渡辺志保さんが2021年8月30日放送のblock.fm『INSIDE OUT』の中でカニエ・ウェストの最新アルバム『DONDA』がリリースされた件についてDJ YANATAKEさんと話していました。
(渡辺志保)1個、9月苦学を迎えるにあたって明るい話題から始めたいと思うんですけど。まずはつい先ほど、1時間前にドレイクの待たれるニューアルバム『Certified Lover Boy』のリリース日が無事、9月3日に決まりましたということで。しかも、「9月3日に見るよ」っていう風にインスタのフィードを更新していましたけども。妊娠してる女性の絵文字が……いろんな肌の、いろんなスキントーンの女性が身ごもっている絵文字が並んでいて。なんなんだろう?っていう。
(DJ YANATAKE)12人。
(渡辺志保)そう。「えっ、ドレイク、いつの間に12人のパパに?」みたいな。
(DJ YANATAKE)「12曲の子供が生まれる」みたいなことなのかと勝手に思ったりしたんですけど。
(渡辺志保)よく、「自分の曲は自分の子供のように愛しい」とか言いますから。でも、ここから徐々に本題に入るけども、ドレイクもきっといつ『DONDA』が出るのか?ってすごい待っていたのかなと思いましたね。
(DJ YANATAKE)ねえ。結局、カニエとドレイクの同日発売売上勝負は実現しなかったですけどね。
(渡辺志保)実現しなかったですね。とはいえ、片や8月29日に『DONDA』が出て。9月3日には『Certified Lover Boy』なんで。ビルボードの集計期間はほぼほぼ同じぐらいっていう感じになるんですかね?
(DJ YANATAKE)カニエのはビルボード的にはだいぶカウントで損をするよね? 金曜日発売が今、基準になっているいから。ドレイクは金曜日に出るからね。そういう、ビルボード的なカウントではあれですけども。まあ、でもカニエはあんまりそういうの、気にしてなさそうですけどね。
(渡辺志保)もはやそういうところにはいらっしゃらないですからね。
(DJ YANATAKE)何十ヶ国でもう1位になったりしていたもんね。
(渡辺志保)もう十分でございます。そんなこんなで、まさかとは思ったんですけども。AppleMusicが一時、8月29日に発売日が設定されてたじゃないですか。結局、そこになったんだって思いました。出た時にね。で、その後に9月5日でしたっけ? 最終的なリリース日がAppleMusicの表記だと変わってまして。結果、8月29日に出たんだけど……今からちょっと15分ぐらいで『DONDA』の話をするんですけど。まずちょっと遡るんですけど、8月20日頃。ちょっと関係ない話で申し訳ないですけど。これもいつか時間を取って詳しく話したいんですが、今R.ケリーの裁判がまた再開されてるんですよ。
で、8月20日ぐらいに3回目の公判が行われたとかで。その時に結構アリーヤについてのことを当時のツアーマネージャーとか、彼のマネージャーとか、結構詳細を証言していて。で、当時アリーヤって15歳だったんだけど、R.ケリーが「アリーヤと結婚する」ってなって。その動機もレイプ疑惑を隠匿するために「結婚するわ」っていうことになったらしく。ちょっとお金を払ってフェイクIDを作って、そこからその結婚証明書を作りに行った、みたいなことが裁判で語られていたんですよね。
しかも当時14歳だか15歳だったアリーヤは妊娠をしていたみたいなことも証言されていて。で、それと本当に何の因果かっていう感じですけど、それとほぼ同時にアリーヤの『One in a Million』というアルバムがストリーミングのプラットフォームで解禁されたと。で、それはブラックグラウンド・レコーズっていうところが権利を持っていて。そこがようやくストリーミングに流したんだけど。そのブラックグラウンド・レコーズの社長さんがいるんですけど、それは元々アリーヤのおじさんが社長さんだったのね。でも、その社長こそが元々、R.ケリーの側近でもあって。14歳だか15歳だかのアリーヤを最初にR.ケリーに会わせたのはそのアリーヤのおじさんだったんだって。バリー・ヘンカーソンっていう人なんだけど。
で、そのバリーさんが結構、いわく付きな人物で。このブラックグラウンド・レコーズに所属していたトニ・ブラクストンとかもヘンカーソンさんを訴えたとか、そういった黒い噂が絶えない方なんですよね。だからそういう背景を知ってアリーヤ、ストリーミングで解禁されるのは嬉しいけど、複雑だなと思って。さらにまたちょっとR.ケリーのこととかを考えちゃって、ズーン……ってなっていたんですね。その女性に対する婦女暴行事件で「うーん……」って。重いし、やっぱり被害者の気持ちを考えると……って。ズーン……っていう気持ちに私は8月20日ごろからなっていたわけなんですけど。
で、その後、カニエのシカゴでの3回目のリスニングパーティーが行われたのがアメリカ時間で8月26日の木曜日。日本だと27日の金曜日のお昼ぐらいだったわけですけど。まあ、舞台上に自分の生まれた家のレプリカが建っていて。そのてっぺんに十字架が立っていて。周りをフェンスが取り囲んでいるようなセットだったんですけど。そこから出てきたのがマリリン・マンソンとダベイビーっていうのにちょっと「うわっ! あ、ああ……」みたいな。ちょっと「ああ、受け入れられないな……」って私は最初に思ってしまって。
で、マリリン・マンソンは皆さんもご存知だと思いますけど。今、14名ぐらいの女性の方から「かつてマリリン・マンソンから性的な暴行を受けた、つらい目にあった」ということで訴えられているところなんですよね。で、私もそういうアリーヤとR.ケリーのこととかを考えていてズドーンってなっていたところでマリリン・マンソンとダベイビーが出てきて。「マジか……どうなっちゃうの?」って思っちゃって。そこから、やっぱりちょっと手放しで『DONDA』のリリースを喜べない自分がいたというのが私のそもそもの前提っていう感じですね。
マリリン・マンソンとダベイビーを伴って登場
Kanye brought out DaBaby and Marilyn Manson #DONDA pic.twitter.com/vggi9ECc63
— Rap-Up (@RapUp) August 27, 2021
(渡辺志保)で、今日もいろいろ記事を見たんだけど。それでさ、たとえばキム……元奥さんというか、今も正式に離婚は成立していないっぽいんだけども。奥さんのキム・カーダシアンはカニエが……ダベイビーはまあ、ブラザー同士の絆というものがあるのかもしれないけども。マリリン・マンソンを呼ぶことに対してキムはなにか感じるところはあったのかな?って思っていたんですけど。今日、ピープル誌が報じていたけど。ある情報筋によると、キムはマリリン・マンソンがそのリスニングイベントに来ることを知らなかった。で、本当に本番直前まで知らなくて。キムの出番になってようやく「あっ、マリリン・マンソンがいるじゃないか」って知ったらしいんですよね。
で、もしも前もってマリリン・マンソンが参加しているということを知っていたら、彼女はカニエのリスニングパーティーには参加したくなかったっていう風にある情報筋に語ったということが報じられていて。ちょっとその信憑性はあまり高くはないかもしれないけども。まあ、そういうことが今、報じられているという感じです。で、本当に何から話せばいいのかっていう感じなんですけど。
そんなこんなで『DONDA』が8月29日(日)の日本時間だと夜9時ぐらいにリリースされて。で、そのリリースの1時間ぐらい前にカニエ・ウェストのマネージャーが「出ますよ」っていうのをインスタで発表していたので。熱心なファンは心の準備がある程度、できていたのではないかと思いますけれども。結局今、フタを開けたら全27曲。そして2時間弱みたいな。1時間50分ぐらいの超スーパー大作としてリリースされたわけですよね。もう、いろんな意味でびっくりしましたよね。
(DJ YANATAKE)そのダベイビーとマリリン・マンソンの話題もあるけども。アルバム全体としてのファーストインプレッションというか。それは、どうでした?
(渡辺志保)それは……本当に「マリリン・マンソンとダベイビー……えっ?」って思いながらも、やっぱり「おおう、素晴らしい……おお、これが『DONDA』か……」みたいな。1曲目、しかも「DONDA、DONDA、DONDA♪」ってチャントで始まるじゃないですか。そこさ、ちゃんとクレジットを見たらシリーナ・ジョンソンが参加しているんですよね。で、シリーナといえば、同じシカゴの歌姫で。カニエのファーストアルバムの『All Falls Down』のフックを歌っていたシンガーですけども。
(渡辺志保)「ああ、ここでシリーナが参加している!」みたいな。だから、あとはその連続ですよね。「あっ、ここでタイ・ダラー・サインが!」とか。「ああ、この曲はこうなったんだ!」とか。それで最初に『Jail』を聞いて。「あっ、ジェイ・Zが参加している!」みたいな。
(渡辺志保)その『Jail』っていう曲に関してもそのジェイ・Zのバースが消されてダベイビーとマリリン・マンソンが参加している曲に差し替えられたなんていうニュースもあったから。あとはキッド・カディのバースが消えているとかね。そういったことがシカゴのリスニングパーティーでも騒がれていたから。そういった不安が払拭されたが……だが、しかし、リリースされた時には聞けなかったんですけども。『Jail pt 2』っていう曲が入っているんですよね。
で、その『Jail pt 2』はたぶん皆さん、聞かなくても予想できると思うけども。それこそがシカゴのリスニングパーティーで流れたマリリン・マンソンがコーラスに参加していてダベイビーがバースをキックしているっていうバージョンなんですよね。
(DJ YANATAKE)ここが結構不思議なんだけどさ。カニエはさ、その『DONDA』のリリース前に『Nah Nah Nah』のリミックスでダベイビーが参加しているバージョンをストリーミングから削除したじゃない? これ、明確に言及はしていないけどさ、やっぱりダベイビーのそういう差別的な発言を踏まえて……みたいな風にみんな、捉えているじゃない? そんな動きもあったのに、ここに今、このタイミングでダベイビーが出てくるっていうのは不思議だったんだけど。
俺もこの間のここの放送でも話したけども。なんかいろいろと今、問題が起きた時にキャンセルカルチャーの怖さみたいな。やり直せないのか、じゃないけども。そういうのを訴えるためっていうのと、もちろん正直、話題作りもあるんだろうけど。それをメッセージとして伝えてるっていうのも間違いないし。
(渡辺志保)ねえ。そうね。それはあると思うし。しかもさ、「ダベイビーのマネージャーから許可が得られないから『DONDA』のリリースが遅れているわ」っていう風に自分のマネージャーとカニエのテキストメッセージのやり取りをスクショして彼はInstagramに載せたんだけど。でもそれをまたダベイビーのマネージャーが「これ、大嘘だから」っていう。またそのスクショを自分のインスタに載せて。「カニエからもカニエのマネージャーからも電話ももらってないし、メールももらってない。『Jail pt 2』の音源を聞いて2秒でOKを出したのに。なんなの、こいつら?」みたいなことをインスタで……。
(DJ YANATAKE)ああ、続報があるんだ。じゃあ、それすらも話題作りなの、あれ? 怖いねー!
(渡辺志保)そう。よくわかんないじゃないですか。でも、ヤナさんが仰っていたキャンセルカルチャー云々っていうのは本当にひとつの今回の作品の軸になっていると思うし。やっぱり、あのレプリカの家に関しては、やっぱり彼はあそこを自分の教会にしたかったんだろうなと思うし。やっぱり自分は神様に近い存在だから、その誰かを救済したかった。誰かを赦したかったのかなっていう風に私は思って。で、それがやっぱりそのなんか、男同士の絆みたいなことを示すあれだったのかはわかんないけど、マリリン・マンソンとダベイビーだったのかなって思って。
で、さっきも言ったけどその前に私はR.ケリーの公判の件でズーンとなっていたから。もしかして、R.ケリーが身動きができる状態だったら、カニエはR.ケリーのここに呼びたかったんじゃないかなとか。そういうところまで妄想が働いてしまったんですけど。まあひとつ、そういうこともあって。なんかセレブレーションみたいな感じにはなれなかったが、ただやっぱり音像みたいなものはすごいなと思ったし。楽曲に関しても私はなんかラップの曲として一番かっこいいなと思ったのは『Off The Grid』っていう曲ですね。ちょっとドリルみんながある曲ですけれども。それが最もかっこいいなと思ったし。
(渡辺志保)あとは『Tell The Vision』っていうポップ・スモークの『Faith』っていうアルバムに入っていた曲もリメイク版みたいなのが収録されていて。それも、なんか私はピアノだけがすごい強調されていて。逆に潔くてかっこいいなっていう風にも思ったし。
(渡辺志保)まあ、そんな感じで楽しみながら聞いたが、クリス・ブラウンが……みたいなネタとかもちょっとありましたけれども。本当に本当に今回も大騒ぎの末にリリースされた『DONDA』。全体的にやっぱり、もちろんその亡くなったお母さんへの喪失感っていうのと、後はその脆さっていうか。彼、カニエ・ウェスト自身が自分の人生をどうバランスを取っていいかわからないみたいな、そういう揺らぎみたいなものをすごく強く感じたんですよね。
喪失感と脆さ
(渡辺志保)それは彼が『808s & Heartbreak』で示した喪失感とはまた違うレイヤーの喪失感っていうか。その子供もいるけどキムとは別れるみたいな……キムに関しての言及もとにかくリリックで多かったですし。結構、レビューサイトとかを読んでも『Lord I Need You』っていう曲があるんですけども。それがすごいキムのことを歌っているんですよね。
「昔は俺に優しくしてくれたのに今は……」みたいな感じだったりとか。「キムの銃の安全装置は外されてしまった。俺に怒鳴るんじゃなくて、優しく話しかけてくれ」みたいなリリックがあったりして。そういうのを読むとすごい切ない気持ちになってしまったし。
(渡辺志保)で、話は戻りますけど、シカゴのリスニングセッションでも、花嫁姿のキムが出てきて。で、カニエが満面の笑みを浮かべているわけなんですよね。で、その後にカニエが燃えちゃうのよね。意味がわからないと思うんだけども、カニエが着火して燃えちゃうんだよね。
kanye set himself on fire and remarried kim in literally 2 seconds, like bro chill pic.twitter.com/NA7yenxkeo
— andrea (@andreaavalt) August 27, 2021
(渡辺志保)で、アルバム全体を聞いてその画を頭に思い浮かべるけど、やっぱりそのストーリーが全然わからなくて。「なんだろう?」って思いながらも……全部で27曲あるし、長いし。今も本当に解明中ではあるんですけれども……っていう感じ。
(DJ YANATAKE)そうですね。
(渡辺志保)全体像が見えそうで、まだまだ見えない。
(DJ YANATAKE)まだまだね、たぶんほんの5%ぐらいしかしゃべれてないと思うんですけども。今日はゲストを迎えたりもしなくてはならないので。今週に関してはそろそろ……なんですけども。また来週以降もタイミングがあれば、いろいろと新しいこともわかってくるかもしれないので。
(渡辺志保)曲がいきなり増えたり減ったりするかもしれないからね。
(DJ YANATAKE)デラックス版どころじゃないですから。ミックスが変わったりとか、ありえるのでね。
(渡辺志保)なので引き続きウォッチしていきたいと思います。
(DJ YANATAKE)この中から1曲、曲かけようということで。何を選ぶのか、気になりますが。
(渡辺志保)何にしようかと思ったんだけど。とりあえず、今日ここは『Hurricane』でお願いします。
(DJ YANATAKE)最初からトラックリストで明かされていて。推し曲っていうことなのかな?
(渡辺志保)なのかな? これ、元々は『YANDHI』に入る予定だったっぽいですね。で、10個ぐらいのいろんなバージョンがあるってGeniusに書いてあって。もうたまらないだろうなって思うんだけど。ここでカニエが自分のバースのところで「Everybody so judgemental」っていうことを繰り返してラップしてるの。「なんでみんな、そんな批判的なんだ? すぐに白黒つけたがるんだ?」っていうことをラップしていて。結構そのキャンセルカルチャーのことに対してもそうだけども。やっぱりこれが今回、すごく私にはメッセージとして深く響いてきたのでこの『Hurricane』にしました。ということで、ここで聞いていただきたいと思います。
Kanye West『Hurricane』
<書き起こしおわり>