町山智浩 アメリカ大統領選 最終テレビ討論会後の状況を語る

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町山智浩さんがTBSラジオ『荻上チキ Session-22』に電話出演。最終テレビ討論会が終了した直後の2016年アメリカ大統領選挙の状況について、荻上チキさん、小西克哉さん、前嶋和弘さんと話していました。

(荻上チキ)そうしたところ(『サタデー・ナイト・ライブ』での政治風刺)も含めてですね、アメリカの雰囲気であるとか、そしてこの方がどういう風に今回のやり取りを見たのか? お話をうかがっていきたいと思います。来週、新刊『さらば白人国家アメリカ』という本を出版予定だそうです。TBSラジオ『たまむすび』でもおなじみ、アメリカ在住の映画評論家、町山智浩さんにお電話でうかがいます。町山さん、よろしくお願いします。

(町山智浩)はい。よろしくお願いします。

(荻上チキ)よろしくお願いします。

(町山智浩)あっ、小西さん(笑)。

(小西克哉)ああ、おはようございます。こんばんは(笑)。

(町山智浩)おはようございます。ご無沙汰しております(笑)。

(小西克哉)大丈夫? 起きてますか?

(町山智浩)いま起きたところです、はい。

(小西克哉)辛いでしょう? 朝。

(荻上チキ)声が寝起きだもん(笑)。

(町山智浩)いや、大丈夫です(笑)。

(荻上チキ)じゃあ、カチッとうかがいますけども……今日、日本時間だと今日、大統領候補同士の(最終)討論会があったわけですけども。今日の討論会、どういう風に町山さんはご覧になられました?

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最終テレビ討論会の感想

(町山智浩)やっぱりいままでの繰り返しになってしまっていて。お互いに用意した答えを言うだけになっているんで。質問に答えないんですよね。たとえば、「クリントン財団がサウジアラビアからお金をもらっているじゃないか!」っていう話をされると、それに関して真正面からヒラリーさんは答えないで、「そのお金はハイチに行ってます」みたいなことを言って、「非常に女性差別的な国、サウジアラビアからお金をもらっていること自体が問題だろう? 裏表があるじゃないか!」って言っているんですけど、それに対して答えない。もう、そういうことが繰り返されていて、互いの質問がすれ違っていく感じで、見ていてどうもすっきりしないんですよね。

(荻上チキ)はい、はい。そのすっきりしないやり取りの中でも、町山さんがたとえば、でも「ここはポイントだな」みたいに思ったところはありますか?

(町山智浩)ええと、「選挙結果を受け入れない」っていう風にトランプが言ったことですよね。

(荻上チキ)言いましたね。

(町山智浩)まあ、「受け入れないかもしれない」みたいな感じで。これはたぶん、トランプが負けた時にトランプを支持していた人たちがずーっと、まあはっきり言って陰謀論を展開し続けるだろうと思いますね。これによって。実際は選挙結果っていうか選挙に関して、いろんな工作をずっとしているのは共和党なんですよ。長い間。それは2つの工作があって、ひとつは自動車の免許とか写真入りの身分証明書を持っていない人を投票させないということをやったりね。

(荻上チキ)はい。

(町山智浩)どういう風にして投票させないか?っていうと、本当に投票所の前にいてですね、おじいちゃんとかおばあちゃんが投票をしに来ると、「身分証明書を持っているのか?」って言って。「持っていないのか。じゃあ、帰れ!」っていうのを共和党員が勝手にやるんですよ。投票所の前にいて。

(荻上チキ)勝手に?

(南部広美)ええっ?

(小西克哉)「自警団」と称して。

(町山智浩)そうなんですよ。そうすると、おじいちゃんとかおばあちゃんとか、あまり政治的な言葉を持たない人は、なんか役員の人がやっているんだと思いますから、「身分証明書を持ってないやつは帰れ!」って言ったら、帰っちゃうんですよ。その人たちは選挙管理委員かなんかだと思っちゃいますよね。普通ね。ネクタイしている人が言ったら。そういう形で、貧困層とかメキシコ系の人とか黒人の人の投票を妨害し続けているんです。もうこれは10年以上やっています。共和党は。

(荻上チキ)うん。

(町山智浩)そういうことをやっているのに、「投票に関して不正がある」って言ってるんですけどね(笑)。

(小西克哉)そう(笑)。どっちが不正しているのか、よくわかんないんだけどね。本当に。

(町山智浩)よくわかんないんですけど(笑)。で、ただそういったことをトランプが言っちゃったので、今回トランプが負けても、トランプを支持した白人のブルーカラーの人たちの間ではものすごく政府に対する憎しみとか、政府以外の、自分たち以外の人に対する憎しみが育っていくだろうと思いますね。

(荻上チキ)うーん。そうですね。となるとやっぱり、選挙戦が終わった後も、ヘイトとか陰謀論とか様々な書き込みとかであふれて、分断したアメリカみたいなものが続いていくということになるんですかね?

(町山智浩)まあ、「分断」というと真っ二つに分かれている感じに聞こえるかもしれないんですけども。

(荻上チキ)言葉のニュアンスとしてはそうですね。

(町山智浩)実は、人口的にはもうすでにそうじゃなくなっているんですよ。トランプを支持している人たちの人口が、最も衰退しているサイレントマジョリティー……「白人ブルーカラー」と言われている人たちなんですね。

(荻上チキ)ええ、ええ。

白人ブルーカラーの衰退

(町山智浩)で、この人たちの人口は急激に減っています。実はこのサイレントマジョリティーっていうのはアメリカの歴史にとっては1800年代、19世紀からずーっと、「これを取れば勝てる」ということで、選挙においてはサイレントマジョリティーを取ることだけをずーっと、アメリカの政治家は考えてきたんです。

(荻上チキ)はい、はい。

(町山智浩)それはもう、第七代大統領のアンドリュー・ジャクソンが当選した時に、アメリカで初めて高額納税者以外の人たちにも……白人男性全てに投票権を与えたんですね。その段階で、白人ブルーカラーが多数派になったわけですよ。1820年代かな? で、その段階で、それまでアメリカの大統領っていうのはみんな東部の大地主の息子たちで、高い教育を受けたエリートだったんですね。それまで、全ての大統領は。で、この段階で投票をする人がそうじゃなくなったわけです。要するに、大金持ちの頭のいい人たち、教育を受けた人たちが互いに投票しあっていたんですよ。大統領選挙って、六代目まで。

(荻上チキ)ええ、ええ。

(町山智浩)で、七代目で初めて、白人男性全員投票っていう形になったんですね。その段階で、じゃあ、バカが大統領になる時代が始まったんですよ。

(荻上チキ)はいはい(笑)。簡単に言うと。

(町山智浩)それが、アンドリュー・ジャクソンなんですね。で、アンドリュー・ジャクソンは「自分はバカである」っていう風に攻撃されたことを徹底的に売りにしたんですよ。アメリカはバカのことを「ロバ」っていうんですね。「jackass」って言うんですよ。で、「私たちはjackassである」っていうことで、それを売りにして。「だからみなさん、私たちに投票してください。東部の金持ちのボンボンの頭のいい人たちと違って、あなたたちのための政治をしますよ」と。で、そっからずっとアメリカって続いているんですよ。そのサイレントマジョリティーと言われている白人ブルーカラーが人口的にいちばん層として多かったので。

(荻上チキ)はい。

(町山智浩)ところが、これがもうすでにマジョリティーじゃなくなりつつあるっていうか、もうほとんどマジョリティーじゃないんですよ。現在。

(荻上チキ)人口構成がもう変わってきているということになるわけですよね?

(町山智浩)そうなんです。人口構成が変わってきているんです。だから、その中でそれに最後にしがみついているのがトランプなんです。まあ、その人口構成……白人ブルーカラーが減っている理由はいくつかあるんですけど、白人自体がまず急激に減っています。

(荻上チキ)はい、はい。

(町山智浩)レーガン大統領が大統領になった時の全投票者の中の白人ブルーカラーの人口っていうか、白人自体が9割ぐらいだったんですよ。1980年って。投票者の。で、現在は60%ぐらいまで落ちましたから。そのうち、半分は女性ですよね? で、そうすると(投票者の)白人全員の中の30%ぐらいが白人男性ですけど、その中でさらにブルーカラーというと、さらに少なくなりますから。

(荻上チキ)そうですね。

(町山智浩)ものすごく少ないんですよ。急激に減っていますね。

(荻上チキ)そうした、急激に変化している中で、本来であればもう最後に白人層を取れるというような共和党の嘆きの選挙のようなところなんだけれども、トランプさんはそこ以外のところを意識できていないという、さっきの小西さんの見立てがあったりしましたので。

(町山智浩)そうなんですよ。

(荻上チキ)となると今後、共和党も選挙のやり方を……民主党もそうですけど、変えていかなきゃいけない時代にいま、節目としてはあるわけですよね?

(小西克哉)でも、いちばん深刻なのは本当に、「トランプ現象」っていうのは日本でも議論されるんだけど、トランプ現象よりもね、やっぱり共和党の崩壊ですよ。もう、崩壊だと僕は思う。もう、これはいまに始まったことじゃなくて、この10年、20年続いているんだけど。ずーっと共和党っていうのは何も、本当の自分たちの哲学をデリバー、実現することができないんだよね。だけど、みんなそういった白人の、特に男性はそういった妄想があって。「できる」って思っているんだよね。だからもう、これは悲劇ですよ。

(町山智浩)その約束っていうのはいくつかあるんですけど、宗教的な約束は、たとえば「人工中絶を中止する」とかそういったことなんですけど。いちばん、経済的な約束が全く遂行できないんですよ。共和党は。で、経済的な約束っていうのは、「白人ブルーカラーの仕事を作る」っていうことですよ。

(荻上チキ)はい、はい。

(町山智浩)つまり製造業を60年代のレベルまで復活させようということなんですね。これは、ちょっと不可能なんですよ。これ、僕アメリカで製造業をやっていた地域……五大湖地方のいわゆるラストベルトって言われている、かつての工業地帯で現在はさびついている地帯に行くとわかるんですけど、もう、全く新しいビジネスの開発を進めていないんですね。

(荻上チキ)うん。

(町山智浩)ただ、ピッツバーグだけは違うんですよ。ピッツバーグは鉄鋼の街で、カーネギーさんが鉄鋼で大儲けしたわけですけども。カーネギーさんは大学にものすごく力を入れたんですね。カーネギーメロン大学っていうのがあるんですが。で、現在はピッツバーグはITとか新しいハイテク技術でもって完全に立ち直っているんですよ。

(荻上チキ)ああー、産業転換したんですね。

産業転換とハイテク化・教育の問題

(町山智浩)そうです。素晴らしいですよ。ピッツバーグは、現在。で、ヒラリーさんが今回、はっきりは言ってないですけども、選挙の指針として書いていることはですね、「ラストベルトと言われている滅んだ工業地帯を再生させるにはハイテク化されるしかない」と。要するに、もう工場労働・肉体労働っていうのはアメリカの中では終わりなんだと。で、「ハイテク化させるには、教育しかないんだ」って言っているんですね。

(荻上チキ)うん。

(町山智浩)高等教育ですけども。要するに、ピッツバーグのカーネギー大学っていうのはものすごいレベルの高い大学なんですよ。そういったものすごいハイテクな大学を中心にハイテク化させるしかないと言っているんですが、いまだに、たとえばそのインディアナ州とかクリーブランドのあるオハイオ州ですね。激戦州。ロクな大学がないんですよ。

(小西克哉)(笑)

(荻上チキ)教育投資が行われていないというね。

(町山智浩)教育レベルが低すぎるんですよ。だから、『glee/グリー』っていうテレビドラマがありましたけど、あれはインディアナあたりが舞台なんですけど。あの中ではっきりと、「ロクな大学、このへんにはねえ」っていう話が出てくるんですよ。

(荻上チキ)まあ、大学進学する方はみんなニューヨークとかに行ってますよね。ストーリー上翅。

(町山智浩)そうなんです。で、トランプが支持を受けている州のほとんどにロクな大学がないんですよ。大学から新しい産業構造が生まれてくるので。これ、無理なんですよ。

(小西克哉)でね、町山さん。思うんだけど、トランプの支持者について僕は悲劇だなと思うのは、トランプがやろうとしている経済政策を実行したら……たとえば保護貿易とかね、輸入関税とか。メキシコからの30%とか、中国から40%とかをかけたら、いちばん打撃を受けるのは中小零細の製造業で、その彼らはまさにトランプ支持者じゃないですか。

(町山智浩)そうなんですよ。だから、僕がいちばんひっくり返っちゃったのは、オハイオに行った時にトランプの演説を聞いていたわけですけども。それで、「日本の自動車を叩き潰す!」って言ってるんですけど……そこ、日本の自動車の工場、あるじゃん!(笑)。

(小西克哉)そうそう(笑)。

(前嶋和弘)雇用を作っているわけですね。日本がね。

(町山智浩)で、何万人も雇用しているわけですよ(笑)。だからもう、彼らも言われていて自分がやっていることと言っていることがもう、グチャグチャになっちゃっているんですね。わからなくなっちゃっていると。

(小西克哉)だからちょっと、なんか勉強しなくても、ちょっとネットで調べたらトランプの言っていることがおかしいっていうのはわかると思うんだけどね。

(荻上チキ)でもほら、ネットを使う人はちょっと調べる時に、自分好みの情報だけ調べちゃうから。より強化しちゃうんですね。町山さん、メールで町山さんにぜひという質問が来ています。

(南部広美)(メールを読む)「今回のアメリカの大統領選で私が思うのは、どちらが大統領になったら日本にとって都合がいいのか? ということだけです。私は町山さんが好きなので、町山さんの意見をぜひ聞きたいです」とメールが来ました。

(荻上チキ)「都合がいいのか?」という観点ですね。

(町山智浩)それはでも、日本とのつながりが全くないトランプは日本にとっていいことはしないでしょうね(笑)。

(荻上チキ)(笑)。まあ、そうですね。

(町山智浩)それは単純に日本と全然ビジネスをやっていないですからね。それはやらないでしょうね。だからいま、トランプとロシアがつながっているって言われている理由のひとつは、トランプがロシアでビジネスをやりたいだろうっていう話があるんですよね。それは前から言われているんですよ。カジノホテルを開きたいだろうと。で、そういう工作もしているんじゃないか?って言われていてですね。やっぱり日本とのビジネス関係がトランプはなさすぎるんですよね。全くゼロじゃないですか?

(荻上チキ)そうですよね。まあしかも、放言も言い放題で、リスペクトも感じられないような発言が多いですからね。

(町山智浩)だから「日本の自動車を締め出す!」っていうのも、(アメリカで売られている)日本の自動車の7割はアメリカで製造しているということ自体もわからないで言っているんでしょうね。

(荻上チキ)町山さん、これからの大統領選、残り3週間ですけども。どこに注目していきますか?

(町山智浩)やっぱりね、ヒラリーがね、ポジティブな政策を全く出していないっていうことが問題だと思うんですよ。何も画期的な政策を出していない状態で勝とうとしているので。これはね……だからいま、マイケル・ムーアが『ヒラリーは何とかするよ』っていう映画をこの間作ってですね、今日からアメリカで公開が始まるんですよ。

(荻上チキ)ほう。今日から?

ヒラリーの問題点

(町山智浩)ヒラリーの問題っていうのはとにかく、ポジティブな政策を全く出していないことだったので。そこの部分をマイケル・ムーアが助けるって言っているらしいんですよ。その映画の中で(笑)。

(荻上・小西)(笑)

(小西克哉)なんじゃ、それ(笑)。

(町山智浩)その映画がちょっとどうなるかな? と思っているんですけどね。はい。

(荻上チキ)なるほど。まあ、「トランプじゃない方を選んだ」みたいな恰好に今回の選挙はどうもなりそうなので。

(町山智浩)そうなんですよ。みんな、「ヒラリーを選んだ」っていう形じゃなくて、「トランプが嫌だからヒラリーに投票する」っていう形だと、やっぱりこれは大統領になってからも非常によくないので。だから、彼女自身が選ばれるようなことをどうやって出していくのか?っていうことだと思いますね。

(荻上チキ)はい。わかりました。町山さん、お電話でどうもありがとうございました。

(町山智浩)どうもでした。(電話を切る)

(南部広美)ありがとうございました。

(荻上チキ)映画評論家の町山智浩さんでした。ということで、率直に、ある時期から選挙の仕方が変わったっていうような発言を……しかし、その構造もいま変わりつつあるという中で、特に共和党がいま、悲鳴をあげているという話と、しかしながらその共和党、特にトランプさんに引っ張られるような仕方で民主党代表であるヒラリーさんも具体的に「こういうアメリカにしたいんだ」みたいなビジョンを語れていないじゃないかっていう話があるわけですね。前島さん、いまのご指摘はいかがお感じになりました?

(前嶋和弘)まさにそうですね。ビジョンを語っていないですよね。ビジョンを語る時間もなかったんでしょうね。たぶんトランプさんが相手なので。そういうところはかなり大きいと思いますよね。

(荻上チキ)とりあえず先ほどの、たとえば日本にとっての利点みたいな質問で言うならば、とにかくオバマさんの頃とそんなに付き合い方が変わらないから、これまで通りかな? みたいな想定は各国できるという感じですか?

(前嶋和弘)基本的にそうだと思います。ただ、ひとつだけ言えることは、私の知り合いも結構ヒラリーさんに近い人がいるんですけど。みんな、日本のことをよく知っているんですよね。知っているから、こちらの悪いことも知っているんですよね。その意味で、トランプさんよりやりやすいと思うとちょっと難しいかもしれない。そこらへんはこちらがなにを考えているかも、もしかしたら我々以上にわかっているかもしれない。そういうところはあります。

(荻上チキ)トランプさんみたいに何を言うかわからない人よりは、まあ、頭を使えばがんばって追いつけるっていうところはありますよね。

(前嶋和弘)なんとか、そうですね。それはあります。

<書き起こしおわり>
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