土井善晴さんが2022年12月20日放送のニッポン放送『星野源のオールナイトニッポン』の中で『おかずのクッキング』最終回でだし巻き玉子を作った際に「簡単にはできませんで。やれるもんならやってみてください」と言ったことについて話していました。
(星野源)足立区の方。「僕は『おかずのクッキング』の最終回でだし巻き玉子を作った際、『簡単にできませんで。やれるもんならやってください』と言った土井先生に衝撃を受けました。最終回でだし巻き玉子を作った理由があったら教えてほしいです」。そうなんですね。これ、僕は見れてないんすけど。「簡単にはできません。やれるもんならやってください」って、最高ですね(笑)。料理番組で。でも、本当に難しいですもんね。
(土井善晴)「こないしたら簡単や」言うばっかりやったら……簡単なことって、別にそんなにしたいこと、ないんですよ。「難しいことをできるようになりたい」いうのが、やっぱり人間やったら、あるんですよ。だけどもそれを最初から「難しい」と言われると、特に子供とかは「よしっ!」って思うんです。
(星野源)「やってやるぞ!」と。
(土井善晴)「やってやるぞ!」って。なんかわかんないけれども。なかなかできへんでって。そやけども、できたらすごい褒められたり。自分が「やったー!」いうのがあるから。それが、やっぱり物を作る楽しさいうのは、簡単すぎたら面白くない。やっぱり「ちょっと頑張ったら、行けるかもしれない。もうちょっと練習したら……」って。それこそ、マラソンで4時間を切れるかもしれないとか。そういうようなことって、あるじゃないですか。目標って。
だけどその目標いうのも、本当にできへんのですよ。でも、できないけども、やっている。それをやっていて、また違うこともやっていて。1週間後、ちょっとやってまだあかん。でも1ヶ月ぐらい……全然しなくても、1ヶ月後に。そういうように他の経験をすると、1ヶ月後に「あれ? できた!」って。そうしたら、それは自分の成長が見えるんですよ。
(星野源)そうですね。
(土井善晴)これはね、やっぱりね、「誰にでもできますよ」っていう話じゃなくって。「やれるもんなら、やってみなさい」って言う方が、なんか面白いじゃないですか(笑)。
(星野源)面白いっすね!
(土井善晴)「そんな、簡単にはできるわけないねんで」って。
(星野源)そういうところが、すごく好きです。なんか、誰にでもできるように……「できますよ。あなたもやってみてください」じゃなくて、「やれるもんなら、やってみなさい」っていう。なんか、僕が土井さんのすごい好きなところが、「何も努力しなくていいんですよ。もうそのままで、あなたは十分ですから」みたいなことじゃないのが好きなんです。なんか、もちろん「本当に好きにしたらええんです」っていうことはおっしゃるけど。でも、それはそういう風に人間を成長させないで止めさせて、その人からお金を巻き上げるみたいな人って、いるじゃないすか(笑)。
そういう人の真逆っていうか。なんか、その人がより良くなるためにそれを言っていたりとか。それこそ食材っていうものが、その人の前に食材があって。「その食材を大事にしてくださいよ」っていうようなこととか。なんか、その視点が全然違くて。それこそ、「やれるもんなら、やってみてください」っていうのも、「だって、やれたら面白いじゃないですか」っていう思いから言っている。そういうところがすごく好きなんですよ。
(土井善晴)それができたら、変わりますよね。
(星野源)そうそう。ある種の成功体験ですよね。で、それは一生物じゃないですか。
成功体験は一生物
(土井善晴)そうそう。1回できたら、もう一生できるんですよ。料理って。自転車に乗れるようになるみたいな話やからね。だから、「本当に疲れていて、嫌な時に料理、どうしたらいいですか?」って言われても、「いや、疲れてるなら、寝てください」っていう(笑)。寝といたらええねん。なんで、そんな無理してお料理すんねん? しんどい時は、何も食べないで。胃に負担かけないで。回復・治癒に向けてください。寝てたらええねん。ずっと寝てたよろしい。でも、あんた、起きるでしょう? そのまま寝てたら、死ぬんやでっていうね。起きるのは、なんで起きたん? お腹、すいたでしょう?って。
で、そのお腹が空いた時にどうするの? その時、まあ、言うたら簡単に、なんか出来合いのものを買うこともできるけども。その時に「起きた」っていう。「あんた、生きようとしてんねんやろう? その時に、頑張ってお料理したらそこに、ものすごい意味がある。起きたいうことは、料理しよう思うてあんた、起きてんねん」って。だって、人間は料理する動物やから。料理しないで食べられるものって、本当に果物とかはあるけども。それは限られてるわけじゃないですか。だけけども、やっぱりもうちょっと違うもの……穀物とか、食べたいわけですわ。
それを食べよう思ったら、やっぱり火を通さなあかん。で、ご飯を炊く。味噌汁を作る。これはできるよ。だって、お腹すいてるから。「生きていこう」と思ったんやから、あんたら立ち上がって、味噌汁を作ったらええって言ってるんです。
(星野源)そうですね。「なにを作ろう」じゃなくて、そこはもう、味噌汁を作ればいいんですね。
(土井善晴)そうそう。そして、味噌汁には自分を傷つけるようなものが何にもないいうのが、すごいじゃないですか。すごいんですよ。本当に。
(星野源)なんか外食も外食で楽しいし、美味しいから好きなんですけど。でも、そればっかりしてた時に、食べているんですけど、胃の中から動かないみたいな印象がある時があって。「入っていかない」みたいな。でも、その中で味噌汁を朝、作って食べるっていう。で、その作り方も本当に野菜とか。あと、さつま揚げがあったんで。さつま揚げをちょっと細かくして入れて。味噌を入れて、ちょっと煮て。「卵、入れたいな」と思って、卵をちょっと入れて、半熟にして……みたいな。なんか、その場で思いついたことをただただ。でも、破綻しないように足していってやった時の体への染み込み方っていうか。
(土井善晴)そうなんですよ。
(星野源)それこそ、さっきおっしゃってたみたいな滑り台を滑るみたいな感じで。「うわーい!」みたいな感じで体に入っていく感じがすごい、すごいわかります。だからなんか、そういうのはあるんだなっていう感じですね。
(土井善晴)そうですね。だから人間ってね、「何を作ろうか?」って思うのは結構、ストレスなんですよ。「なにを作らなあかん」って……「毎日、同じ?」とか言われて。そんなことをずっと、今までは言われ続けてきたわけですよ。だけども、そこが本当に、本当に苦しいことですよ。だって仕事場に行って。「今日は何をするか、自分で考えろ?」って言われてるわけでしょう? 何していいか、わかんないじゃないですか。それって、ありえなくって。それを、することが決まっていたら、すごい楽でしょう? ねえ。もう、考えなくていい。だから、考えなくていいんですよ。自分の毎日しなくてはならないことに負担があったらいけないんですよ。だから、なんにも考えないでまず、手を動かしてたら味噌汁ができるわけですですよ。なんにも考えなくても。
(星野源)だから、あれですよね。「よーし、じゃあ、味噌汁を作ろう」と思って。「何を買えばいいんだろう?」みたいにたぶんなると思うんですよ。でも、それももう、なんでもいいんですよね? なんとなく、スーパーとか八百屋さんに行って。「食べたいな」と思ったものをランダムに入れていって。
(土井善晴)それをね、選ぶ時に「ああ、今日はいいお天気やな」とかね、「今は寒くなったな」とかね。そしたら、寒い季節に白菜とかほうれん草とかネギとか。地面の下にあるイモ類とか、根菜類が美味しい季節やいうことを、季節感いうのを持っていたら……というか、「自然に聞け」いうことですよ。そしたら、あのね、レシピとか言うと書いてあるでしょう? 「挽肉に玉ねぎ」とか。そうすると、挽肉と玉ねぎしか見てないんですよ。レシピを持って買いに行くってなると。
そしたら、そういう「何を作ろう?」っていう考えなくマーケットやスーパーに行ったら、こんなにたくさん野菜があることがわかりますよ。材料がこんなにたくさんあるということ。でも、レシピやなにかに頼ると、それを見てないんですよ。必要なことしか見ない。でも、広がりがあるし、そこで自然に聞いて……そしたら、それを食材として買っておいたら、もう何も考えないで料理するんですよ。日常はそれでいいんですよ。本当に、ストレスゼロ。味噌汁を作ったら、もうOK! ノルマ完了!っていう状態にしておくでしょう?
味噌汁を作ったら、もうOK! ノルマ完了!
(土井善晴)だけども、自分もなんか食べたいなとか、子供に食べさせたいなと思うのは、それが実現できるのは余裕のある時しかないんですよ。時間、気持ち、お金に余裕がないと、そんなこと、できないんですよ。実際に「やれ」言うても。だから、基本は何もしなくてもいい。だけども、それをする時。できる時はすると、なんでも自分の意思で「これを作ろう」と思ったこと。「これを食べよう」「これを食べさせてやろう」と思ったこというのは全部、それ以外の料理は楽しみになるんですよ。
(星野源)なるほど。でもそれはやっぱり味噌汁……一汁一菜というスタート地点があって。そこからですよね。
(土井善晴)それが基本として、土台としてあって。プラスアルファは全部、自分の意思で作るもの。自分自らが行うことは、全て楽しいこと。
(星野源)うんうん。楽しいこと。
(土井善晴)楽しいこと。「やらされてる」んじゃないですよ。自分でやることは、楽しいことですよ。
(星野源)ちょっと、もう……楽しい!
(土井善晴)本当にそうなんですよ。
(星野源)ギャラクシー賞です!(笑)。
プロの実力を見せつけ、最終回にして、ついに視聴者を置いていった土井善晴先生。#だし巻き卵#おかずのクッキング#最終回#お疲れ様でした#土井先生ありがとう pic.twitter.com/LmEG18SF2x
— ざわおオンザマイク (@Zawao_OnTheMike) March 25, 2022
<書き起こしおわり>