渡辺志保 トラヴィス・スコット主催フェス・観客死亡事故を語る

渡辺志保 トラヴィス・スコット主催フェス・観客死亡事故を語る MUSIC GARAGE:ROOM 101

渡辺志保さんが2021年11月12日放送のbayfm『MUSIC GARAGE:ROOM 101』の中でトラヴィス・スコットが主催した音楽フェス『アストロワールド』の中で観客がステージ前に殺到して8名が死亡、数百名が負傷した事故について話していました。

(渡辺志保)ここでもうひとつ、私が最近気になっているトピックについて話したいと思うんですけれども。冒頭でも少し触れました。トラヴィス・スコットのフェス、アストロワールドで8名の死者が出たというニュースについて、ここで皆様にもお伝えしたいなと思います。このアストロワールドというフェスなんですけれども、元々2018年に初開催されたフェスです。で、今回の会場はヒューストンのNRGパークというところだったんですけれども。昨年はこのフェス、コロナで中止となりまして。今年、2021年が3回目の開催となりました。で、元々アストロワールドっていうのはトラヴィス・スコットの同じタイトルのアルバムにちなんだフェスなんですよね。

で、アストロワールド自体ですね、地元のヒューストンに実在した遊園地で。今はもう閉鎖されている遊園地なんですよ。なのでトラヴィスとしては自分がスターになり、地元に遊園地をもう1度、持ってこようというような意気込みで開催したものだったんですよね。で、ヒューストンの先輩ラッパーたちもたくさん参加していて。そういったところからも、すごくトラヴィスの先輩たちへのリスペクトも感じられるフェスだなと思っていて、私も毎年毎年、映像を見たりとか。それぞれのInstagramの動画を見たりとかして楽しんでおりました。

で、2021年は11月5日、6日の2日にわたり開催される予定で。1日目にはSZAやロディ・リッチ、リル・ベイビーが登場し、2日目にはあのアース・ウィンド・アンド・ファイアーも出演する予定だったんですよね。なんかこういうラインナップからも本当に小さい子からお年寄りまで、みんなに楽しんでほしい。地元のみんなに音楽を楽しんでほしいと思うようなトラヴィスの気持ちが見えるなという風に思っています。

で、チケットも本当にすぐソールドアウトしましたけれども。約10万枚が売れたという風にも言われておりまして。事件が起こった5日に関しては約5万人が会場にいたのではないかとのことです。そしてイベント自体はライブ・ネイションが開催していて。ライブ・ネイションって本当に全米最大級、世界最大級のイベント興行会社ですけども。そのライブ・ネイションが開催して、更にはアップルミュージックがトラヴィスのパフォーマンスを中継しておりました。

で、このNRGパーク自体は最大20万人を収容可能とのことらしいんですよね。で、他にも会場には事前に救急車が20台配車されていて。それでヒューストンの警察署からは528名の警察官。ライブ・ネイションからは755名のセキュリティーを配置。そしてえ救護テントやナースたちも待機していたとのことです。で、ちょっと時系列はさかのぼるんですけれども。これまでにトラヴィス・スコット自身というのはコンサート中に観客が負傷したという件で何度か訴えられてもいたんですね。

で、2019年。前回のアストロワールドでは3名が負傷したということでした。これはニューヨーク・タイムズが報じていたんですけれども。ヒューストンの警察署の署長さんがライブ前にトラヴィスの楽屋を訪れて勧告していたそうです。注意というか。「ファンたちの熱気がどうなるか、ちょっと怖いからよろしく頼むよ」という風に直々にトラヴィスに勧告していたという風にも報じられておりました。で、当日なんですけれども。5日の土曜日。フェスのオープン時間になるとゲートがもう押し倒されて。何百人、何千人もが一斉に入場していたんですね。

その様子がもうリアルタイムでTwitterなんかでも拡散されていて。「アストロワールド、ヤバそうだな」みたいな感じで。その時点でワーッとその熱気みたいなものが拡散されていました。で、その時点で会場側ももしかしたらこれはちょっと警備を強めねばならないと思っていたのか、思っていなかったのかはわからないんですが。その後、午後8時15分には医療措置を求めるオーディエンスが増えて、救護室はパンク状態になり、トリアージを行っていたそうです。

それでトラヴィスのライブが始まったのが夜9時すぎなので。その日のヘッドライナー、主役であるトラヴィスが出てくる前に既に、酸欠状態であるとか、あとはメディアに書かれていたのは「オーバードーズ」という風なものもありました。で、あとこれはそのヒューストンの警察署も発表していましたが。何らかのドラッグを注射器の針で注入していた恐れもあるという……そうした観客がいたのではないかということも発表されておりました。もうなんか、聞くだけでちょっとカオスな状態ではありますけれども。主役のトラヴィスが出てくる前から既に救護室がパンク状態になっていたということです。

ヘッドライナー前の時点で既に救護室はパンク状態に

(渡辺志保)それで9時過ぎにトラヴィス・スコットがステージに登場したわけですけれども。9時11分には観客がモッシュ状態の中から離脱しようとして、9時24分には医療措置を求めるオーディエンスが現れた。そして9時28分には救護室で男性が意識不明の状態に陥ったとのことです。で、トラヴィス・スコット自身も2度ほど、途中でショーを中断して「大丈夫か?」という風に呼びかけていたんですが。そのまま10時15分ぐらいまでライブを続行したという風に報じられております。

で、ライブの途中にですね、主催元のライブ・ネイションは終了時間を早めることに合意しておりまして。10時15分にライブが終わりましたが、それは予定より30分ほど早いスケジュールになったということです。で、8名が死亡。25人が病院に搬送され、300名が会場で医療措置を受けたという風に報じられております。で、ヒューストンのジャーナリスト、ブランドン・カールドウェルさんという方がいらっしゃいまして。私は彼のことを以前から、ビヨンセ関係のツイートとかでしっていて。それでブランドンさんのことをフォローしていたんですけれども。

結構このブランドンさんがリアルタイムで詳細な情報についてツイートしてくださっておりまして。彼のツイート内容によると命を落とした8名の中には14歳、16歳、21歳、23歳、そして27歳の方が含まれる。で、その他まだ現時点では年齢が分かっていない方もいらっしゃるという風に発表されておりまして。若い方ばかりが命をね落としているんですよね。で、もう本当に幸か不幸かという感じですけれども。アップルミュージックがそのパフォーマンスの様子を中継していまして。で、私が見た時はまだ映像がネット上にも上がっていたんですけれども。最後にドレイクを呼び込んで、『Sicko Mode』をパフォーマンスしまして。やっぱりその時の盛り上がりとかもすごいわけですよね。

で、同様に赤いサイレンを灯した救護車っていうんですかね? それがオーディエンスの中に入っていって人々を助けている様子なんかもばっちり映っていて。しかもトラヴィスも「えっ? あの赤いライト、なんだ? みんな大丈夫か?」っていう風に言ってるんだけど。トラヴィスもその後、「みんなが大丈夫だったらミドルフィンガー(中指)を立てて騒いでくれ!」みたいな感じで次の曲のパフォーマンスに移っている様子がしっかり中継されていたりとか。

あとTwitterで出回っている動画をいくつか拝見したんですけれども。いくつか、女性客、男性客がフォトグラファーっていうんですかね? 中継してるスタッフなのかな? カメラを固定しているはしごに登っているスタッフに向かって「Stop the show!(もうライブをやめて!)」っていう風に懇願してるんだけども、無視をして。彼は彼の仕事を続けるっていうような動画も出回っていますし。もう本当にひとつひとつ、見るだけでめちゃくちゃ心が痛みました。

もうどうなっちゃうのか?っていう感じがしますし。これはなんかヒップホップのコミュニティーの問題ではないと私は感じておりまして。フェスビジネスの問題であるとか、こうしたユースカルチャーの抱える危険性であるとか。あとは本当にそもそものセキュリティー体制に関しての問題であるとかだと思うんですよね。で、そのトラヴィスの人気のすごさっていうのはNetflixでもドキュメンタリー作品としてまとめられているほど、やっぱりすごく世界的に熱狂的なファンがいるアイコンとして、彼は愛されているわけですよね。

熱狂的なファンを多く抱えるアイコン

(渡辺志保)で、この番組でも何度となく、「トラヴィスがこんなすごいことをしたよ」っていうのは報じてきたわけで。たとえば、あのマクドナルドとコラボしてセットメニューを発表したりとか。プレイステーションとコラボして限定のスニーカーを出したりとか。あとは昨年、みんながコロナ禍で不安でどこにも行けないという時に、ゲームの『フォートナイト』とコラボして。『フォートナイト』の中で仮想フェスを開催しました。それが非常に画期的で革新的で革命的であったということを報じていたかと思いますけれども。

もう今回、なんかそれが裏目に出てしまったような事件だなという風にも思いました。その高まり過ぎた熱気とか、あとはそのコロナ期間中に恐らく鬱積したような、その若者のイライラ感というかで、鬱蒼とした気持ちっていうのがひとつ、ここで発散の機会になったのかなとも思うんですけれども。そうしたものが大惨事を引き起こしてしまったのかなとも思いますし。

ブランドン・カールドウェルさんのツイートにもあったんですけど。中にはですね、お金を払って何名か、アストロワールドに行かせて。そこで限定のライブのグッズを買わせて。それを更にネットで高額で転売するやつらなんかもいる。なので、そうした歪んだシステムもこうした惨事を引き起こした一因になったのではないかという風にも呟いていらっしゃって。「まさにそうだよな」と思ったんですよね。

なんか大型音楽フェスってこの数年ですごく増えたと思うんですけれども。それと同時に、カニエ・ウェストなんかもね、この間の『DONDA』を発表する際のリスニングセッションでもう何億レベルのマーチャンダイズ、自分の限定のグッズが売れたっていうこともニュースになっていましたけれども。かつての音楽フェス以上の大きさを持つようになってしまったっていうことも考えねばならないのかなとという風にも思いますし。もう本当に難しいなって思いますね。

だからといって別にアーティストが毎回毎回、コンサートで「みんな、騒ぎすぎるなよ」って言うというのもなんだかちょっとおかしな話なのかなという風にも思いますし。あとはですね、海外のウェブサイトの記事の中に書かれていたのはチケットの券種が「GA」っていう券種なんですよね。GAっていうのは「General Admission」の略なんですけども。アリーナ席みたいなところ。だだっぴろいエリアであれば、どこに移動してもいいですよ。早い者勝ちですよっていうチケットの種類なんですよね。

で、もう本当に結構アメリカのComplexとかHipHopDXとか、私がいつも読んでいるメディアで実際にライターの方が会場にいたっていうケースも少なくないみたいで。もう本当に細かく細かく記事にしてくださっているんですよね。で、HipHopDXなんかでも記者の方が会場にいたということで。そのトラヴィスのライブが始まる前からめちゃくちゃ臭い、今まで嗅いだこともないような不快な匂いのするジョイントを吸っている人たちが何名かいたとかね、そういったことも書かれていて。フェスティバルとドラッグがすごくカジュアルな形で結びつけられてしまっているっていうようなことも書かれておりましたし。

あとはですね、今現在アメリカののニュースのTwitterのスレッドで知ったことなんですけれども。今、まだえ何人かの方が病院に搬送され、入院したままということで。その中に9歳の男の子がいらっしゃるそうです。で、「親族の方の意向でこの子の名前は公表しません」ということになっているんですけれども。

その9歳の男の子はお父さんと一緒にこのアストロワールドのフェスに参加したそうなんですね。で、人々のモッシュが起こって。命を落とした8人の方は圧死。圧迫死ということなんですけども。人々がワーッと襲いかかってきた時に、お父さんは自分の子供を助けようとして肩車をしたそうなんですよ。でもなんか、そのお父さん自身が人々に押されて倒れて意識不明になってしまったそうなんですね。

で、その男の子がまた人々に踏まれてしまったっていうことなんですけども。今、内臓が全て損傷し、脳にもダメージを受けているということです。地元のニュースも本当に「この子のことを助けてくれ!」という風にレポーターの方も悲痛な面持ちで病院の前からレポートをしていまして。本当に私も子供を連れて海外のフェスとか行けたら最高だなとか思っていた身なわけですよね。なので本当にこういうニュースを見ると、ちょっと……私も実際にその映像を見て泣いてしまったわけなんですけれども。

本当に改めて亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、まだ病院で戦っている方たちが一刻も早く回復することを祈っております。で、ここでちょっとトラヴィス・スコットの曲をかけるのも違うなと思いますので。今、病院で戦っている9歳の男の子に向けて1曲、お届けしたいと思います。ビヨンセで『Halo』。

Beyonce『Halo』

<書き起こしおわり>

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