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高橋芳朗 BTS『Dynamite』全米No.1獲得戦略を語る

高橋芳朗 BTS『Dynamite』全米No.1獲得戦略を語る アフター6ジャンクション
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高橋芳朗さんが2020年10月21日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中でBTS『Dynamite』の全米ナンバーワンヒットの背景についてトーク。全米1位獲得のための戦略について話していました。

(宇多丸)最新洋楽情報ということで、先ほどもチラリと言ってましたが、とにかくアメリカのビルボードチャートを堂々席巻中のBTSとBLACKPINKという。

(高橋芳朗)では、まずBTSから行ってみたいと思います。まず簡単にBTS、どんなグループなのかを説明しておくと、2013年でデビューした韓国のボーイズグループ。ヒップホップアイドルなんていう風にも言われてるんですけれども。7人組のボーイズグループでございます。この歴史的なシングルになった『Dynamite』の全米ナンバーワンヒットの背景なんですけども。最初にお断わりしておくと、既にアルバムはもう4回、全米チャートで1位になっているんですね。2年前に初めて1位になった時にはこの番組でも丸屋九兵衛さんがゲストにいらして。

(宇多丸)2018年6月11日(月)に丸屋九兵衛さんをお招きして「BTS(防弾少年団)のすごさをちゃんと学ぼう特集」をやりましました。

(高橋芳朗)で、シングルだと2018年に『FAKE LOVE』が10位。去年、2019年に『Boy With Luv』が8位。今年の2月に出した『ON』が4位。ジリジリと頂点には迫っていたんですけど。それで今回の『Dynamite』は結構戦略的に1位を取りに行ったなっていう印象がありますね。

(宇多丸)やっぱりアルバムはさ、割とファン度が高い人が買うもんだけど、曲単位となるともっと広く支持を集めないと。

(高橋芳朗)狙っていかないといけないので。それでまず、ちょっと注目してほしいのがこの『Dynamite』っていう曲がBTSにとって初めての全編完全英語詞なんですよ。

(宇多丸)ああ、意外ですね。

(高橋芳朗)そうなんですよ。これまで、さっき言った全米トップテン入りした3曲は英語と韓国語のミックスなんですよね。

(宇多丸)やろうと思えば全部、英語詞とかできたのに。

(高橋芳朗)ねえ。全然できるのにね。

(宇多丸)俺はだからこだわりなんだろうなって思っていたのね。まあ、もちろんこだわりなんだろうけど。そこをあえて外して狙いに行ったという?

(高橋芳朗)そういうことですね。で、この『Dynamite』って一応コンセプトがあって。新型コロナウイルス禍の世界を元気づけたいみたいな、そういうテーマがあるんですけど。まあ、でもやっぱり1位ゲットを視野に入れての英語オンリーの曲が必要なんじゃないかなと考えた判断だと思うんですけど。それで実際、BTS側がすでに今年1月ぐらいにもう英語詞の曲を探してたって証言があって。

(宇多丸)それはソングメーカーというか。今だとそういうチームがいてね、おそらくコンペっていうか、いろんな曲のあれがあって……ってことですね?

(高橋芳朗)まさに。『Dynamite』のプロデュースを手掛けているのがで出かけてるのがロンドン出身のデビッド・スチュワートという人で。このデビッド・スチュワートとジェシカ・アゴンバーっていうコンビで曲を書いてるんですね。で、この2人が今年の始めにBTSが所属しているコロンビアレコードのトップのロン・ペリーさんっていう人から「BTS、なんか新曲探してるみたいよ」みたいな話を聞いたようで。それで彼らが「じゃあちょっと僕ら、作ってみましょうか?」って感じで手を挙げたみたいなんですけど。そのBTSが探している曲の条件が「ノリのいい英語詞の曲」だったんですって。

(宇多丸)うんうん。まあ、アッパーなのはそうとして……。

(高橋芳朗)だから事務所側がもう今年初頭の時点で、英語詞限定で曲を探していたっていうことは、もうその時点で考えてたんじゃないかな?っていう。

(宇多丸)はっきりとした条件があるんだもんね。

(高橋芳朗)そうそう。そんなわけで、より幅広い層にアピールすることを考慮して歌詞はは英語詞にして。それで曲調はどうするか?っていうことですよね。で、「ノリのいい英語詞の曲」のこの「ノリのいい」っていうのがどこまで具体的なサジェッションだったのかはわからないですけど。

(宇多丸)だってBTSはそれまでだってゴリゴリのね……まあヒップホップグループだからね。

(高橋芳朗)で、このデビッド・スチュワートとジェシカ・アゴンバーが作って数カ所だけの手直しでGOが出たのがどんなタイプの曲だったかと言うと、ディスコミュージックだったわけですね。じゃあ、ちょっとかけてもらえますか? これは『Dynamite』のインストゥルメンタルバージョンです。

(宇多丸)ねえ。だからBTS、割とゴリゴリに最先端ヒップホップっていうか、攻めた感じのあれだったんだけど。めっちゃオーセンティックっていうか。

(高橋芳朗)そうなんですよ。BTSが本格的なディスコとかファンクをやるのってこれが初めてなんですよ。

(日比麻音子)へー!

(宇多丸)あとビデオもさ、今までのヒップホップグループ然としたダークで攻撃的な感じじゃなくて青空の下、むしろその古きよきアメリカ感、オールディーズ感とかをやったような感じで。だいぶ……言っちゃえばアイドルっぽいっていうか。

(高橋芳朗)そうそう。だってディスコって書かれた看板の前で踊っていますから。そのぐらいもう明確なんですよね。で、歌詞にも「Disco overload, I’m into that, I’m good to go(ディスコでヒートアップ、さあ行こうぜ)」みたいな歌詞があったり。あと、サビにはね、「Shining through the city with a little funk and soul(ファンクとソウルでこの街を輝かせよう)」みたいな歌詞もあったりするんですけども。まあ、ディスコ調とかファンク調みたいな曲はこれまでにもあったんですが。まあ普通に……。

(宇多丸)まあ、特に80’sリバイバルっていうか、それ以降はもう定着したっていう感じもあるけどね。

(高橋芳朗)たとえば去年ヒットした『Boy With Luv』っていう曲は多少ディスコのエッセンスがあったり。あと2015年に『Boyz with Fun』っていう曲を作っているんですけども。これはマーク・ロンソンとブルーノ・マーズの『Uptown Funk』にたぶんインスパイアされた曲だと思うんですけども。でも、直球のディスコ、ファンクになるとこれが初めてっていう感じですね。

(宇多丸)だって音とかも完全にそういう作りだもんね。むしろ今っぽさは控えて、みたいな感じだよね。

(高橋芳朗)だから『Dynamite』は英語詞のディスコソングでかつ、メンバーとかお抱えのプロデューサーも一切絡んでないっていうことで、BTSのディスコグラフィーの中でもかなり異質な曲なんですね。

(宇多丸)もう置きに行ったというやつですね。

(高橋芳朗)なんですよ。うんうん。だからこれでたぶん、そのBTSのファンの皆さん。アーミーの皆さんはこれがどういう曲か、すぐ察知しますよね。

(宇多丸)「勝負曲だ!」って。

(日比麻音子)「狙いに行っている!」って。

(高橋芳朗)そうそう。ただ、一口に「ディスコ」と言ってもいろんなディスコのバリエーションがあるじゃないですか。で、この『Dynamite』がどんなイメージのディスコを打ち出してきたか?っていうと、1970年代後半から80代前半にかけて一斉を風靡したアメリカのディスコ・ファンクバンドのシックですね。シックのスタイルです。

(宇多丸)この「チャララ、チャラッチャッ♪」っていうのがナイル・ロジャースギター感、ありますもんね。

(高橋芳朗)ナイル・ロジャースですね。今、後ろでシックの『Good Times』っていう1979年の曲がかかっていおますけども。

Chic『Good Times』

(宇多丸)そして当然、ヒップホップ文脈とも濃厚に繋がっているから。

(高橋芳朗)はじめてのラップヒット曲になったシュガーヒル・ギャングの『Rapper’s Delight』はこのシックの『Good Times』をサンプリングしているというか、演奏しているというか……。

(宇多丸)まあ、パクったんですよ。この場合は「パクった」です。シルビア・ロビンソンにシックが文句を言ったら「知りません」っていう衝撃の回答が返ってきたっていうことを本人たちが言っていました。

(高橋芳朗)フフフ(笑)。

(高橋芳朗)で、やっぱりね、いろんなディスコのスタイルがある中で、このシック、ナイル・ロジャースのスタイルっていうのは現状最も手堅いアプローチかなっていう気もするんですよね。

(宇多丸)まあ、言っちゃえばあまりにも大ネタっていうか、定番的っていうか。まあ、「保守的」とも言っていいぐらいの。

(高橋芳朗)そうですね。で、ここ10年のディスコミュージックのリバイバルを象徴した曲がやっぱり思いっきりシックのスタイルを取り入れた曲で。かつ、ナイル・ロジャース本人も参加しているという曲ですよね。はい。2017年に大ヒットしてグラミー賞で最優秀賞を受賞しましたダフト・パンクの『Get Lucky』。

(宇多丸)もういつの時代の何を聞いてるか、分かりません(笑)。

(高橋芳朗)たしかにね(笑)。本当にそうだよね。もう本当、スタンダードですよね。

(宇多丸)そう。だからこれに関しては新しいも古いもないんですよ。みんな大好きっていうやつね。

(高橋芳朗)で、このヒットを受けてシックはもう25年ぶりのアルバムを出すぐらいのことになってるんで。やっぱりシックがディスコリバイバルのシンボルっていうか象徴になっているようなところがあると思うんですけど。で、今年はシックをモチーフにしたディスコソングがBTSの『Dynamite』以前に既に全米1位になっているんですよ。それがですね、LAの女性シンガーでありラッパーのドージャ・キャットの『Say So』っていう曲なんですけども。じゃあ、これを聞いてもらいましょうか。

(高橋芳朗)はい。5月に全米1位になりましたドージャ・キャットの『Say So』を聞いていただきました。

(宇多丸)こんなんもう、嫌いなわけないもん。でもこれ、曲の作りがめちゃめちゃ意図的っていうか。オープニングでちょっとくぐもった感じ。そこからのドン!っていうさ。だから要するにサンプリングした昔の曲風かと思いきや……今! 温故、知心! 温故ぉ~、知心!(笑)。

(高橋芳朗)でも、今のトラップのヒップホップの時代にこんだけポップであからさまにキャッチーなディスコソングが1位になるっていうのもびっくりしましたけどね。

(宇多丸)でもトラップ系っていうか、そういう感じのことをメインでやってる人も、アルバムに1曲、2曲こういうのが入ってるっていうのは結構定番的なシフトな気がする。あと、やっぱりさ、クラブの現場で結局ディスコがみんなあんまり好きじゃなかった時期って現場でほとんどないんだよね。ゴリゴリのヒップホップのクラブとかでも結局かかってたし。だから常にみんな好きなんだよね。やっぱり所詮。

(日比麻音子)これ、TikTok上のダンス動画っていうことなんですか? 映像で使われてたんですか? この曲が。

(高橋芳朗)今、ヒットしてる曲はほとんどがTikTok発だったりしますね。

(宇多丸)だからたぶん振り付け込みだったりするんだろうね。

(日比麻音子)なるほど。楽曲がSNS映えするっていうのが今は……。

(高橋芳朗)この曲は映えるでしょうね!

(宇多丸)映える。みんなコミットできるし、かわいいし。

(高橋芳朗)だからこの『Say So』でシックスタイルというかナイル・ロジャーススタイルのディスコソングの人気の根強さを改めて思い知らされた感じですね。

(宇多丸)ずっとみんな好きとはいえ、もう1回、「あのあたり、やっぱりいいよね!」っていう。ちょっと火がついているところに『Dynamite』がうまく、導火線にちゃんと……。

(日比麻音子)まさに『Dynamite』。ドッカーン!

(高橋芳朗)うまい!

(宇多丸)うまい!

(日比麻音子)ちょっと言いたかったの(笑)。

(高橋芳朗)宇多丸さん、その意図で言ったのかと思いましたけどね。

(宇多丸)感心してしまいました(笑)。

(高橋芳朗)だから1位を取りにいくにあたってのBTSの選択は的確も的確ですよね。だからこれだったらアーミーの皆さんとかK-POPリスナー以外にも余裕で届く曲かなっていう感じですね。

(宇多丸)それそこ日本のああいう朝の番組、お茶の間で流したって……だからブルーノ・マーズが普通にみんな聞いていたように。そりゃあ老若男女にフィットするよね。

(日比麻音子)パチっとハマる感じです。

(宇多丸)とはいえ、狙いすました一発だったわけですね。

(高橋芳朗)それが見事にハマったわけですね。じゃあ、改めて聞いてみましょうかね。BTSで『Dynamite』です。

BTS『Dynamite』

(高橋芳朗)はい。BTSで『Dynamite』でした。

(宇多丸)イエーイ! そりゃあもう、いいよね。よくできているよね。

(高橋芳朗)なんかね、飽きないんですよ。むしろね、聞くほど好きになっていく。

(宇多丸)なるほどね。味がよく出てくるというか。やっぱり、ここの時点ででもこうやって1位を取りに行くということは、そのBTSというグループとかにも非常に意味があったということなのかな?

(日比麻音子)なんとなく私の感覚ですけど。ちょうどそのJINさんがまもなく兵役を迎えるということで。「BTS、どうなるの?」っていうのが韓国国内でも、もちろん全世界でも議論になっている。そのタイミングで、もしかしたらBTSは一旦活動が止まってしまうんじゃないかっていうタイミングで、ここでドカンとブチ上げてくれたっていう。

(宇多丸)まずはてっぺんを取っておくっていう。

(日比麻音子)そこがエモみがあるというかね。

(宇多丸)そういうストーリーもあるのか。

(高橋芳朗)それでもう一発、エモみがあるのがBTSの今後の動向。そこで注目したいのが
来月発表になる第63回グラミー賞ノミネートの行方で。

(日比麻音子)すごいですね! 映画では『パラサイト』。そして音楽ではBTSが……。

(高橋芳朗)その通り! 個人的には、もう希望的観測も込みですけど。主要部門のノミネート、行けるんじゃないかなという感じがちょっとしてまして。日比さんがおっしゃった通り、『パラサイト』がアカデミー作品賞を取ったのが追い風になる可能性もあるし。あと今年のグラミー賞授賞式のステージでリル・ナズ・Xのパフォーマンスの時にBTSもステージに立っているんですよ。そういう布石もあるから、結構いけるんじゃないかな?って。受賞できるかどうかは難しいですけど。

(宇多丸)でも、うん。なんとなくわかるよ。グラミーに顔がだんだん定着していく感じ。なんかその感じは……。

(高橋芳朗)たぶんノミネートは行けると思うし。あと、グラミー賞が最近、多様性と包括性とかを重視しているので。

(宇多丸)そうだね。なんかは行くんじゃないの?

(高橋芳朗)そうですね。でも、主要部門に行ってほしい。ソング・オブ・ジ・イヤーとか。

(宇多丸)たしかに。

(高橋芳朗)ただ、テイラー・スウィフトとかね、ザ・ウィークエンドとかね、強敵がいますんで。

(宇多丸)でもとにかく、そこまで来ているっていうのがすごいことだね。そして、そのすごくシンプルに聞こえた『Dynamite』にも明確な戦略、思いがあったっていうのがわかってすごくよかったです。

<書き起こしおわり>

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