ゆずとCreepy Nuts 楽曲制作のスランプを語る

ゆずとCreepy Nuts 日本の楽曲の情報量詰め込みすぎ問題を語る7 オールナイトニッポン

ゆずのお二人とCreepy Nutsのお二人が2023年2月19日放送のニッポン放送『ゆずとCreepy Nutsのオールナイトニッポン』の中で楽曲制作時に陥ってしまうスランプについて話していました。

(北川悠仁)じゃあ、続いての話題、読みましょう。「世界から消えたら困るものは何ですか? その質問に全世代、20代から60代で1位になったのは『家族』。以下、2位が『お金』。3位が『言葉』の順だったのに対して、20代では1位『インターネット』、2位『お金』、3位が『家族』だった。皆さんが世界から消えたら困るものって何ですか?」。

(岩沢厚治)急になんか、ねえ。

(北川悠仁)スピリチュアルな感じ(笑)。でも、すごいね。1位がインターネットなんだ。

(DJ松永)じゃあ、北陸新幹線の途中、ヤバいじゃん。上越新幹線の途中とか、あの山の中を通る時、もう全員終わりじゃん(笑)。

(R-指定)世界で一番大事なものが消えてまう瞬間(笑)。「ああ、消えてる! ヤバい!」って(笑)。

(DJ松永)「圏外……圏外だーっ!」って(笑)。

(北川悠仁)俺のベッドルーム、時々ないね。世界で一番大事なものが(笑)。

(DJ松永)ヤバいじゃん(笑)。新幹線のWi-Fi、めっちゃ弱いからね?

(北川悠仁)そんなに違うんだね。

(R-指定)でも、どうなんでしょうね? 俺はでも、結構「言葉」かもわかんないっすね。まあまあ、やっぱり自分がラップしてるっていうのもあるんすけど。とにかく言葉ありきで。文明も文化も、意思疎通も図ってきたから。他のやり方が、その動物的なね、なんか感覚でっていうのはあるかもわかんないですけど。現時点で俺、言葉がなくなったらムズいっす。世界から言葉という概念が消えたら。

(DJ松永)「ニャーニャー」とかかな? やっぱり。それって、ちょっと語彙が少ないって思う? 「こいつら、語彙はニャー1個だな」って。

(R-指定)もしかしたら、俺らが未熟なだけで、もっと無数の、その「ニャー」の強弱によって、とか。

(DJ松永)そうか。だから「ヤバい」の一言をとってみてもいろんな捉らえ方があるように。

(R-指定)うんうん。あるんやと思う。でも、あるんやろうけども、それでやってきてないから、今それが消えられたら、それを1から学んでいかなあかんから。

(DJ松永)「ワン」は?

(北川悠仁)いや、何の話?(笑)。

(DJ松永)あいつら、「グルルルルッ」とか……。

(R-指定)「ウーッ」とかもあるし。

(DJ松永)「ワンッ!」って。

(R-指定)その「ワンッ!」っていうのも、ただの威嚇やとか。本気で切れてる「ワン」もある。「ワンッ!」とかもあるみたいな。

(DJ松永)っていうか、あいつらも俺らが聞き取れてないだけで、めちゃめちゃ細かい言語があるかもしれないよな。

(R-指定)でも、今はやっぱり言語っていうものが消えたら、結構困るかもな。

(北川悠仁)その、スランプってないの? その「世界から」っていうよりは、「自分の中から」言葉が消えるというかさ。俺たちもソングライターで、曲を作ってるから。曲ができる時もあれば、できない時もあって。でも、なんか音は止まらないっていうかさ。まあ、口笛でも鼻歌でも。でも言葉ってさ、またちょっと……リリックというのはまた違うじゃない?

(R-指定)違いますね。やっぱりね。

(北川悠仁)それは、なんかないの? 「ああっ! あれ、今まで出てきていた言葉が出てこない!」とか。

(R-指定)全然ありますね。あるし、割とラッパーの作詞ってドキュメンタリーな感じで。だから、自分の今、感じてることとか、自分の変化した状況とかをその都度その都度、曲にしていくと、なんやおる? そこまで作り終わった段階で、また次の曲を作るってなった時に、もう変化が別にない。だから、その出てくるんですけど、「これはさっき言ったな」とかっていうことにはなったりもしますし。で、なんか別の手法で作ろうかなと思っても、フィクションのものを作ろうとしても、「ああ、フィクションにしても、俺の言葉じゃなさすぎるな」みたいな。出ては来るけど……みたいな。

だからその、自分の話じゃないにしろ、自分の言葉にするっていう。このニュアンスとか味付けが難しかったりするな、みたいな。だからやっぱり出てこない時とかは、全然ありますね。「ああ、なんにも浮かばへん」みたいな。

(北川悠仁)そうだよね。

(R-指定)なんか出てきてはいる。ノートに言葉は書いている。ただ、それはもう無言と同じみたいな。「これは全然、俺の言葉じゃないし……」みたいな。それは全然ありますね。

向き合うノートが大海原に見える

(北川悠仁)あるよね。本当に俺もノートに向き合った時に、それが大海原に見えたもんね。取り付く島もない大海原に。もう、どこに行けばいいのかわからず、そこにただ浮いている。で、浮いていて、そこで漕ぐことはできるんだけど。でも、俺は進んでるんだか、進んでないんだか……って。

(R-指定)そうなんですよね。「俺は」とか「あの時」とか書いても「で、ここからどうなんねん?」みたいな。

(DJ松永)そういうスランプに陥った時って、どうやって解決するんですか?

(北川悠仁)でもね、やるしかない。

(DJ松永)そうなんですね。とにかく泳ぐしかないんですね。

(北川悠仁)泳いで、泳いで。時には沈んで……泳ぐことで、人って沈んでいくじゃない? でも、その沈んだ先に……やっぱり底ってあるんだよね。なんか、どっかで。それである日、トーン!って出れる瞬間があるから。やっぱりそれって、エグいぐらい何度も経験があって。で、たぶん言葉を扱っているけども、自分自身の存在価値をやっぱり、音楽っていうか。そこに置いちゃってる部分があるから。それはとてつもなく恐ろしいことっていうか。ねえ。「自分が存在することが、いいんだろうか?」みたいなところまで行っちゃうというか。

(DJ松永)めっちゃあります。その、自分のアイデンティティーがもう、音楽だから。それがうまくいかなくなった日には、もう自分の存在自体が全否定だから。「ああ、もう生きている価値がないな」ってぐらい、行っちゃいますね。

(北川悠仁)行っちゃうよね。ずるいところもあって。なんか「俺ってしょうもない。俺ってこんなんだけど、でも、音楽はある」みたいな感じですがっている部分もちょっとあるから。

(DJ松永)ありまよね(笑)。その、みんなが守らないといけない、社会的ないろいろなルールやマナーだったりとか。それは人間的に全然、あれなんだけども。「まあ、でもいいや。俺には音楽があるからな」っていう瞬間もね、ずるいけどあったりするっていう。

(北川悠仁)だから、余計にね。

(DJ松永)いろいろちょっと、その中でのバイオリズムが激しいですよね。こういうものを作っていると。

(岩沢厚治)だから1回、歌詞を書き終わって。自分の中で1回、「で?」って聞いてみるの。それで「で?」って言われてすげえ怖くなるんだけども。「『で?』って言われたらこれ、『で?』だよな……」って1回、思うんだけども。でも1周回って、その「で?」をね、もう1回「で?」で返せる時があって。

(R-指定)フハハハハハハハハッ! ああ、なるほど!(笑)。

(岩沢厚治)「で?」「で?……いやいや、で? だよ!」って。で、なんだろう? 元々の自信というか。「ああ、これは自分の言葉だ」っていうものに返ってくる時もあるかな。

(R-指定)なるほどなー!

(北川悠仁)夜中のラブレターもあるよな。

(岩沢厚治)そう。夜中のラブレターに近いかも。

(北川悠仁)ねえ。夜中1人でさ、えらい盛り上がっちゃって。「お前を愛してる!」みたいな。「俺はもう、世界を敵に回してもいい!」なんて言って。

(岩沢厚治)朝、見たらめちゃくちゃ恥ずかしいっていうね(笑)。「俺は何を書いてるんだ?」っていう。

(北川悠仁)でも、それも含めてありっていう時もあるしね。なんとも言えないね。

(DJ松永)そうなんですよね。いやー、あの時の自分は昼間は引き出せないですもんね。勇気あるじゃないですか。夜中の自分って。

(北川悠仁)そうなんだよ。それもそれであれだっていう。

(DJ松永)昼間だと冷静すぎて結構、保守的な制作になりがちだけど。夜中のハイなあの時の俺は「そんなに青臭いのを……」とか「そんな冒険、よくするな!」っていう表現とかをできたりするから。そこが……でも両方、あるのがよかったりしますよね。

(北川悠仁)そうなんだよね。だからその「で?」も大事だし。「で?」を飛び越えちゃう、なんか言う若気の至りもある種……。

(DJ松永)でも、それを忘れるとかなり危険ですよね。そうなってくると、「そもそも表現活動自体がいらないんじゃないか?」っていうところまでなってくるような気がするから。
(北川悠仁)そうだね。これはね、鍋をつつきながらする話じゃない(笑)。

(DJ松永)鍋が終わって2軒目、3軒目、4軒目って……。

(岩沢厚治)そうだね。これはすごく照明の薄い、暗いバーだね(笑)。

(DJ松永)なんかすごい実体のないもので俺はお金をもらって生活しているなって思う時があるから。音楽って。しかも音って、波形ですからね。

(岩沢厚治)波形だね(笑)。

(DJ松永)波形じゃないですか。なんかこう、絶対に人に役に立つとか、絶対に人に必要なものだっていう必然性が自分の中でもあまり説明できなくて。「うわーっ!」ってなる瞬間はあるでんすけど。危険だなと思いますね。そうなった時に。

(R-指定)危ないな。

(DJ松永)危ない、危ない、危ない。

過去の自分の矛盾に気づく瞬間

(R-指定)でもほんま、なんでしょうね? しかも、すごい自分のことを書くから。なんかね、やっぱり結局そのさっきの「で?」の話じゃないですけど。昔書いたことが一周回って自分に刺さってきたりとか。昔、自分が立てたその中指が自分に向いてたり、みたいな時に「ああ、ヤバッ!」みたいな。自分の矛盾にいっぱい気づいていく。で、もうすごい落ち込んじゃうみたいな。「ああ、そもそも俺がやってきたことは全部、間違っていたかもしれん。言ってきたことを全部、取り消したい」みたいに思ったりとかして。すごい底の方にグーンってなる時とかも、全然ありますね。

(北川悠仁)めちゃくちゃあるよね。「お前が中指を立てところに俺は今、いるな」って思ったり。でもね、それはね、開き直るしかない。

(DJ松永)そうですよね。

(北川悠仁)だって、知らないんだもん。知らずにやってたこと。その勇気と、今知って、それでも進む勇気って、比べるものじゃないけど。なんか、俺は……たしかにそうなんだよ。「お前の中指の気持ちもわかるけど、でも中指だけじゃならないものもあって」って。でも、そこでまた進むっていう。そこのなんか、一歩踏み出す勇気みたいなものもある気がするんだよね。なんだ、この話?(笑)。

<書き起こしおわり>

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