Creepy Nutsのお二人が2021年8月3日放送のニッポン放送『Creepy Nutsのオールナイトニッポン0』の中でフルアルバム『Case』が完成したことを紹介。アルバム完成までの道のりを振り返っていました。
(R-指定)でも俺らもアルバム……アルバムの話、しよう。
(DJ松永)9月1日に我々の久々のフルアルバム『Case』っていうのがリリースされるんですけども。一昨日ぐらいですかね? ついにマスタリングが終わって、作品が出来上がりまして。ラジオ盤の編集とかも諸々全部終わって、奇跡的に滑り込んだと。まあ、いろいろ諸々、プロモーションにまつわるなにがしみたいなことはこれからあるし。まだ用意できてないものもいっぱいあるんだけど、とりあえず作品に関してはひとまず出来上がったね。
(R-指定)出来上がりましたね。
(DJ松永)よかったね。いろいろ……その1週間で4曲ぐらい録ったりとか、いろいろ後半に詰まったけども。できるもんですね。よかったね、本当にフル。フルアルバムなんか俺、絶対にできないと思っていたから。
(R-指定)でも、しておいてよかったな。やっぱりその時に……「この時期じゃないと」みたいな。たぶん今、曲にして歌っとかんとホンマにもったいない感情というか、状況みたいなのがいっぱいあったからな。
(DJ松永)そうだね。なんかもう完全に、その時に考えてることがフルに歌詞に出るもの……やっぱり時期によって変わるもんね。自分の考え方とか、あと環境も変わるから。「今、書けないよ」みたいなこととかっていうのが出てくるから。書かなかったらもったいないこととかさ、今いろいろ経験させてもらっているから。あるんだよね。
(R-指定)そうなんですよね。いや、だからホンマに今でしかないよな。なめちゃくちゃ。そういうのは、その揺れの部分とかも、バーッて腹を括ってる部分とかも全部、たぶん出ているかなって思いますね。
(DJ松永)そのさ、既発曲が出来上がっている状態で、そこからフルを作るってなって、アルバム収録曲を作り始めるじゃない? 「よし、フルアルバムに向けて走り出すぞ」っていうタイミングで歌詞を書き始めたじゃないですか。割と最近の話ではあるけども。その時に、書き始めてすごい揺れてたよね。Rさん。ちょっと最初、だいぶバッド入っていたよね? 最初っていうか、本当に最近までだけど。
(R-指定)せやな。書き始めてからかなりバッドに入って。
(DJ松永)どういうバッドだったの?
新録曲リリック作りでバッドに入る
(R-指定)これはまあ、うーん。既発曲が、言うたらだいぶ自分たちの今の状況とか。言うたら『かつて天才だった俺たちへ』を書き終わったとかに『Bad Orangez』ができたり。あと年末に何曲かできていって。それで今年の頭にできていってっていう順番やったやん? まあ1、2ヶ月とかに1曲は実は、できていっていた感じなんすよ。
(DJ松永)そうだね。そういうタイアップ系の仕事があったから書けてたっていうのがあって。
(R-指定)で、その状況状況で出してたもんが確実にやっぱり変化してたから。それの、さらに骨組みみたいな。プラス、やっぱり自分の今までの書いてきたこと。自分らが作った作品に対して要はなんかアンサーするみたいなことを最初、やろうと思ってたんですよ。完全に打ち返すというか、カウンター。一番最初の自分たちへ、みたいな。
(DJ松永)なんかね、「どういうアルバムにしていく?」みたいなのを話し合っている時にそれ、Rが言っていたよね。
(R-指定)それこそ、あれちゃう? 『さよなら たりないふたり』を見た直後。
(DJ松永)『さよなら たりないふたり』を見た後、2人とも食らいすぎて。で、「どういうアルバムにする?」って話し合っていく時に、完全にその『さよなら たりないふたり』を見た後の俺らのビジョンが一緒だったっていうね。
(R-指定)そう。まさしくそういう、そこにちょっとダブらせて、みたいなことやったんやけど……それをたぶん、あの2人がやってたような感じ。もしくは、なんかたぶんね、真正面で受けすぎたというか。自分の過去に書いた言葉とかを。それに今、変わっていってる中で出てくる矛盾とか。「あの時に言ってたことと今、違うやん?」とか。「ちょっと待って。っていうことは、もうあの時の時点からもっと違うスタンスとかで歌詞を書いといた方がよかったんか?」みたいな。すごい、そういう自分を勘ぐるみたいな時期が来て。
(DJ松永)完全にちょっと自己否定モードに入ってたよね。あれは……。
(R-指定)今、振り返ると「危ねえ!」とは思うんやけど。まあ、ライブのMCとかでも言ってるけど、作詞は結構自分にとってはセラピーでもあるし、まあ自己啓発でもあるんやけども1歩、間違えれば自傷行為にもなるからさ。リリックは。
(DJ松永)超自傷行為。なんなら自傷行為の面の方がデカいんじゃないかと思う節、あるよ。俺は。
(R-指定)で、過去にやってきたことも……いわゆる、その最初に出したのもなんか自傷行為的な部分があるから。それに対してもう1個、自分に傷をつけるってなると……ってなって。でも、そこを抜けてたのは改めて既発の、あんまりそこのアルバムのことを考えずに作っていた曲。『Bad Orangez』とか『バレる!』とかを聞いたら、もう十分そこでたぶん自分たちの変化みたいなのとか、揺れみたいなっていうのはもう描けてたんよな。改めて、そこに立ち返るまでもなく。ってなって、もうちょっと違うスタンスでそこに向き合えるようになったかな? 最大の変化がもしかしたら、もう既発曲で出してたいくつかの……「いくつかの曲で現われているフレーズとかがたぶん、昔の自分との最大の変化やわ」みたいな。『顔役』とか『Bad Orangez』での俺の歌詞の目線っていうのが。
(DJ松永)『Who am I』とかね。
(R-指定)『Who am I』とか。たぶん一番の変化……変化のかわりの最高到達点というか。変化の一番先っぽがたぶんその曲やったんやな、みたいな。
(DJ松永)しかも、めっちゃその表現になっていたしね。その変化の部分が。
(R-指定)で、それを無理にそこからまた先に進めることはしなくてもいいんやっていう風になってから、だいぶ楽になったかな。
(DJ松永)最初は本当にずっとその感じだったもんね。しばらく。
(R-指定)というか、あの既発曲よりさらに変化せなあかんっていう風にたぶん自分に思っててん。
(DJ松永)そうか。まあ、その先ほど作んないと……今を書くから、時系列的に新しいものを作らないといけないってなるからっていうこと?
(R-指定)そう。でもその新しさって別に、考え的にその1、2ヶ月で変わるわけないから。そうじゃない、別の角度のことを……その『Bad Orangez』とか『顔役』とか『Who am I』で出したような、その目線で別の事柄を扱えばいいだけや、みたいな。すごい今、考え直せばシンプルなことやねんけども。そこに大分遠回りしてたどり着いてから一気に筆が進むようになった。
(DJ松永)でも完全に必要な道ではあるよね。Rらしいなとは思ったけどね。そこ、真摯に向き合うから。しんどいだろうなとは思うけど、やっぱりなんか正しくあろうというか。誠意を込めようというか。ちゃんと真正面に向き合って考えるじゃないですか。誠意ある人だから、そこでちゃんと悩むんだと思うんだけどさ。
(R-指定)どうなんやろうな? でもたぶん、そこも思った。ちゃんと自分の今までの行ないに対して、アンサーやったりけじめやったりケリをつけなきゃいけないと思ってたんやけど。でもケリをつけて矛盾を正して……言うたら、言葉を扱うわけですし。全部が俺の主観の表現やから当然、間違ったこともいっぱい言ってるし。今も間違ったことはいっぱい言ってるねんけど。それを、許されようとするのもちゃうんやなっていうのは思ったな。釈明するっていうのもたぶんちゃうわ、みたいな。
「その時はその時で。それで今は今の間違いをビビらずにさらすしかないわな、表現は」みたいな。まあ、ちょっと真面目なんですけど。そうなりましたね。「もう、しょうがないわ」みたいな。で、たぶんま未来の俺から見たら今の俺も突っ込みどころは満載やろうし。
(DJ松永)間違っていない瞬間は今後、ないし。間違っていない人もいないし。確実に正義みたいなのはやっぱりないよね。
(R-指定)だからそういうところにずっと、抗っていこうとはしてたんやけど。知らず知らずのうちに自分も……「ああ、正しさみたいなことを全うしようとしてしまっていたな」みたいな。無理やねんけども。
(DJ松永)それ、他人ではなくて自分に向いているから、まあ人は傷つけてはいないけども。キツいよね。
(R-指定)やっぱり、あれって鋭利よ。だいぶ鋭利やと思ったわ。正しさって。もちろん、いい面もあるけども、やっぱり「いい」という前提やからこそ、鋭利やわ。それを人に向けたらえげつないし。自分に向けてもこんなにキツいんやから。「やっぱりこれは人に向けんとこ」とは思ったな。「こんな鋭利なん!?」っていう。
(DJ松永)いや、本当にそうよ。いろんな……まあ保護活動的なこともそうけどさ。全員が自分のエゴで動いてるっていうことはちゃんと自覚した方がいいよね。何かを救おうとしている人たちも、その全ての命に平等に正しいことをするっていうのは不可能だからさ。本当に自分が愛してるものとか、自分にとって都合のいいものだけを救おうって……。
(R-指定)不平等に救うというか。不平等に愛するというか。
(DJ松永)で、そういう素晴らしいことをしているとしても、それが自分のエゴの価値観の範囲内でやってるってことは自覚しておいた方がいいし。いろんな人のエゴで、いろんな人の正義の価値観があるから。確実に、やっぱり正しいことをやっている人って「自分が正しくて、あっちは間違っている」っていうさ、もう100対0の考え方とかはめっちゃ危険だなと思うし。
(R-指定)危ねえなと。
(DJ松永)そもそもさ、もう全生き物さ、なにかにとっては外敵で。なにかにとっての栄養だっていうことはすごい思うのね。この生き物、食物連鎖の中にいる時点で、なにかを食って生きるし。
(R-指定)そこから外れようとするのも、ある意味ズルいというかね。そう思ったな。
(DJ松永)で、なにかに食われるし。で、その糞でなにかが育つし、みたいな。
(R-指定)だから俺はやっぱりすごい、なんか改めて……アルバムの曲の中にもリリックとしてちゃんと出てるっすけど。自分のその加害性みたいなところももう1回、このすごい鋭利な言葉というものを扱っているっていうことをもう1回、考えたな。
アルバムジャケットのデザイン
(DJ松永)アルバムを作り始めたじゃない? で、そのテーマが本当にふんわりしたもので。それで時間がない中でフルアルバムを作らなきゃ、みたいなのだから。今回、初めてアルバムを作り始めたと同時に、先にジャケを完成させないといけないっていうトリッキーな工程だったんですよね。
だからさ、やっぱり先に……CDを作るには、デザインを先に入稿しなきゃいけないんですよ。音源のマスターよりも。だから、そのフワッとした、その『たりないふたり』を見た俺らがその直後に「自分たちの過去に放った言葉に対して、書きなおしたり、けじめをつけたりしようか」みたいな。それでジャケをまず考えて。で、今回のフルアルバム『Case』のジャケっていうのは空の、CDを取った状態の写真がジャケットになってるんだけど。
なんか、たとえば鏡に向き合っている自分たちとか、そういうことにやっぱりしたくなくて。それはもう見て、完全に向き合ってるじゃないかっていうか。こう、直訳すぎるというか。ジャケを見て、説明されてやっとわかるぐらいの方がかっこいいなっていうのは俺の価値観的にあるから。なんだろうな?って考えた時に空のCDの写真をジャケにしたいなと思って。それで、あれは盤面がないんですよ。過去の作品を見ている自分の目線みたいなものをジャケットにしたいと思って。それで盤面がないのは、やっぱりその自分たちが変化をしていくわけじゃないですか。で、過去の作品のジャケットを見ても、その在位置はまた別の違うとこにあるみたいな。その時系列みたいなのを表わしたくて。
それで、空のジャケットだけどデザインされてかっこよくなっているっていうのは過去の自分たちに対して、それは否定じゃないもんね。過去の自分たちを否定するんじゃなくて、それは愛おしいし、尊いし。その時の自分たちがあったからこそ今があるから、みたいな。美しいものにはしたいっていうので。それで、めちゃくちゃ時間がない中で河島遼太郎さんっていう『クリープ・ショー』のフルアルバム以来、お願いしている……最近だとグッズも全部河島さんに作ってもらっていて。ツアーのメインイメージも河島さんが作ってくれて。本当に意図を全部汲み取ってくれて。その意図以上のものを打ち返してくれる、本当に素晴らしい人なんだけども。完全に想像した以上の作品を作ってくれて、マジで嬉しくて。
Creepy Nuts
Full Album「Case」
2021.9.1 Releasehttps://t.co/WAfY2NyX3a#CreepyNuts #Case pic.twitter.com/yGFfEFewwn— Ryotaro Kawashima︱河島遼太郎 (@ryotalaw) August 3, 2021
(DJ松永)で、最後の最後だよね。そのタイトルを決めたのは。『Case』っていう。
(R-指定)そうですね。最初はいろんな案が出ていたけども。
(DJ松永)で、考えていた時にね、空のCDのケースってジュエルケースっていうんですよ。透明なCDケースのことってジュエルケースっていうんだけど。まだからもうタイトルも『Jewel Case』でいいんじゃないかなって思って。俺がジャケットに込めたものも全部回収できるし。『Jewel Case』って直訳すると「宝石箱」みたいなこともあるから。その過去の自分たちの作品をちゃんと尊いと思っている意思みたいなのもサブ的な意味合いで入るなと思って。それでRさんに話して。そしたらRさんはそこに対してこの『Case』っていうので「事象・事柄」みたいな意味合いも含めたいって。あとは「器」とかね。
(R-指定)「Case」は「器」やったり「事件」やったりとか。「ケース・バイ・ケース」みたいな言葉もあるし。今の俺たちとか、俺の場合は……みたいな歌も多いから。で、かつ、変化としては昔の自分……『たりないふたり』とか『助演男優賞』っていうのを出した時の自分らよりかは胸を張ってるっていうのは、たぶんその『夜ふかしの歌』とか『かつて天才だった俺たちへ』でも表現してきたんやけど。もう1個ね、そのありがたい仕事をさせてもらったり、でっかい事柄に関わるにつれて、まあやっぱりめちゃめちゃ大勢の人間に支えられているからこその責任的なものやったりとか。この俺の器でなんとかやり切るしかない、その自分の器みたいなことを考えることも多くなったから、そういう内容の曲も入っているから。だから「器」っていうのも入っている。より広くね。
(DJ松永)そうそう。より抽象化して『Case』っていうのに落ち着いたんですよね。だからまあ、タイトル的にも初めて英語を使ったし。シンプルなタイトルにはなりましたよね。うん。まあ、そんなアルバムで。ちょっと新録曲はまだ、もうちょっと解禁というのは先で。こんだけ話して既発曲をかけますけども。まあ、そんななバタバタした中、作ったっちゃ作ったよね。
(R-指定)まあ、そうっすよね。そのバタバタ感をね(笑)。
(DJ松永)まあ、その現在の我々を切り取ったアルバムとして、どの曲から始まったらいいだろうなってことを考えて、これを1曲目にしました。Creepy Nutsで『Lazy Boy』。
Creepy Nuts『Lazy Boy』
<書き起こしおわり>