土井善晴さんが2022年12月20日放送のニッポン放送『星野源のオールナイトニッポン』の中で星野源さんと「料理は哲学」という考え方について話していました。
(星野源)うんうん。続いてのメールです。「土井さんのお話を聞いて、言葉に対する受け皿の大きさがすごいなと思いました。たくさんの言葉を受け取れるからこそ、人に話す時の言葉の盛り付けが美しくて、どんどん引き込まれました。土井さん、素敵なお話をありがとうございます」。
(土井善晴)ありがとうございます。
(星野源)土井さんも本を書かれたりとか、「料理は哲学です」とおっしゃっていて。その、料理を介してというか、いろんな人にお話を聞きに行ったりされてるじゃないですか。それで、その養老孟司さんとの対談も見させていただいたりしたんですけども。そこで、なんていうんですかね? 料理だけを作るというわけでもなくて、それを橋渡しとして、いろんな人と話して。それでその哲学を深めていくみたいなことをされていて、すごく面白いなと思ったんですよね。
(土井善晴)料理はやっぱり人が幸せになるためにあると思うんですよ。だから料理はしないわけにはいかないって思ってたし。そしたら、その料理から人間が考えられるっていうことなんですね。だけども、料理って食べて美味しいとか、まずいだけとか。健康になるとか、コミュニケーションになるといった、そんなことは料理の持ってるもんのごくわずかなもので。料理をやっていたら、自分の感性とか、自分自身の落ち着きとか、人に対する愛情の受け渡しとか。いろんなものが含まれる。教育とか経験とか、もう人生の土台を作る全てのものが料理の中に入ってるわけですわ。
だから、その料理っていうようなものをとにかく考えていくというと、こと幸いに和食っていうようなものって大昔に人間が人間になった瞬間から、今とほとんど変わってないんですよ。だから和食を考えることで、今、このちょっとなにか「えっ?」って思うような違和感のあることを、「なぜ?」っていう理由が生まれてくるんですよ。人間がなにかを思って変えたこというのは、ここになにか、意味が出てくるんすよ。だから、その本来まっすぐ一直線のものが、いがまないように。できるだけ、お天道様と自分とまっすぐっていうようなものが正しさとか、美しさとかを生むものだ。
だから、その理由っていうようなものがきちっと、やっぱりお天道様が作った秩序の中にあるし。台所の仕事が今の地球の問題と関係してくるわけじゃないですか。そうしたら、もう地球環境の問題まで自分がすることで、地球をいたわることになる。自然を大事にすることになる。家族を思いやることになる。だから、料理する人がやっぱり大事。調和を整えてくれてるんやと思うんです。
だからね、ご飯を食べる人ばっかりやったらね、あかんのですよ。だからお腹すいたら人間って、機嫌が悪くなるし。お酒飲んだら酔っ払うわけでしょう? だから、精神と肉体いうのは並行してるんですよ。だから、お腹すいた人、食べるだけの人は既に冷静じゃないわけで。そこに意見を求めて、その人が主役になったら……料理する人が主役になれいう話ですよ。
(星野源)食べる人ではなくて、料理をする人が。うんうん。
料理をする人が主役
(土井善晴)そうそう。そこに自分の健康も考えてくれる人がいてるっていう。だから料理をする人を大切にしてくださいっていうことです。
(星野源)なるほど。もう、ちょっといろんなお話を聞けたし。ずっとお話をしたいんですけど、お別れの時間になってしまいまして。本当に深夜ですけれども、来ていただいて本当にありがとうございました。いろんなお話が聞けて、嬉しかったですし。自分のリスナーにも、土井さんのお話を聞いてもらえたのがすごい嬉しいというか。
(土井善晴)いやいや、なんかえらい、そんなこと言うてくれはって。もう。ありがとうございます。
(星野源)あとは、その養老孟司さんのところで振舞ってらっしゃったおはぎが美味しそうすぎて。調べたら作り方も載ってたんで、いつか作ってみようかなって(笑)。
(土井善晴)おはぎとかね、誰でも作れるんですよ。お赤飯だってできる。やらない人が「できない」とか「難しい」とか言うだけで。とにかく、やればできるんすよ。
(星野源)そうですね。ちょっとやってみようかなと。
(土井善晴)そのね、また晴れの日の料理いうたら、割と日常的な、感覚的なもんじゃなくって。量が多くなったり。晴れの仕事というのはある程度、レシピ通り作ったらできるっていう。それって綺麗にひとつずつを整えている。晴れの料理いうたら、そうです。おせち料理もそうですけども。それは、自分で作ってきちっとやっていく喜びいうのがあるんですよ。
(星野源)そっちの喜びがね。
晴れの日の料理と日常の料理
(土井善晴)だから、感覚で作る日常のお料理と、きちっと作りたいっていうか、そういうようなものは実はできる時の自分の気持ちの入れ方も違うんですよ。ざっと絵を書く。スケッチする時の気持ちと、きちっと線をまっすぐ引いて、綺麗に精密画でも書こうかいうような気分って、全然違うと思うんですね。本画と下絵とは、違うじゃないですか。そのぐらいの感じなんですよ。
(星野源)なるほど。分けて考えてると。
(土井善晴)分けて考える。だからその時に、それはそれで面白いんですよ。
(星野源)ちょっとチャレンジしてみようと思います。
<書き起こしおわり>