高橋芳朗 BTS『Permission to Dance』を語る

高橋芳朗 BTS『Permission to Dance』を語る アフター6ジャンクション

(宇多丸)『Dynamite』はやっぱり出たタイミングとかも含めてもっとね、抽象空間としてのポップっていう感じだったのがね、より現実な感じですよね。

(高橋芳朗)そうですね。あと、まだこんなにコロナが長期化するとも思ってなかった節もあると思うんですけどね。

(宇多丸)たしかに。しかしさ、このタイミングで……要は、やっぱり出す側としてはね、作って出す側とすれば、なかなかちょっとした賭けでもあるわけじゃん?

(高橋芳朗)すごい勇気がいると思いますし。「自分たちが今のポップミュージックを牽引してるんだ」っていう自覚がないとできないと思いますね。これは。ちょっとそのへんも踏まえて、改めてちゃんと聞いてもらってもいいですかね? BTSで『Permission to Dance』です。

BTS『Permission to Dance』

(高橋芳朗)はい。BTS『Permission to Dance』、改めて聞いていただきました。

(宇多丸)しかし、あれだね。アフターコロナを牽引するっていうのと同時にさ、たとえば今の日本の状況とかだとさ、ちょっと複雑な気持ちにもなるじゃん? とか、もっと大変な状況の国とかもあってさ。つまり、その普遍的なポップミュージックのメッセージみたいなのが今はやっぱり逆に難しいんだなっていうのも感じた。要するに、この曲を素直に聞けない状況の国も結構あるっていうかさ。みたいなこともちょっと同時に……。

(高橋芳朗)そうですね。そのへんも賭けだし、そのへんも引き受けられるのも現状だとBTSなのかなっていう。

(宇多丸)そう。そこがさっき言ったその「牽引する責任」というのかな? 自覚、覚悟っていうところだと思うんだけど。そうそうそう。だから、みんながこれを歌えるわけじゃないよなっていう風にも思いました。

(高橋芳朗)まあ、こうやって聞いての通り、間違いなくBTS史上最もポップで敷居が低い曲だと思うんですけど。ダンスも……さっきから宇内さんもめっちゃ踊っていますけども。これまでの曲と比べて非常に覚えやすい振り付けなんですよ。

(宇多丸)「みんなで踊ってね」みたいな?

(高橋芳朗)国際手話も取り入れられたりしていて。23日からはYouTube Shorts。YouTubeのショート動画でダンスチャレンジもスタートしているんですね。

(宇内梨沙)なるほどな。さすがだなー!

BTS『Permission to Dance』ダンスチャレンジ

(高橋芳朗)これ、だからより幅広い層に届くことを視野に入れて作られた曲であることは間違いないし。やっぱりね、本気で世界を元気づけようとしてるんだなっていう感じがすごいするんですよ。

(宇内梨沙)でもこんなにBTSのメンバーが笑顔でずっとニコニコしているのって、結構珍しくないですか? 私、テテがあんなにニコニコしてるの、あんまり見ない気がするんですけども。クールな表情している……。

(高橋芳朗)そうかもしれないですね(笑)。みんな、今回は楽しそうですよね。で、やっぱり曲を重ねていくごとになんだろうな? 使命感が増してきてるっていうか。

(宇多丸)でもこれ、踊っているのもやっぱり後ろの人はみんなマスクしてる状態なんだな。

(高橋芳朗)それがだんだんマスクを取っていくんですけども。で、これまでもBlack Lives Matterとか、Stop Asian Hateの運動にBTSは賛同を表明してきましたけども。やっぱりポップミュージックの頂点にいる自分たちが今、世界に向けて何ができるのか? 自分たちが果たすべき役割について、すごい真剣に向き合ってるなって感じはしますね。まあ、やっぱりさっきから繰り返してる通り、今コロナ後の世界を視野に入れたような曲って自分たちがポップミュージックを牽引している強い自覚がないと歌えないテーマだと思うし。実際に今、こういう真っ直ぐなメッセージを歌って、それを広く正確に届けられるのはBTS以外にはちょっと考えられないと思うんで。それで先週、発表になったんですけど。韓国のムン・ジェイン大統領がBTSを大統領特使に指名して。9月にニューヨークで開催される国連総会に彼らが出席して、世界の若者たちメッセージを発信することが決まってるんですね。

(宇内梨沙)すごい!

(高橋芳朗)結構、そういう活動の中でこの『Permission to Dance』が『Dynamite』とか『Butter』とはまた違った重みを帯びてくる曲になるかなっていう感じはしますかね。だから結構、実際にコロナが収束した時。日本で小学校の運動会とかで子供たちがこの曲で踊る光景が見られたりしたらいいなって。

(宇内梨沙)SNSで本当に流行りそうですね。やっぱり『Dynamite』とか『Butter』って結構ダンスをやってた人こそ踊れるみたいな楽曲でしたけど。踊りやすい楽曲なら、みんな子供も含め、SNSでバズりそうだなっていう感じが。

(高橋芳朗)本当に『Permission to Dance』っていうタイトルの通り、非常に敷居の低いダンスソングになっていますよね。

(宇多丸)しかしとにかく、でもこれがやっぱりさ、1曲目でもありえないし、2曲目でもありえないし。やっぱり『Dynamite』『Butter』と来てのこれだから……っていうのもあるし。

(高橋芳朗)やっぱり連続性がものを言ってますよね。

(宇多丸)生きるよね。いきなりこれ来たら「ちょっとこれ、明るすぎない?」みたいになったりするかもしれないし。うん。やっぱりすごい周到だなと思う。

(高橋芳朗)明日、また新しい全米チャートのランキングが発表になるんで。連続1位を達成できるかどうか、また注目したいと思います。

<書き起こしおわり>

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