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町山智浩 萩原健一を語る

町山智浩 萩原健一を語る たまむすび
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町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で亡くなった萩原健一さんについて話していました。

アンドレ・マルロー・ライブ(紙ジャケット仕様)

(町山智浩)今日は先日亡くなった萩原健一さん。「ショーケン」と呼んではいけない人なんですけども、子供の頃からのファンだったのでショーケンさんと呼ばせていただきますが。まあ、ちっちゃい頃からのただのファンなんですけども。10歳の頃からのファンですね。

(赤江珠緒)町山さん世代からしたら、そうだ。(BGMを聞いて)出た、『愚か者よ』。

(町山智浩)いまかかっているのは萩原健一さんの『愚か者よ』なんですけども。萩原健一さんっていうのはどういうイメージがありますか? 赤江さんたちの世代にとっては。

(赤江珠緒)うーん。ちょっと強面という感じですね。

(山里亮太)怖い人っていう。

(町山智浩)怖い感じですよね。

(赤江珠緒)渋いけど怖い感じがありました。

(町山智浩)やっぱり80年代に何度も逮捕されたことがあって、そのイメージだと思うんですよ。1983年にマリファナの不法所持で逮捕。84年に飲酒運転で人身事故。85年にはアントニオ猪木さんの奥さんだった倍賞美津子さんと一緒にいるところを写真に撮った記者に暴行をして逮捕。そんなことを毎年繰り返していたので。最近でも2004年の交通事故と映画のスタッフへの暴行・恐喝で逮捕っていうことをやっていますから、イメージがどうしてもアウトローというイメージになりますよね。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)その1984年に自伝を出しているんですけど。そのタイトルは『俺の人生どっかおかしい』っていうタイトルなんですよ。

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(赤江珠緒)フフフ(笑)。

(山里亮太)自覚症状がちょっとあった?(笑)。

(町山智浩)そうなんですけど(笑)。で、80年代にライブをした時もすごくて。『大阪で生まれた女』を歌うんですよ。で、「踊り疲れたディスコの帰り」っていうところを「留置所の帰り」っていう風に歌っちゃうんですよ。

(赤江珠緒)フハハハハハハッ! お茶目な人なんですね(笑)。

(町山智浩)そうですよ。で、萩原さんのいちばんの有名な曲『ラストダンスは私に』という越路吹雪さんのカバーでは、歌詞の中で「お酒みたいに心酔わせるわ」っていうのがあるんですけど、そこをライブでは「大麻みたいに心酔わせるわ」って歌っちゃうんですよ(笑)。

(赤江珠緒)あららら……(笑)。

(町山智浩)で、そういうことをやっているから、ステージにポンポンとおひねりみたいに大麻が投げ込まれたりするんですよ。

(赤江珠緒)ちょっと待ってください。本当ですか? ええっ?

(町山智浩)そういう人だったんですね。で、まあそういう自分のアウトローのイメージと遊んでいるところがすごくある人で。ちょっと『54日間、待ちぼうけ』という曲を聞いてもらえますか?

(町山智浩)この歌はどういう歌かっていうと、このタイトルの「54日間」っていうのは萩原さんが逮捕された時の勾留期間のことなんですよ。

(赤江珠緒)フハハハハハハッ! いや、「もしや?」とは思ったんですけど。やっぱりそうだったんですか。そうかー。

(町山智浩)はい。これは萩原さんと一緒に暮らしている奥さんか恋人の女性が萩原さんが勾留されている間、ずっと待っている気持ちを彼が勝手に想像して歌っているという。

(赤江珠緒)そうですか(笑)。

(町山智浩)勾留されている本人が家で待っている彼女の気持ちを歌うというですね。図々しい!っていう世界ですけど(笑)。そういう面白さがある人だったんですが。ただ、1962年生まれの僕にとっての萩原さんっていうのは全くそういう人じゃなかったんですよ。僕の世代にとって、萩原さんっていうのは心優しくて弱虫で泣き虫の甘えっ子のイメージなんですよ。

(赤江珠緒)ええーっ?

(町山智浩)本当にそういう人だったんですよ。だから日本のジェームズ・ディーンだったんですよ。

(赤江珠緒)ふーん! そんな優しい、柔らかい感じ? へー!

(町山智浩)ジェームズ・ディーンっていうのはいつも拗ねている感じなんですよ。いつも寂しそうで甘ったれで……っていうイメージだったんですけど、そういう感じの人だったんですよ。実際にジェームズ・ディーンの演技にも影響を受けていた人なんですけど。具体的にどういう演技だったのか?っていう話をするには、1972年に大ヒットした日本テレビの刑事ドラマ『太陽にほえろ!』がいちばんいいと思うんですね。

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『太陽にほえろ!』

(町山智浩)この『太陽にほえろ!』っていうのは画期的な刑事ドラマだったんですけど。なにが画期的だったかっていうと、まず萩原健一さんが長髪でネクタイを締めない刑事だったんですけど。それは日本の刑事ドラマでは初めてのことだったんですよ。で、それだけじゃなくて、彼が全く正義感が強い熱血刑事ではなかったということなんですね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)もともと不良でチンピラだったのが、そのままヤクザとかになるはずだったのが何かの間違いで刑事になってしまった青年っていう設定なわけですよ。ほとんど。だから、「あいつは許せない!」とかそういう感じじゃないんですよ。

(赤江珠緒)ああ、そういう複雑な設定の上の刑事さんだったんだ。へー!

(町山智浩)非常に不安定な、綱渡りをしている感じなんですよ。悪の道と正義の道の間で。で、それでいちばんの問題は「弱い」っていうことなんですよ。とにかく弱虫なんですよ。で、僕が子供の時に見てものすごい衝撃を受けたのは、沢田研二さんが犯人として出てきた時なんですね。で、沢田さんが人を殺そうとするのを止めようとして、萩原健一さんのニックネームはマカロニ刑事っていうんですが。そのマカロニ刑事が沢田研二を射殺するんですよ。すると、倒れた沢田研二さんの体にマカロニはむしゃぶりついて、「ごめんなさい……」って泣くんですよ。「起きてください……ごめんなさい……お願いです……」ってずっと泣くんですよ。

(赤江珠緒)ええーっ?

(町山智浩)これ、大人がこんなに泣くのを見たのは僕が子供の頃はこれが初めてでしたよ。

(赤江珠緒)しかも、刑事がね。

(町山智浩)刑事がですよ。で、『ダイ・ハード』とかそういう映画で……日本の映画でもドラマでもそうですけど。犯人を射殺した刑事が「イエーイ!」とかって言ったり、Vサイン出したりするじゃないですか。そんなんじゃない。人を殺すということはこういうことなんだっていうことでしたね。これだけ重いことなんだよっていう。

(赤江珠緒)なるほど。

(町山智浩)ただね、すごくそのショーケン、萩原健一さんはそれを見た時から僕らの世代にとっては「大人」っていうよりも、「自分たちと同じような子供がそのままなんかの間違いで大人の世界に入ってしまった」っていう風に見えたんですよ。

(赤江珠緒)そんな親近感みたいなものがある大人だったんですか。

(町山智浩)そうなんですよ。実際にその七曲署っていう警察署の刑事の中でも彼はもう本当に子供のように他の刑事たちからかわいがられるんですよ。石原裕次郎さんとかね。で、彼自身も心がすごく優しくて繊細だから、犯人の気持ちにどんどん寄り添ってしまうんですよ。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)で、それがいちばんよく出た回というのが「危険な約束」っていうエピソードで。マカロニが入ったスナックがたまたま拳銃強盗によって客の全員が人質になってしまうんですね。で、マカロニはあんな格好だからチンピラだと思われて、刑事だとは気づかれずに人質にされてしまうんですけども。で、お客さんは結構恋するカップルとかサラリーマンとその浮気相手とか、あとはヤクザの親分と子分とかがいたんですけど、人質になったことでそのそれぞれが自分だけが生き残ろうとして浅ましい様を見せて、お互いにどんどんと軽蔑し合うようになっていくんですよ。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)だから「あなたが好き」とか言っていたのが、お互いに自分のことしか考えていないということがどんどんと露呈していくんですよ。

(赤江珠緒)まあ人間の真理といえば真理ですね。

(町山智浩)そうなんですよ。それを見ていた犯人が気が滅入ってくるんですよ。というのは、この犯人は愛する人のために銀行強盗をしたんですね。で、その愛する女性のことを待っていたんですよ。ところが、その女性は来ないんですよ。で、どんどんと不安になってくるんですよ。人質の愛し合っていたもの同士が互いに裏切るから、それを見ていてね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、萩原健一さんに「この彼女のところに行って、呼んできてくれないか?」っていう風に犯人が言うんですよ。「どうして?」って言うと「この中で信じられそうなのは君だけだからだ」って言うんですよ。

(赤江珠緒)ええっ?

(町山智浩)で、マカロニはそのスナックを出て、その彼女を呼びに行くんですよ。そしたらその彼女は「なに言ってるのよ? そんな強盗なんかと逃げたりしないわよ。バカね」って言うんですよ。で、マカロニは刑事だから当然、そのスナックで人質を取っているっていうことを警察署の上司に伝えなければならないんですけども……伝えないんですよ。

(赤江珠緒)ええっ?

(町山智浩)なぜならば、なにも世の中で信じられないって思っていた犯人が唯一信じたのがマカロニだったからですよ。その時、もし彼が裏切ったらその犯人はこの世のなにもかもが信じられなくなってしまうじゃないですか。マカロニはそこで刑事としての職務よりも犯人の孤独の方に寄り添うんですよ。

(赤江珠緒)はー!

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『傷だらけの天使』

(町山智浩)そういう物語だったんですよ。『太陽にほえろ!』とショーケンのドラマというものは。ただ、やっぱりそれだと刑事だと座りが非常に悪いんで。結局、もっとアウトロー側の『傷だらけの天使』に行くんですね。1974年です。

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