沖井礼二さんが2022年1月11日配信のSHOWROOM『豪の部屋』にゲスト出演。吉田豪さんと竹達彩奈さんへの楽曲提供などについて話していました。
(吉田豪)さっき、そのバトン部で肺活量だのなんだのまで考えたって言ってましたけど。声優さんに作る場合っていうのは何か考えることがあるんですか?
(沖井礼二)まあ僕、声優さんで最初にやったのは竹達さんでしたけども。普通のボーカリストの人とはやっぱり喉の使い方、声の作り方が違うんですよね。なんか、僕はわりとボーカルの人のローの成分っていうものを膨らましてっていうのはわりと好きだったりとか。たとえばCymbalsとかにしても、だんだんだんだん初期に比べてキーが下がっていってるんですよ。で、最後のアルバムの頃は結構土岐の下の部分をうまく出したいなと思ってやったりとかしたんですけども。
なんだろう? 竹達さんの声とかって、声優として鍛えてきた喉のあり方っていうのは歌手が鍛えるの喉のあり方と違うから。たとえば、歌にする時に滑舌がよすぎるのっていうのはあんまりきれいにならなかったり、滑らかにならなかったりするとか。あと、まあハイの成分がとても強くって。グロッケンとかピッコロみたいな。で、そういう声が馴染むようなメロディー、曲にしなきゃなって最初、そこはすごく考えて。で、それは今まで自分がやってきた挑戦と違うものだったからっていうのは結構考えましたね。あの時は。
(吉田豪)単純にまあ本当にかわいい声を出す能力はトップクラスの人たちだから。それを生かせば、いくらでもよくなるっていう。
(沖井礼二)ただ、それが意外と難しいっていうか。なんだろうな? そこで、その声の中で彼女たちは何しろ演技者だから、いろいろと演技をしてくれるんだけれども。たとえば、そこで僕は大抵、自分で歌詞も書いたりとかするけども。僕が「こういう風に演技をしてもらおうかな」って思ってたのと違う解釈で来たりとかして。で、そこで「どっちが正解かな?」っていう悩みが……だから、今思うとかなりセッションですね。ディレクションはしているけれども、彼女たちから出てくるものはすごい、自分の今までやってきたものとは違うものがすごくあるから。だから、まあだんだん曲を書き重ねていくにつれて、たぶん僕が……たとえば竹達さんにやっぱりそこはすごく影響されていったなっていう。それをクラムボンのミトくんに指摘されましたね(笑)。
(吉田豪)さすが(笑)。プロならではの。
(沖井礼二)なんか、まあ彼は彼でアニメとかすごい好きで。声優さんとかもたくさんやっていらっしゃるから。たぶんそういう体験を彼もしたのかもしれないですけど。
(吉田豪)竹達さんの一連の仕事も素晴らしくて。本当にね。
竹達彩奈との仕事
(沖井礼二)あれは、まあね、あれだけ好き勝手にやらせていただいて。ものすごく、竹達彩奈さん本人がすごく、信用してくれたっていうか、面白がってくれたっていうか。僕はそんなにアニメとか詳しくないですよっていうのもわかっているから、たぶん仲良くなれたところもきっとあると思うんですよ。そこは異業種だし。音楽の世界とアニメの世界って全然違うじゃないですか。で、そこでいろいろ話していく間に、単純に人としてのウマがあったところはきっとあると思います。
で、そこで彼女が僕の提案するものを面白がってくれたから。まあ、これはあんまりお外で言うことじゃないかもしれないですけど、あの当時のスタッフの人が「沖井さん、それはちょっと……」って言いかけた時に「えっ、でも私はこれすごくいいと思うし、やりたいから、やりましょうよ!」って彼女が言ってくれて。で、それが進んでくれたっていうこととかがあったりして。まあ、それはものすごいありがたいなって思いましたけどね。そういうのがあると、やっぱり「よっしゃ、頑張ろう!」っていう気にもなりますしね。楽しかったですよね。やっぱり、すごく。
(吉田豪)それで声優関係の仕事が広まっていった感じもありますか? 花澤香菜さんとか。
(沖井礼二)そうですね。だから僕は実はアニソン、アニメ周辺って実はそんなにやってないんですけれども。ものすごくアニメの音楽をやっていそうな印象が世の中にあるのは竹達さんのおかげですよね。
(吉田豪)ROUND TABLEの北川さんほどは絶対やってないですね(笑)。
(沖井礼二)やってない(笑)。あいつはもう、大御所ですから。
(吉田豪)ですね。そっちの世界で大成した。
(沖井礼二)北川くんとも仲いいけど。なんか、僕は彼ほどはやってない。やれてないし。彼は彼で自分の力でアニソンの中のひとつのジャンルを作りあげる……大変なことだと思いますけど。でも僕は、そこでできたのも彼がその作り上げた道みたいなものに、たまたま僕もちょっと呼ばれたっていう感じ。乗っかっただけなんじゃないかな。なんかアイドルさんの仕事にしても、アニメの仕事にしても、たぶん僕は、なんだろうな? 若干、異物なんだと思うんですよね。だからこそ、楽しんでくれる人たちもいるんだろうなと思うし。たぶん僕が本当にそこで染まりきっちゃったら、もしかしたらちょっとあんまり面白いものは作れなくなるのかもしれませんね。
(吉田豪)アニメでもアイドルでもどこか、まだ異物な感じなんですかね。
(沖井礼二)なんじゃないのかな。それはもう、下手したらそれこそもうCymbals自体もそうだったのかもしれないし。
(吉田豪)さっきから言っている、そのシーンの中心にいたことがない、みたいな話ですね。
どこか、まだ異物な感じがする
(沖井礼二)そうそう。なんか、話が前後してとっちらかって……全然インタビューじゃなくて、僕の独白になり始めてますけども。
(吉田豪)全然、何の問題もないです。
(沖井礼二)なんか、流行りものってあるじゃないですか。流行。っていうのに、たぶん乗っかれないんですよ。そういうのはたぶん、僕よりうまい人は絶対いるし。なんなら、そんなのが流行ってる時点でもう、そういうのを作った人たちは半年先にたぶんいるだろうし。そこで同じのことをやってもしょうがないよなっていう気持ちは常にあって。で、今思うともしかしたら、もうちょっとそこに乗っかっていればよかったのかもな、とも思わないでもないんですけれども。たぶん、だからそうですね。最初からもう異物にしかなれない質なのかもしれないですけどもね。
(吉田豪)本当、アニメとか声優の世界にROUND TABLE、Cymbals、インスタントシトロンとかが入ってくるのはよかったですよ。個人的には。「面白いことになってるな」って。
(沖井礼二)なんか、音楽の構造というか、下地みたいなものはそういう、今挙げられたラウンドとかCymbalsとか、インスタントシトロンにしてもそうですけども。60年代のポップスみたいなものに割とこだわりのあるというか、すごくそこに根差したところがある人たちで。一ジャンルっていうよりは、ものすごくオーセンティックなものを実は作ってる人たちだと思っていて。本当はアニメの音楽とか映画の音楽……まあ、アニメの音楽って言った方が多いかな? 居場所は本当はきちんとあったんだろうけど。たぶんそれ以前の日本のアニメの音楽っていうのは、また別の進化の仕方をしてて。だから、そこに混ざった時にちょっと、別のものが入ってきた感じがしたのかもしれないなって僕自身は思いますけど。
<書き起こしおわり>