星野源『トランスジェンダーとハリウッド 過去、現在、そして』を語る

星野源『トランスジェンダーとハリウッド 過去、現在、そして』を語る 星野源のオールナイトニッポン

星野源さんが2021年1月26日放送のニッポン放送『星野源のオールナイトニッポン』の中でNetflix『トランスジェンダーとハリウッド 過去、現在、そして』についてトーク。ジェンダーやセクシュアリティについて話していました。

(星野源)あと、先週読めなかったメールを読みたいと思います。先週、本当に話すことがいっぱいあったんでね。『あたらしいテレビ』っていうNHKの番組に新年の1日に出て。録画コメントみたいなので出たんですけど。そのメールです。「今年年明けの『あたらしいテレビ』を拝見しました。『MIU404』の脚本の野木さんも出演されていて番組内容自体、とても興味深かったですが、その中でひとつ気になったことがあったのでメールさせていただきます。

星野さんのインタビューの際に2020年、心を動かされたコンテンツというテーマの中で紹介されていた映画『トランスジェンダーとハリウッド 過去、現在、そして』のお話を聞いていて、『ダ・ヴィンチ』12月号の星野さんのインタビューの『僕はシスジェンダーでヘテロセクシュアルですが……』という一言を思い出しました。自分はアセクシュアルに属するのですが、『ダ・ヴィンチ』をはじめに読んだ時は『なんて思慮に富む人なんだろう』と思っていました。

『あたらしいテレビ』の星野さんのインタビューを拝見して、もしかして『ダ・ヴィンチ』のインタビューであの発言は意識されていたものなんだろうかと気になっていました。もし違っていたのなら大変申し訳ないんですが、『ダ・ヴィンチ』でのあの文章は意識されていたものなのでしょうか? もしそうでしたら、新しい知識や考えを自分のものにすることは簡単なことではなく、また作品を見てそう感じたとしても実行に移せる人は少ないと思います。それを他の機会で実行に移したり、他の人にも勧めた星野さんのその行動力と理解力には感服せざるを得ません。

他にも言い方もある中で、『シスジェンダー』や『ヘテロセクシュアル』という言葉を選んだ星野さんに個人的にですが私は『推していてよかった』と思いましたし、勝手に救われました。星野さんの言葉選びが大好きなので、これからも陰ながら応援しております。寒暖差が激しくなってまいりましたが、どうかご自愛くださいませ」という。ありがとうございます。

それで、『あたらしいテレビ』っていう「これからのテレビを考えよう」みたいなことでね。テレビ東京の佐久間宣行さんも出られてましたね。それで、いろんな人たちがテレビについて語るという。テレビについて語ったり、「2020年に面白かったテレビはなんだろう?」みたいな話をしたりとかですね。で、その中で野木亜紀子さんも出ていて。「なにかコメントをいただけませんか?」っていうお話をいただいたので「ああ、ぜひ」という感じで。

で、野木さんがやっぱり面白いのは、すげえなって思うのは、「もう絶対に宣伝してやるぞ!」という気概(笑)。野木の後ろに『逃げ恥』の新春スペシャルのポスターをバーン!って飾るみたいな。それってすごいよね。「NHKだよ?」っていう(笑)。だって本当はあのポスター、ないんだから。『逃げ恥』のポスターって作ってないんだよ。だからあそこにしかないんだよ。だから、すごいよね。

で、それしかもNHKは……まあ宣伝というか、口で宣伝してるわけじゃないし。だって野木さんの作品だから。それは貼ってもいいでしょうっていう感じで全然許してる感じ。また、それもいいよね。懐が広い感じっていうか。それで「『MIU404』の話もしていただければ……」みたいなこともあったんで、その話をしたりとか。それで、自分が心動かされたコンテンツみたいな話もちょっとインタビューで話しまして。その中でこの『トランスジェンダーとハリウッド』っていう作品の話をちょっとしました。

でね、僕もがこれを見たのは本当にすごい前なんですけど。夏ぐらいだったような気がするんだけど。『トランスジェンダーとハリウッド』っていう作品……でも僕ね、あんまりたぶんうまく説明ができないで。もしよかったらぜひ見てください。すごく良い作品だったので。たしかNetflixオリジナルだったような気がするんですけど。Netflixを見られる方はぜひ、見てください。

で、ハリウッドの映画とか、たとえばドラマとかの中で、トランスジェンダーの人たちがどういう風に描かれてきたか?っていうドキュメンタリーなんです。それで当事者の方々のインタビューと共にいろんな映画の引用とか。それで、その作品……映画でも音楽でもドラマでもドキュメンタリーでも、その作品を見る前と見た後では世界が違って見えるという作品ってあるじゃないですか。

それで、フィクションだったりするといい意味でというか、自分が変えられるような、すごくカルチャーショックじゃないけど。「なんかすごいものを見た」みたいな感じで。それまでと世の中がちょっと違って見えるみたいな。町を歩いている人とか、そういうのもちょっと違う角度で見てしまうような、そういう作品ってありますけど。

見る前と見た後では世界が違って見える

(星野源)この作品はドキュメンタリー番組として今まで自分が見ていた……まあ本当に何も意識せずに見ていたものが一気に意識的に見るようになるっていうか。だから今まで見てきた自分が全くそこを意識してなかったことに非常にショックを受けるという。で、それ以降、いろんなものを見る時に本当に世の中が違って見えるっていうのが僕にとってすごくすごく大事な体験だったので。いろんな人におすすめしました。

で、『MIU404』の時に……そのちょうど撮影中に見たので。監督に勧めたりとかしてですね。「すごくいい作品ですよ」って。で、『ダ・ヴィンチ』でこういう風に説明したのはなんでだっけな?っていうのはちょっとあるんですけど。そうですね。この映画もひとつのきっかけではあるんですけど。いろんな本を読んだりとかしていく中で、自分の中で「ああ、そうか。自分というのはこういう風に説明すればいいんだ」っていうのが分かったから、こういう風に話したっていう感じですね。

「シスジェンダー」というのは生まれた時に割り当てられた性別と自分で認識している性が一致している状態で。「ヘテロセクシュアル」っていうのは異性に性的な感情を抱くセクシュアリティ。で、「自分はそういうセクシュアリティです」っていう話をしたっていう感じですね。それでなんとなく今まで、ずっと気になってたことがあって。

自分の友達にもゲイの友達がいたりとか。あと、バイセクシュアルの女の子が友達にいたりとか。そういうのがあったりとかする中で、たとえば「自分ってどう言ったらいいんだろう?」ってのはよくわかってなかったんですよね。で、世の中で割と「ストレート」みたいな言い方があったんだけども「ストレート?」って思って。「ストレートっていう風に言うのって、どうなの?」ってなんとなく思ってる中で、「ああ、こういう呼び方があるんだ」っていう。

「『ストレート』とか『ノーマル』みたいな言い方じゃない言い方があるんだ。じゃあ、これがいいや!」と思って。それで、自分でそういう風に説明するようになったという感じですね。あと、『MIU404』の時にりょうさんがやられてた役……あれは7話だったかな? 弁護士でコスプレイヤーのジュリさんという人がいて。その人の役が、本編の中では説明はされないんですけど、アセクシュアルっていう設定だったんですよ。

で、アセクシュアルっていうのは他者に対して恋愛感情や性的欲求を抱かない人のこと。だから恋愛感情とかなんで、いわゆる愛がないとかということではなく。いろんな家族愛とか兄弟愛とか友達の愛とか、いろいろある中で恋愛感情を他者には抱かないという、そういうセクシュアリティがあることも知り。そういうのをどんどん勉強していく中で……本を読んだりとかしていく中で、「いろんな人がいるっていいな」ってすごい思うんです。

で、まあもちろん自分はその数の中で言ったらマイノリティーじゃない方のセクシュアリティだと思うので。その分、ずいぶん楽なんだと思うんですけど。その中で、いろんな……とはいえ、みんななんとなく生きにくい世の中なわけじゃないですか。「なんだか大変だな」って言ってる中で、それぞれの大変さがあって。それぞれの立場にしかない大変さがまたさらにある中で、やっぱりちょっとでもそれがない方がいいよねって思う。その中で、その自分のカテゴリーっていうものが「なんだかな」っていう言い方だったりすると居心地悪いじゃないですか。

その中で、自分はこういう風に自分を説明することでなんかちょっとほっとするっていうか、楽になるんですよね。だから、こういう風にアセクシュアルの方がメールをくださるのはめちゃくちゃ嬉しいんですけど。だから、こういう方に向かってやってるわけじゃなくて、自分のためにやっています。自分がこういう風に……こういう人がもっと増えたら、もっと楽だし。自分がね。なので、それって「いろんな人がいろんな状態のままでいていい」っていうような世の中が俺は一番楽だと思うから。「こういう状態じゃなきゃいけない」っていうのが僕は一番つらいですね。

いろんな人がいろんな状態のままでいていい世の中

(星野源)だからそういうのは自分に関係ある・なしに関わらず……もちろん、悪意のある人はなるべくいてほしくないけど。嫌なことをしようとする人はなるべくいてほしくないけども。まあ、そういうことじゃなくて、一生懸命生きてる人とかはなるべく、どんな状態でもいい。なんか普通にいれるようになってほしいなっていうのはすごく思うので。で、そうすると俺が楽だっていうのはすごくあります。

なので、この『トランスジェンダーとハリウッド』をぜひ見てみると「ああ、なるほど」って思うこととか、「なるほど、自分はこれをこういう風に今まで見てたな。これをきっかけに自分は今、どう思うだろうか?」みたいなことを……なんて言うんですかね? 結構、やっぱり当事者の方々が明るくしゃべってる中にも途轍もなく……まあ、「つらかった」っていう話もされる時もあるんですけど。その映画の中でね。だけど、やっぱりなんか明るいのと、すごく作品として面白いので。すごくいい体験になると思いますので、ぜひチェックしてみてください。

<書き起こしおわり>

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