萩本欽一とオードリー若林 コント55号のネタを語る

萩本欽一とオードリー若林 台本のあるネタが退屈な話 キンワカ60分

萩本欽一さんとオードリー若林さんが2022年1月2日放送のニッポン放送『欽ちゃんとオードリー若林のキンワカ60分』の中でコント55号のネタについて話していました。

(若林正恭)そのコント55号の……先ほど、あの萩本さんが言ってた「台本がない」っていうスタイル、あるじゃないですか。それは萩本さんがフランス座とか、東洋館とか、松竹の劇場に出てた時からそうだったんですか?

(萩本欽一)元々、先輩たちがそうでした。演出家が来て。「ああ、若林。お前とキー坊、お前とお前、○○な。次、××、行く……」って。それで「あれ? 何も言ってねえや」って思って。それで俺が衣装係で衣装を持ってくると、2人で話をしてないで衣装を見ながら「ああ、そういう衣装か」って言って。それで出ていってんの。

(若林正恭)ええっ? いきなりアドリブっすか?

(萩本欽一)そうよ。台本を演出家、書かないもん。「お前とお前」って言うんだから(笑)。それで2人でやって、バカウケ!

(若林正恭)フハハハハハハハハッ! 天才だな、おい!(笑)。

(萩本欽一)「なんだろう、この世界?」と思って。

(若林正恭)その時にじゃあ……でも演出家の人は演出、何もしてないですね?

(萩本欽一)そうそうそう。

(若林正恭)ただ「お前とお前」ですね。仕事は。

(萩本欽一)そうです。

(若林正恭)そしたら、いきなりウケちゃう?

(萩本欽一)もう次の日が初日ですからね。

(若林正恭)へー! そういう文化だったんですかね。

(萩本欽一)そうよ。

(若林正恭)じゃあ、はじめから叩き込まれているんですね。それが。

(萩本欽一)だからテレビに初めて出た時、「作の方はどちらさんですか?」って言われて。「作って……作家ですか? いません」って言ったら……。

(若林正恭)へー! じゃあ、東京の文化だったんですかね? それが。浅草の。

(萩本欽一)そう。テレビ局と不思議な会話しましたよ。「55号さんはネタはどのぐらいあるんですか?」ってデビューの時に聞かれて「無限」って言って。

(若林正恭)フハハハハハハハハッ!

(萩本欽一)「無限って何ですか?」「いや……」って。

ネタの数は無限

(若林正恭)僕、それ気になったんですよ。コント55号のネタ見てて。「これ、終わり時間が決まってんのかな?」と思って。あれ、テレビじゃないですか。で、ネタ時間って今のテレビ、6分とか決められるんですよ。6分以内とか。あれ、アドリブが膨らんじゃったら伸びるじゃないですか。

(萩本欽一)55号の場合は「俺が頭を下げたら終わり」っていう(笑)。

(若林正恭)それ、めちゃめちゃ尖っている若手ですよ(笑)。

(萩本欽一)そう。それでバーン!って突っ込んでドカーン!ってなってさ。俺が頭下げたら二郎さん、終わり。

(若林正恭)アハハハハハハハハッ! じゃあ、若手なのに「ネタ時間、55号さんはどのぐらいやりますか?」って聞いたら「無限」って答えていたんですか? かっこいい! どこまで行くか、わかんないですもんね。ネタね。

(萩本欽一)面白いですよ。

(若林正恭)僕、だからいろんな漫才で「台本通りもなんか、もう飽きたな」と思ってた時期に、いろんな漫才とかを見て。一番楽しそうだったんです。欽ちゃんが。ネタやってる時。でもアドリブだとして、あのコント55号。欽ちゃんがお客さんの反応を見ながら二郎さんの調子も見ながら、次になにを仕掛けてやろうかな?って考えるわけじゃないですか。やっぱりウケたら楽しかったですか? やっぱりネタをやってる最中はすごく。

(萩本欽一)そうそうそう。もう止めたくないぐらい。「これでもか! これでもか!」ってやればやるほど。

(若林正恭)僕、霊媒師のネタがも好きで。あの最後、後半2人でなんかわけわかんない、「ウンニャンニャ……」って2人で同時に言ってるだけで。あれ、5分ぐらいやってますよね? 見てて「早く終われよ!」って思っていて(笑)。

(萩本欽一)そう。二郎さんもそう思ってたんだろうね。あんまりウケた時ってさ、「このへんでもう時間が来ないかな?」と思いながらも、来ないもんだからしょうがないからあれ、伸ばしちゃったんだろうな。あれな。

(若林正恭)「しょうがないから」って……自分が気持ちいいからでしょう? ネタをやっていて。

(萩本欽一)それもあるかもしれないけどね。

(若林正恭)やっぱりネタはやっていて楽しかったですか?

(萩本欽一)コケるってないですからね。

(若林正恭)滑ってなかったな。どのネタを見ても。

(萩本欽一)「いけねえ。今日、滑っちゃった」っていうのがないから。

(若林正恭)天才じゃないですか。なんすか、今の発言?

滑ったことがない

(萩本欽一)二郎さんがドラマやるようになってきた時に、初めて……「二郎さん、珍しくボケなかったね?」って言ったら「ごめんごめん、ちょっとシリアスなドラマをやり過ぎちゃって。俺、今日は間違えてシリアスをやっちゃった」って言うからさ。

(若林正恭)フハハハハハハハハッ!

(萩本欽一)「だろ? ちょっとボケてくれないとさ……」って。それで、テレビ局の人に言って「これ、放送になりませんよ? もう1回袖に行って反省して。二郎さん、『ボケになれ』って今、叫んでますから。二郎さんね、『ボケモドセ、ボケモドセ、ボケモドセって今、やっていますから。もう1回、最初からちょっと出直します」っていうんで、なんとか取り戻したけども。

(若林正恭)それをやったら二郎さん、ボケは戻っていたんですか?

(萩本欽一)戻ってました。

(若林正恭)じゃあ、もうそれはドラマ脳になっちゃう人なんですね。

(萩本欽一)刑事をやっていたから、刑事をやってるのよ。なにをやってるんだろう?って。「いい加減にしろ」って言ったら「なにぃ?」って。「なにぃ?」って言われても困るよな(笑)。

(若林正恭)そこからまた、シリアスなドラマが始まっちゃうんだ。「いい加減にしろ」って言ったら。

(萩本欽一)その時もおかしかったですよ。お客さんに「すいません。刑事から戻らないもんですから。一度、戻って反省します」って。

(若林正恭)そう言って1回、降りたんだ(笑)。

(萩本欽一)「ボケがボケずにじゃマズいんで」って。もう1回、出直したらさ、ちょっとウケて。「すいません。ほんの少々のウケの55号で。これも珍しいですよね?」って言ったらお客さんが拍手をしてくれて。なんとか助かりましたよ。

(若林正恭)「珍しいものが見れた」っていうのはありますもんね。お客さんにしたら。

(萩本欽一)これは意外とね、数少ない55号のね、汗かきコント。

(若林正恭)すげえな! それ以外、滑ったことない? もう「失敗したな」ってことは、ない?

(萩本欽一)それぐらいでしょうね。

(若林正恭)いや、生意気だなー。言うねえ!

(萩本欽一)正直言って二郎さんはね、本当に文句のない人。亡くなった時、泣けた。

(若林正恭)やっぱり、泣けた?

(萩本欽一)なんにも文句なかったね。

(若林正恭)うわーっ、かっこいいな! でも、そうなりたいな。

(萩本欽一)最後、「もう死ぬぞ」っていう3日前に行った時、俺ね、「今日は二郎さんの笑顔を見に来たんだよ」って言ったらにっこり笑ってくれて。もう何も言わなかったの。で、俺が帰ろうとしたらね、「欽ちゃん!」って。口だけね、はっきりしているの。で、近寄ったらね、俺の顔を見てにっこりしながら笑ってね。「なんか言えよ」ったらね、なんにも言わなかった。

(若林正恭)そこ、言わないんだ。

(萩本欽一)言わないんだよ。俺、「ありがとう」って言うのかと思って、待ってたんだけど。「待っているんだよ!って言ったらなんにも言わないでね。「この野郎! 急所のところを逃しやがって」ってさ。それで帰ったんだよ(笑)。

(若林正恭)そこね、なんか一言で言っても……でも、いいコントですね。それも。終わりもコントだ。

坂上二郎さんの名人芸

(萩本欽一)二郎さんがね、「ああ、名人だ」と思ったのは、少しボケてきて。「舞台に出よう」って言ったらね、出なかったの。で、「俺が出てくれって言ってるんだよ!」って言ったらね、「行く」って言って。それで出ていったの。それでにっこり笑って通過しちゃったの。それで向こうの袖に行って。「二郎さん、なんか言おうよ」って言って(笑)。

(若林正恭)「舞台に出ろ」っていうことをそういう意味だと捉えたんですね。

(萩本欽一)それでね、「なんか一言でも言えよ」って言ったら「ああ、いけねえ。通り直す」って通りに行ったの。それでお客さんに一言、言ったんだけど、なんて言ったと思う? 「なんにも言わないよー!」だって(笑)。

(若林正恭)そのまんま(笑)。きれいに持っていくなー! きれいな話、するなあ!

(萩本欽一)でもね、拍手してね、大爆笑! 俺、袖で言っちゃったよ。「名人芸!」って。なんにもしないでね、総立ちの拍手。こういうのは、名人芸だよ。

(若林正恭)でも、それを萩本さんもネタの中で二郎さんが困ったら、また楽しくなって。それも使うじゃないですか。困ってることをわざと。だから文句ないでしょうね。萩本さんからしたら。

(萩本欽一)いいやつ……ああ、「いいやつ」って、先輩なんだよな。

(若林正恭)でも、やっぱり二郎さんですですか。やっぱり一番は。

(萩本欽一)二郎さんですよ。

(若林正恭)一番相性がいいというか。僕、いろんな台本があるお芝居、コントを勉強してあそこにたどり着いたのかなと思ったら、最初から、もうフランス座の時からあのスタイルなんですね。

(萩本欽一)フランス座がそうなの。そんなものを書いてやるっていうのはコントじゃないから。

(若林正恭)欽ちゃん、そしたら若手のコントとか漫才って見るの、好きですか?

(萩本欽一)だから「見ない」っつってるじゃん。

(若林正恭)つまらない? 退屈?

(萩本欽一)そうじゃなくて、なんだろう? その台本が見えちゃっているから。

(若林正恭)やっぱりそうなんだ。でも「一緒だ」って言ったら失礼だけど。伝説の人に。そうなんですよね。僕も、そうなんですよ。一番楽しそうだったもん。いろんな人のネタを見た中で(笑)。

(萩本欽一)だから今も書いてないだろう?

(若林正恭)書いてない。書いてないけど、最後のオチだけ伝えておかないと、終わらないから。頭とケツと、あと真ん中の2個ぐらいは正直、教えている。「ここは通過してね」っていうのは。じゃないと収まんないから。でも、営業とかだと30分できますね。それで。だから、困るんですよ。テレビって。「ネタ時間6分以内で」とか言われるから。わかんない。それで終わるかが。

(萩本欽一)ないもん。だって、オチってドカーン!ってウケたらオチだよ。

(若林正恭)ですよね(笑)。もうここまで来たらっていうのが。

<書き起こしおわり>

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