荻上チキさんが2021年9月21日放送のニッポン放送『星野源のオールナイトニッポン』に出演。星野源さんと熊谷晋一郎さんの著書『リハビリの夜』について話していました。
(星野源)あと、『リハビリの夜』。これ、実はあまりにも面白すぎて……これはたしかラジオを聞いて「面白そうだな」って思って、だったと思うんですけども。それで買って読んだら、あまりにも面白くて。で、「すごくおもしろい!」っていうことで。ダ・ヴィンチの表紙でだいたい本を持つんですよ。それで「なんでも好きな本を持ってください」っていうことで、この本を持たせていただいて。そしたら帯のオファーをいただきまして。今、なぜか帯を書かせていただいているという。
ダ・ヴィンチの表紙で持っていた本
(荻上チキ)医学書院の白石さんからおそらく連絡が……。
(星野源)そうです。そしでしたね。
(荻上チキ)熊谷晋一郎さんはご自身が内科医、お医者さんでもあると同時に、脳性麻痺で車椅子の生活をされていらっしゃって。で、同時に東京大学で研究者もなさっているんですけども。その障害の当事者がどういった生活を営むのかというよりは、社会でどういった位置に位置づけられるのか?っていうことを当事者として丁寧に語っていく。それを、障害学という学問の分野があるんですけども。その学問の領域の言葉を借りながら、それを丁寧に読者に説明していくという、非常に豊かな本ですね。
(星野源)あと、そのリハビリをしている最中のその表現というか、文章の書き方がなんというか、「熊谷さんになる」っていう感じがすごいして。なんていうか、その熊谷さんの頭の中に入って、その目の後ろから見てるみたいな。それぐらいのリアリティーがあってすごく……でも、なんていうかものすごく真面目な本だし、いろんなことを考える本だと思うんですけど。なんかこう、明るいというか。なんというか、わくわくしちゃうっていうか。ページをめくるのが。なんかすごい不思議で面白い本だなということで、好きな本ですね。
読書の「世界がわかっていく」という快楽
(荻上チキ)「世界がわかっていく」っていう快楽ってね、読書の喜びのひとつですよね。やっぱりこの熊谷さんの『リハビリの夜』もリハビリをして治るっていうのはいいことかのように語られるし、私たちも日常の中だと「リハビリして頑張ってね」って言うんだけれども、実は身体障害があるような方々などから見た世界だとリハビリというのは「健常者に合わせて生きるような工夫をしなさいっていうことを強制されている」っていう見方に変わるんですよね。そのようなことを丁寧に暴いていく。だから医療関係者とか、その母とか、よかれと思ってやるいろんな手助けというものがいかに苦痛に置き換わるのかっていうことを暴いていくっていう。それはやっぱり私たちの生活にも返ってきますもんね。本を読むと。
(星野源)そうなんですよね。それが、「そうなんだ」だけじゃなくて、自分の感覚に置き換えて考えられるっていうのがすごくいろんな人に読んでほしい理由だなとも思います。
<書き起こしおわり>