われたグループなので。素晴らしいです。

(杉浦友紀)この時間は山下達郎さんご本人をお迎えしてお送りしています。去年の三昧の時にですね、竹内まりやさんから教えていただいたんですけど。今もCDやレコードをおよそ6万枚ほどお持ちで。ちょっとお写真を拝見したんですが。ご自宅の地下には国会図書館のような……燦然たる棚が並んでいて。すごい世界ですね。あそこは。

(山下達郎)すいません(笑)。

(杉浦友紀)いやいや(笑)。あの空間で「たなつか」をされてるんだなと。

(山下達郎)私、それしか趣味がないんですよ。趣味:レコード収集。ストレス解消:レコード収集。

(杉浦友紀)今もその、レコード屋さんにも行くんですか?

(山下達郎)今はほとんどネットですね。

(杉浦友紀)ああ、ネットなんですね。ネットで、その海外だったり、国内のサイトを見て?

(山下達郎)そうですね。ほしいやつはネットで見てオーダーをして。あとは、向こうからカタログが来ますんで。昔は紙のカタログであれしましたけど、今はネットだと試聴ができるんですよね。

(杉浦友紀)ああー、そうですか。えっ、そのレコードの音が試聴できる?

(山下達郎)音が試聴できます。それで、見てるやつがみんな、いわゆるカルトなサイトばっかりなんで。見たことも聞いたこともないやつばっかりなので。そういうのを片っ端から聞いて、いいやつを選ぶっていう。それは、いいんですよ。ムダがなくて。

(杉浦友紀)毎月、どれぐらいの枚数を買うんですか?

(山下達郎)今はそうでもないけど……オークションが嫌いなんでね。なるべくオークションをやらないようにというあれなんで。だからこうやって「レコード6万枚」とか言うと、なんかやれ、「金持ちがあれだ」とかね。でもレコードってちゃんとした、適正なあれで買ってる分には全然……今のノーザンソウルとか、シングル1枚で100ポンドだ、200ポンドだっていうような、そういうのに手を出さなければ。ちゃんとしたセットセールで買えば、そんなに高い娯楽じゃないんですよ。そういうところはやっぱり節度がないと嫌だなと思って。なるべく安く売ってるところを探すっていう。

(杉浦友紀)こう、同じレコードで何枚も揃えるとかも、あるんですか?

(山下達郎)CDの方が多いですね。CDはボーナストラックが違うから。だから前に買ったやつを捨てられないんですよ。あとCDはね、80年代にCDが出たばかりの頃の方が、それまでの……オールディーズですけどね。新譜じゃなくて、オールディーズに限っては、マスターの状態がその時代の方がいいんで。だからCDのクオリティーとしては音がそんなに良くないんすけど、その頃のマスターの状態がいいから。それを今、リマスタリングにしたもの……今、出ている、マスターが劣化したやつをリマスターしたものよりも全然いいんですよ。だから、捨てられない。

(杉浦友紀)ああ、じゃあCDはもうどんどん、同じ作品もたまっていったり?

(山下達郎)もう無限的に増えていきます。

(杉浦友紀)「無限的に」(笑)。でも、どうしてそれだけレコードに魅了されるんですか? 達郎さんは。どんなところが魅力なんでしょうか?

(山下達郎)音楽が……結局、ロックンロールが好きなんですよ。ただ、一番大きな理由はやっぱり番組を始めたことで。番組を始めて30年ぐらいなるんですけど。オールディーズに特化した番組なんで。それが続けているうちに、だんだんだんだんジャンルが広まってきてね。最近はブラジル音楽とか、そういうリクエストも来るようになって。そういうのだと、やっぱりそれに応えなきゃなんないんで。クラシックはさすがにないけど、ラテンとか、そういう違うジャンルが増えてきて。

それで、そうやっていわゆるカルトなものっていうか。みんな、よく知ってるんですよ。そうすると、試される気がしてね。「持ってねえだろう?」みたいなね。そういうことをやってるうちに、どんどんどんどん増えていって。で、やっぱり増えてくると、コンプリートにしたいじゃないですか。で、カタログをコンプリートにしようと思うと、またこれが苦労するんですよね。

(杉浦友紀)ああー。そのミュージシャンのをコンプリートしたい?

コンプリートへの道

(山下達郎)そうです。ビーチボーイズがあとシングル2枚でコンプリートなんですけど。でも、それだってアメリカ盤だけですから。これがポルトガル盤とか、スペイン盤とか言ったら……でもそういう人、いますから。ビートルズなんていったらもう、そういう猛者がたくさんいますから。だから、そういうんじゃないんで。オリジナルのアイテムがコンプリートになればいい。でもね、よく考えてみると自分がどんなに好きでも、コンプリートで持ってる人って、そんなにいませんよね。僕、三つか四つですもん。

(杉浦友紀)ああ、そうなんですか。コンプリートで持っているのが。たとえば、誰なんですか?

(山下達郎)ビーチボーイズはもうちょっとで。アイズレー・ブラザーズと、あとはええと、ラスカルズでしょう? そういう……でも、レターメンはアルバムは全部ありますけど。シングルオンリーっていうのが、あるんすよ。シングルのB面とか、そういうのはないから。それだと、コンプリートって言わないんですよ。

(杉浦友紀)アルバムシングルもコンプリートしてこそ、コンプリート?

(山下達郎)そうです。

(杉浦友紀)ビーチボーイズはでも、シングルがあと2枚っていうことですよね? でもそれも、オークションでは絶対に?

(山下達郎)あの、売れてないから。人気曲じゃない。で、キャリア長いから、出しまくってるでしょう? で、結局A面とB面が違うやつっていうのがあって。2回、出してるみたいな。そういうやつで。しかも一番売れてない、70年代の後期とか、そういうやつで。もうちょっとなんですけどね。

(杉浦友紀)あと2枚ですもんね。あとちょっと。

(山下達郎)ベンチャーズは人に譲っていただいて、シングルはコンプリートになりましたけど。そういうので、番組が成り立つんですよ。どんなものが来ても。

(杉浦友紀)だから、あの「たなつか」ができてるんですね?

(山下達郎)そうです。

<書き起こしおわり>

竹内まりや 山下達郎の自宅レコード棚を語る
竹内まりやさんが2022年6月25日放送のNHK-FM『今日は一日"山下達郎"三昧2022』の中で自宅地下室にある山下達郎さんのレコード棚について話していました。
山下達郎 アナログレコードのメンテナンスとコレクション管理を語る
山下達郎さんが2023年2月18日放送のニッポン放送『山下達郎と上柳昌彦のオールナイトニッポン』の中で自身のレコードコレクションについてトーク。レコードのメンテナンスや、アーカイブの管理について話していました。
タイトルとURLをコピーしました