SKY-HIと辻愛沙子 SNS時代の広告とメッセージ発信を語る

SKY-HIと辻愛沙子 SNS時代の広告とメッセージ発信を語る DIVE TO THE NEW WORLD

クリエイティブ・ディレクターの辻愛沙子さんとSKY-HIさんが2023年4月1日放送のJ-WAVE『DIVE TO THE NEW WORLD』の中でSNS時代の広告についてトーク。さらにアーティストなどのメッセージ発信についても話していました。

(SKY-HI)ですよね。たぶん広告っておそらく、究極的に言うとコミュニケーションのはずだと思うので。その、購買層とクライアントのコミュニケーションを手伝うために、クライアントとコミュニケーションをして。クライアントが購買層とコミュニケーションを取れるように計らう。だからそのコミュニケーションがうまくいってると盛り上がるし、なにかしらでコミュニケーション不全が何かしらで起こってると……だから「話を聞いてない」みたいな。だから実生活と近い気がするんですけど。

(辻愛沙子)たしかに! 「この人、いつも一方通行でしゃべってるな」みたいな。

(SKY-HI)なんか「押しつけがましい」とか、そういうのもたぶんあると思うんですけど。

(辻愛沙子)たしかに。「対話」ですもんね。

(SKY-HI)対話ですもんね。だからすごい究極的に言うとコミュニケーションだって考えると、コロナ禍もそうですけど。それ以前から、やっぱりSNS発達以降でコミュニケーションの仕方って、だいぶ変わってるから。

(辻愛沙子)かなり相互コミュニケーションっぽいものが増えてきた感じはしていて。

(SKY-HI)そうなると、そりゃあ広告業界なんて直接的に大きく変わりますよね?

(辻愛沙子)はい。なので企業やブランドから一方的にメッセージを出すっていうだけじゃない、相互コミュニケーションがあって。最近、ちょっとさらに……だからその結果、バズブームみたいのが来たわけですけども。でもそれも最近、ちょっともう集約してきてる感じがして。もちろん、なくならないとは思うんですけど。バズっていうのは瞬間風速なので。超最初に立ち返って、そもそもいいものを作っていこうとか。

あるいは、それこそ瞬間風速的なバズではないんだけど、ちょっとずつ積み重ねていく泥臭いブランディングとか、発信とか。一見、すぐに自分たちの利益には繋がり切らないように思える、中長期のブランディングの流れに最近、すごい回帰している気がするというのと……もう1個、さっきお話しようと思った質的な話で言うと超わかりやすいのは、SDGsブーム。わかりやすく「ブーム」って言うんですけど。

(SKY-HI)ああ、わかる! たしかに!

(辻愛沙子)今はまだ、ブーム的だなと思っていて。ただ、企業コミュニケーションの中でもめちゃくちゃ炎上が最近、多いじゃないですか。

(SKY-HI)多い! めちゃくちゃ多い。

(辻愛沙子)ありすぎて、もう訳がわかんない……追えないぐらい、あると思うんですけれども。でも、そういう意味でいうとたとえばかつては調味料のCMはだいたい女性がキッチンに立っていて。で、クレジットカードのCMはスーツを着た男性がだいたい出てくる。そういうキャスティングひとつとっても、メッセージ性ひとつとっても、今まで広告業界が作ってきたステレオタイプがめちゃくちゃ強固にあるので。

(SKY-HI)そうですよね。記号的なところに性別や職業は割と当てはめやすいですからね。

(辻愛沙子)かなり……まあ、わかりやすくした結果だと思うんですけど。それもひとつだし。それこそ、タレントさんを「タレントさん」として起用するっていう。タレントさんも当然、人間なので、その人の感情があって、その人の歩んできた背景があって、その人らしさがあるわけなんですけれども。でも、なんかそうじゃなくて、企業としてのメッセージを話してもらうみたいな風になっちゃうんで。そうじゃない、その人らしさをいかに大事にした文脈でクリエイティブを作れるのか、みたいなことも最近、すごい増えてきてる気がするので。より人間的になってる気がします。

(SKY-HI)わかります。文脈が感じられるか、感じられないかで広告、およびその広告を出してる企業のイメージ、ずいぶん違いますよね?

(辻愛沙子)ずいぶん違いますね。本当に。

その人の文脈を踏まえたクリエイティブづくり

(SKY-HI)俺、あと全然関係ないけど。今、話していて「あっ!」って思ったのは、AAAのアルバムタイトル、自分が作ったやつがいくつかあるんですけど。その『Buzz Communication』っていうのを12年前に作ってるっていう(笑)。

(辻愛沙子)早い、早い!(笑)。

(SKY-HI)で、その時に「日本語にするとこれ、『バズる』だよね」とか言って。割と身内で「バズる、バズる」とか言って。で、その『Buzz Communication』ってアルバムを作って。「Twitterで『バズる』ってワードを使いまくってたら、その『バズる』がバズるんじゃないか?」とか言っていたんですけども。12年前、さすがに時代が追いついてこなかったですね(笑)。

(辻愛沙子)いや、全部早いっすね(笑)。

(SKY-HI)で、開場中に幕にTwitterの画面を出して。当時、みんなハッシュタグっていうもの自体、知らなくて。で、半分くらいの人はまだTwitterアカウントも持ってないんですよ。だからTwitterっていうのがあって。アルバムの話やツアーの話を……AAAの『Buzz Communication』だから「#AAABC」っていう。それでつぶやいてって。そしたら開場中のあの時間もみんな「あっ、私のツイートが流れた」とか。それで今、会場にいる人同士のコミュニケーションも生まれるし……みたいな。

(辻愛沙子)めっちゃ楽しい。それが何年前ですか?

(SKY-HI)12年。

(辻愛沙子)ヤバい(笑)。早い、早い(笑)。

(SKY-HI)で、12年前の当時、みんなそこまでハッシュタグを使ってなかったから。だから毎回、ツアーの公演やるたびに、ハッシュタグランキング1位を……もう世界1位とか、簡単にいくわけ。それがちょっとハックに近いくらいの勢いでそうなっちゃったから「やった!」とは思ってたんですけど。それを面白がってくれた人は、自分の他はもう石川淳1人でしたね。知らないものが1人のアイディアで盛り上がるっていうことに対して、やっぱりあとはもう嫉妬しか残ってなかったです。

(辻愛沙子)ああー、ありますねー。

(SKY-HI)ただただ僕の居心地が悪くなるだけでした(笑)。

(辻愛沙子)それでも、やっぱり言い続けるとかやり続けるって、さっき業界の変遷の話でもおっしゃってましたけど。めちゃくちゃ大事だなと思っていて。たかが数年でも……それこそ、さっきお話したSDGs然り、社会課題みたいな軸で広告業界の中で何ができるか、みたいなことも、たった数年。2019年のタイミングで、私は最初にジェンダーギャップをファクトで可視化するメディアみたいな立ち上げて、そこから始まったんですけど。当時、業界にいるのに「ジェンダーギャップ? はて……?」みたいな。

なんならジェンダーという言葉も当時、たった4年前ですけど。地上波でジェンダーという言葉を使うと、「えっ、それ何? 性別の話?」みたいな。だいたい、解説がちょっと必要みたいな感じで。「でも性別とはちょっと直接的に意味が違うから、使いづらいな。どうやって言おうかな?」みたいな感じだったんですけど。でも今、ジェンダーっていう言葉は普通に使われるじゃないですか。ジェンダーギャップって言っても通じるし。

たった4年でも、それこそどこの企業も……当時は国際女性デーで広告コミュニケーションを出したりするのも、まだそんなに多くはなかったんですけど。たった数年で毎年毎年、「今年はどの企業がどんなものを出すのかな?」ってなって。しかも、それが結構炎上していて。「だから、うちに頼んでくれればいいのに……。いいもの、作るのに」とか思いながら(笑)。

(SKY-HI)アハハハハハハハハッ! 面白い!

(辻愛沙子)「ああ、あっちも燃えた。こっちも燃えた」とか、ちょっとドキドキしながらですけれども。そう思って見てましたけども。でも、それぐらいすごい攻めたことをやってるねとか。別にそれをやって……社会課題で究極的に言うと、「それをやって、儲かるの?」って言われたりするわけですよ。

(SKY-HI)そうですよね。

(辻愛沙子)「そんなの、きれいごとだよ]とか。でも、それを言い続けているとやっぱりみんなアクションしていくなっていうのもすごく感じるところはありますね。

言い続ける、やり続けることが大事

(SKY-HI)そうだよね。GO VOTEも……GO VOTE JAPANのキャンペーン自体には参加できなかったんですけど。ハッシュタグの「#GoVote」っていうので言うと、BMSGアーティストでも割と賛同してくれる方が多くて。全員とは言わないけど。BE:FIRSTの場合はJUNONとLEOとか、年長組の子とかはやっぱり、その若い子の参政意識を高めるっていうことの重要性とか。そのポップスターとして、それを全部言語化してメディアの前でしゃべれるのか?って言ったら、まだ2年目だとハードルが高いかもしれないですけど。でも、少なくともそれに対して賛成したいし、それに対してコメントを書きたいっていうのでちゃんとやってくれる方がいたりとか。

(辻愛沙子)素晴らしいですね!

(SKY-HI)素晴らしいです。

(SKY-HI)で、あとは他のアーティストでも、そうですね。GO VOTE自体は賛成、および表明してる方は多かったですし。なんなら、中学生の子も「選挙権を取ったら僕もやります!」って言ってました(笑)。

(辻愛沙子)素敵!

(SKY-HI)そうなんですよね。

(辻愛沙子)それこそ、ある種エンタメ等もそうかもしれないですけど。さっき、広告業界でキャスティングするタレントさんを、企業が言ってほしいことを言ってもらう役割じゃなくて、当然ですけどその人は1人の人間で。その人の人生があって。これまでやってきた思いとか、これまでのその人ならではの文脈がある。それをわかった上で、少なくともクリエイターも企業もそれを勉強した上で、その人をキャスティングしてくださいねっていう。キャスティングって、すごい責任じゃないですか。

(SKY-HI)でも変な話ですけど。今、結構文脈を追いやすいじゃないですか。

(辻愛沙子)いや、間違いない。ググれるし。

(SKY-HI)ググれるのよ(笑)。

(辻愛沙子)本当にそうで。だからそれをやらないのは怠慢だなと思うんですけど。企業の広告だけじゃなくって。「世間」って言うと主語が大きいかもしれないですけど。芸能に関わっていない人……私もメディアに出るっていうことは報道とかではしますけど。タレントではないので。だからこういう私たちみたいな一般の人が、タレントさんを見てそのタレントさんが自分の言葉を発してると、ちょっとびっくりしちゃったりすることってまだまだ日本だとある気がするんですけど。当然、皆さんはものすごい美しいですけど。今日も(SKY-HIは)目が大きくてクリクリだなと思いながらお話してますけど。

(SKY-HI)無精髭、生えてますけど?(笑)。

(辻愛沙子)でも当然、当たり前ですけどみんな人間で。それぞれに意思があって。それぞれ、社会に対して思ってることも、人によりますけど、当然あるんで。そういうことを私たちも……「私たちと同じように、思って考えているんだ。だから私たちも一緒に考えていかなきゃ」っていう風に、声を上げていくことの勇気も……逆に言うと、私たちが思ってる以上に自分たちの影響力に対する責任とか、おそれってきっとあるので。そういう表明をしてくれてる表に立っている人たちを応援していくというアクションも含めて。今、もうすぐ統一地方選もあるので。それを改めて考えられたらなと思いまして選曲を……。

(SKY-HI)そうなんです。この文脈で。そのために話を振っていたんですよ(笑)。

(辻愛沙子)ということで、聞いてください。RHYMESTERで『The Choice Is Yours』。

RHYMESTER『The Choice Is Yours』

<書き起こしおわり>

タイトルとURLをコピーしました