山下達郎さんが2023年5月4日放送のNHK FM『今日は一日“山下達郎”三昧 レコード特集2023』の中でRCA/AIR時代の8作品・レコード&カセット再発売されるに至った経緯について、話していました。
(杉浦友紀)今回はですね、三昧。なんとご好評につき去年より30分延びました。
(山下達郎)すごい(笑)。大丈夫? だって今日はあれでしょう? RCA/AIR YEARS縛りでしょう?
(杉浦友紀)そうなんです。
(山下達郎)大丈夫かな?
(杉浦友紀)もちろんそれ以外の曲もかけてはいくんですが。中心はRCA/AIR時代の。
(山下達郎)すごいなー。なんかね、今回アナログ盤が再発だって言って。今日、このスタジオにそのレコード会社から新しいジャケットが届いたんですけど。すさまじいデジャブですよ、これ。このジャケットを1981年の暮れにチェックした時のデジャブがすごい! あれからだってもう42年ですからね。どうなってるんでしょうね、本当にね。
(杉浦友紀)でも、すごいきれいな、この青の青空が広がるジャケット。
(山下達郎)あの時代より、ジャケットがきれいですよ。
(杉浦友紀)ああ、そうですか!
(山下達郎)印刷技術が発達したんですね。あと、レコードジャケットってのは正直言って、あまり商売にならない時代だったんですよ。だから、大きな印刷会社は全然目もくれなかったんです。レコードジャケットには。で、割と小さな会社がこういうレコードジャケットはやっていたので。なかなか、ロットっつって、品質が均一だとか、そういうものがね、なかなかね、難しい時だったんですよ。アルバムジャケットって。だからアルバム、LPって50枚入りのダンボールの箱なんですけど。それをずらっと並べると、全部色が違ってたんですよ。
(杉浦友紀)ええーっ!
(山下達郎)そういう時代だったんです。だからこれ、今の新しいジャケットを見ると本当にね、品質が向上してるというか。やっぱりデジタルでやってるでしょう? だから印刷がきれいですよね。
(杉浦友紀)より鮮やかな、アナログ盤、レコードが今年、皆さん手元に……手にすることになるということですが。改めてご紹介いたしますと、今年は達郎さんがRCA/AIRにご所属されていた時代のアルバム8作品がレコードやカセットでリリースされることになるという。
(山下達郎)アナログとカセットで出るという。CD再発じゃないんでね。わけがわからないですよ(笑)。
(杉浦友紀)いや、大変話題になっていますけれども。その話を中心に伺っていきたいんですが。
(山下達郎)お手柔らかにひとつ。
(杉浦友紀)いや、こちらこそ。よろしくお願いします。そもそも、このレコードを再販するというのはどういう経緯があったんですか?
(山下達郎)知りません(笑)。
(杉浦友紀)あれっ?
再販に至った経緯
【#山下達郎】
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— タワーレコード渋谷店 (@TOWER_Shibuya) May 5, 2023
(山下達郎)私が「出してくれ」と言ったわけじゃありません。「出したい」というのを各方面からいただきましたので。その今、俗に言われる、いわゆる「シティポップ」っていうやつですね。それの影響で、なんか海外のニーズがすごく高くなってるっていう。「本当かな?」って思いましたけど、ロンドンのやり取りしてるディーラーとかがメールをよこしてきて。『SPACY』が200ポンドしているとかね。文字通り僕、キツネにつままれたっていうか。大変ありがたいと思いますけど……もう全然、わかりません。
(杉浦友紀)フフフ(笑)。「どうしてこんなになってしまったんだ?」と。
(山下達郎)40年も前のカタログですからね。『CIRCUS TOWN』が76年でしょう? だからもう47年になりますね。で、『FOR YOU』が82年ですから、41年ですか。どうなっているんでしょう?(笑)。
(杉浦友紀)やはり、まずひとつはこのレコードブームと……もしかしたら、そのプレーヤーを持ってない方でも、レコードで手にしたいっていう方は結構いるんじゃないかな?って。
(山下達郎)まあ、こういう30センチのアルバムっていうのは本当に、いわゆるそういうトータルアートっていうか。ジャケットと音と、それから歌詞カードとか。そういうようなものが全部合わさって。あと作ってる人間のキャラクターとか、そういうものが全部合わさった、ひとつのなんていうか、メディアミックスとしてのね、非常に大きな完成形なんですよね。
それなので、音楽というのはものすごく60年代から70年代に興隆したんで。それはまあ、録音技術の向上とか、そういうのもありますし。いろんなファクターがね、日本の場合にはだいたい80年前後。その時に一番ピークを迎えたという、そういう背景があるので今のシティポップというものの背景を形作っているんじゃないかなと思いますけど。でも、そんなものは結果論でね。後からだったら何でも言えるんですよ。そんなことは。
(杉浦友紀)でも私はもう既に持っているレコードがあるんですけど。いくつか持っていますけど。それでもやはり、このまた最新リマスター版で聞きたいという気持ちもあって。
(山下達郎)不思議なことにね、ちょうど時期がよかったっていうか。こういうアナログがブームになりかけてから10年ぐらい、僕が聞いてた時代のアナログ盤の再発っていうのを片っ端から全部、買ったんですよね。なんですけど、2010年代の前半ぐらいまでは、ひとつとしてオリジナルバージョンを超えてるものがなかったんです。洋盤でも邦盤でも。ところが、ここ数年ね、だんだんこのアナログ盤の質がオリジナル盤を少しずつ凌駕し始めてきて。
この『FOR YOU』なんていうのはオリジナルとほとんどタメを張るというか。そういうあれになってきたんですよね。まあ、いろんな技術の向上があるんだと思いますけど。ひとつはやっぱりマスターがデジタルだっていうこととか、そういうものがたぶん大きいと思うんですけど。昔はとにかくアナログだったら何でもいいっていう、単なるノスタルジーとか。それを180gの重量盤とか、いろんなことをやってきたんですけど。なんかね、やっぱりオリジナルのその本当のファーストプレスのものにはね、遠く及ばないっていうのが僕の印象だったんですけど。
最近、自分のやつをチェックして「意外といけてるな」っていうね。ここ5年ぐらいですかね。だから。まりやの『REQUEST』とか、あのへんぐらいからですかね? だからそういう……だからちょうどいいタイミングだったなっていうのは思いますね。だから、企画してくださった方々に心より御礼を申し上げます。
(杉浦友紀)大拍手です、大拍手。それもあって達郎さん自身も、「じゃあ、その企画に乗ってみようかな」っていう気持ちもあったんでしょうか?
(山下達郎)でもなんか「大丈夫かな?」っていうのが本音です。
(杉浦友紀)「大丈夫かな?」ってどういうことですか?
(山下達郎)だって『SPACY』なんて、当時の売れた枚数に迫った予約数で。「だったら45年前に言ってくれよ」っていう……。
(杉浦友紀)アハハハハハハハハッ! でも、やはり45年前に生まれてない人もきっと今回、予約してると思いますし。今日このスタジオに当時のレコードをですね、持参していただいて。で、目の前に『SPACY』があるんですけど。ちゃんと、透明の帯が付いてる……この透明の帯付きの『SPACY』はもうちょっと、とんでもない価格しますから。
(山下達郎)すごいコピーですよね?
(杉浦友紀)「限りなき空間に漂う鮮烈な魂」っていう。
(山下達郎)なんだ、これ? 本当に……(笑)。
(杉浦友紀)かっこいい!
(山下達郎)かっこよくはないですよ(笑)。
(杉浦友紀)鮮烈!
(山下達郎)しょうがないな……(笑)。
(杉浦友紀)では、早速ですね、その8作品から代表して1曲、お送りしましょう。昨日、先陣を切ってリリースされたアルバム『FOR YOU』からお届けします。これ、大事なことなのでまたアナウンスしますけれど。今回、このRCA/AIR時代のアルバム8作品からかける音源はですね、なんと今年、順次リリースされる最新リマスターのレコードを1枚だけ。それぞれ1枚だけ入手しまして、そのレコードの音をそのまま、放送に乗せていきます。
(山下達郎)なんか……何も言えない(笑)。最初から何も言えない(笑)。
(杉浦友紀)なので、『FOR YOU』はもう既に手にしている方もいると思いますけれど。それ以降の、これからリリースされるものがここで、この三昧で先取りしちゃえるっていうことなんでございます。
(山下達郎)一応、そのテストプレスでかけていただけるそうなので。はい。すごいな。
(杉浦友紀)では、お聞きいただきましょう。やはり、達郎さんといえばこの曲でスタートしたいと、我々スタッフが思いました。1982年のアルバム『FOR YOU』から『SPARKLE』。
山下達郎『SPARKLE』
<書き起こしおわり>