星野源と海野雅威 ロイ・ハーグローヴを語る

星野源と海野雅威 ロイ・ハーグローヴを語る 星野源のオールナイトニッポン

ジャズピアニストの海野雅威さんが2022年3月15日放送のニッポン放送『星野源のオールナイトニッポン』にゲスト出演。星野源さんとロイ・ハーグローヴについて話していました。

(星野源)で、そこから東京芸大に行かれて……それもピアノでっていう?

(海野雅威)僕は作曲をやっていて。ジャズのアドリブ……即興演奏は作曲に通じる部分があるんで。ピアノ科の人なんかは根を詰めて1日に12時間とか演奏練習するような感じですけど、僕はそうじゃなかったから……。

(星野源)ああ、そうなんですね。へー! で、そこから20代の後半ですよね? ニューヨークに移ったのは。

(海野雅威)はい。大学在学中からジャズピアニストとして、それこそ埼玉大宮とか結構、行ったりして演奏してたんですよ。駆け出しの頃に。

(星野源)へー! そうなんですよね。大宮とか、あるんですよね。

(海野雅威)それでちょうど10年、日本で活動して2008年、僕が27歳の時だったんですけど。渡米を決意して、ニューヨークに渡りました。

(星野源)そうか。それはなんか、気持ちの変化というか、あったんですか?

ニューヨークに渡った理由

(海野雅威)やっぱりこう、わかった気になるっていうのが僕、自分自身に嘘をつく感じになるのが非常に嫌なんですよね。で、いくら10年、日本でやっていても、もっとなんかジャズをさらに理解するためにはなんか、演奏をする時に人種も民族も年齢も性別も超えて演奏できるのがジャズなのに、日本の中で日本のミュージシャンとだけとやっているのはもったいないかなっていうのもあったし。あとは現実に自分の実力が通用するのかなって思いもあったし。それでジャズの生まれた文化に触れるっていうことでもっとそれを深めていきたいなという思いが強かったです。

(星野源)いやー、素晴らしい。なんていうか、日本でジャズってもちろん大好き人は山ほどいますけど。なんていうか、街にめちゃめちゃあふれているっていうわけでも今はないと思うので。やっぱりそのニューヨークだと本当に街にあふれているというか。毎日、クラブが開店していて、そこに行くといろんなミュージシャンがやっていて。そこに自分も飛び入りで入れたりとか……。

(海野雅威)だからこの間の中村八大さんの『おんがくこうろん』を見ていて、あそこでなんか自分のことにも重なって。知り合いもいなくて、英語もできないのに「ちょっと弾かせてくれ」って行くところとかは……八大さんの頃はもっと日本人が珍しい時代だから。さらに勇気があったと思うけど。僕もハーレムに住んでいたし。

(星野源)ああ、そうですか! そういう共通点があるんですね。それで僕、ロイ・ハーグローヴがすごく好きで。

(海野雅威)ああ、ありがとうございます(笑)。

(星野源)そうなんですよ。それで、そのバンドにも参加されて。クインテットに参加されて。いやー、本当に素晴らしいキャリアというか。

(海野雅威)いや、夢が叶ったというか。小さい頃から聞いてたロイとかジミー・コブとか、そういう人が実際に僕を必要としてくれるってなった時はやっぱり夢のようでしたね。本当に嬉しかったし。で、ヴィレッジヴァンガードとか、そのジャズの聖地で演奏をした時もやっぱり本当に嬉しかったけど。ちょっとその本の話するとね、なんかすごい感じたのはやっぱり源さんも六畳一間で作曲をされて。貧乏だったけど「この思いが絶対通じるはずだ。未来に通じるはずだ」って。

そこから、横浜アリーナで1万人以上の前で行った時でも、大きいステージだけどその時の気持ちと繋がっていたっていう……僕もまさにそれで。ロイといくら大きい会場、フェスティバルを回っても、ヴィレッジヴァンガードで弾いても、なんか常に自分の子供の頃、ジャズが最初に好きになった時の感じを覚えてるんですよね。そこが繋がったなって。「ああ、なんか結構似たことを感じていらっしゃるな」と思って。嬉しくなっちゃって。

(星野源)ああ、嬉しい。音楽ってやっぱりたくさんの人に向けてやるものだから、やっぱり華々しい部分もすごくあるし。それこそ、いろんな人の視線を集める仕事でもあるとは思うのでそういう印象になるとは思うんですけど。やっぱり出発点ってひとりぼっちですもんね。自分と楽器と向き合っている時間が圧倒的に長くて。自分と……なんかお客さんと向き合う時間より、やっぱり楽器と向き合う時間の方が圧倒的に多いじゃないですか。で、そのうまくいかないとか、僕だったら曲が出ないとか。なんか、そういうつらい時間を一緒に過ごすじゃないですか。楽器とかと。だからそのひとりぼっちの感覚っていうのって、やっぱりステージ上に出ても僕はすごく大事で。なんかそれをそのままライブでいろんな人に見てもらうっていうのが結構気持ちいい瞬間ではあるんですけども。やっぱりそういうのがあるんですね。

(海野雅威)ありますね。裸っていうか、素の部分をさらけ出す姿をお客さんも見られた時に一番感動するし。なんかかっこつけて「お客さんのために演奏する」っていうのはちょっと、エゴが出てきちゃったりね、余計な要素が混ざると思うので。すごいピュアに、前向きにね、ミュージシャンとして自分と向き合うっていうことが……大変なんですけど。素晴らしいアーティストはみんなやってきてることだから。

(星野源)それこそロイさんって、スタイルが……なんていうんだろう? すごく厳格な感じがするっていうか。それこそ、ちょっとインタビューとかで読んだぐらいの知識しかないですけど。バンドのみんなにもそれを求める感じがあるなとは思っていて。その中で、そのスタイルだったり、品だったりとか。そういうものを海野さんが中に入ってやってる映像とかを見ると……でも、人に見せるっていうか、やっぱりそのロイの方をずっとニコニコ見ながら。でも、なんかその笑顔の裏側がすごくスリリングなんだろうなっていうのは思いながら。

スリリングなロイ・ハーグローヴバンド

(海野雅威)ああ、ロイのバンドは本当にスリリングで。彼は何も、曲も教えてくれないしないし。リハーサルもないし。本番でいきなり知らない曲をやって。で、たまに冗談で評価をたまにするんですよ。「B+」とか「C+」とか(笑)。

(星野源)アハハハハハハハハッ! それは曲が終わった後とかに?

(海野雅威)終わった後にニヤニヤしながら。「お前、この曲を全然キャッチできなかったな」って。

(星野源)ヤバい(笑)。

(海野雅威)でも、「そんなに言うんだったら最初からリハしてよ……」って思っていた時期もあるんですけど。でも、それは逆に「これは僕ができるって期待をしてくれてるんだ」っていう信頼を感じて。

(星野源)信頼するからこそですよね。

(海野雅威)そこまで耳をフルオープンにして曲をキャッチしようと思ったことは……人生であの時が最高なんで。それで鍛えられました。

(星野源)そういうあの映像とかもYouTubeに、ラジオのライブとかがいっぱい残っているんで。ぜひちょっと見てください。あまりに最高なんで。

(海野雅威)ありがとうございます!

<書き起こしおわり>

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