渡辺志保『The Hate U Give(ヘイト・ユー・ギブ)』を語る

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渡辺志保さんがbayfm『MUSIC GARAGE:ROOM 101』の中で映画『The Hate U Give(ヘイト・ユー・ギブ)』を紹介していました。

ヘイト・ユー・ギブ (字幕版)

(渡辺志保)というわけで4時台の前半、いまからの時間は私が最近見てグッときた映画、皆さんに是非とも見ていただきたいなと思う作品『The Hate U Give(ヘイト・ユー・ギブ)』の解説、そしていてそこから1曲お届けしたいと思います。『The Hate U Give』、個人的にもずっと見たいなと思っていて。ただ日本公開がなかったんですよね。なんですけど、つい先日、3月13日からデジタル配信開始っていうことで。

私も今夜は家で映画でも見ようかなと思ってiTunesのムービーのレンタルのところを見てるとこの『The Hate U Give』がパッと出てきて、速攻で見た作品です。この作品なんですけれど、もともとね若者向けに小説が元になっておりまして。『ザ・ヘイト・ユー・ギヴ あなたがくれた憎しみ』というタイトルで日本語のタイトルがついて日本でも翻訳版が出版されておりますので是非是非そっちも併せて楽しんでいただきたいなと思うんですけれども。

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配給元のフォックスさんのホームページからあらすじをお伝えしたいと思います。「『しあわせの隠れ場所』の製作スタッフが集結、無実の友のために立ち上がった女子高生の勇気と希望の物語。2009年カルフォルニアで起こった無抵抗の黒人青年を警官が射殺した『オスカー・グラント事件』をヒントに書かれたベストセラー小説『ザ・ヘイト・ユー・ギヴ あなたがくれた憎しみ』の映画化。白人社会と共存していく方法を小さい時から教えられてきた16歳の黒人少女のスター。白人が通う学校に通いボーイフレンドも白人。黒人であることを忘れたかのような毎日を送っている。しかしある日、幼馴染が白人警官に自分の目の前で射殺される。白人との共存のため沈黙を決めていた彼女だったが、大人社会の矛盾に立ち向かう決心をするのだった…」という、ちょっと重めの映画ですね。

シリアスなトーンの映画なんですけれども。やっぱりここですごく描かれているのは、アメリカの地域にもよるとは思うんですけれども、銃がすぐそばにあるという恐怖ですよね。あとはその肌の色が違う。もっと端的に言うと「黒人である」ということだけでですね、いつどこでどんな命の危険にさらされているかわからないということを、やっぱり非常に感じましたね。

そして警官に射殺されてしまった男性……高校生の男の子ですけれども、カリルくんは自分の地元のフッドでドラッグディールをして日銭を稼いでいたんですよね。でも、主人公の女の子スターも「彼がドラッグディールをしてました」っていうことを警察に言ってしまう、その小さなコミュニティーで作られてきた裏社会の構造みたいなものが全てガラガラガラって崩れ落ちてしまうんですよ。

こういう、よく言いますけど「Snitch」っていう言葉がありますけども。たとえば「自分が何かの罪で逮捕されても、他の人を巻き込まないように絶対に関わったやつらの名前は言っちゃいけないぞ」というような、そういったストリートの掟みたいなものがあるんですけれども。そこに対してもどう立ち向かっていくかということを非常にビビッドに描いておりまして。もちろん人種差別云々っていう問題も主題としてあるんですけれども、そういうフッドに根付く負の連鎖みたいな、そういうたところをどうやって断ち切るか、どう立ち向かっていくかとかね、そういったことも非常に考えさせられました。

で、ここ最近、偶然にもですね日本でもバリー・ジェンキンス監督の『ビール・ストリートの恋人たち』、スパイク・リーによります『ブラック・クランズマン』、そしてアカデミー賞作品賞を受賞しましたマハーシャラ・アリが助演男優賞を射止めた『グリーンブック』とですね、アメリカの人種問題を描いた映画作品の上映がここ日本でも相次いでおります。いま、名前を挙げたような映画を1本でも見たという方には是非とも見てほしい作品だと強く思いました。

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『グリーンブック』をめぐる論争

で、まあ『グリーンブック』に関しては、アカデミー賞のオスカー受賞以降ですね、さらにこの作品をめぐる論争というのが続いておりまして。なぜ問題になっているかと言いますと、『グリーンブック』も事実をもとに描かれた映画作品ではあるんですけれども、遺族の方の意見を無視して描かれているとか、事実とは異なることが描かれている。そして何より「人種差別のがあった」という事実を非常にきれいに描きすぎているのではないかということで、それこそ『ブラック・クランズマン』を撮ったスパイク・リーなんかがちょっと異議を唱えるというか、チクッと皮肉っぽく言ったりもしております。

それとは逆にですね、『ブラック・クランズマン』なんかはすごくありありとですね、人種差別の構造、社会における正義とは何かっていうことを描き出しておりますし。全くもって『グリーンブック』とは正反対なんですよね。で、この『The Hate U Give』に関しても、その差別されている側。黒人の被差別の立場から内側をすごく鮮やかに描いている作品ですので、また『グリーンブック』とは全然違う感想を抱くのではないかと思います。

ですので個人的には『グリーンブック』、そして『ビール・ストリートの恋人たち』、そして『ブラック・クランズマン』の順番で見るとよりアメリカがどんな状況にあるのか。そして昔の人種差別が堂々とまかり通っていた時代から何も変わってないじゃないかっていうのが非常に見て取れるかなという風に思います。その後に是非この『The Hate U Give』を見てほしいなと思いますね。で、こういう差別のことばかりを描いた作品というわけではなくて、この映画は先にも申し上げましたように若者向けの小説を元にした映画ですので、普通にいまのアメリカの高校生たちを描いた作品という側面もあるんすよね。

主人公のスターちゃんは女子高生なんですけれども、スニーカーが大好きなんですよ。なので映画の劇中にもスニーカーをこういう風にきれいにするんだよとか、今日はあえてこのスニーカーを履こうとかね、そういったシーンもありますし。あのこのスターが射殺されてしまった幼なじみのカリルに久しぶりに会うシーンがあるんですけど。そこではスターがカリルが履いてるスニーカーをチラッと見るんですよね。で、その履いてるスニーカーが自分が履いてるナイキとアディダスとか、そういったスニーカーじゃなくてバレンシアガのスニーカーを履いてるんだよね。

そこでスターはハッとして。「あれ? こいつもしかして最近、金回りがいいのかな? ということは、もしかして何かやばいビジネスに手を染めてるんじゃないかな?」っていうのがそのスニーカーをパッと見るその一瞬だけで描かれるようなところもありますし。小説版に至ってはもっとヒップホップバイブスが高めといいますか。J・コールとかドレイクといったラッパーたちの名前も出てくるし、彼らのリリックも出てきたりするんですよね。なのでいろんな側面から楽しめる、いろんなことを感じることができる映画になってるんじゃないかなと思います。

で、この『The Hate U Give』というタイトルなんですがタイトルに使われているのが「You」じゃなくて「U」一文字だけなんですよね。で、この『The Hate U Give』の頭文字を繋げると「THUG」。サグという言葉になるんですね。で、{THUG」って皆さん聞いたことがありますでしょうか? 「THUG」って聞いた時、いろんなラッパーのことを思い出すと思うんですけれども、いちばん有名なのは「THUG LIFE」を自分の体にもタトゥーで彫った2パックの存在ですよね。

で、この作者の方もあえてこの「THUG」というフレーズを強調しているんですけれども、映画の中でもカリルとスターが車に乗って、2パックの曲をガンガン流すシーンがあるんですよ。で、スターは「こんなの、何十年前のラッパーじゃん」みたいに言うんですけど、カリルは「バカ言え! 2パックの教えはな……」って言うような、そういうシーンがあったり。で、最後は亡くなったカリルの部屋にスターが足を踏み入れるシーンなんかもあるんですけども、そこには2パックの『All Eyez On Me』という超名作アルバムがありますが、そのポスターがデカデカと貼ってあって。そのすぐ側にはケンドリック・ラマーの『DAMN.』というアルバムのポスターが貼ってあるみたいなシーンもありまして、結構ウルッときてしまいます。

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ちなみにスターのお父さん役であのマーベリックさんという人が出てくるんですけども。スターのお父さんはですね、その2パックや2パックのお母さんも傾倒していた政治的思想的集団のブラックパンサーという集団がおりますけれども、そのブラックパンサーの教えを守っているという設定でして。小説にはそのあたりのことももっと具体的に書かれていて、「おおっ!」と思いながら読んだということです。

ございますこの『The Hate U Give』のサウンドトラックも発売されておりまして、便利な時代ですけども、Spotifyなどでもチェックできますので、ぜひぜひ聞いてみてほしいと思います。トラヴィス・スコットととかケンドリック・ラマーとか。さっきも触れたビリー・アイリッシュの曲なんかも入っておりますし。

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まあなんと言っても作品の裏テーマになっております2パックのこの曲も入っているということで。ここで映画『The Hate U Give』から1曲お届けしたいと思います。2パックで『Keep Ya Head Up』。

2Pac『Keep Ya Head Up』

<書き起こしおわり>

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