高橋芳朗 BTS・j-hopeソロアルバム『Jack in the Box』を語る

高橋芳朗 BTS・j-hopeソロアルバム『Jack in the Box』を語る アフター6ジャンクション

高橋芳朗さんが2023年4月24日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中でBTSのラップラインのj-hope、RM、SUGAの3人のソロ活動についてトーク。j-hopeのソロアルバム『Jack in the Box』について、話していました。

(宇多丸)さてさて、今回はですねどんなお話になるんでしょうか?

(高橋芳朗)今回はですね、BTSのラップ担当ですね。通称「ラップライン」を構成する3人のメンバー、j-hopeとRMとシュガ。この3人のここ最近のソロ活動をそれぞれの最新アルバムを軸にして紹介していきたいなと思っております。

(宇多丸)ヨシくん、すいません。素朴なあれなんすけど。僕、ラップラインっていうワードを知らなかったんですね。これはK-POP用語的なことですか?

(高橋芳朗)そうですね。僕もK-POPを聞くようになって初めて覚えた言葉です。

(宇多丸)「ラップ担当」みたいなことでしょうか? ラップラインというね。でも、そのラップ担当組3人がちょうど、ちょっと時期はあれだけども。だいたいソロアルバムっていうのを出して、みたいな?

(高橋芳朗)そうですね。BTSはメンバーの兵役義務履行に伴って昨年6月にソロ活動を本格化していくことを発表したんですけど。そういう中で、去年7月のj-hope。12月のRMに続いて先週4月21日にシュガのソロアルバムがリリースされたんですね。これでラップ担当3人のアルバムが出揃ったので、このタイミングでまとめて取り上げておきたいなと思います。

(宇多丸)しかもシュガさんは名義が違うんですね?

(高橋芳朗)そうですね。Agust Dという名前でやっていますね。そのへんも後で説明したいと思いますけど。だからアメリカのヒップホップが好きな方にも興味を持ってもらえそうな切り口でお届けしたいなと思いますし。宇多丸さんも熊崎くんも、これは楽しめる特集かなと思っています。

(宇多丸)楽しみにしております。

(CM明け)

(宇多丸)はい。ということでBTSのラッパー、シュガさんのソロアルバム『D‐DAY』が4月21日にリリースホヤホヤということで。BTSの3人のラップライン、RMさん、j-hopeさん、シュガさん、それぞれのソロ作品を聞き比べてみようということになっております。ということでヨシくん、早速行きましょうか?

(高橋芳朗)はい。まずは去年、7月15日にアルバム『Jack in the Box』をリリースしたj-hopeから始めてみたいと思います。日本のニュース番組なんかでも報じられてましたけど、j-hopeは先週18日に兵役のために韓国陸軍に入隊しました。で、j-hopeはですね、ラップはもちろんなんですけど、ダンススキルも非常に高くてですね。BTSのパフォーマンス面において非常に重要な役割を担ってるメンバーと言っていいと思います。

ソロとしては2018年にミックステープ『Hope World』をリリースして、2019年にはですね、これはアメリカのヒップホップを好きな人は覚えてるかなと思うんですけど。振りつきダンスとともに大流行したDJウェブスターの2006年の『Chicken Noodle Soup』というヒット曲をリメイクした同名の『Chicken Noodle Soup』を発表しています。今、BGMで流れてる曲ですね。

(高橋芳朗)この曲は全米チャートで最高81位を記録して、BTSのメンバーとしては初の全米シングルチャートランクインを達成しています。で、j-hopeはダンスレッスンの動画でグランドプーバとかオール・ダーティ・バスタードとかの曲を使っていたり。BTSの曲中でノトーリアス・B.I.G.とか2パックとかナズの名前を挙げてたりして。90年代のヒップホップに対する愛着が強い印象があるんですけど。

(宇多丸)だって元々BTSってラップの先生がクーリオだもんね?

(高橋芳朗)ああ、そうですね。

(宇多丸)だから、そうなのよ。ヒップホップ大好きっていうか、俺ら、どう考えても話が合うでしょう? みたいな。ねえ(笑)。

(高橋芳朗)そうそう(笑)。で、去年7月に出た彼のソロデビューアルバム『Jack in the Box』はまさに90年代前半のヒップホップ。特にオルタナティブヒップホップの影響がすごく強く打ち出されていて。具体的にはサイプレス・ヒルとかビースティ・ボーイズとかウータン・クランとかの影響が聞き取れるんですね。

(宇多丸)まあロックシーンにも受けたような感じなんですかね。

(高橋芳朗)そうですね。まさに。で、この『Jack in the Box』のリリース直後にj-hopeは去年の7月31日に、アメリカの由緒ある音楽フェス。もう30年以上の歴史を持つロラパルーザのシカゴ公演のヘッドライナーとして……。

(宇多丸)これ、「ロラパルーザ的なメンツ」って今、言おうとしたんだけど。まさにそうなんだね。

(高橋芳朗)さすが、鋭い。ロラパルーザは1991年に立ち上げられて。当時、台頭してきたそのオルタナティブミュージックの象徴的なイベントとして人気を確立しているんですね。で、1990年代前半のオルタナティブヒップホップにオマージュを捧げるようなその『Jack in the Box』は、もうロラパルーザの本来のカラーと非常に相性がいいんですよ。だからたぶんj-hopeはアルバムの音楽性を踏まえて、ロラパルーザへの出演を決めたんじゃないかなと。だからそういう意味ではものすごくコンセプチュアルに練られたソロ展開だなと思いましたね。

で、『Jack in the Box』は全米アルバムチャートでは最高17位にランクインして。現地の音楽メディアでの評価も高くてですね。たとえばローリングストーンの年間ベストアルバムランキングでは第9位に選ばれています。これ、全ジャンルをひっくるめてです。1位がビヨンセ。3位がテイラー・スウィフトとか、そういう勢いですね。そこで9位に入ってるということで。じゃあ、その『Jack in the Box』から1曲紹介したいんですけど。

『What if…』という曲を聞いて聞いてもらいたいと思いますが。これがですね、2004年に亡くなったウータン・クランのメンバーのオール・ダーティ・バスタードの1995年のヒット曲のリメイクなんですよ。ちょっと流してもらえますか?

(宇多丸)「Ooh, baby, I like it raw♪ Yeah, baby, I like it raw~♪」。

(高橋芳朗)アハハハハハハハハッ!

(宇多丸)ごめん。歌いだしちゃった(笑)。

(高橋芳朗)似てますね? 声の震え具合が(笑)。オール・ダーティ・バスタードの1995年の時ヒット曲『Shimmy Shimmy Ya』を思いっきりサンプリングしてるんですよ。じゃあ、ちょっと聞いてみましょうか。j-hopeで『What if…』です。

j-hope『What if…』

(高橋芳朗)はい。j-hopeの『What if…』を聞いていただいております。

(宇多丸)このピアノのフレーズを組み替えているところとか、これは褒めているけども。気持ち悪っ!(笑)。

(高橋芳朗)フフフ(笑)。そのへんが、サビに向けた展開が当時のオルタナヒップホップ的なノリがあるかなって。

(宇多丸)そうだね。いや、でも結構ラップもかっこいいし。

(高橋芳朗)かっこいいですよね。

(宇多丸)英語と韓国語混じりでさ。そういうのがやっぱり普通にちゃんとアメリカで評価される時代だもんね。やっぱりね。

(高橋芳朗)いや、これは本当にかっこいいです。で、j-hopeはロラパルーザに出演した際に、バックヤードで彼の最大のアイドルとの対面を果たしてるんですよ。それが誰か?っていうと、j-hopeの前日に別のステージでヘッドライナーを務めてたJ・コールなんですよ。ケンドリック・ラマーやドレイクと並ぶ、2010年代のアメリカのヒップホップを代表するラッパーですけども。この2人が出会った時の模様はディズニープラスで配信されてるj-hopeの密着ドキュメンタリー、『j-hope IN THE BOX』で見ることができるので。ぜひ興味のある方は見てほしいんですけど。

(高橋芳朗)j-hopeは自分の音楽活動の最大のインスピレーションになってるアーティストとして度々、J・コールの名前を挙げてるんですね。BTSの初期の作品の『Hip Hop Lover』っていう曲ではJ・コールの作品のタイトルを読み込みながら、どれだけ彼に影響を受けたかを表明していたり。2018年にリリースしたミックステープの『Hope World』もタイトルがJ・コールのデビューアルバムの『Cole World』のリファレンスにもなっていて。

(宇多丸)もうヘッズだ!

(高橋芳朗)そう。めちゃくちゃヘッズです。で、このロラパルーザの出会いが縁になって、念願のコラボが実現するんですよ。その曲が、その兵役義務の入隊手続きを始めたことが報じられた直後の3月3日にリリースしたシングルの『on the street with J. Cole』になります。この曲は元々、ストリートダンサーだったj-hopeが自分の原点に立ち返りつつ、未来に目を向けるという、彼のこれまでとこれからが綴られているような曲で。それを受けてJ・コールが彼にエールを送るっていう非常にエモーショナルな内容の曲なんですけど。

で、ビートが定番ネタのスライ&ファミリーストーンの『Sing a Simple Song』なんですよ。最近のアトロクの特集にちなんで言うと、デ・ラ・ソウルの『Eye Know』とか、ジャングル・ブラザーズの『J. Beez Comin’ Through』のビートですけども。こういうトラックのチョイスから、また90年代のオーセンティックなヒップホップへのJ-POPの愛着がうかがえるかなという気がしますね。

(宇多丸)しかもこちら、スライ&ファミリーストーン、クリアランスも取ってね。お金、かかりますね。

(高橋芳朗)じゃあ、聞いてください。j-hopeで『on the street with J. Cole』です。

j-hope『on the street with J. Cole』

(高橋芳朗)はい。j-hopeで『on the street with J. Cole』を聞いていただいております。

(宇多丸)そのさっき言っていたスライのビート使いとかも含めて、すごいストレートにやっぱり90’sな感じっていうか。J・コール自体がね、割とそういう人だから。

(高橋芳朗)まさに、まさに。

(宇多丸)でもすごい、その90’sのエモいところみたいなのをつかまえて、ちゃんとデートしてるっていうか。あと、J・コールが出てくるとグッとね、「おっ!」っていう感じがやっぱりありますね。「おっ、かっこいい!」っていうね。

(高橋芳朗)最後の締めもね、「​​j-hope, Cole World」っていうので締めているから。もうj-hope的には膝から崩れ落ちるほど感動したと思いますね。で、この曲はニューヨークのマンハッタンでミュージックビデオを撮ってるんですけど。それがね、J・コールが2007年にリリースしたが彼のデビュー作の『Simba』っていう曲のMVのオマージュになっているんですよ。

(宇多丸)だから、ヘッズかよ! もう……「J・コールさん、あのビデオを撮ったところでちょっと、やらしてくださいよ。俺、あのビデオ、めちゃくちゃ見たんすよ!」みたいな(笑)。

(高橋芳朗)もう本当にね、J・コールへの愛が炸裂していますので。ちょっとぜひ、見比べてほしいですね。

(宇多丸)これはぜひ、ARMYの皆さんもね、そこからさらにね。J・コール。さらにオール・ダーティ・バスタードまではわからないけども。まあ、本当にj-hopeさんが好きな音楽というのを掘っていただけると嬉しいですね。彼も本望じゃない? それは、絶対に。ありがとうございます。j-hopeさん。話が合いそうです。さあ、そして?

(高橋芳朗)では、RMさんに行きましょうかね。去年12月2日にアルバム『Indigo』をリリースしたRMさんです。

<書き起こしおわり>

高橋芳朗 BTS・RMソロアルバム『Indigo』を語る
高橋芳朗さんが2023年4月24日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中でBTSのラップラインのj-hope、RM、SUGAの3人のソロ活動についてトーク。RMソロアルバム『Indigo』について、話していました。
高橋芳朗 BTS・SUGA(Agust D)ソロアルバム『D‐DAY』を語る
高橋芳朗さんが2023年4月24日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中でBTSのラップラインのj-hope、RM、SUGAの3人のソロ活動についてトーク。SUGA(Agust D)ソロアルバム『D‐DAY』について、話していました。

タイトルとURLをコピーしました