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町山智浩 千葉真一を追悼する

町山智浩 千葉真一を追悼する たまむすび
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町山智浩さんが2021年8月24日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で亡くなった千葉真一さんを追悼。直接千葉さんにインタビューした際の話や、千葉さんから影響を受けたクエンティン・タランティーノの話などを紹介していました。

(町山智浩)はい。『キイハンター』のテーマをお願いします!

(町山智浩)はい。ということでね、千葉真一さんが……本当に日本が生んだ世界のアクションスター、千葉真一さんが亡くなりましたね。今、流れてるのはTBSテレビの人気番組『キイハンター』の主題曲なんですけども。これは僕が小学校の頃、本当に大人気でした。で、どのぐらい大人気だったかというと、子供が次々と怪我をしましたね。

(山里亮太)子供が……真似しちゃうのか。

(町山智浩)そう。真似しちゃって。というのは、千葉真一さんはね、とにかく自動車とか列車があると、その屋根かボンネットの上に乗っちゃうんですよ。で、ビルがあれば階段とかエレベーターを使わないで外側を登って。しかも、飛び降りちゃうし。で、飛行機とかヘリコプターとかがあると、その中に乗らないで、その外側に……翼にしがみついたり、ロープでぶら下がってるというね。だからもう子供がみんな、公園とかで真似するわけですよ。高いところから飛び降りて。「千葉ちゃんだ!」って。大変でしたけど。僕ね、千葉真一さんには何度かお会いしたことがあるんですけど。まあ、そういう話をするわけですね。

「子供の頃、みんなで真似しました」みたいな話をするとね、千葉さんもね、飛行機に乗って座席に座っていると、ファンが来るわけですよ。すると「なんで機内に座ってるんですか? 外じゃないんですか?」って言われるらしいんですね(笑)。

(赤江珠緒)アハハハハハハハハッ!

(町山智浩)車とかに乗っていると「あれ? 千葉さん、屋根じゃないんですか?」とか言われるっていう(笑)。

(赤江珠緒)そんな無茶な(笑)。

(山里亮太)どう返すんだろうね?(笑)。

(町山智浩)でもあの調子でいつも豪放磊落に「ワッハッハッ」っていう感じで笑って返すんですよ。あの人は。

(赤江珠緒)「今日はチケットが取れたんだ」とかね(笑)。

(町山智浩)そうそう。たまたまね(笑)。で、すごい運動神経がよくて。日体大で器械体操をしていた人なんですよね。だからもうとにかく……この人は死ぬ時もとにかく元気なんですよ。

(山里亮太)「死ぬ時に元気」?

(町山智浩)あのね、死ぬシーンがあるんですよ。映画の中でね。で、若い頃に千葉さんが出た『組織暴力』っていう背広ヤクザの映画があるんですけど。鶴田浩二さんとかが出ている。それで撃たれて吹っ飛んで死ぬようなシーンがあるんですね。すると撃たれて、普通は後ろに倒れるじゃないですか。でも千葉さんはね、クルッとトンボを切っちゃうんですよ。

(赤江珠緒)うわーっ! ええっ、撃たれて?

(町山智浩)撃たれて。体のバネがよすぎるんですよ。でね、30代で出た『沖縄やくざ戦争』っていう映画で本土復帰時の沖縄の地元のヤクザを演じているんですが。やっぱり撃たれて死ぬ時にね、体のバネをきかせすぎてね、倒立しちゃうんですよ。

(山里亮太)いや、それはもうNGじゃないですか?(笑)。

(赤江珠緒)本当、そう(笑)。

(町山智浩)バチーン!ってもう、まっすぐに。アジの活造りとかを頼むとこう、バビーン!って反っているじゃないですか。あれぐらい元気なんですよ。死ぬ瞬間なんですけども。

(山里亮太)それが作品の中で採用されているんですか? そのシーンが?

(町山智浩)そのまま使われているんですよ(笑)。

(山里亮太)普通はね、「いや、倒れてください」って……(笑)。

(町山智浩)そう。死ぬ瞬間なんですけども、もう体操だから。「9.99!」とか点数をつけそうになっちゃうんですけども。

(赤江珠緒)それだけの身体能力だったんだ。

(町山智浩)でも、すごいのは50代でもこれなんですよ。『いつかギラギラする日』という映画ではね、あの荻野目慶子ちゃんにメロメロになって。「僕ちゃん、もう若返っちゃった!」って言っている脂ギラギラのおじさんの役を演じているんですね。

(山里亮太)幅広いなー!

(町山智浩)幅広いんですよ。でもね、荻野目ちゃんに騙されていて、撃ち殺されちゃうんですよ。でもその時、千葉ちゃんは撃ち殺されながらね、後方に1回転しているんですよ(笑)。

(赤江珠緒)「普通に死ねんのかーい!」って(笑)。

(町山智浩)そう。ギラギラしすぎて全然死ぬように見えないんですけど。だからね、本当に絶対死なない人だって僕は思っていたんですけどね。それで、ああ、そうだ。僕、しゃべっている時に「千葉ちゃん」って言っちゃってるような気がするんですよ。

(赤江珠緒)ああ、今仰ってました。

(町山智浩)これね、僕の世代の……まあ50歳以上の人はみんなね、千葉さんを呼ぶ時にどうしても「千葉ちゃん」と言っちゃうんですよ。それはなんでかっていうと、1970年頃にカリーナというトヨタの車があって。それのコマーシャルにずっと千葉ちゃん……千葉さんが出てたんですね。それは千葉さんがカリーナを運転していると、小学生ぐらいの男の子が「決まってるね、千葉ちゃん!」って言うんですよ。そういうコマーシャルだったんで、それは僕らぐらいの年齢の子なんですよ。

(赤江珠緒)はいはい。みんな、真似しますね。

「決まってるね、千葉ちゃん!」


(町山智浩)そう。だから千葉さんのことを「千葉ちゃん」って呼ぶクセが完全についちゃっているんですよ、僕らは。でもインタビューの時、実際に僕、やっちゃったんですよ。「千葉ちゃんは」って言っちゃったんですよ。それで「しまった!」って思って。「失礼しました!」って。もう本当に土下座する感じで謝ったんですけど。そしたら千葉さんはね、「いいですよ!」って言ってくれましたね。「もう慣れてますから! 愛されているってことですね」ってね。

(赤江珠緒)それだけインパクトが強くて印象に残るCMだったんだね。

(町山智浩)それで僕、この千葉さんのTシャツ。もうこれ、20年ぐらいずっと着ているんですよ。

(山里亮太)ああ、写真が。若干ブルース・リーのような感じの。

(町山智浩)そう。これは1974年の千葉さんの空手映画の『激突! 殺人拳』っていう映画のTシャツなんですね。

(赤江珠緒)またタイトルがすごいな(笑)。

(町山智浩)これね、僕ね、アメリカに来て、まだアメリカのことを全然わかんない頃にこれをよく着ていたんですよ。で、これね、すごくアメリカには治安の悪いところってあるんですけど。なんていうか、まあはっきり言っちゃと黒人の人が多いところとか、メキシカンの人が多いところとかね。そういうところに行く時にね、この千葉ちゃんTシャツを着ていると、絶対に安全なんです!

(赤江珠緒)ええっ?

(町山智浩)絶対に安全。

(山里亮太)なんでなんですか?

(町山智浩)これを着て歩いていると「Oh, Chiba!」ってみんな来るんですよ。「おお、千葉ちゃん、大好き!」っていう感じでみんなが来るんで。もうみんな、友達!

(山里亮太)なんでそんな人気なんですか?

アメリカの治安が悪い地域でも千葉真一Tシャツで安全に

(町山智浩)すごい人気があるんですよ。『激突! 殺人拳』。すごい人気なんですよ。で、その頃、千葉さんはブルース・リーと並ぶ人気があって。アメリカで……ヨーロッパでもそうなんですけども。それで、この頃にどれだけ千葉さんがすごかったかっていうと、『激殺! 邪道拳』っていう1977年の千葉さん出演の空手映画があるんですけど。これね、アメリカでの公開タイトルがね、なんと『Soul of Chiba』なんですよ。

(赤江珠緒)ええっ!?

(町山智浩)「千葉の魂」っていうタイトルで公開されているんですよ。あとね、1973年に『ボディガード牙』っていう映画で千葉さんが牙という名前のヒーローを演じるんですけど。アメリカ版は英語吹き替えで、それが「牙」じゃなくて全部「千葉」になっているんですよ。

(赤江珠緒)ええっ?

(町山智浩)そうなんですよ。で、映画の中で千葉さんが「私、千葉はこれからマフィアと戦っていく所存です」っていう風に記者会見をするシーンがあるんですけども。そうなると、もう千葉真一が俳優なのかヒーローなのか、アメリカ人はわからななるんですよ。で、この映画、すごいのはね、主題歌が『Viva Chiba』っていう主題歌なんですよ。

(赤江珠緒)ええっ? 『Viva Chiba』? なんか奇跡的にいろんなことが韻を踏んでいて……(笑)。

(町山智浩)で、極真会館の人たちが正拳突きをしながら「Viva! Chiba! Viva! Chiba!」っていうんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)もう、すさまじいものですよ。千葉さんの人気って。すごいんですよ。で、特に千葉さんを好きな人っていうのはクエンティン・タランティーノっていう映画監督ですけども。彼が童貞の頃に書いた脚本で『トゥルー・ロマンス』というま映画があるんですけど。まあ「童貞」っていうのは間違ってないと思います。僕の憶測ですが、はい。

(赤江珠緒)なんでそこを強調した?(笑)。

クエンティン・タランティーノへの影響

(町山智浩)というのはね、これ主人公が映画オタクで。ビデオのレンタル屋で働いてる映画オタクで、これはタランティーノ自身なんですよ。で、ガールフレンドとかいなくて、自分の誕生日に自分へのプレゼントとして名画座で千葉真一の『殺人拳』シリーズ3本立てオールナイトをたった1人で見るんです。だから、本当に寂しい孤独な映画小僧だったタランティーノの心の友が千葉ちゃんだったんですよ!

(赤江珠緒)3本全部が千葉さん!?

(町山智浩)そうなんです。3本を1人で朝まで見るんですよ! 「これが俺への誕生日プレゼントさ!」っていう映画なんですよ。どうかしているんですけども。タランティーノって(笑)。

(町山智浩)で、そのタランティーノが『キル・ビル』っていう映画で大監督になって千葉さんを出演させたんですよ。で、ここでちょっと『服部半蔵 影の軍団』のテーマをお願いします!

(町山智浩)素晴らしい主題曲ですね。これね、テレビで『服部半蔵 影の軍団』シリーズってのいうのがありまして。千葉さんが演じていたのが服部半蔵っていう役なんですけど。それをそのまま、『キル・ビル』に出しちゃうんですよ。タランティーノは。でね、「なんで?」ってタランティーノに聞いたんですよ。「これ、テレビなんだけど、見てたの?」って。80年ぐらいなんですよね。そしたら、ロサンゼルスに日本の番組を放送するチャンネルがあったそうなんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)それで、字幕付きで見たって言っていましたよ。「英語字幕でずっと見ていたから、大好きだったんだ!」っていうことで。それで出演をさせているんですけども。

(町山智浩)まあ、そういうところもすごいですよ。全然、まさかこれ、ロサンゼルスの人が見ていたってあまり知らないですよね(笑)。

(赤江珠緒)そうですよね。

(町山智浩)これ、すごいのはJAC(ジャパンアクションクラブ)っていう千葉さんが率いていたアクションスターのグループがあったんですけども。学校兼グループみたいなね。まあ、ジャニーズのアクション版ですよ。その人たちが総出演して、すごい忍者アクションを繰り広げるテレビシリーズが『服部半蔵 影の軍団』なんですけども。そういうことばっかり言ってると千葉さんって体育会系のアクションばかりの俳優みたいに思われちゃうところがあって。そこもね、千葉さんはちょっとあんまりよく思っていなかったんですよ。彼は。特に空手映画はね、あんまり好きじゃなかったんですよね。彼はね。

(赤江珠緒)ああ、そうなんですね。

(町山智浩)ちゃんとした映画がその頃、深作欣二監督が『仁義なき戦い』とかをやっていた頃なんですよ。で、千葉真一さんはそっちに出たかったんですよ。でも、その2本立てで作品がA、Bと2本あるところのBの方ばかりを千葉さんはやらされていたんですよね。空手映画で。で、彼はそれがすごい嫌だったんですけども。途中からね、彼はその空手映画自体を破壊しちゃうんですよ。『直撃! 地獄拳』シリーズの続編の『直撃地獄拳 大逆転』っていう空手映画に出ているんですけども。これね、監督の石井輝男っていう人がね、「もう空手映画とかバカバカしくてやりたくないから」っていうことで。「二度と仕事が来ないように」っていうことで徹底的に映画をめちゃくちゃにしちゃったんですよ。

(赤江珠緒)ええっ?

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