星野源さんが2022年5月3日放送のニッポン放送『星野源のオールナイトニッポン』の中で亡くなった小坂忠さんの楽曲を3曲、選曲して紹介していました。
(星野源)それでは、今日の1曲目は……なんだろうな。たくさん腰を動かして、ゆらゆら深夜に踊っていただければ。小坂忠『ほうろう』。
小坂忠『ほうろう』
(星野源)お送りしたのは小坂忠『ほうろう』でした。もう本当、いつ聞いても最高ですね! 高校生の時から何回聞いただろうか。本当に大好きです。
(中略)
(星野源)じゃあ、ちょっとここで1曲、お送りしましょう。小坂忠『しらけちまうぜ』。
小坂忠『しらけちまうぜ』
(中略)
(星野源)じゃあ、曲に行きましょうかね。僕のこの曲についての思い出の話をしましょうね。僕はこれ、高校生の時に聞いて衝撃を受けたんですよね。前にもかけたことがあるし、事あるごとに「好きだ」と言っているんですけども。この曲は小坂忠さんの曲なんですけども、作詞作曲は細野晴臣さん。僕のお師匠さんの細野さんで。僕は思春期とか中高の間にいろんなルサンチマンみたいなものを抱えつつ。自分の素直な思いを言えないみたいな子供だったんですけども。だから、ものすごいどす黒いものが溜まっていたわけです。
で、その中で激しい音楽……まあメロコアだったり、ハードコアだったり。「うおーっ!」みたいな。そういう音楽を好きになって、ライブとかでやって暴れたりとかしたかったんですけど。なんかね、そういうところが自分の当時のダメなところだったと思うんですけども。「自分には似合わないな」って思っちゃったんですね。別にそんなの関係なくやればいいのに。「似合わないな」って思っちゃって、やれなかったんですよね。
でも、それが功を奏したのかなんなのか、わからないですけども。その中で、いろんな音楽と出会っていく中で細野晴臣さんの『HOSONO HOUSE』というアルバムに出会って。「これだ!」ってなるんですね。で、その後にこの小坂忠さんの『ありがとう』っていう曲を聞いて衝撃を受けまして。で、『ありがとう』っていう曲だからなんかすごくほんわかした歌なのかな?って。で、そのレコードジャケットもすごい、ほんわかしたジャケットなんですよ。
で、すごく素敵な言葉が書いてあるのかなって思ったら、背筋が寒くなるぐらいの皮肉だったんですよ。で、それに僕はすごくオルタナティブとパンクを感じて。なんていうか、パンクっていうものはいろいろな種類があるけれども。音楽の種類……「激しい音楽じゃなくてもパンクってできるんだ」って思ったんですよね。その中で、だんだんと「激しい音楽じゃない。だけど、過激であるっていう。そういうことは自分ができるんじゃないか。それは自分に合うんじゃないか」っていう風に思い始めて。
それは自分が歌詞を書いてみたら、すごく自分の色みたいなものを出せた気がしたんですよね。なのでこの曲は僕の今の特に作詞において、ものすごい影響を受けていて。その中で怒りとか悲しみとか皮肉とか。そういったものを本当に笑顔で歌っているようで。それがなんか本当にものすごい鋭いナイフを持ちながら笑顔で歌っているみたいな、なんかそういう楽曲なんですよね。僕はそれがすごく好きで。この曲をかけたいなと思っております。聞いてください。小坂忠で『ありがとう』。
小坂忠『ありがとう』
(星野源)そんなわけで、だから僕の学生の時になんか似合わないなと思ってやらなかったのは正解だったと思うんですけどね。だから今、思うとね、「なんでもやればいいじゃん」って。たとえばこの番組に送ってくれるリスナーとかにも「全然気にせずにやればいいよ」って言うけど、意外とそういうものが自分の色を出すきっかけになったりとか。他にはないものを……自分の歌詞っていうのは自分にしか書けないものを書きたいと常々思っているので。そういうものを作れるように、なんていうか、自分の耳だったり、言葉の土を非常に耕すきっかけをくれた1曲ですね。それがあったからこそ、自分の田んぼを作れたというか、なんかそんな思いがあります。小坂忠で『ありがとう』でした。
<書き起こしおわり>